損をしない財産放棄|相続放棄との違いや手続きを徹底解説

損をしない財産放棄|相続放棄との違いや手続きを徹底解説
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 7
 この記事を読んでわかること

  • 財産放棄とは何か
  • 財産放棄と相続放棄の違い
  • 財産放棄のメリット・デメリット
  • 財産放棄の注意点

相続の場面では「相続しない」という選択肢を選ぶ方もいらっしゃいます。
例えば、遺産に多額の借金が見つかったケースや、他の相続人に遺産を譲るケースなどが考えられます。

「相続しない」方法は、大きく分けると①財産放棄②相続放棄の2つがありますが、違いが分からない方も多くいらっしゃるでしょう。
この2つは、名称は似ているものの、法律上の意味はまったく異なります。

簡単に言うと、相続人同士で話し合った上で相続しないことを「財産放棄」と言い、法律上の手続きをして相続しないことを「相続放棄」と言います。
加えて、相続放棄は「自分が相続人であることを知ってから3ヶ月以内」と期限が決められており、期限を過ぎると相続放棄が認められません。

財産放棄と相続放棄の2つがあやふやなまま手続きもしくは放置していると、故人の借金を受け継ぐ恐れもあるのでご注意ください。

本記事では、財産放棄とは何か、相続放棄との違いやメリット・デメリットについて詳しく紹介していきます。


1章 財産放棄とは?|相続放棄との違い

故人の借金を受け継がない方法としては、①財産放棄②相続放棄があります。
言葉自体は似ているものの、意味合いは異なるので、それぞれの違いについて理解しておきましょう。

財産放棄相続放棄
概要相続人同士で話し合い(遺産分割協議)で「相続しない」という意思表示をすること最初から相続人ではなかった扱いになり、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しない
手続き方法相続人に意思を表明する
遺産分割協議書にその旨を記載する
家庭裁判所に申立て手続きをする
故人の借金を相続するかするしない
個別の遺産ごとに手続きできるかできるできない
相続人全員で手続きできるかできないできる

本章では、財産放棄とは何か、相続放棄との違いについて解説します。

1-1 財産放棄

財産放棄とは、相続人同士で話し合い(遺産分割協議)で「相続しない」という意思表示をすることです。
「相続分の放棄」という名称で呼ばれる場合もあります。

なお、財産放棄はすべての遺産を相続しないだけでなく、遺産ごとに個別で「相続しない」という選択が可能です。
例えば、下記のような対応も認められています。

  • 自分は生前贈与を受けているから相続財産はいらない
  • 家を継ぐ長男に遺産をすべて譲る
  • 不動産は取得せず現金だけを相続する

財産放棄をする場合、遺産分割協議書に「相続しない旨」を記載し、署名・押印するだけで完了します。

なお、財産放棄は相続する人が他にいる場合にしかできません。
相続人全員が相続しない場合は財産放棄ではなく、相続放棄の手続きが必要ですので注意が必要です。

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1-2 相続放棄

相続放棄は法律上の手続きであり厳密に言うと、自分が相続人ではなくなる手続きです。
相続人ではなくなるため、結果としてすべての遺産についての相続権を失います。

相続放棄は法律上の手続きのため、家庭裁判所へ申立てをしなければなりません。
また、相続放棄はプラスの遺産だけでなく、借金などのマイナスの財産を相続する必要もなくなるため、遺産に借金がある場合などに行います。

財産放棄と異なり、他の相続人の同意も不要なため、遺産分割協議完了前に手続きも認められています。

相続放棄は故人の借金を受け継がないなどメリットがある一方で、他の遺産も相続できなくなる、自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内と期限が決められている点に注意しなければなりません。

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2章 財産放棄をするメリット・デメリット

財産放棄は法的手続きとは異なり手軽にできる一方で、故人の借金を受け継いでしまうなどのデメリットがあります。
財産放棄のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

2-1 財産放棄のメリット

財産放棄のメリットは以下の通りです。

  1. 相続人同士の話し合いで済むため難しい手続きがいらない
  2. 遺産ごとに個別で放棄することができる

財産放棄の最大のメリットは、相続放棄と比較して手続きが楽な点です。
また「不動産は相続しないけど、現金は相続する」といった選択も可能になるので、相続人同士の話し合いに応じて融通を利かせられます。

2-2 財産放棄のデメリット

一方で、財産放棄のデメリットは以下の通りです。

  1. 債権者からの債権回収に対抗できない
  2. 遺産に借金がある場合は他の相続人と折り合いがつかなくなる

財産放棄の場合、あくまで相続人同士の話し合いの結果でしかないため、法的効力はほとんどありません
そのため、債権者に対して「自分は財産放棄したから、故人の借金の返済義務はありません」といった主張は通りません。

そもそも、遺産に借金がある場合は、相続人の1人だけが「相続しません」と言っても、他の相続人がその借金をどうするか考えざるを得ません。
「じゃあ、この借金はどうするの?」「自分だけ借金から逃れようとしてもだめだ」など、残った借金の行き場を巡ってトラブルになる可能性が高いです。

したがって、故人が借金を遺しており返済義務を負いたくない場合は、相続放棄を選択する必要があります。


3章 相続放棄をするメリット・デメリット

相続放棄をすると、相続財産の一切を相続できなくなります。
故人の借金を受け継がなくなる一方で、手続きに手間がかかるなどのデメリットもあります。

本章では、相続放棄のメリット・デメリットについてみていきましょう。

3-1 相続放棄のメリット

相続放棄のメリットは以下の通りです。

  1. 遺産に借金がある場合でも相続しなくてすむ
  2. 活用しにくい不動産も相続しなくてすむ
  3. 相続争いに関与せずにすむ

相続放棄をするとそもそも相続権がなくなるので、借金や所有しているだけでコストのかかるいわゆる「負動産」も相続せずに済みます。
財産放棄と違い、法的に放棄しているため、万が一債権者から債権回収をされたとしても支払う義務はありません

また、相続放棄をすると最初から相続人ではなかった扱いになるので、遺産分割協議に参加する必要がなくなり相続をめぐる問題にも巻き込まれなくなります。

3-2 相続放棄のデメリット

一方で、相続放棄には下記のデメリットがあります。

  1. 相続したい財産があっても相続できない
  2. 思わぬ人が相続人となる可能性がある
  3. 生命保険金や死亡退職金の非課税枠を利用できなくなる

上記3つは、少々話が複雑ですので、それぞれ詳しく解説していきます。

3-2-1 相続したい財産があっても相続できない

相続放棄をすると、相続財産の一切を相続できなくなります。
借金などのマイナスの財産を相続せずにすむ一方で、預貯金や不動産などプラスの財産も相続できないため、ご家族の大切な財産もすべて放棄することになります。

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3-2-2 思わぬ人が相続人となる可能性がある

相続放棄をすると、次の順位の人に相続権が移るケースがあります。
相続順位は、下記のように決められています。

“相続人の優先順位

常に相続人になる配偶者
第一順位子供や孫
第二順位両親や祖父母
第三順位兄弟姉妹や甥・姪

優先順位の高い人物が1人でもいると、優先順位の低い人物は相続権を持つことができません。
そして、同順位の相続人全員が相続放棄すると、次の相続順位の人物に相続権が移ります。

下記のケースを見てみましょう。

借金 相続

例えば、故人の子供全員が相続放棄をすると、相続権が故人の両親に移ります。
故人の両親がすでに他界している場合、相続放棄した場合は、故人の兄弟姉妹へと最終的に相続権が移る仕組みです。

このように、相続放棄によって思わぬ人物に相続権が移り、相続問題や故人の借金問題に巻き込まれてしまうので、不快に感じる方もいるでしょう。
相続放棄をする際は、その後相続人となる人も確認しておくことが大切です。

相続放棄したら次の相続順位の人物に連絡しよう

相続放棄したら、次の相続人になる人物に相続放棄したことと理由を伝えておきましょう。
相続放棄が完了しても家庭裁判所が次の相続人に対して「前の相続人が相続放棄したから、あなたが相続人になりました」と連絡してくれることはないからです。
新たに相続人になった人物が困ることがないように、相続放棄が完了したら必ず連絡しておくことが大切です。

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3-2-3 生命保険金や死亡退職金の非課税枠を利用できなくなる

相続放棄をすると、生命保険金や死亡退職金の非課税枠を利用できなくなってしまいます。
相続放棄をすると最初から相続人ではなかった扱いになるからです。

生命保険金や死亡退職金は、受取人固有の財産として扱われるため、相続放棄をしても原則として受け取り可能です。
ただし、相続人が生命保険金や死亡退職金を受け継いだときに利用できる「500万円×法定相続人の数」の非課税枠は利用できません。

結果として、相続放棄をした人が生命保険金や死亡退職金を受け取ると、相続税の負担が重くなる恐れがあるのでご注意ください。

相続放棄をしても生命保険金は受取り可!例外と受け取りにかかる税金

4章 【事例別】財産放棄と相続放棄どちらをするべき?

「相続しない」と考えている方は、財産放棄と相続放棄どちらにするべきか悩むこともあるでしょう。
実は相続の方法には、①財産放棄②相続放棄の他に限定承認という方法があります。

限定承認とは、故人のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する手続きです。

限定承認とは

限定承認も相続放棄と同様に、法律上の手続きであり、家庭裁判所での申立てが必要です。
本章では、ケース別に①財産放棄と②相続放棄、③限定承認のどの方法が適しているかを紹介します。

限定承認はこれを読めば分かる!選択すべき3つのパターンとメリット

4-1 【相続放棄】プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多いケース

相続財産のうち、プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は相続放棄を検討しましょう。

財産放棄で「借金は相続しないけどプラスの財産を相続する」ことは、不可能ではありません。
しかし、それを他の相続人が認めることは考えにくい上、もし他の相続人の同意を得たとしても、後々債権回収をされた場合にそれを拒否することは法律上不可能です。

したがって、余計なトラブルを回避する、故人の借金を背負わないようにするためにも、財産放棄ではなく相続放棄することをおすすめします。

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4-2 【限定承認・相続放棄】財産がプラスかマイナスか分からないケース

相続財産にマイナスの財産とプラスの財産が混在しており、トータルの財産がプラスかマイナスか分からない場合は「限定承認」を検討しましょう。

「限定承認」とは、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて(弁済して)、残った財産を相続する方法です。
限定承認をすれば、プラスの部分を相続できますし、万が一、マイナスの遺産の方が多くても相続人の資産から借金を弁済する必要はありません。

ただし、限定承認は相続人全員で手続きしなければなりません。
残念ながら他の相続人の同意が得られない場合は、相続放棄を検討しましょう。

4-3 【財産放棄】他の相続人に財産を譲りたいケース

  • 自分は生前贈与を受けているから遺産は他の相続人に譲りたい
  • 家業を継ぐ相続人がすべて相続する

上記のケースのように、自分の相続分を他の相続人に譲る場合は、財産放棄で問題ないことがほとんどです。

相続放棄でも同様の効果を得られるものの、家庭裁判所の申立てが必要であり手続きに手間がかかります。
したがって、トラブルが起きるリスクが少ない、故人が借金を遺していないのであれば財産放棄で事足ります。

なお、財産放棄だけでなく、自分の相続分を他の相続人・第三者に譲る「相続分の譲渡」も可能です。
「故人と長年同居していた長男に相続分を譲りたい」などといった事情があれば、財産放棄ではなく相続分の譲渡を検討しましょう。

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4-4 【財産放棄】相続財産の一部だけを指定して相続したいケース

「現金だけ」「不動産だけ」など、相続財産の一部だけを相続したい場合は財産放棄をしましょう。
「放棄」と言ってもすべてではなく、一部だけを放棄すれば問題ありません。

ただし、財産放棄は他の相続人が同意しなければなりません。
例えば、田舎にあり価値がなく管理コストのみがかかる不動産が遺産に含まれ「不動産は財産放棄するから後はよろしく」と主張しても、残りの相続人が反発する可能性が高いのでご注意ください。

4-5 【相続放棄】遺産のほとんどが持っているだけで損をしてしまうケース

遺産に、価値がほとんどなく売却も難しいような土地や家などしかない場合、相続しても損をしてしまうことがあります。

価値のない遺産しかない、もしくは管理コストのみがかかる遺産を相続しそうなときは、相続放棄を検討しましょう。
更地の相続の場合など遺産内容によっては相続放棄をすれば、処分の手間などなくなることもあります。

相続したいらない土地は「相続土地国庫帰属制度」を活用しよう

「田舎にある不動産はいらないが、預貯金・株式は相続したい」などの事情がある場合、相続土地国庫帰属制度を活用しましょう。
相続土地国庫帰属制度とは、相続によって取得したいらない土地を国に返還できる制度です。
ただし、制度を利用するには要件を満たす必要がありますし、宅地ひとつにつき20万円の負担金を納めなければなりません。
制度を利用するか悩む場合は、一度、相続に詳しい司法書士に相談してみることをおすすめします。

いらない土地を国に返す相続土地国庫帰属制度が新設!注意点はある?

まとめ

「財産放棄」と「相続放棄」は名称は似ていますが、意味合いはまったく異なります。
「他の相続人に財産を譲りたい」といったケースでは財産放棄、「遺産に借金がある」ようなケースでは相続放棄を検討することをおすすめします。

財産放棄の場合は、相続人同士での話し合いで済むため、難しい手続きは必要ありません。
一方、相続放棄は家庭裁判所への申立てが必要であり、必要書類の収集など手間がかかります。

また、相続放棄の手続きには「相続発生を知ってから3ヶ月以内」という期限がありますし、一度認められると取り消せないのでご注意ください。

相続放棄するか財産放棄するか悩んだ場合は、一度、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
専門家であれば、相続放棄すべきかの判断もできますし、その後の手続きも代行可能です。

グリーン司法書士法人では、相続放棄についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

相続放棄は誰までがすればいい?

相続放棄が必要な範囲は、故人の兄弟姉妹や甥・姪までです。
故人の兄弟姉妹や甥、姪は相続順位3位のため、他の相続人が相続放棄すると、相続権が移ってしまいます。
兄弟姉妹の相続放棄について詳しくはコチラ

財産放棄すると家はどうなる?

財産放棄では、希望の財産のみの相続権を放棄できます。
したがって、財産放棄の状況によっては家を受け継ぐことも家のみを放棄することも可能です。
故人と同居しており、家だけ受け継ぎたいなどの事情があれば家以外の遺産を財産放棄しても良いでしょう。

財産放棄すると借金はどうなる?

財産放棄しても、故人の借金の返済義務はなくなりません。
財産放棄は法律上の手続きではないので、債権者に対して「財産放棄したから故人の借金は返済しない」といった主張は認められないからです。

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