
相続した財産よりも借金の方が多い場合には、相続放棄をして借金を相続しないことも検討する必要があります。
しかし、相続放棄を行う際には亡くなった方の財産を処分してはいけない決まりがあります。
このことを知らずに、亡くなった方の家の片付けや遺品の整理をしてしまうと、相続放棄ができなくなってしまう恐れもあるので注意が必要です。
しかし、相続放棄をするからといって家の片付けをしないでいると、近隣住民や大家さんに迷惑をかけてしまう恐れもあります。
相続放棄を検討中の人が亡くなった方の家の片付けをするときには、自己判断で行わず司法書士や弁護士といった専門家に相談してから行うのが良いでしょう。
本記事では、相続放棄時でも亡くなった方の家の片付けをする方法や注意点を詳しく解説していきます。
目次
1章 相続放棄をしても管理義務は残る
相続放棄をすると、亡くなった方が所有していた財産を勝手に処分することができなくなります。
相続人が財産を処分してしまうと、相続する意思があると判断され、相続放棄が認められなくなる恐れがあるからです。
しかし、相続放棄をする場合でも、相続人には相続財産の管理義務が残り、近隣住民や大家さんとトラブルに発展する恐れもあります。詳しく確認していきましょう。
1-1 近隣住民との損害賠償問題に発展する恐れがある
亡くなった方が放置していたゴミを相続人がそのままにする、相続人が管理を怠った結果、家屋が倒壊するなどで近隣住民に迷惑をかけると、損害賠償問題に発展する恐れもあるのでご注意ください。
1-2 大家さんから賃貸契約の解除や退去を求められる可能性が高い
亡くなった方が賃貸住宅に住んでいた場合には、大家さんから賃貸契約の解除や退去を求められます。
しかし、相続放棄をする相続人は契約者の立場を引き継げないので、亡くなった方のかわりに賃貸契約の解除を行うことはできません。
また、大家さんに命じられ部屋の片付けや遺品整理を行う際にも注意が必要です。
具体的な注意点について、次の章で解説していきます。
2章 相続放棄時の家の片付けには注意が必要
本記事ですでに解説したように、相続放棄をする場合、亡くなった方の家の片付けを行うときには注意が必要です。
亡くなった方の家の片付けや遺品整理をしてしまうと、財産を処分したと判断され、相続放棄できなくなる恐れがあるからです。
2-1 相続放棄時には亡くなった方の財産を勝手に処分できない
相続放棄をする際には、亡くなった方が所有していた財産を勝手に処分することはできません。
相続人が財産を処分してしまうと、相続する意思があるとみなされてしまい、相続放棄を家庭裁判所に認めてもらえない可能性があるからです。
具体的には、以下の行動は財産の処分に当たる恐れがあるので、ご注意ください。
・亡くなった方の持ち物を捨てる
・亡くなった方の持ち家を解体する
・亡くなった方の遺品をもらう
・亡くなった方の持ち家をリフォームする
なお、金銭的な価値がない遺品に関しては、処分しても相続放棄が認められますが、自己判断で行うのはやめた方が良いでしょう。
2-2 家賃や公共料金の支払いも自己判断でしてはいけない
亡くなった方が一人暮らしをしていた場合や賃貸住宅に住んでいた場合、相続発生後も家賃や公共料金の支払いが発生するかもしれません。
しかし、亡くなった方の家賃や公共料金の支払いも、相続人が勝手に行うのはやめておきましょう。
亡くなった方名義の預貯金等から家賃や公共料金を支払ってしまうと、相続財産の処分と判断される恐れがあるからです。
もし、家賃や公共料金等の支払いをしたいと思った場合には、自己判断せずに相続放棄に詳しい司法書士や弁護士に相談してから支払うことをおすすめします。
このように、相続放棄時に亡くなった方の家の片付けをするのは、注意が必要です。
相続放棄時の家の片付けは、杓子定規で判断できない部分もあるため、司法書士や弁護士に相談しながら、相続放棄の申立てもサポートしてもらうことを検討しましょう。
3章 相続放棄をしても家の片付けをする方法
相続放棄をするとしても、亡くなった方の財産を管理する義務は残っています。
ほかにも常識的に考えて、亡くなった方が借りていた賃貸住宅の片付けをしなければならないケースもあるでしょう。
家の片付けをする場合には、相続放棄が認められなくなる財産の処分に当たらないように注意しながら進める必要があります。
具体的な方法について、解説していきます。
3-1 相続財産管理人を選任してもらう
亡くなった方に借金が多く、全ての法定相続人が相続放棄をする場合には、相続財産管理人を家庭裁判所に選任してもらうのが良いでしょう。
相続財産管理人とは、相続人が誰もいない場合や相続放棄によって相続人がいなくなった場合に亡くなった方の相続財産を管理する人です。
相続財産管理人を選任しない限り、相続放棄をした相続人は亡くなった方の財産に対する管理義務は残るものの財産の処分はできない状態がずっと続いてしまいます。
相続財産管理人の申立て手続きの概要と必要書類は、下記の通りです。
申立てする人 |
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申立て先 | 亡くなった方の所在地を管轄する家庭裁判所 |
申立てにかかる費用 |
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必要書類 |
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3-2 トランクルームを活用する
亡くなった方が賃貸住宅に住んでいて大家さんに片付けるように頼まれた場合には、一時的に亡くなった方の荷物や財産をトランクルームに置いておくのも良いでしょう。
明らかにゴミであったり、金銭的な価値がない遺品に関しては処分しても良いですが自己判断で片付けをするのはおすすめできません。
4章 相続放棄時の家の片付けに関するよくある質問
最後に相続放棄をする場合の家の片付けに関して、よくある質問を回答と共に紹介していきます。
4-1 相続放棄をすると形見分けも許されない?
相続放棄が認められなくなる「財産の処分」に当たるかどうかは、処分した遺品に金銭的な価値があるかどうかによって判断されます。
そのため、金銭的な価値がない遺品に関しては、相続放棄をする相続人が形見分けとして受け取っても問題ありません。
具体的には、以下の遺品は形見分けで受け取っても、問題にならない可能性が高いです。
- 家族や親族で撮った写真
- 手紙
- 位牌
- 着古して金銭的な価値がない服や靴
逆にいくら思い入れがあったとしても、金銭的な価値がある自動車や楽器、貴金属などを形見分けでもらってしまうと、相続放棄が認められない恐れがあります。
4-2 家の片付けで判断に迷ったらどうすれば良い?
本記事で解説したように、相続放棄を検討している人が亡くなった方の家の片付けをする際には注意が必要です。
自己判断で家の片付けをしてしまうと、相続放棄ができなくなってしまう恐れもあります。
家の片付けをどこまで行っていいのか、どんな方法で行えば良いのか迷った場合には、相続放棄について詳しい司法書士や弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
専門家であれば、どこまで家の片付けを行って良いか判断してくれますし、トラブルにならないための証拠の残し方のアドバイス、相続放棄を行う際の申立ても代行してくれます。
まとめ
相続放棄をする場合、亡くなった方の家の片付けをするときには、注意が必要です。
亡くなった方が所有していた財産を相続人が勝手に処分してしまうと、相続する意思があると判断され、相続放棄が認められなくなる可能性があるからです。
ただし、相続放棄をする場合でも亡くなった方の相続財産を管理する義務は残っています。
そのため、亡くなった方の家を片付けず放置していると近隣住民とのトラブルに発展する恐れもあるので、ご注意ください。
相続放棄の申立てや相続放棄時の家の片付けに関しては、個人で判断することが難しく、法律に関する専門的な知識が必要です。
必要に応じて、司法書士や弁護士といった専門家に相談することもご検討ください。
グリーン司法書士法人では、相続放棄に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
相続放棄する場合の家の片付けはどうする?
相続放棄をする場合、家の片付けをする際には自己判断は避けましょう。
・勝手に故人の遺品を処分する
・家賃や公共料金の支払いをする
上記を行うと、相続放棄が認められなくなる恐れがあります。
▶相続放棄時の家の片付けについて詳しくはコチラ相続放棄したら何もしなくていい?
相続放棄をしても故人が遺した財産の管理義務は残ります。
放置していると近隣住宅とのトラブルや損害賠償問題に発展する恐れもありますし、賃貸住宅の場合は大家さんから退去を求められる場合が多いです。
▶相続放棄後の管理義務について詳しくはコチラ