配偶者が相続放棄すると誰が相続する?相続放棄後も受け取れる財産

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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 6
 この記事を読んでわかること

  • 配偶者も相続放棄できるかがわかる
  • 相続放棄した配偶者が受け取れる財産がわかる
  • 配偶者が相続放棄するときの注意点がわかる

配偶者でも相続放棄は可能であり、相続放棄すれば亡くなった人のプラスの財産もマイナスの財産も一切受け継がずにすみます。
亡くなった人が多額の借金を遺していた場合は、配偶者であっても相続放棄をしても良いでしょう。

配偶者が相続放棄をした場合、生活費や老後資金に不安を感じるかもしれませんが、遺族年金や未支給年金は相続放棄をしても受け取れます。

本記事では、配偶者も相続放棄できるのか、相続放棄した場合はどうなるのかを解説していきます。
相続放棄については、下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。

相続放棄とは?検討すべきケース3つや手続きの流れ・注意点まとめ

1章 配偶者も相続放棄できる

結論から言えば、配偶者でも相続放棄を行えます。
相続放棄とはプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しなくなる手続きであり、相続放棄した人は最初から相続人ではなかった扱いになります。

相続放棄をする場合、自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で申立て手続きをしなければなりません。
妻や夫が亡くなった後は法要や様々な手続きで忙しくなるので、自分で相続放棄するのが難しい場合は、司法書士や弁護士に相談して確実に手続きをしてもらうのが安心です。

相続放棄の手続きに必要な書類と準備方法をチェックリストで解説
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2章 配偶者が相続放棄しても相続順位は変わらない

相続放棄をした人は、最初から相続人ではなかった扱いになり、次の順位の相続人に相続権が移ります。
ただし、配偶者は「常に相続人になる」と決められているため、相続放棄をしても他の相続人に相続権が移ることはありません。

相続人になる人および優先順位は、下記のように法律で決められています。

相続人になる人および優先順位

常に相続人になる配偶者
第一順位子供や孫
第二順位両親や祖父母
第三順位兄弟姉妹や甥・姪

例えば、相続順位一位である子供が全員相続放棄すれば、次の順位である親や祖父母に相続権が移ります。
一方で、配偶者が相続放棄しても相続順位に影響はなく、家族や親族の中で最も優先順位の高い人物が相続人となります。

相続権とは?|法定相続人の範囲と相続割合をわかりやすく解説

3章 相続放棄をした配偶者でも受け取れる財産

配偶者が相続放棄した場合、今後の生活費や老後資金に不安を感じるのではないでしょうか。
相続放棄すると遺産を受け継ぐことはできなくなりますが、下記については問題なく受け取れるのでご安心ください。

  1. 未支給年金
  2. 遺族年金
  3. 生命保険金
  4. 死亡退職金
  5. 配偶者短期居住権

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1 未支給年金

未支給年金は遺族に対して支給されるものと決まっているため、遺産に該当せず相続放棄をしても問題なく受け取れます。
未支給年金とは、名前の通り故人が受け取らずに亡くなった年金です。

年金は後払いかつ2ヶ月に一度支給されるため、亡くなるタイミングによっては未支給年金が発生します。
例えば、1月分および2月分の年金は3月に支給されるため、1月に故人が死亡すると1月分は未支給年金として遺族が受け取れます。

未支給年金を受け取れる人物は、下記の通りです。

  1. 配偶者(夫もしくは妻)
  2. 子供
  3. 父母
  4. 祖父母
  5. 兄弟姉妹
  6. 甥姪

相続放棄をしても未支給年金を受け取る権利は消滅しないので、配偶者が相続放棄した場合でも問題なく受給できます。

未支給年金は相続財産に含まれない!相続税はかかるか解説

3-2 遺族年金

遺族年金に関しても、故人の遺産ではなく亡くなった人に支給されるお金なので、配偶者が相続した場合も受け取れます。
そのため、遺された配偶者が遺族年金の受給要件を満たしていれば、相続放棄に関係なく受け取り可能です。

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3-3 生命保険金

生命保険金についても、遺産ではなく受取人固有の財産として扱われます。
そのため、亡くなった人が生命保険金の受取人を配偶者に設定していれば、配偶者が相続放棄しても受け取り可能です。

ただし、相続放棄する配偶者が亡くなった妻や夫の生命保険金を受け取る場合は、下記の点に注意しなければなりません。

  • 生命保険金は「みなし相続財産」として相続税がかかる
  • 相続放棄した人は相続税計算時に「生命保険金の非課税枠」を適用できない

上記の注意点に関しては、本記事の4章で詳しく解説します。

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3-4 死亡退職金

死亡退職金についても、受取人固有の財産として扱われるため、相続放棄した配偶者でも受け取れます。
死亡退職金を受け取る人物は、亡くなった人の勤務先の退職金規定にて記載されているので確認しておきましょう。

なお、亡くなった人の勤務先によっては、受取人や順位が指定されていなく「相続人」と指定されている場合があります。
この場合は、死亡退職金は遺産として扱われ相続人が受け継ぎます。
したがって、配偶者が相続放棄した場合、死亡退職金を受け取ることはできません。

このように、生命保険金や死亡退職金については、受取人が誰かによって、相続放棄した配偶者が受け取れるか変わってきます。
自己判断で生命保険金や死亡退職金を受け取り、相続放棄が認められなくならないようにご注意ください。

相続放棄に詳しい司法書士や弁護士に相談すれば、保険金の受け取りや亡くなった人の遺品整理、自宅の片付け方法をアドバイスしつつ、相続放棄の手続きを行えます。

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3-5 配偶者短期居住権

配偶者短期居住権は、妻もしくは夫を亡くした人に認められる権利であり、相続放棄をしてもなくなることはありません。
配偶者短期居住権とは、亡くなった人の家に住んでいた配偶者が一定期間無条件かつ無償で住み続けられる権利です。

配偶者短期居住権は、下記の要件を満たせば自動的に発生します。

  • 法律上の配偶者であること
  • 亡くなった人が所有していた建物に住んでいること
  • 相続発生時に無償で済んでいたこと

4章 配偶者が相続放棄するときの注意点

配偶者が相続放棄する場合には、相続放棄の申立て期限などに注意しなければなりません。
具体的には、下記の点に注意が必要です。

  1. 相続放棄には期限がある
  2. 相続放棄すると生命保険金・死亡退職金の非課税枠は使用できない
  3. 相続放棄しても日常家事債務は支払う必要がある
  4. 配偶者が故人の連帯保証人だと借金の返済義務を受け継ぐ
  5. 公営住宅に住む権利は相続財産に含まれない
  6. 相続放棄しても配偶者の親族との関係は続く

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 相続放棄には期限がある

相続放棄の期限のスタート地点

相続放棄をする場合、自分が相続人であることを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所にて申立て手続きをしなければなりません。
申立て期限を過ぎてしまうと、相続放棄が認められなくなる可能性が高いのでご注意ください。

なお、配偶者の場合「自分が相続人であることを知ったとき」は「故人が死亡したとき(死亡したことを知ったとき)」であることが多いです。
そのため、妻もしくは夫が亡くなってから3ヶ月以内に必要書類を収集し、相続放棄の申立てをしなければなりません。

相続発生後は法要や公的手続きなども多く、スケジュールが非常にタイトです。
相続放棄すべきか迷っている場合もしくは確実に相続放棄したい場合は、相続人詳しい司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。

【相続放棄の期限は3ヶ月】期限の延長方法と期限過ぎた場合の対処法

4-2 相続放棄すると生命保険金・死亡退職金の非課税枠は使用できない

相続放棄すると、生命保険金および死亡退職金に用意されている相続税の非課税枠は適用できないのでご注意ください。
生命保険金や死亡退職金はみなし相続財産に分類され、相続税がかかります。

ただし、生命保険金や死亡退職金には「500万円×相続人の数」の非課税枠が用意されており、相続人が生命保険金や死亡退職金を受け取った場合、相続税を節税できます。

一方で、相続放棄をした配偶者は相続人ではなくなるため、生命保険金および死亡退職金の非課税枠を使用できません。
相続放棄をしても生命保険金や死亡退職金を受け取れますが、相続税はかかるのでご注意ください。

死亡保険金に相続税はかかる?死亡保険を活用して節税対策をしよう!

4-3 相続放棄しても日常家事債務は支払う必要がある

配偶者の場合、相続放棄しても日常家事債務の支払い義務は残ってしまうのでご注意ください。
日常家事債務とは、夫婦が共同生活を送るにあたり必要となる債務です。

例えば、下記の費用や債務が日常家事債務にあたります。

  • ガスや電気、水道代
  • 亡くなった妻や夫の医療費
  • その他、衣食住にかかった費用

日常家事債務は夫婦の連帯債務であると判断されるため、相続放棄をしても返済義務が生じます。
そのため、相続放棄をしても電気やガスなどの光熱費や医療費に関しては支払う必要があるのでご注意ください。

ただし、日常家事債務の範囲は夫婦の関係性や収入、資産状況によっても範囲が異なります。
例えば衣類にかかる費用といえど、宝石などの貴金属や故人が購入した高級スーツの購入費用などは日常家事債務にあたらず故人だけの債務であると判断される可能性が高いです。

相続放棄に精通した司法書士や弁護士であれば、日常家事債務の範囲や相続放棄すべきかの判断もできるので、不安な場合や判断がつかない場合は相談してみると良いでしょう。

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4-4 配偶者が故人の連帯保証人だと借金の返済義務を受け継ぐ

配偶者が亡くなった妻や夫の連帯保証人だった場合、借金の返済義務がなくならないのでご注意ください。
端的に言えば、亡くなった妻や夫の連帯保証人になっている場合、相続放棄をしてもメリットが少ないともいえるでしょう。

亡くなった妻や夫の連帯保証人になっていた場合は、状況によっては相続放棄ではなく債務整理を検討する必要があります。
どのような手続きをするのが良いか確認するためにも、相続放棄と債務整理の両方を扱っている司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。

グリーン司法書士法人では、相続放棄と債務整理の両方を取り扱っており、ご相談者様にとって最善の提案を行えますので、お気軽にお問い合わせください。

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4-5 公営住宅に住む権利は相続財産に含まれない

公営住宅に住む権利は遺産に含まれないため、相続放棄が影響をおよぼすことはありません。
ただし、相続放棄するにせよしないにせよ、遺された配偶者が公営住宅に住み続けるには、事業主体の承認を受ける必要があります。

4-6 相続放棄しても配偶者の親族との関係は続く

相続放棄はあくまでも自分が相続人でなくなるための手続きであり、相続放棄をしても配偶者の親族との関係は続きます。
妻や夫が死亡した後は、配偶者の親族と関わりたくない場合は死後離婚の手続きも検討しましょう。

死後離婚とは、配偶者が亡くなった後に、配偶者の親族との姻族関係を終了させる手続きです。
死後離婚は正式名称を「姻族関係終了届」と言い、役所に必要書類を提出することで手続きが完了します。

死後離婚の手続き方法および必要書類は、下記の通りです。

手続きする人遺された配偶者
手続き先届出人の本籍地もしくは住所地のある市区町村役場
必要なもの
  • 姻族関係終了届
  • 亡くなった配偶者の死亡事項が記載されている戸籍(除籍)謄本
  • 届出人の現在の戸籍謄本
  • 届出人の印鑑
  • 本人確認書類
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まとめ

配偶者には相続順位が設定されていないため、配偶者が相続放棄しても相続順位に影響を与えることはありまさん。
相続放棄するとプラスの遺産もマイナスの遺産も一切受け継ぐことができなくなりますが、未支給年金や遺族年金は遺族に認められた権利のため、相続放棄をしても受け取り可能です。

相続放棄には「自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内に申立てする」と期限が決まっています。
配偶者の場合、妻や夫が死亡してから3ヶ月以内に申立しなければならないケースがほとんどのため、ご注意ください。

期限までに申立てできるか不安な場合や確実に相続放棄したい場合は、相続放棄に詳しい司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。

グリーン司法書士法人では、相続放棄に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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