家族や親族が亡くなった時期によっては、受け取る権利は発生しているものの故人が受け取れていない未支給年金が発生します。
未支給年金に関しては、故人の遺産ではなく遺された家族が受け取るものとして扱われるため遺産分割の対象にはなりません。
そのため、未支給年金は相続放棄をしても受け取れますし、受け取る人物や優先順位も決まっています。
なお、相続税の取扱いに関しては発生している未支給年金の種類によって異なるのでご注意ください。
本記事では、相続における未支給年金の取り扱いや未支給年金を受け取れる人物を詳しく解説します。
なお、相続発生時に行う年金手続きは複数あり、それぞれ下記で解説しているのでご参考にしてください。
目次
1章 未支給年金は相続財産にあたらない
亡くなった人が生前に年金を受け取れなかった場合や権利は発生しているが請求せずに死亡した場合に発生する未支給年金は、相続財産にはあたらないとされています。
未支給年金は亡くなった人と同一生計にあった人物の固有の財産として扱われるからです。
未支給年金は相続財産には該当しないため、遺産分割の対象になりませんし、相続放棄をしても受け取り可能です。
また、未支給年金を受け取れる人物や優先順位は細かく決められています。
次の章で、詳しく確認していきましょう。
2章 未支給年金を受け取れる人・受取順位
未支給年金を受け取れるのは、故人と同一生計にあった人物です。
また下記のように、優先順位に関しても決まっており、優先順位が上の人物が1人でもいる場合は、下記の人物は受け取れません。
- 配偶者(夫もしくは妻)
- 子供
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 甥姪
3章 未支給年金の種類によっては相続税がかかる
本記事で解説したように、未支給年金は受取人固有の財産であり遺産分割の対象にはなりません。
ただし、未支給年金の種類によっては相続税の課税対象となるのでご注意ください。
相続税における未支給年金の取り扱いは、下記の通りです。
- 公的年金の未支給分には相続税がかからない
- 企業年金の未支給分は相続税がかかる
- 個人年金の未支給分には相続税がかかる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 公的年金の未支給分には相続税がかからない
国民年金や厚生年金などの公的年金の未支給分に関しては、相続税がかかりません。
本記事で解説してきたように、公的年金の未支給分は遺族が自己の固有財産として請求している扱いになるからです。
そのため公的年金の未支給分に相続税はかかりませんが、一方で受け取った遺族の一時所得に該当し受取人が確定申告をしなければならない可能性があります。
3-2 企業年金の未支給分は相続税がかかる
企業年金の未支給分に関しては、故人が在職中に死亡したか企業年金を受給している間に死亡したかによって扱いが下記のように変わります。
在職中に死亡した場合 | 死亡退職金として扱われ、相続税の課税対象になる |
企業年金を受給中に死亡した場合 | 定期金に関する権利として、相続税の課税多少になる |
故人が在職中に亡くなり未支給分の企業年金が遺族に支払われた場合、死亡退職金として扱われます。
死亡退職金はみなし相続財産として相続税の課税対象になりますが「法定相続人×500万円」の基礎控除が用意されています。
また、企業年金を受給中に故人が死亡した場合は、遺族が受け取った未支給分は定期金として扱われます。
定期金に関する権利は相続税の課税対象となり、死亡退職金と異なり非課税枠がない点に注意しなければなりません。
3-3 個人年金の未支給分には相続税がかかる
亡くなった人が個人年金の契約を結んでおり年金の支払い期間中に死亡した場合、残りの期間に関しては遺族が未支給年金を受け取ります。
個人年金の未支給分に関しては「年金受給権」を相続したとして扱われるため、相続税の課税対象となります。
年金受給権には死亡退職金や生命保険金と異なり、非課税枠はないのでご注意ください。
まとめ
未支給年金は相続財産には該当せず、受取人固有の財産として扱われます。
そのため、遺産分割の対象にはなりませんし、相続放棄をしても受け取り可能です。
ただし、国民年金や厚生年金などの公的年金以外の未支給分に関してはみなし相続財産として相続税の課税対象となるのでご注意ください。
このように、相続における未支給年金の取り扱いは複雑ですし、相続発生時には未支給年金の請求以外にもやるべきことがたくさんあります。
大切な家族が亡くなり心理的な負担も大きい中で相続手続きを行うのが難しい場合や遺産分割をスムーズに行い遺された家族の生活を安定させたい場合は、相続手続きを司法書士や行政書士に依頼することも検討しましょう。
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