40~50代になってくると、親が亡くなり相続が発生する人も増えてきます。
親の財産を受け継いだときには相続税がかかる場合があり、兄弟姉妹などがいる場合は親の遺産をどのように分けるか決めなければならない場合もあります。
親が亡くなったときの相続手続きをスムーズに行う、相続トラブルを回避するには、相続に関する基本的なルールを知っておくなども大切です。
まだ親が元気なら、父親や母親と相続について話し合い、相続対策を行うのも有効です。
本記事では、相続税の計算方法や遺産分割のルールを解説します。
目次
1章 相続税の基礎知識:あなたの不安を解消します
相続が発生し財産を受け継ぐと、相続税がかかる場合があります。
なお、相続税には基礎控除が用意されており、遺産が基礎控除内に収まるのであれば相続税の計算や申告は必要ありません。
令和3年度に相続が発生し、相続税の申告が必要だった人の割合は約9.3%です。
また、相続税がかかる基準は遺産額「3,600万円以上」の場合になります。
相続税の計算方法や申告方法を詳しく見ていきましょう。
1-1 相続税って何?基本から解説
相続税とは、亡くなった親などから財産を受け継いだときにかかる税金です。
親が築いた財産を子供が受け継ぐだけなのに、相続税がかかるのは理不尽だと感じる人も多いのではないでしょうか。
相続税の課税目的は主に下記の3つです。
- 富の再分配
- 所得税の補完機能
- 不労所得への不公平感を失くす
相続税は財産を受け継いだ人全員にかかるのではなく、一定額以上の財産を相続したときにかかります。
相続税の計算方法について詳しく見ていきましょう。
1-2 相続税の計算方法とは?
相続税は預貯金や不動産など遺産ごとにかかるのではなく、故人が遺した相続財産の合計額に対してかかります。
そのため、相続税を計算する際には事前に相続財産調査を行い、故人が所有していた財産を漏れなく把握しなければなりません。
相続税を計算する流れは、下記の通りです。
- 財産を評価する
- 遺産の総額から基礎控除額を引く
- 基礎控除額を引いたあとの遺産を法定相続分で分ける
- 法定相続分で分けた遺産から相続税の総額を計算
- 相続税の総額を実際の相続割合で分けなおす
- 控除・加算で最終的な納付税額を求める
相続税を計算する方法や注意点は、下記の記事で詳しく解説しているのでご参考にしてください。
1-3 相続税の申告方法
相続税の申告は「相続が発生してから10ヶ月以内」に故人の住所地を管轄する住所地にて行います。
また、相続税の申告期限=納税期限であることにも注意しておきましょう。
相続税は現金一括納付が原則であるため、財産を受け継いだ人は申告手続きだけでなく納税資金の用意もしなければなりません。
相続税の現金一括納付が難しい場合は、延納や物納も認められています。
延納や物納を行う際には、相続税の申告期限までに申請が必要なのでご注意ください。
相続税の申告期限は「相続が発生してから10ヶ月以内」と決められており、原則として申告期限の延長は認められません。
「遺産分割協議が完了していない」「相続税の納税資金を用意できない」などの理由で延長はできないので、ご注意ください。
期限までに相続税の申告や納税をするには、相続が発生したら相続人調査や相続財産調査、遺産分割調査を効率よく行う必要があります。
自分で手続きするのが難しい場合は、相続に詳しい司法書士や行政書士に相続手続きを依頼することも検討しましょう。
2章 正確な相続税情報とアップデート
本記事の1章で相続税の基本的な計算方法は解説しましたが、相続税の細かな取り扱いについては毎年の税制改正で変更されています。
そのため、相続が発生したときには最新の税制改正の内容をもとに相続税の計算をしなければなりません。
例えば10年前に父親が亡くなり、母親が今年亡くなった場合は相続税の基礎控除の計算方法が変わっているため、父親が亡くなったときと同じ方法で相続税の計算をすると、申告ミスをしてしまう恐れがあります。
最新の税制改正の内容をもとに、ミスなく相続税申告をしたいのであれば、相続に強い税理士に相談するのが良いでしょう。
2023年の税制改正の内容および影響について詳しく解説します。
2-1 2023年の税制改正内容とその影響
2023年の税制改正では、生前贈与加算の期間が延長される、相続時精算課税制度に基礎控除が追加されるなどの変更がありました。
2023年の税制改正内容は、主に下記の通りです。
- 生前贈与加算の延長期間は3年から7年に延長される
- 相続時精算課税制度に基礎控除110万円が追加される
- 結婚・子育て資金の一括贈与の期間が2年間延長される
- 相続空き家の3,000万円の特例の期間が4年間延長される
生前贈与加算の対象期間が延長されることにより、亡くなる前に行われた暦年贈与の節税効果がなくなってしまう恐れがあります。
そのため、贈与者が高齢な場合は暦年贈与ではなく、贈与税の控除や特例を活用して生前贈与を行うことも検討しましょう。
2-2 相続税の正しい知識と誤解を避けるために
相続や税金に関する知識が少ない人が毎年の税制改正の内容および影響を理解して、相続税対策を進めることは非常に大変であり、現実的ではありません。
直近の税制改正を踏まえ、自分に合う相続税対策を行いたいのであれば、相続に精通した税理士に相談するのが良いでしょう。
3章 遺産分割の進め方:円滑な手続きのために
家族や親族が亡くなった際には、誰がどの財産をどれくらいの割合で相続するかを決定しなければなりません。
故人が遺言書を用意していなかった場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、それぞれの相続人が受け継ぐ分を決定します。
遺産分割協議の流れや遺産分割方法を解説します。
3-1 遺産分割の基本ルールを知る
故人が遺言書を用意していなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産をどれくらいの割合で受け継ぐか決定しなければなりません。
なお、法律では故人の財産を受け継ぐ人物および相続割合が決められており、それぞれを「法定相続人」および「法定相続財産」と呼びます。
法定相続人の順位および範囲は、下記の通りです。
常に相続人になる | 配偶者 |
第1順位 | 子供や孫 |
第2順位 | 親や祖父母 |
第3順位 | 兄弟姉妹や甥・姪 |
故人の遺産が預貯金や現金など分割しやすい財産のみであれば、遺産分割をしやすいですが、遺産に不動産屋株式などがある場合は、どのような方法で分割するかも決定しなければなりません。
遺産分割方法には、主に下記の4つの方法があります。
現物分割 | 不動産や株式、車などの財産をそのまま相続する遺産分割方法 |
換価分割 | 遺産をすべて現金に換え(換価)て、相続分に応じて分配する分割方法 |
代償分割 | 他の相続人よりも多い遺産を相続した人が、多い分を他の相続人に現金などで補填(代償)する分割方法 |
共有分割 | 不動産のように分割が難しい遺産を相続人同士で共有して取得する分割方法 |
なお上記の方法のうち、共有分割は将来的に権利関係が複雑になるなどのリスクがあるので、あまりおすすめできません。
3-2 家族間での話し合いをスムーズにするコツ
遺産分割協議をスムーズに進め、相続トラブルを回避するには家族同士で話し合いをすることが大切です。
ただし相続が発生してから話し合いをすると、相続人がそれぞれの希望をぶつけ合い収拾がつかない恐れもあります。
そのため、可能であれば相続が発生する前、両親が元気なうちに相続や遺産分割について話し合いをするのがおすすめです。
3-3 遺産分割協議書の正しい作成方法
相続人全員で遺産分割協議を行い、内容がまとまったら遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は相続税申告や不動産の相続手続きなどでも使用するので、作成後は大切に保管しましょう。
遺産分割協議書のサンプルは、下記の通りです。
遺産分割協議書には決まった形式はなく、相続財産や遺産分割方法によって書き方が変わってきます。
下記の記事でダウンロード可能な遺産分割協議書の雛形を紹介しているのでご参考にしてください。
4章 家族間トラブル回避:遺産相続の最善策
仲が良い兄弟姉妹や家族であっても、いざ相続が発生すると遺産分割方法についてトラブルになるケースも珍しくありません。
なお、相続トラブルは富裕層しか起きないと思われがちですが、実際には実家以外の相続財産がないケースなどの方がトラブルが泥沼化しやすい傾向があります。
相続トラブルを回避するには、親が元気なうちから相続対策しておくのが確実です。
相続トラブルの事例や解決策を見ていきましょう。
4-1 相続でよくあるトラブルとその対処法
相続トラブルが起きやすい状況やトラブルの内容はある程度共通しています。
そのため相続トラブルを回避したいのであれば、まずは相続トラブルの事例を把握しておくのが良いでしょう。
相続トラブルの事例は、主に下記の通りです。
- 不動産をめぐるトラブルが起きる
- 兄弟間で遺産分割の割合に関して揉める
- 遺産に借金がある
- 遺言書の内容が偏っている
- 遺産の独占を主張する人がいる
- 寄与分に関して揉める
- 家族による財産の使い込みが疑われる
- 遺産分割協議に参加しない人がいる
- 被相続人に子供がいない
- 相続人の人数が多い
- 愛人の子を名乗る人が出てくる
相続トラブルを回避するには、親に相続対策をしてもらう、家族で相続について話し合う機会を作るなどの対策が必要です。
相続トラブルが起きやすいケースや対処法については、下記の記事で詳しく解説していますのでご参考にしてください。
4-2 専門家が教える家族間トラブルを避ける秘訣
相続トラブルを回避するには相続対策だけでなく、同時に相続人間でよく話し合いコミュニケーションを取ることも大切です。
親が亡くなり子供たちだけになってから話し合いをしても、それぞれが希望をぶつけ合い相続トラブルに発展する恐れがあります。
そのため相続トラブルを回避するためには、相続発生前であり親が元気なうちから相続について話し合いをするのが良いでしょう。
5章 遺産相続における不動産の扱い
故人が所有していた財産に土地や建物などの不動産が含まれる場合、相続トラブルが起きやすくなるので注意が必要です。
また、不動産は現金や預貯金と異なり分割しにくいので、相続人同士で遺産分割方法を決定しなければなりません。
相続財産に不動産が含まれるときの遺産分割時の注意点や評価方法について見ていきましょう。
5-1 不動産相続の特殊性とは?
土地や建物などの不動産は現金や預貯金と異なり、分割しにくい特徴があります。
また、田舎にある土地を相続したケースなど「誰も相続したがらない」「相続しても管理や処分に困る」といったケースも少なくありません。
相続財産に不動産しかないときには、下記のトラブルが起きやすいのでご注意ください。
- 代償分割できない
- 誰も土地を相続したがらない
- 遺産分割が難航し共有状態で相続してしまう
- 意見の相違で換価分割できない
万が一、不動産の相続でトラブルに発展しそうな場合は、早い段階で相続に詳しい司法書士や弁護士に相談するのも良いでしょう。
専門家であれば、トラブルに発展する前に対処できる可能性がありますし、公平な遺産分割方法を提案可能です。
5-2 不動産の評価方法と相続税
故人が所有していた不動産を相続したときには、相続税がかかる場合があります。
不動産の相続税を計算する際には、土地や建物の相続税評価額を計算しなければなりません。
土地および建物の相続税評価額は、下記の通りです。
不動産の種類 | 評価方法 |
土地 | 路線価方式 倍率方式 |
建物 | 固定資産税評価額 |
自分で相続した土地や建物の評価額を計算するのが難しい場合や故人が所有していた不動産に関する情報が不足している場合は、相続税の計算を税理士に相談するのが良いでしょう。
6章 遺言書作成のススメ:両親の意思を明確に
相続トラブルを回避する、不動産の遺産分割方法について相続人同士で決定しなくてすむようにするには、両親に遺言書を用意してもらうのが確実です。
遺言書があれば、故人の希望通りの遺産分割を行えます。
なお、相続対策に用いる遺言書には複数あるため、メリットやデメリットを把握した上で作成する遺言書を選びましょう。
遺言書の種類や特徴について詳しく解説します。
6-1 遺言書の種類とそれぞれの特徴
相続対策で使用される遺言書は3種類あり、それぞれ作成方法や作成時にかかる費用、保管方法などが異なります。
遺言書の種類は、下記の通りです。
種類 | 作成がおすすめな人 |
自筆証書遺言 | 遺言書の作成に費用をかけたくない人 |
公正証書遺言 | 信頼性が高い遺言書を作成したい人 |
秘密証書遺言 | 遺言の内容を誰にも知られたくない人 |
なお、秘密証書遺言は実務ではほとんど実務では使用されていません。
自筆証書遺言はすべて自筆で作成する遺言書であり、自分1人で作成できる点が魅力です。
一方、自分で気軽に作成できるため形式不備による無効リスクがあります。
作成後も法務局による保管制度を利用しない場合は、自宅などで保管する必要があり、紛失や改ざんリスクに注意しなければなりません。
公正証書遺言は公証人が作成する遺言書であり、形式不備による無効リスクがほとんどないのがメリットです。
また、原本は公証役場に保管してもらえるため、紛失や改ざんリスクもなくせます。
一方で、作成時には証人2人が必要であり、費用や手間がかかる点がデメリットといえるでしょう。
6-2 自筆証書遺言の書き方と注意点
自筆証書遺言は自著で作成するため自分1人で作成でき、他の遺言書より作成に手間と費用がかかりません。
一方で、自筆証書遺言を作成する際には、下記の要件をすべて満たさなければ無効になってしまいます。
- 遺言者本人が全て自筆で記入する
- 作成した正確な日付を自筆で書く
- 名前の後に印鑑を押す
- 訂正時には訂正印を押しどこを訂正したか明確にする
形式不備による無効リスクを少しでも減らしたいのであれば、公正証書遺言を作成するのが良いでしょう。
また、遺言書を作成する際には不測の事態に備え、予備的な内容を記載しておくことも大切です。
例えば、「不動産を長男に相続させる」と遺言書に記載していたものの自分より先に長男が亡くなってしまうと、不動産に関する遺言内容は無効になってしまいます。
自分が希望する内容の遺産分割を確実に実行したいのであれば、相続に詳しい司法書士や弁護士に予備的内容まで含めた遺言書の作成を依頼するのがおすすめです。
7章 相続手続きの流れと期限
父親や母親が亡くなったときには、相続手続きを行わなければなりません。
相続手続きには様々なものがあり、順番通りに行わないと遺産分割協議のやり直しや相続税の申告漏れなどが発生する恐れがあるのでご注意ください。
相続手続きの流れは、下記の通りです。
- 遺言書の有無の調査・検認手続き
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
- 相続放棄・限定承認を検討
- 所得税の準確定申告
- 遺産分割協議の開始
- 遺産分割協議書の作成
- 預貯金・有価証券等の名義変更
- 不動産の名義変更
- 各種財産の名義変更
- 相続税の申告
平日日中は仕事をしていて相続手続きを進めるのが難しい場合や手続きに非協力的な相続人がいるなど相続トラブルに発展しそうなケースでは、相続に精通した司法書士や弁護士に相続手続きを依頼するのもご検討ください。
8章 相続相談のポイント:専門家選びから準備まで
両親の相続対策や認知症対策、亡くなった後の相続手続きは自分で行うこともできますが、専門家への依頼も可能です。
専門家に相続対策を依頼すれば、希望の遺産分割や相続人、資産状況に合った提案をしてもらえます。
なお、相続手続きを依頼できる専門家は複数いて、それぞれが対応できる業務範囲は異なります。
相続対策や相続手続きを依頼できる専門家について詳しく見ていきましょう。
8-1 どんな相続専門家に相談すべきか?
相続について相談できる専門家は、司法書士や弁護士、行政書士、税理士などです。
各士業で対応できる業務範囲が異なるので、依頼内容を整理しどの士業に相談するかを選びましょう。
例えば、遺言書の作成や家族信託の手続きであれば司法書士や弁護士に依頼できます。
一方で、相続税のシミュレーションをしてほしい、相続税対策をしてほしい場合は、税理士に相談しましょう。
相続手続きを依頼できる専門家は、下記の記事で詳しく解説しているのでご参考にしてください。
8-2 相談前に準備しておくべきこと
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