相続財産が一定額以上の場合には、相続税の申告および納付が必要です。
相続税の申告、納付期限は相続開始から10ヶ月以内なので遅れないようにしましょう。
また、相続税の納付は現金一括が原則ですので、相続時の納税資金の用意もしなければなりません。
相続税の納付方法は、下記の6つです。
納付方法 | おすすめな人の特徴 |
金融機関で支払う |
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税務署の窓口で支払う |
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コンビニで支払う |
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クレジットカードで支払う |
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ダイレクト納付で支払う |
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インターネットバンキングで支払う | スマホ、PCから相続税を納付したい人 |
納付方法で相続税の税額が変わることはないので、自分に合った納付で相続税を払いましょう。
本記事では、相続税の納付方法や納付時の注意点を解説します。
なお、相続発生時には相続税申告・納付以外にも様々な手続きが必要です。
相続時に必要な手続きは、下記の記事で詳しく紹介しています。
1章 相続税の納付方法6つ
相続税は現金一括納付方法が原則であり、日本円で支払う必要があります。
不動産や株式など現金化しにくい財産を多く相続した場合や外貨預金を多く相続した場合には、納税資金を自分で用意しなければならない可能性もあるでしょう。
相続税の納付方法は、下記の6つです。
納付方法 | おすすめな人の特徴 |
金融機関で支払う |
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税務署の窓口で支払う |
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コンビニで支払う |
|
クレジットカードで支払う |
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ダイレクト納付で支払う |
|
インターネットバンキングで支払う | スマホ、PCから相続税を納付したい人 |
基本的にどの方法で納付しても問題はありませんが、納付できる上限額が決まっている方法もあるのでご注意ください。
それぞれの納付方法について詳しく解説していきます。
1-1 金融機関で支払う
相続税の納付方法で最も一般的な方法は、銀行や郵便局などの金融機関の窓口で払う方法です。
ほとんどの金融機関が相続税の納付に対応していますが、事前に確認しておくと安心です。
納付方法の概要は、下記の通りです。
手数料 | なし |
受付時間 | 平日9時から15時 |
領収証書 | あり |
必要なもの |
|
1-1-1 メリット
金融機関で支払う最大のメリットは、現金を持ち歩く必要がなく全国どこでも納付できる点です。
他にも下記のメリットがあります。
- 納税用の現金を持ち歩かなくて良い
- 全国どこでも納付できる
- 手数料が不要
- 納付書とキャッシュカードのみで納付できる
- 領収証書を発行してもらえる
1-1-2 デメリット
銀行や郵便局などの金融機関で相続税を納めるデメリットは、下記の通りです。
- 納付書を作成しなければならない
- 平日の9時から15時しか納付できない
- キャッシュカードがない場合には、銀行のお届け印と納付依頼書が必要
金融機関の窓口は平日9時から15時までしか対応していないので、平日の日中お仕事をしている人は利用するのが難しいかもしれません。
また、銀行のキャッシュカードを持っていない場合には、銀行のお届け印と納付依頼書が必要になり手間がかかります。
1-2 税務署の窓口で支払う
相続税申告書を提出した税務署で、相続税を支払えます。
すべての税務署の窓口で支払えるわけではなく、故人の最後の住所地を管轄する税務署の窓口でしか納付できない点に注意が必要です。
納付方法の概要は、下記の通りです。
手数料 | なし |
受付時間 | 平日8時半から17時まで |
領収証書 | あり |
必要なもの |
|
1-2-1 メリット
税務署の窓口で納付する際には、手数料がかからないなどの以下のメリットがあります。
- 申告書も税務署窓口で提出する場合には、納税も同時に行える
- 納付時に手数料が不要
1-2-2 デメリット
相続税はすべての税務署の窓口で払えるわけではありません。
相続税の申告先である故人の最後の住所地を管轄する税務署の窓口でしか提出できないなど、下記のデメリットがあります。
- 納付書を作成しなければならない
- 故人の最後の住所地を管轄する税務署の窓口でしか納付できない
- 平日8時半から17時までしか納付できない
- 納税資金を持ち歩く必要がある
1-3 コンビニで支払う
相続税は全国各地にあるコンビニでも納付できます。
手数料はかからない一方で、現金納付のみでありクレジットカードは電子マネーは使用できません。
手数料 | なし |
受付時間 | 24時間いつでも |
領収証書 | なし |
必要なもの | コンビニ納付用QRコードの発行もしくはバーコード付納付書 |
1-3-1 メリット
相続税をコンビニで納付する最大のメリットは、全国各地にあるコンビニで24時間いつでも納付できる点です。
他にも、下記のメリットがあります。
- 全国各地にあるコンビニで納付できる
- 手数料がかからない
- 24時間いつでも納付できる
平日日中仕事で忙しい人は、相続税をコンビニで納付しても良いでしょう。
1-3-2 デメリット
コンビニで相続税を納付するときには、クレジットカードや電子マネーは使用できず、現金一括納付しなければなりません。
具体的には、下記のデメリットに注意が必要です。
- QRコードを自分で発行する、もしくは税務署に発行してもらう必要がある
- 納税額が30万円以下の場合にしか利用できない
- クレジットカードや電子マネーは使用できず、現金一括納付のみ
- 納税資金を持ち歩く必要がある
上記のように、コンビニで相続税を払うときには納税額が30万円以下の場合のみで、すべてのケースで利用できるわけではありません。
なお、国税庁が発表している令和3年度の相続税の申告・課税状況によると相続人1人あたりの平均納税額は約29.4万円です。
1-4 クレジットカードで支払う
国税クレジットお支払サイトを利用すれば、相続税をクレジットカードで納付できます。
あくでもクレジットカード払いできるのは上記サイト利用時のみであり、コンビニや税務署の窓口で納付する際には使用できないのでご注意ください。
クレジットカード払いによる納付方法の概要は、下記の通りです。
手数料 | あり |
受付時間 | 24時間いつでも |
領収証書 | なし |
必要なもの | クレジットカード |
1-4-1 メリット
クレジットカード払いは、納付書の作成が不要で24時間365日納付できる点がメリットです。
他には、下記のメリットもありあす。
- 納付書の作成が不要
- 24時間いつでも納付できる
- スマホもしくはPCさえあれば納付可能
- クレジットカード会社によってはポイントが付く
クレジットカード払いのメリットとして、クレジットカード会社のポイントが付くのでは?と考える人も多いはずです。
ただし、クレジットカードで相続税を納付したときにポイントが付くかどうかは、クレジットカード会社ごとに異なるので確認が必要です。
1-4-2 デメリット
クレジットカード払いは、国税クレジットお支払サイトのみでしか使えないなど下記のデメリットがあります。
- 納付金額によって手数料がかかる
- 1回の納付額の上限は1,000万円未満まで
- 領収証書は発行してもらえない
- 利用できるカードに制限がある(Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、TS CUBIC CARDのみ)
クレジットカード払いの最大のデメリットは、手数料がかかる点です。
クレジットカード払いによりカード会社のポイントが付与されるとしても、手数料と比較して本当に得かどうか確認をしておく必要があります。
納税額ごとの手数料は、下記の通りです。
納付税額 | 手数料(税込み) |
1~10,000円 | 83円 |
10,001~20,000円 | 167円 |
20,001~30,000円 | 250円 |
30,001~40,000円 | 334円 |
40,001~50,000円 | 418円 |
※5万円を超えた場合も、10,000円を超えるごとに上記の手数料が加算されます。
1-5 ダイレクト納付で支払う
ダイレクト納付とは、相続税申告をe-taxで行った場合にそのままe-taxで納税まで行うことです。
ダイレクト納付の概要は、下記の通りです。
手数料 | なし |
受付時間 | 24時間いつでも |
領収証書 | なし |
必要なもの |
|
1-5-1 メリット
ダイレクト納付は、手数料がかからない点など下記のメリットがあります。
- 手数料が不要
- スマホもしくはPCのみで納付できる
1-5-2 デメリット
ダイレクト納付をする際には、事前にe-taxの利用開始手続きが必要です。
また、相続税申告をe-taxで行うのも不慣れな人にとってはハードルが高いなどのデメリットがあります。
- e-taxの利用開始手続きが必要
- ダイレクト納付利用開始届の提出が必要(1週間から1ヶ月かかる)
- 利用できない金融機関もある
- e-taxの利用可能時間内かつ金融機関のシステム稼働中しか納付できない
- 領収証書は発行されない
1-6 インターネットバンキングで支払う
e-taxで相続税申告をしていなくても、インターネットバンキングによって相続税を納付できます。
納付方法の概要は、下記の通りです。
手数料 | 原則としてなし |
受付時間 | 24時間いつでも |
領収証書 | なし |
必要なもの |
|
1-6-1 メリット
インターネットバンキングによる支払いも、他の支払い同様に手数料がかからないなどのメリットがあります。
- 手数料が不要
- 24時間いつでも納付できる
- スマホもしくはPCさえあれば、納付できる
1-6-2 デメリット
インターネットバンキングによる支払いは、ダイレクト納付同様に事前にe-tax利用開始手続きが必要です。
その他にも下記のデメリットがあります。
- e-taxの利用開始手続きが必要
- 金融機関への利用開始手続きが必要
- 利用できない金融機関もある
- e-taxの利用可能時間内かつ金融機関のシステム稼働中しか納付できない
- 領収証書は発行されない
すでにe-taxの利用開始手続きが完了している人以外が、相続税を納付するためだけにe-taxの利用開始をするメリットは少ないでしょう。
2章 相続税の申告・納付の流れ
相続税の申告、納付をする前には、相続税が発生しているかの判断や相続税の計算が必要です。
相続が発生してから、相続税を申告、納付するまでの流れは、下記の通りです。
- 相続した財産を評価する
- 遺産の総額から基礎控除額を引く
- 基礎控除額を引いたあとの遺産を法定相続分で分ける
- 法定相続分で分けた遺産から相続税の総額を計算
- 相続税の総額を実際の相続割合で分けなおす
- 控除・加算で最終的な納付税額を求める
- 相続税の申告書を作成する
- 相続税を納付する
相続税の申告、納付期限は相続開始から10ヶ月以内です。
相続税の申告期限までに遺産分割が完了していないと、相続税の計算も暫定的な内容になってしまいますし、相続税の控除や特例を適用できなくなる恐れもあります。
家族が亡くなったときには、スムーズに相続税の計算や各種相続手続きを行っていくことが大切です。
3章 相続税の納付に遅れたときのペナルティ
相続税を申告期限までに納付できないと、延滞税などのペナルティがかかります。
具体的には、申告書の提出状況などによって下記のペナルティがかかります。
- 延滞税
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 重加算税
それぞれの内容や税率について詳しく解説していきます。
3-1 延滞税
延滞税とは、相続税の納付が遅れたときに発生するペナルティです。
延滞税の税率は下記の通りです。
延滞期間 | 税率 |
納付期限の翌日から2ヶ月後まで | 年利7.3% |
納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降 | 年利14.6% |
なお、上記の税率は原則であり、金利状況によって延滞税の税率は変わります。
令和5年の延滞税の税率は、2.4%と8.7%です。
3-2 無申告加算税
無申告加算税とは、期限内に相続税の申告書を提出しなかった際に発生するペナルティです。
無申告加算税の税率は、下記のように決められています。
相続税額 | 自主的に申告した場合 | 税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに申告した場合 | 税務調査を受けてから申告した場合 |
50万円以下の部分 | 5% | 10% | 15% |
50万円を超える部分 | 5% | 15% | 20% |
上記のように、相続税額や相続税を申告するタイミングによって、無申告加算税の税率が変わってきます。
なお、過去5年以内に無申告加算税もしくは重加算税を課された記録がある人は、税率が10%加算されます。
3-3 過少申告加算税
過少申告加算税とは、相続税期限内に申告書を提出したものの申告税額が本来納付すべき金額よりも少なかった際に発生するペナルティです。
修正申告で相続税を納めるときなどにかかります。
過少申告加算税の税率は、下記の通りです。
相続税額 | 自主的に申告した場合 | 税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに申告した場合 | 税務調査を受けてから申告した場合 |
上記のいずれか多い方におさまる部分 | なし | 5% | 10% |
上記のいずれか多い方を超える部分 | なし | 10% | 15% |
過少申告加算税は無申告加算税と異なり、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合にはかかりません。
ただし、過少申告加算税がかからなくても延滞税は課税されます。
3-4 重加算税
相続税を払わなくてすむようにするために、意図的に財産隠しや偽装などを行った場合には、重加算税が課税されます。
重加算税の税率は、下記の通りです。
申告書を提出していたか | 税率 |
申告書を提出していた | 35% |
申告書を提出していなかった | 40% |
4章 相続税を納付するときの注意点
相続税納付時には、納付期限を守る以外にもいくつか注意しなければならないことがあります。
具体的には、下記の4点に注意しましょう。
- 代表者が一括納付すると贈与税がかかる恐れがある
- 相続税の納付は連帯責任義務がある
- 現金での一括納付が難しいときには延納・物納を検討する
- 故人の預貯金から相続税を払うときには相続手続をすませておく
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 代表者が一括納付すると贈与税がかかる恐れがある
相続税は各相続人が納める必要があり、代表者が一括納付すると相続税相当額の贈与があったと判断される恐れがあります。
そのため、肩代わりした相続税額が110万円を超える場合には、贈与税がかかってしまいます。
贈与税が発生しないように、下記の点に注意して納付しましょう。
- 各相続人が自分の口座から相続税を支払う
- 立替払いの場合は贈与税はかからないので、速やかに清算する
4-2 相続税の納付は連帯責任義務がある
相続税には連帯納付義務という決まりがあります。
連帯納付義務とは、相続税を払わなかった相続人がいる場合には、残りの相続人が相続税を払わなければならない決まりです。
例えば、子供3人で財産を相続し長女と長男は相続税を納めたが次男が納付しない場合には、すでに払った長女と長男が相続税を負担しなければなりません。
相続税を納付し忘れ他の相続人に迷惑を掛けないようにするためにも、相続人同士で相続税の納付状況を確認し合うのがおすすめです。
4-3 現金での一括納付が難しいときには延納・物納を検討する
本記事1章で解説しましたが、相続税は現金一括納付が原則です。
ただし、相続税の納税資金が用意できない場合には、延納や物納も選択できます。
延納 | 相続税を分割払いできる制度 |
物納 | 相続税を現金ではなく、不動産などの財産で納める制度 |
ただし、延納や物納にはそれぞれ適用要件があり「現金で払いたくないから物納にしたい」などは許されません。
相続税の支払いが難しいときの対処法は、下記の記事で詳しく解説しています。
4-4 故人の預貯金から相続税を払うときには相続手続をすませておく
相続税は相続人名義の預貯金や現金からだけでなく、故人名義の預貯金から支払うことも可能です。
ただし、故人の預貯金から相続税を支払う場合には、事前に相続手続きをすませておく必要があります。
遺産分割協議が完了しないなどの理由で、相続税申告期限までに故人の預貯金を解約できない場合もあるでしょう。
その場合は、相続税の申告期限までに未分割の状態で申告書を作成し、納税まですませるのがおすすめです。
具体的には、下記の流れで預貯金の解約手続きと相続税の申告を行いましょう。
- 遺産のうち預貯金部分だけ遺産分割協議、名義変更手続きをすませてしまう
- 預貯金は遺産分割の割合、残りの遺産は法定相続分で相続税申告および納税をする
- 残りの遺産の分割方法も決定したら、相続税の修正申告を行う
まとめ
相続税の納付方法には複数あるので、平日日中に窓口で支払いできそうか、クレジットカードを使用したいかなどで選ぶのが良いでしょう。
どの納付方法でも納税額は変わりませんが、クレジットカード払いのみ手数料がかかります。
相続税の申告および納付は、相続開始から10ヶ月以内に行わなければなりません。
相続税の計算や申告を行う際には、事前に遺産分割協議などの相続手続きをすませる必要があります。
相続税申告以外にも相続手続きは様々なものがあるので、自分で行うのが難しい場合には相続に精通した専門家への相談をおすすめします。
グリーン司法書士法人では、相続手続きに関する相談をお受けしています。
相続税申告に詳しい税理士の紹介も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
相続税の申告・納付期限は延長できる?
相続税の申告および納付は原則として延長が認められません。
特殊な事情がある場合のみ2ヶ月の範囲内で延長することが認められる場合があります。
とはいえ、遺産分割協議が完了していない、相続財産調査が完了していないなどの理由では相続税の申告・納付期限の延長は認められないのでご注意ください。相続税は分割払いできる?
相続税は延納制度も用意されており、利用すれば分割払いも可能です。
ただし、延納を認めてもらうには要件を満たす必要がありますし、担保の提供や利子税が課税されるなどの点に注意しなければなりません。