相続税は物納できるの?知っておくべき要件と手続き方法【まとめ】

相続税は物納できるの?知っておくべき要件と手続き方法【まとめ】
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 5

相続税は現金一括納付が原則ですが、どうしても納税資金が用意できない場合には延納や物納も認められています。
延納や物納は自由に誰でも選択できるわけではなく、納税資金が用意できない方のみが選択できる制度です。

延納の場合、相続税を分割で支払えますし、物納の場合には、現金ではなく不動産や株式で相続税を納めることが可能です。

また物納を行う前に、不動産売却などで相続財産の現金化も検討しておくと損することがなくなります。
本記事では物納を適用する要件や手続きの流れを解説していきます。


1章 相続税の物納とは

相続税の物納とは、現金で相続税を納付するかわりに不動産や株式などを使用して納税する方法です。
また相続税が払えないときの対処法としては、物納以外にも延納制度も用意されています。

まずは物納と延納の違いから確認していきましょう。

1-1 物納と延納の違い

相続税が払えないときの対処法には物納制度と延納制度が用意されています。
名前の通り物納は現金ではなく不動産や株式などで相続税を支払い、延納は最大で20年間まで相続税を分割払いできる制度です。
どちらも自由に選択できるわけではなく、現金一括での納税資金が用意できない方のみが延納や物納を利用できます。

利用できる順番は以下のとおりです。

  1. 【利用できる順番】
  2. 1.現金一括納付する
  3. 2.現金一括納付ができない場合に延納手続きをする
  4. 3.延納手続きでも払えない場合には物納手続きをする

上記のように物納制度は延納制度を活用したとしても、相続税を払えないと判断したときのみ利用できます。

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1-2 相続税の物納は年間100件未満しかない

国税庁では毎年の物納件数と金額を発表しています。
その発表によると、令和2年度の物納申請件数は63件で実際に申請が許可されたのは54件でした。

物納は平成29年度の税制改正によって、物納に使える財産の種類と順位が定義されました。
税制改正によって物納の自由度が下がったことにより、平成29年以降は物納申請件数は年間で100件未満しかありません。

1-3 物納できる財産の種類

物納に使える財産は自由に選択できるわけでなく、種類と優先順位がハッキリと決められています。
優先順位は以下の通りです。

  • 第1順位:不動産、船舶、国際証券、地方債証券、上場株式等
  • 第2順位:非上場株式等
  • 第3順位:動産

例えば不動産と非上場株式を相続した場合には、まずは不動産を物納しなければなりません。
「不動産を手元に残しておきたいから非上場株式を物納に充てる」などの選択はできないのでご注意ください。

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2章 物納と不動産売却はどちらを選ぶべき?【メリット・デメリット】

物納も不動産売却も、相続した不動産を手放し相続税の納税資金にあてる点では共通しています。
しかしそれぞれの方法にはメリットとデメリットがあるので、ご自身に合う方法を選ぶのがおすすめです。
物納と不動産売却のメリット、デメリットは以下の通りです。

物納不動産売却
メリット
  • 譲渡所得税が課税されない
  • 仲介手数料はかからない
  • 売却価格を自由に決められる
デメリット
  • 測量費用がかかる
  • 相続税評価額で価格が計算される
  • 譲渡所得税がかかる
  • 買手が見つかるまで時間がかかる場合がある
  • 仲介手数料が取られる

それぞれのメリットとデメリットを詳しく確認していきましょう。

2-1 物納のメリット・デメリット

不動産売却と物納を比較した場合のメリット、デメリットを詳しく解説していきます。

物納のメリット

物納のメリットは不動産を納税資金に直接あてるので、譲渡所得税がかからない点です。
また納税資金として必要な分だけ土地を差し出せば良いので、計算がしやすく少しでも不動産を残しておきたいと考える方にも向いています。

物納のデメリット

一方で物納に使う土地は必ず測量をしなければならないので、測量費用がかかります。
測量費用は100~200㎡ほどの土地に対し、60~80万円かかるケースが多いです。

測量自体にも時間がかかるので、物納を検討する方は早めに手続きを始めるのが良いでしょう。

また物納を行う場合、不動産の評価額は相続税評価額に基づいて計算されます。
相続税評価額は時価の7~8割ほどなので、売却時よりも評価額が下がってしまう点にも注意が必要です。

これらのメリット、デメリットを踏まえると、市場価値がそれほど高くなく買手がすぐに見つからない不動産を相続した人は物納を選択するのが良いでしょう。

2-2 不動産売却のメリット・デメリット

物納と不動産売却を比較としたときの不動産売却のメリット、デメリットを解説していきます。

不動産売却のメリット

相続した不動産を売却して納税資金を用意するメリットは、市場取引なので自分で自由に価格設定や交渉できる点です。
例えば駅に近い利便性の高い土地などの場合、物納を活用するよりもご自身で売却手続きをした方が土地を高値で売却できる可能性があります。

少しでも納税資金を用意したい場合や土地を残す必要がなく全てまとめて現金化したい方は、物納ではなく不動産売却を検討しても良いでしょう。

不動産売却のデメリット

その一方で不動産売却では売却によって得た利益に対して、譲渡所得税が別途かかります。
相続税の納税資金のことだけを考えて売却額を決定してしまうと、今度は譲渡所得税の納税資金の確保が難しくなるのでご注意ください。

また不動産売却の場合、個人間取引は難しく不動産会社に仲介してもらうのが一般的です。
そのため譲渡所得税とあわせて不動産会社に支払う仲介手数料も必要になります。
納税資金と不動産売却にかかる諸費用を土地の売却価格が上回りそうなときには、不動産売却を選択を検討してみても良いかもしれませんね。

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3章 相続税の物納が認められる要件【まとめ】

先述のとおり、相続税の物納は誰でも自由に利用できる制度ではなく、いくつかの要件が決められています。
物納の適用要件は以下の3つです。

  1. 延納をしても相続税を納付できそうにない
  2. 申告期限までに物納申請書を提出する
  3. 物納に充てることができる財産を相続している

それぞれ詳しく解説していきますね。

3-1 延納をしても相続税を納付できそうにない

まず相続税の物納は、現金で納税資金を用意できないかつ分割払いでも用意できそうにない方の納税方法として用意されています。

  • 現金一括納付が可能
  • 延納を利用すれば相続税を払える

上記に当てはまる方は物納を利用できません。
またすべての相続税を物納で支払うことができるのではなく、期限内納付と延納による納付をしても払えない金額のみを物納で支払うことが可能です。

3-2 申告期限までに物納申請書を提出する

物納を選択する場合には、相続税の申告期限までに物納申請書と必要書類を提出しなければなりません。
相続税の申告期限は相続が開始してから10ヶ月以内です。

物納を適用できるかの判断や書類の用意は時間的猶予もあり、個人で行うのは難しい場合もあるでしょう。
必要に応じて税理士などの専門家への相談も検討するのが良いかと思います。

3-3 物納に充てることができる財産を相続している

本記事で解説したように、物納に充てることができる財産は決められています。
また財産の種類だけでなく、優先順位も決められているので自分で自由に物納として提出財産を選べるわけではありません。


4章 物納手続きの流れ・必要書類

物納を行う場合には相続税の申告期限内に所定の手続きと必要書類の提出を行う必要があります。
物納手続きの流れは以下の通りです。

  1. 物納申請書・必要書類を税務署に提出
  2. 税務署による審査・調査
  3. 物納許可がおりる(もしくは却下される)

それぞれ詳しく解説していきます。

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4-1 物納申請書・必要書類を税務署に提出

物納をすると決めたら、まずは相続税申告期限内に物納申請書と必要書類を税務署に提出します。
主な必要書類は以下の通りです。

  • 物納申請書
  • 物納財産目録
  • 金銭納付を困難とする理由書
  • 理由書の内容を証明できる資料の写し
  • 物納劣後財産等を物納に充てる理由書(必要な場合のみ)
  • 物納手続関係書類

物納手続関係書類は物納に充てる財産の種類によって異なります。
物納手続き関係書類の期限内提出がどうしても難しい場合には、物納手続関係書類期限延長届出書を提出すれば、最長1年まで提出期限を延長可能です。

4-2 税務署による審査・調査

税務署に申請書や必要書類を提出すると、税務署による審査や調査が入ります。
物納に充てる財産に不動産が含まれる場合には、税務署や財務局が現地調査も行います。

審査の際に書類の不備を指摘された場合には、通知を受けてから20日以内に書類の訂正や追加書類の提出を行わなければなりません。

4-3 物納許可がおりる(もしくは却下される)

税務署が申請者が本当に金銭納付が難しい状況か、物納申請財産が物納に適切かどうかの2点を審査完了した段階で物納の許可がおります。

もしくは物納の適用要件を満たしていないと判断されると物納申請が却下されてしまいます。
物納申請が却下された場合には、通知を受けた日の翌日から20日以内であれば1回だけですが再申請も可能です。


まとめ

相続税を現金で納付できないときには、相続財産を納税に充てる物納制度も認められています。
物納は誰でも自由に利用できる制度ではなく、現金一括納付や延納による分割払いをしても相続税を納税できない方のみに認められている制度です。
物納に充てることができる財産と優先順位も細かく決められています。

物納を行うのであれば、相続税の期限内に申請書と必要書類を提出する必要があります。
必要書類の数は多いので、物納を行うのであれば早めに書類の準備を始めましょう。

また相続財産を手放し納税資金にあてるのであれば、物納だけでなく不動産売却もご検討ください。
買手がすぐに見つかる利便性の高い土地であれば、物納よりも不動産売却を選択した方が良いケースもありますよ。

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よくあるご質問

相続税の物納とは?

相続税の物納とは、現金で相続税を納付するかわりに不動産や株式などを使用して納税する方法です。
また相続税が払えないときの対処法としては、物納以外にも延納制度も用意されています。

相続税を物納するデメリットとは?

相続税を物納するデメリットは、下記の通りです。

・物納できる財産・順位は決まっている
・土地を物納する際には測量費用がかかる
・物納する財産の価値は相続税評価額で計算する

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