ゼロ葬とは、火葬後に遺族が遺骨を引き取らない形式の葬儀です。
直葬と似ていますが、直葬は葬儀を行わないことであり、遺骨は遺族が引き取る場合もあります。
近年、高齢化により身寄りがいない人や少ない人が亡くなるケースが増え、ゼロ葬も注目を集めるようになりました。
ゼロ葬は葬儀費用が安くすむなどのメリットがある一方で、家族や親族が反対する恐れもあるので慎重に判断しなければなりません。
本記事では、ゼロ葬とは何か、メリットやデメリットを解説します。
なお、ゼロ葬を選択したとしても、家族や親族が亡くなると様々な手続きが必要です。
家族や親族が亡くなったときの手続きの流れは、下記の記事で詳しく解説しています。
目次
1章 ゼロ葬とは
ゼロ葬とは、火葬後に遺族が遺骨を引き取らない形式の葬儀であり、現在の日本で行える最もシンプルな葬儀形式です。
ゼロ葬という呼び名は、宗教学者の島田裕巳氏が2014年に出した著書「0葬 あっさり死ぬ」(集英社)の中で提起したことが始まりです。
ゼロ葬は遺骨を骨壷に納めることすらしないので、お墓の用意もなく、遺族の負担を限りなく軽減できます。
1-1 ゼロ葬と直葬の違い
ゼロ葬と似た葬儀形式に直葬があり、どちらを選択すべきか迷ってしまうケースもあるでしょう。
直葬は葬儀を行わないことであり、遺骨自体は遺族が引き取るためお墓の用意なども必要になります。
2章 ゼロ葬が注目されている背景
少子高齢化により身寄りのない人が増えたため、ゼロ葬が注目を集めるようになってきました。
ゼロ葬を選択する人や検討する人が増えている理由は、主に下記の通りです。
- 身寄りがいない人や少ない人が増えている
- 葬儀やお墓にかかる費用を抑えたい人が増えている
- 家族・親族の負担を減らしたいと考える人が増えている
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 身寄りがいない人や少ない人が増えている
少子高齢化により身寄りのない人や少ない人が増え、これまで通りの葬儀を行うのが難しい、負担だと感じるケースが増えてきました。
子供の人数が多い、家族や親族の結びつきが強い数十年前であれば、親族や近所の人が協力して葬儀を行うことも可能でしたが、現代社会では難しいと感じる人も多いはずです。
2-2 葬儀やお墓にかかる費用を抑えたい人が増えている
ゼロ葬が注目されるようになった理由としては、葬儀やお墓にかける費用をできるだけ抑えたいと考える人や遺族が増えてきたからです。
平均寿命が延びたことや高齢化に伴い、介護費用や老後費用に不安を抱えている人も増えています。
「自分の老後費用を用意するのだけでも大変だから、亡くなった後にかけるお金はできるだけ抑えたい」「子供や孫に少しでもお金を遺したい」と考え、ゼロ葬や直葬を選択する人もいます。
2-3 家族・親族の負担を減らしたいと考える人が増えている
核家族化が進み、家族や親族のつながりが希薄化していく中で、自分が亡くなった後の遺族の負担を減らしたいと考える人も増えています。
葬儀の規模にもよりますが数十万円から100万円以上かかることも多く、遺族に負担をしてほしくないと考えるケースもあるでしょう。
他にも、家族や親族が遠方に住んでいる場合、葬儀のために集まってもらうことやお墓の管理をしてもらうことを申し訳ないと感じる人もいます。
3章 ゼロ葬のメリット
ゼロ葬は家族葬や直葬よりも葬儀費用が安くすみ、お墓の購入費用も不要な点がメリットです。
また、葬儀を行わないため葬儀にかかる日数も短縮できます。
ゼロ葬を行うメリットは、主に下記の通りです。
- 葬儀・お墓購入費用が安くすむ
- 葬儀にかかる日数を短くできる
- お墓を継ぐ人が不要である
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 葬儀・お墓購入費用が安くすむ
ゼロ葬では葬儀を行わないため、葬儀や火葬にかかる費用を抑えられます。
加えて、遺骨も引き取らないため、お墓の購入費用もかかりません。
遺族にできるだけ多くのお金を遺してあげたい場合や自分では葬儀費用やお墓の購入費用を用意できない場合は、ゼロ葬のメリットを大きく感じるかもしれません。
3-2 葬儀にかかる日数を短くできる
ゼロ葬は火葬だけ行い葬儀を行わないため、葬儀にかかる日数を短くできます。
家族や親族が遠方に住んでいて集まることが負担になる人の中には、ゼロ葬を検討する人もいます。
3-3 お墓を継ぐ人が不要である
ゼロ葬では遺族が遺骨を引き取らないため、お墓も必要ありません。
自分の代で墓じまいをして自分が亡くなったときはゼロ葬を選択すれば、お墓を継ぐ人が必要亡くなり、遺族の負担を軽減可能です。
家族が遠方に住んでいてお墓の管理が難しい場合や身寄りがなく自分が亡くなった後にお墓の管理をする人がいない場合は、ゼロ葬を検討しても良いでしょう。
4章 ゼロ葬のデメリット
ゼロ葬は遺骨すら引き取らない形式の葬法ですので、家族や親族が抵抗感を示す場合があります。
他には、そもそもの問題としてゼロ葬ができない地域もあるのでご注意ください。
ゼロ葬を行うデメリットは、主に下記の通りです。
- 家族や親族が反対する可能性がある
- 家族や親族がお墓を欲しがる可能性がある
- ゼロ葬ができない地域もある
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 家族や親族が反対する可能性がある
家族葬や直葬などは普及してきた印象がありますか、遺骨すら引き取らないゼロ葬はまだ日本では珍しいのが現状です。
そのため、故人がゼロ葬を希望していたとしても、遺族が反対し拒否する可能性もゼロではありません。
4-2 家族や親族がお墓を欲しがる可能性がある
家族や親族の宗教観や価値観によってはお墓を欲しがるり、ゼロ葬に反対されるケースもあります。
仏教徒であり先祖代々お墓を守ってきた場合などは、親族が墓じまいやゼロ葬に反発する恐れもあるでしょう。
4-3 ゼロ葬ができない地域もある
そもそもの問題として、ゼロ葬が認められない地域もあるので、ゼロ葬を希望する場合は事前に確認しておく必要があります。
法律では遺骨を引き取らないゼロ葬は認められていますが、自治体によっては遺骨の引き取りを遺族に求める、引き取らない場合は費用負担を求める自治体もあるからです。
また、法律やお住まいの地域の自治体で遺骨を引き取らないことが認められていても、火葬場で遺族が遺骨を引き取ることを条件としているケースもあります。
特に、関東以北は遺骨をすべて骨壺に納める全骨納骨を行っているため、遺骨が遺されることに抵抗する火葬場が多い傾向にあります。
一方で、関西以西では遺骨の3分の1程度を骨壺に納め、残りは残骨として火葬場が供養します。
そのため、ゼロ葬についても受け入れてもらいやすいです。
5章 ゼロ葬にかかる費用相場
ゼロ葬を行った場合、ドライアイス費用や火葬費用、棺などの費用がかかります。
ゼロ葬の費用は火葬場によって異なりますが、関西ではゼロ葬プランを10〜15万円程度で用意している火葬場もあります。
一方で4章で解説したように、関東ではゼロ葬を行えないケースが多いです。
関東に住んでいた人がゼロ葬を行う場合、関西などゼロ葬が認められる地域へ遺体を搬送しなければならない場合があります。
結果として、搬送費用に数十万円かかってしまう恐れもあるのでご注意ください。
加えて、遺族が火葬に立ち会う場合は、遺族の交通費や宿泊費もかかります。
6章 ゼロ葬をするためにしておきたい準備
ゼロ葬を希望する場合、遺族が「本当にゼロ葬で良いのか」「どこの葬儀社に依頼すれば良いか」と悩まなくてよいように、エンディングノートや遺言書で自分の希望を遺しておくことが大切です。
ゼロ葬を希望する場合、下記の準備をしておきましょう。
- エンディングノートを作成する
- 遺言書を作成する
- 死後事務委任契約を結ぶ
それぞれ詳しく解説していきます。
6-1 エンディングノートを作成する
ゼロ葬に限らず、希望する葬儀の形式を指定したいのであれば、エンディングノートを作成しておきましょう。
エンディングノートとは、人生の最期について書くノートであり、自分の財産や葬儀の希望などをまとめておけます。
エンディングノートを作成しておけば、葬儀の希望を伝えられるため、遺族の迷いや負担を軽減できます。
あらかじめ葬儀社とゼロ葬プランを契約しているのであれば、連絡先なども記載しておくと、遺族が手続きしやすくなります。
ただし、エンディングノートは法的拘束力はないため、必ずしも遺族がゼロ葬を行ってくれるとは限りません。
6-2 遺言書を作成する
エンディングノートを作成するだけでなく、遺言書を作成しておき、葬儀についての希望を添えておくのもおすすめです。
遺言書では、誰にどのような財産を遺すか指定できますし、お墓や仏壇などを受け継ぐ人物も指定できます。
ただし、遺言書では財産の承継先などについて効力を持たせられる一方で、葬儀の形式については法的拘束力を持たせることはできません。
そのため、葬儀については遺言書に記載しても、遺族が必ずしも従ってくれるとは限らないことを理解しておきましょう。
遺言書の効力については、下記の記事で詳しく解説しています。
6-3 死後事務委任契約を結ぶ
身寄りのない人で自分が亡くなった後の葬儀の手配について不安を感じているのであれば、死後事務委任契約を利用しましょう。
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後の手続きについて依頼する契約を生前のうちに結んでおくことです。
死後事務委任契約を結んでおけば、周りに頼れる親族がいなくても自分が亡くなった後の手続きを行ってもらえます。
子供がいない人は、自分が亡くなった後の手続きを準備するだけでなく、認知症対策も行っておかなければなりません。
認知症になり判断能力を失うと、財産管理や契約行為を行えなくなるからです。
認知症発症後の財産管理や身元保証、各種手続きについては、下記の対策方法があります。
- 家族信託:甥や姪などの親族がいる人が利用できる。財産管理に特化した制度
- 任意後見制度:認知症発症後に後見人に財産管理や契約手続きを任せられる制度
- 身元保証サービス:入院や介護施設への入所時に家族や親族の代わりに身元保証人になってもらえるサービス
認知症対策にはそれぞれメリットとデメリットがあるので、元気なうちに司法書士や弁護士などの専門家に相談して自分に合う対策を提案してもらいましょう。
まとめ
ゼロ葬とは、火葬後に遺族が遺骨を引き取らない形式の葬儀であり、現在の日本で行える最もシンプルな葬儀形式です。
身寄りがなく頼れる親族がいない人や家族への負担をできるだけ減らしたい場合は、ゼロ葬を検討しても良いでしょう。
ただし、ゼロ葬はまだ日本では行われるケースが少なく、関東では対応している火葬場が少ないのも現状です。
自分が希望する葬儀を行うには、家族や親族の理解を得ておく、死後事務委任契約を結んでおくなどの対策も必要です。
認知症や自分が亡くなった後の手続きについては、元気なうちから対策しておくことが重要です。
何から行っていいかわからない場合は、認知症対策に詳しい司法書士や弁護士に相談するのも良いでしょう。
グリーン司法書士法人では、認知症対策および相続対策に関する相談をお受けしています。
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