- 遺言書はパソコンで作成できるか
- 遺言書をパソコンで作成する方法
- 遺言書をパソコンで作成するときの注意点
民法改正による遺言書の作成に一部パソコンを使用することが認められました。
遺言書には3種類あり、パソコンの使用可否はそれぞれ下記の通りです。
遺言書の種類 | パソコンの使用可否 |
自筆証書遺言 | 財産目録のみパソコンを使用できる |
秘密証書遺言 | すべてパソコンで作成できる |
公正証書遺言 | 自分で作成するのではなく、公証人が作成してくれる |
自筆証書遺言は財産目録のみパソコンを使用でき、秘密証書遺言はすべてパソコンで作成できます。
公正証書遺言は自分で作成するのではなく、公証人が遺言内容を確認しパソコンで作成してくれます。
3種類の遺言書のうち最も信頼できる遺言書は、形式不備による無効リスクがほとんどなく、改ざんや紛失の恐れもない公正証書遺言です。
「自筆で遺言書を作成するのは嫌だからパソコンを使用したい」とお悩みの人は、公正証書遺言を作成しても良いでしょう。
本記事では、パソコンを使用して自筆証書遺言や秘密証書遺言を作成する方法や注意点を解説します。
遺言書の種類に関しては、下記の記事で詳しく解説していますのでご参考にしてください。
目次
1章 パソコン作成が有効な遺言書の種類
遺言書には3種類あり、それぞれ作成方法や保管方法が異なります。
それぞれの遺言書作成時にパソコンを使用できるかは、下記の通りです。
遺言書の種類 | パソコンの使用可否 |
自筆証書遺言 | 財産目録のみパソコンを使用できる |
秘密証書遺言 | すべてパソコンで作成できる |
公正証書遺言 | 自分で作成するのではなく、公証人が作成してくれる |
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 自筆証書遺言は財産目録のみパソコン作成が有効
自筆証書遺言は名前の通りすべて自分で書く必要がありましたが、民法改正により財産目録のみパソコンなど自著以外の方法で作成できるようになりました。
遺言書に記載する財産の種類が多い場合、自著では書き間違いが発生しやすいことが改正の主な理由です。
一方で、財産目録以外をパソコンで作成してしまうと無効になってしまうので、ご注意ください。
自筆証書遺言の財産目録を自著以外で作成するには、下記のように様々な方法の中から自分に合う方法を選べます。
- パソコンを使って作成する
- 配偶者や子供など家族に代筆を依頼する
- 全部事項証明書や通帳コピーなど財産を証明する書類を使う
パソコンを使って財産目録を作成するのであれば、エクセルやワードなどのソフトを使用するのがおすすめです。
具体的な作成方法は、本記事の2章で解説します。
1-2 秘密証書遺言はすべてパソコン作成でも有効
自筆証書遺言と異なり、秘密証書遺言の要件には自著や日付の記載が含まれません。
そのため、財産目録だけでなく遺言書自体もすべてパソコンで作成できます。
ただし、秘密証書遺言は実務上はほとんど使用されていません。
1-3 公正証書遺言はそもそも自分で作成できない
公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言書であり、遺言者が自ら作成することはできません。
公正証書遺言は公証人が作成するので形式不備のリスクがほとんどない、原本を公証役場で保管してもらえるなどのメリットがあります。
「すべて自筆で遺言書を書くのは大変だからパソコンを使いたいな」と考えているのであれば、そもそも自分で遺言書を書くのではなく公正証書遺言を作成するのでも良いでしょう。
2章 パソコンで自筆証書遺言を作る方法
本記事の1章で解説したように、自筆証書遺言は財産目録のみパソコンで作成できます。
また、全部事項証明書や通帳のコピーなど、財産を証明できる書類を財産目録とすることも可能です。
パソコンで自筆証書遺言の財産目録を作成するときのポイントは、下記の通りです。
- 遺言書本体と財産目録は別の用紙に印刷する
- 財産目録にはすべてのページに署名・押印する
- 財産目録を修正する際には訂正ではなく作り直しをする
- 財産目録と遺言書の指定方法を統一する
本記事では、自筆証書遺言作成時に使用できる財産目録のひな形を用意しましたので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
2-1 遺言書本体と財産目録は別の用紙に印刷する
自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成する場合、手書きの遺言書本体と財産目録は別の用紙に印刷しなければなりません。
手書きの遺言書とパソコンで作成した財産目録が1ページ内に収まっている自筆証書遺言は、形式不備で無効になるのでご注意ください。
2-2 財産目録にはすべてのページに署名・押印する
パソコンで作成した財産目録や通帳のコピーなどを財産目録として使用する場合、財産目録のすべてのページに遺言者が署名、押印する必要があります。
押印に使用する印鑑に決まりはありませんが、本人が作成した遺言書であると証明しやすくするため実印を使用するのが良いでしょう。
2-3 財産目録を修正する際には訂正ではなく作り直しをする
パソコンで作成した財産目録の内容を修正したい場合、訂正ではなく作り直しをするのがおすすめです。
財産目録の修正は自筆証書遺言の修正ルールを守る必要があり、要件を満たさなかった場合は形式不備で無効になってしまう恐れがあります。
自筆証書遺言の修正時のルールは、下記の通りです。
- 訂正したい箇所に二重線を引く
- 二重線の上に押印する
- 横に正しい文字を記載する
- 遺言書の余白に訂正した箇所や削除した文字数、追加した文字数を自著で記載し署名押印する
上記のように自筆証書遺言の修正方法は非常に細かく決められているので、財産目録をパソコンで作成し直す方が形式不備による無効リスクも抑えられ、修正よりも手間がかからない可能性もあるでしょう。
2-4 財産目録と遺言書の指定方法を統一する
パソコンで作成した財産目録と遺言書の指定方法は統一し、誰が見てもどの財産の相続を指定しているかわかるようにしましょう。
例えば、財産目録で自宅の不動産を「第一」と指定した場合は、遺言書に記載するときは財産に関する情報を細かく記載せず「第一」と記載する必要があります。
3章 パソコンで秘密証書遺言を作る方法
続いて、秘密証書遺言をパソコンで作る方法を解説します。
とはいえ、秘密証書遺言には下記の要件しか設定されておらず、作成方法については決まりがありません。
- 遺言者の署名および押印をする
- 遺言書に使用したものと同じ印鑑で封印する
- 公証人と証人2人以上の前に封印した遺言書を提出する
上記のように、署名は必要ですが遺言書や財産目録自体に自著という指定はありません。
そのため、遺言書も財産目録もすべてパソコンで作成できます。
遺言書および財産目録に使用するインクや用紙も指定されていませんが、長年にわたり保管する可能性も考え消えやすいインクや破れやすい用紙は避けるのがおすすめです。
また、本章1章でも解説しましたが秘密証書遺言は実務ではほとんど作成されておらず、下記のデメリットがある点にもご留意ください。
- 公証人は遺言書の内容を確認しない
- 家庭裁判所での検認手続きが必要
- 死後に遺言書を発見してもらえない恐れがある
- 遺言書の紛失や隠ぺい、改ざんリスクがある
4章 パソコンを使用して遺言書を作るときの注意点
パソコンで遺言書を作成するときには、形式不備による無効リスクや紛失、改ざんリスクなどに注意しなければなりません。
具体的な注意点は下記の3つです。
- 様式を満たしていない遺言書は無効になる
- 自筆証書遺言・秘密証書遺言には改ざん・紛失リスクがある
- 遺言書作成時には遺留分対策もしておく
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 様式を満たしていない遺言書は無効になる
遺言書は法律によって要件が決められており、決められた様式を満たしていない遺言書は無効になってしまいます。
自分で遺言書を作成した場合、どうしても形式不備による無効リスクが発生する点には注意が必要です。
形式不備による無効リスクを避けたいのであれば、下記の対応をおすすめします。
- 公正証書遺言を作成する
- 法務局での自筆証書遺言保管制度を利用する
公正証書遺言であれば公証人が作成するので、形式不備による無効はほとんどありません。
また、自筆証書遺言は法務局での保管が可能であり、保管時には遺言書の形式に問題がないかも確認してもらえます。
4-2 自筆証書遺言・秘密証書遺言には改ざん・紛失リスクがある
自筆証書遺言や秘密証書遺言は作成した後、自分で保管する必要があるので、改ざんや紛失リスクがあります。
また、家族や親族に遺言書の存在や保管場所を知らせておかないと、自分が亡くなった後に誰も遺言書を発見してくれない恐れもあるでしょう。
遺言書の紛失や改ざんリスクを下げたいのであれば、下記の対処法をご検討ください。
- 公正証書遺言を作成する
- 法務局での自筆証書遺言保管制度を利用する
公正証書遺言は作成後に原本を公証役場で保管してもらえます。
また、自筆証書遺言の保管制度を利用すれば、原本は法務局で保管してもらえますし、自分が亡くなったときに事前に指定していた人物に遺言書を遺していたことを知らせてもらえます。
4-3 遺言書作成時には遺留分対策もしておく
自分が希望する人物に財産を受け継いでほしいと考え遺言書を作成する人が多いですが、遺言書作成時には遺留分対策もしておきましょう。
遺留分とは、亡くなった人の配偶者や子供、両親に認められている遺産を最低限度受け取れる権利です。
遺留分は遺言書に書かれた内容よりも優先されるので「愛人に全財産を遺す」と遺言書に記載していたとしても、故人の配偶者や子供が愛人に対し遺留分侵害額請求を行えます。
遺留分侵害額請求を行った場合、配偶者や子供に対し、愛人が遺留分侵害相当額の金銭を支払わなければなりません。
遺留分トラブルは長期にわたり泥沼化することもあるので、遺言書作成時には遺留分対策もセットで行う必要があります。
具体的には、下記の方法で遺留分対策しておきましょう。
- 付言事項でメッセージを残す
- 遺留分として支払う資金を準備しておく
- 生前贈与などで相続財産および遺留分を減らしてしまう
- 遺留分の放棄を依頼する
遺留分対策を行うと共に、相続人の遺留分を侵害しない内容の遺言書を作成することも大切です。
遺言書作成と遺留分対策を行いたいのであれば、相続に詳しい司法書士や弁護士にへの相談も良いでしょう。
まとめ
遺言書のうち、自筆証書遺言や秘密証書遺言はパソコンを使用して作成できます。
ただし、自筆証書遺言は財産目録のみパソコンでの作成が認められていて、遺言書自体はすべて自筆でなければなりません。
一方で、秘密証書遺言はすべてパソコンで作成できますが、実務ではほとんど秘密証書遺言は作成されていません。
身体を思うように動かせなくなって自筆で遺言書を作成するのが難しい、財産の種類が多く財産目録を作成するのが大変だとお悩みの場合には、パソコンで作成する以外にも公正証書遺言を作成するのも選択肢のひとつです。
公正証書遺言であれば、形式不備による無効や遺言書の紛失や改ざんをなくせます。
また、遺言書作成時には記載する内容や遺留分対策にも注意を払わなければなりません。
遺言書の内容や作成方法、遺留分対策にお悩みの場合は、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談することもご検討ください。
グリーン司法書士法人では、遺言書作成や相続対策に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
遺言書をパソコンで書くと無効になる?
相続対策で作れる遺言書のうち、秘密証書遺言のみはパソコンで書いても無効になりません。
一方で自筆証書遺言は財産目録はすべて自著で作成する必要があります。
▶遺言書作成にパソコンは使えるかについて詳しくはコチラ遺言書は自分で作れる?
遺言書を自分で作る流れは、下記の通りです。
・自分が所有している財産を把握する
・財産を特定できる資料を用意する
・「何を誰にどれくらい相続させるか」決める
・遺言を書く
・遺言書を封筒に入れて封印する
▶遺言書の作り方について詳しくはコチラ遺言書は自筆以外で書けますか?
遺言書には複数の種類があり、自筆証書遺言は署名だけでなく遺言書もすべて自著で作成しなければなりません。
一方で、公正証書遺言は公証人が作成してくれるため、自筆で作成する必要はありません。遺言書は自宅で作成できる?
自筆証書遺言であれば、自宅で自分で作成できます。
一方で、公正証書遺言や秘密証書遺言は、自宅で作成できません。
▶自筆証書遺言について詳しくはコチラ