
- 相続時精算課税制度は孫への贈与に利用できるのか
- 相続時精算課税制度を利用して孫に贈与するメリット・デメリット
- 相続時精算課税制度の手続き方法・必要書類
相続時精算課税制度は、子供だけでなく孫への贈与にも利用できる制度です。
利用すれば、2,500万円まで非課税で贈与できるので、一括でまとまった財産を譲りたい方に適しています。
一方、贈与財産は贈与者が亡くなったとき、相続税の課税対象となる点には注意しなければなりません。
本記事では、相続時精算課税制度を孫に利用する場合のメリット・デメリットや注意点、手続き方法を解説します。
目次
1章 相続時精算課税制度は孫への贈与にも利用できる
相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母または祖父母が、18歳以上の子供や孫に対して財産を贈与する場合に選択できる制度です。
したがって、孫への贈与であっても要件を満たせば利用できます。
相続時精算課税制度を選択すると、2,500万円まで贈与税がかからず、将来、贈与者が亡くなった際に相続財産へ合算して相続税を計算します。
孫が相続人になることは、代襲相続や孫養子の場合を除いてありませんが、相続時精算課税制度では「相続人かどうか」は利用可否に直接影響しません。
そのため、祖父母から孫へ、計画的に財産を移転したい場合の選択肢として相続時精算課税制度が活用されることがあります。
2章 相続時精算課税制度を利用して孫に贈与するメリット
相続時精算課税制度を利用して孫に贈与すれば、贈与税を大幅に節税できるなどのメリットがあります。
詳しく見ていきましょう。
2-1 2,500万円の非課税枠を利用して贈与できる
相続時精算課税制度の大きなメリットのひとつは、累計2,500万円まで贈与税が非課税となる点です。
教育資金や住宅取得資金など、将来を見据えたまとまった援助を行いたい場合に適しています。
2-2 一括でまとまった金額を贈与できる
暦年贈与では年間110万円を超えると贈与税が発生しますが、相続時精算課税制度であれば、非課税枠内で一度に大きな金額を贈与できます。
例えば、孫が住宅を建築するときに土地を贈与したいケースなどでは、相続時精算課税制度を利用するのが良いでしょう。
2-3 贈与財産の用途は問われない
教育資金贈与や住宅取得資金贈与の特例と異なり、相続時精算課税制度では贈与財産の使い道に制限がありません。
事業資金や将来の貯蓄など、孫の判断で自由に活用できるため、柔軟性の高い制度といえるでしょう。
2-4 一代飛ばして財産を譲れる
通常の相続と異なり、相続時精算課税制度を使えば、子供を経由せず祖父母から孫へ直接財産を移転できます。
相続税負担を考慮しつつ、孫へ資産を承継したいと考える方にとっては、有効な選択肢となることがあります。
ただし、相続時精算課税制度を利用した場合、原則として、算出された相続税額に対して2割が加算される点には注意が必要です。
3章 相続時精算課税制度を利用して孫に贈与するデメリット
相続時精算課税制度を利用すると、メリットだけでなく以下のようなデメリットもあるので慎重に判断しなければなりません。
- 基礎控除額を上回った分は相続税の課税対象となる
- 孫の相続税は2割加算される
- 相続時精算課税制度を利用すると二度と暦年贈与に戻せない
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 基礎控除額を上回った分は相続税の課税対象となる
相続時精算課税制度では、贈与時点では2,500万円まで贈与税がかかりませんが、贈与した財産は相続時に相続財産へ持ち戻されます。
つまり、贈与税の節税効果は大きいものの、相続税の節税効果は得られない恐れがある点に注意しなければなりません。
2024年から相続時精算課税制度には、年間110万円の基礎控除が用意されています。
年間110万円の基礎控除を超えた贈与財産については、相続時に相続税の課税対象となります。
3-2 孫の相続税は2割加算される
孫への贈与において見落とされやすいのが、相続税の2割加算です。
孫は原則として法定相続人ではなく、相続時精算課税制度を利用して贈与した財産が相続税の対象となる場合、算出された相続税額に2割が加算されます。
そのため、同じ金額を子供に贈与・相続させた場合と比べて、結果的に税負担が重くなるケースも少なくありません。
「一代飛ばし」での資産承継は魅力的ですが、税額が増える可能性がある点を理解しておくことが重要です。
3-3 相続時精算課税制度を利用すると二度と暦年贈与に戻せない
相続時精算課税制度の最大のデメリットともいえるのが、一度選択すると二度と暦年贈与に戻せない点です。
贈与税の申告時に相続時精算課税制度を選択すると、その後は同じ贈与者からの贈与について暦年贈与は使えなくなります。
将来的に「やはり毎年少しずつ贈与したい」「税制が変わったので見直したい」と思っても、制度変更はできません。
特に、孫がまだ若く、長期間にわたる贈与を想定している場合には、この不可逆性が大きなリスクとなるでしょう。
4章 相続時精算課税制度の利用が適しているケース
相続時精算課税制度を利用すると暦年贈与に戻せないので、利用する際には慎重に判断しなければなりません。
相続時精算課税制度の利用が向いているケースは、主に下記の通りです。
- 相続税がかからないことが予想されるケース
- 将来値上がりしそうな資産を贈与するケース
- 孫の教育費や住宅購入を支援したいケース
- 相続トラブルを回避したいケース
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 相続税がかからないことが予想されるケース
遺産総額が少なく相続税がかからないことが予想される場合には、相続時精算課税制度を利用しても良いでしょう。
具体的には、相続財産の総額が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以内に収まると予想されるケースです。
このような場合、相続時に課税される心配が少ないため、2,500万円の非課税枠を活用して、早期に孫へ財産を移転するメリットが大きくなります。
4-2 将来値上がりしそうな資産を贈与するケース
将来値上がりしそうな資産を所有している場合には、相続時精算課税制度で早めに贈与しても良いでしょう。
相続時精算課税制度では、贈与時点の評価額で相続財産に加算されるからです。
将来的に値上がりが見込まれる資産を早めに贈与することで、相続税評価額を抑えられる可能性があります。
例えば、成長が期待される未上場株式や、再開発が予定されている土地などを所有している場合には、制度の利用を検討しましょう。
4-3 孫の教育費や住宅購入を支援したいケース
相続発生を待たずに、今すぐ孫を経済的に支援したい場合にも、相続時精算課税制度は適しています。
教育費や住宅購入資金は、人生の早い段階で必要となることが多く、相続発生を待っていては資産を上手く活用できないケースも少なくありません。
相続時精算課税制度であれば、用途の制限なくまとまった金額を贈与できるため、孫の進学や住まいの取得といった重要なライフイベントを柔軟に支援できます。
4-4 相続トラブルを回避したいケース
生前に財産を整理し、孫へ明確に贈与しておくことで、将来の相続トラブルを予防しやすくなります。
誰にどの財産を渡すのかを生前に明確化することで、相続人の間の不公平感や争いを減らす効果が期待できるからです。
ただし、他の相続人とのバランスを欠き、孫の1人に多額の贈与をすると、かえって紛争の火種になる恐れもあるのでご注意ください。
5章 相続時精算課税制度の手続き方法・必要書類
相続時精算課税制度を利用して孫に贈与する場合、通常の暦年贈与とは異なる手続きが必要です。
まず、相続時精算課税制度の利用を開始する際には、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに相続時精算課税選択届出書を提出しましょう。
贈与額が110万円を上回る場合には、贈与税がかからなかったとしても贈与税申告書も提出しなければなりません。
申告時には、主に以下の書類が必要となります。
- 贈与税申告書
- 相続時精算課税選択届出書
- 贈与者(祖父母)と受贈者(孫)の続柄を確認できる戸籍謄本
- 贈与契約書(作成しておくことが望ましい)
- 登記事項証明書や固定資産評価証明書(不動産を贈与する場合)
相続時精算課税選択届出書は初回の申告時のみ必要であり、2年目以降は必要ありません。
また、不動産贈与を行う場合は、税務手続きとは別に所有権移転登記が必要となり、登録免許税や司法書士報酬などの費用も発生します。
まとめ
相続時精算課税制度は、孫への贈与にも活用できます。
利用すれば、早期に財産を移転できるものの、相続税の負担が重くなる恐れがあるのでご注意ください。
制度を利用すべきか判断するために、事前に贈与税と相続税の金額をシミュレーションしておくことをおすすめします。
また、孫に財産を譲る方法は、相続時精算課税制度以外にもいくつかあります。
自分に合う方法を知りたい場合には、相続に精通した専門家に相談してみるのもおすすめです。
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よくあるご質問
相続時精算課税制度利用時に孫の相続税は2割加算されますか?
相続時精算課税制度を利用し、孫に相続税がかかる場合、原則として2割加算の対象となります。
ただし、孫が代襲相続人となる場合には、例外的に2割加算が適用されません。
孫に相続するとき、いくらまでなら税金がかかりませんか?
相続税がかかるかどうかは、孫が取得した金額だけでなく、遺産総額によって判断されます。
相続財産の総額が、相続税の基礎控除額である「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に収まれば相続税は発生しません。
一方で、基礎控除を超える場合は、孫が取得した財産にも相続税が課税され、原則として2割加算が行われます。










