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自筆証書遺言の要件まとめ|記載例や作成時の注意点について

自筆証書遺言の要件まとめ|記載例や作成時の注意点について
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 6

自筆証書遺言とは、遺言者本人がすべて自筆で書く遺言書です。
作成時に費用がかからない、自分1人で気軽に作成できるなどのメリットがある一方で、内容に不備があると遺言書が無効になってしまうデメリットがあります。

自筆証書遺言に効力を持たせるには、要件を満たした遺言書を作成しなければなりません。
自筆証書遺言の要件には、遺言者が自著ですべて作成する以外にもいくつかあります。

要件を満たした遺言書の作成が難しい場合は、専門家に作成を依頼する、公正証書遺言の作成もご検討ください。

本記事では、自筆証書遺言の要件を作成例を交えて紹介します。
自筆証書遺言については、下記の記事でも解説しているのでご参考にしてください。

自筆証書遺言とは?書き方と作成するメリット・デメリット【まとめ】

1章 自筆証書遺言の要件

法的に有効な自筆証書遺言を作成するには、遺言者が自筆ですべて記載するなどの下記の5つの要件を満たさなければなりません。

  1. 遺言者が自筆で全文書く
  2. 作成日を自筆で書く
  3. 署名する
  4. 印鑑を押す
  5. 決められた方法で訂正する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1-1 遺言者が自筆で全文書く

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自筆証書遺言の遺言書部分は、遺言者本人がすべて手書きで作成しなければなりません。
注意すべき点は、署名以外も自著で作成する必要があり、下記の方法で作成された遺言書は無効になります。

  • 署名のみ自著で本文をパソコンで作成したもの
  • 録音や録画で作成したもの
  • 家族や専門家に代筆してもらったもの

なお民法改正により、自筆証書遺言に添付する財産目録のみは署名押印を自筆で行う以外の要件が緩和されました。
よって、財産目録に関しては下記の方法で作成された場合も有効です。

  • パソコンで財産目録を作成する
  • 家族や専門家に財産目録を代筆してもらう
  • 登記事項証明書や通帳のコピーなどを財産目録として添付する

なお、自筆以外で作成した財産目録は、それぞれのページに署名と押印を行わなければなりません。
さらに、自筆証書遺言と同じ紙に記載することは、認められていないのでご注意ください。

遺言書はパソコンで作成しても有効?パソコン使用時の注意点とは

1-2 作成日を自筆で書く

自筆証書遺言を作成する際には、下記のような正確な作成日を記載しましょう。

  • 令和4年4月3日
  • 2022年5月14日

逆に「令和4年4月吉日」などといった記載方法では、正確な日付がわからないので無効になってしまいます。
なお遺言書は法的に有効であれば、種類にかかわらず、作成日が最も新しいものが有効となります。

1-3 署名する

自筆証書遺言では、遺言者の自著による署名押印が必要です。
本人が作成した遺言書だと証明しやすくするため、署名の後に住所も書いておくことをおすすめします。

1-4 印鑑を押す

自筆証書遺言では、署名だけでなく押印も必要です。
印面が掠れてしまうと、自筆証書遺言が無効になる恐れがあるのでご注意ください。
印面が消えてしまうリスクを考慮して、朱肉を使用するのがおすすめです。

なお、自筆証書遺言に押す印鑑は法律によって決められていないため、認印でも問題ありません。
とはいえ、改ざんを防ぐ、自分が作成した遺言書だと証明しやすくするために実印を押すのが良いでしょう。

1-5 決められた方法で訂正する

自筆証書遺言では訂正方法についても、細かくルールが設定されています。
決められた方法で訂正されていない場合、訂正が無効となり訂正前の内容が効力を持ってしまうのでご注意ください。

自筆証書遺言の訂正方法については、本記事の2章で詳しく解説します。

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2章 要件を満たした自筆証書遺言の例

本記事の1章で解説したように、自筆証書遺言に効力を持たせるには記載方法や財産目録、訂正などの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 遺言書の記載例
  2. 財産目録の例
  3. 訂正をした場合の遺言書例
  4. 封印・封筒への記載例

上記について、要件を満たす書き方を具体例とともに解説していきます。

2-1 遺言書の記載例

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要件をすべて満たす遺言書の例は、上記の通りです。
上記のように、不動産の場合は登記簿謄本に書かれている情報を記載し、預貯金に関しては銀行名や支店名も正確に記載しましょう。

遺言書の作成方法をイラスト付きで解説!文例と注意点をわかりやすく紹介

2-2 財産目録の例

民法改正により、自筆証書遺言に添付する財産目録に関してはパソコンでの作成も認められています。
パソコンで作成した財産目録の例は、下記の通りです。

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また、財産目録に関してはパソコンで作成するだけでなく、通帳のコピーなどを財産目録として添付することも認められています。

【無料ダウンロード】財産目録で相続争い防止!作成方法と記載内容を解説

2-3 訂正をした場合の遺言書例

遺言書を訂正する際には、決められたルールに従い訂正しなければなりません。
自筆証書遺言の訂正例は、下記の通りです。

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自筆証書遺言の訂正時の要件は、下記の通りです。

  • 訂正したい本文に取り消し線を引いて、側に訂正後の文字を書く
  • 訂正した部分に訂正印を押す
  • 欄外の余白に訂正内容について記載する

上記のように、自筆証書遺言の訂正時の要件は非常に複雑であり、訂正が無効となった場合のリスクも大きいです。
そのため、訂正箇所が多い場合や訂正に不安がある場合は、自筆証書遺言の作成し直しも検討しましょう。

2-4 封印・封筒への記載例

自筆証書遺言の要件に、封筒や封印に関しては含まれていません。
そのため、封印されていない遺言書や封筒に入っていない自筆証書遺言も他の要件を満たしていれば効力を持ちます。

とはいえ、自筆証書遺言の信頼性を高める、改ざんリスクや紛失リスクを減らすためには、遺言書を封筒に入れ封印した方が良いでしょう。
自筆証書遺言の封印方法や封筒への記載例は、下記の通りです。

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上記のように、遺言書を入れた封筒は、押印し「封印」しましょう。
遺言書の効力に影響はありませんが、封筒に日付を記載し、署名、押印しておくと遺族に丁寧な印象を与えられます。

封をしていない遺言書も有効!検認手続きは必要?封をしないリスクとは

3章 自筆証書遺言を作成する流れ

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自分で自筆証書遺言を作成する際には、下記の流れで行いましょう。

  1. 自分が所有している財産の種類、金額を把握する
  2. 財産を特定できる資料を準備する
  3. 「何を、誰に、どれくらい」相続させるかを決める
  4. 遺言を書く
  5. 遺言書を封筒に入れて封印する

上記の手順であれば、自分で自筆証書遺言を作成できるはずです。
しかし、遺言書を作成する際には遺留分を考慮した遺言にする、受遺者が遺言者より先に死亡した場合の想定なども必要です。

相続に関する専門的な知識がない人が遺言書を作成した場合、希望する遺産分割を行えない、不測の事態に対応できないなどのリスクがあります。
そのため、希望する内容の遺産分割を確実に実行したい場合や遺族の負担やトラブルをできるだけなくしたいのであれば、相続を専門とする司法書士や弁護士に遺言書の作成を依頼するのがおすすめです。

遺言書の作成方法をイラスト付きで解説!文例と注意点をわかりやすく紹介

4章 自筆証書遺言を作成するときの注意点

自筆証書遺言は公正証書遺言と異なり、原本を自分で保管するため紛失や改ざんリスクがあります。
また、夫婦共同で1枚の遺言書を作成した場合は無効になるためご注意ください。

自筆証書遺言を作成する際には、下記の内容に注意しましょう。

  1. 自筆証書遺言には紛失・改ざんリスクがある
  2. 複数名による遺言書は無効になる
  3. ビデオレターや音声による遺言は無効になる
  4. 曖昧な表現を避ける
  5. 遺留分侵害しない遺言書を作成する
  6. 検認手続きが必要であることを遺族に伝えておく
  7. 遺言書に記載した財産を生前のうちに処分しても良い

それぞれ詳しく見ていきましょう。

4-1 自筆証書遺言には紛失・改ざんリスクがある

自筆証書遺言は原本を自分で保管する必要があるため、紛失や改ざんリスクが生じてしまいます。
紛失や改ざんリスクをゼロにしたいのであれば、法務局による自筆証書遺言保管制度を利用するか、公正証書遺言の作成をご検討ください。

法務局による自筆証書遺言制度とは名前の通り、作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度であり、下記のメリットがあります。

自分で書いた遺言書が法的な要件を満たしているか、法務局で確認してもらえる

  • 自筆証書遺言書を法務局で保管してもらえる
  • 保管制度を利用した自筆証書遺言書は、家庭裁判所での検認不要
  • 相続開始後に相続人は自筆証書遺言書のデータを閲覧可能
  • 相続人の一人が遺言書の情報を閲覧した際に、他の相続人に連絡が届く
  • 遺言者が死亡したとき、事前に指定した人物(法人)に遺言書が保管されていることを通知してもらえる

また、公正証書遺言を作成すれば、原本を公証役場で保管してもらえますし、公証人が作成するため形式不備による無効リスクもなくせます。

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法務局による自筆証書遺言の保管制度とは?申請方法について

4-2 複数名による遺言書は無効になる

遺言書は自分の分を作成する必要があり、共同作成は認められていません。
そのため、夫婦が共同で作成した遺言書などは無効になるので、ご注意ください。

4-3 ビデオレターや音声による遺言は無効になる

自筆証書遺言は遺言書を自著で作成する必要があるため、ビデオレターや録音による遺言は無効となります。
病気の後遺症などが原因で麻痺を負い遺言書の自著が難しい場合は、公正証書遺言の作成も視野に入れましょう。

なお、ビデオレターや録音データは遺言としての効力は持たないものの遺族に自分の思いを伝える手段としては有効です。
そのため、遺言書とは別にビデオレターや録音を遺しておくことは意義があるといえるでしょう。

4-4 曖昧な表現を避ける

遺言書に曖昧な表現を使用してしまうと、複数の解釈が考えられ、相続人同士でトラブルに発展する可能性があります。
「任せる」「渡す」などの曖昧な表現の使用を避け、財産を受け継ぐ相手に対しては下記の表現を使用しましょう。

  • 取得させる
  • 相続させる
  • 遺贈する

4-5 遺留分侵害しない遺言書を作成する

遺言書作成時には、遺留分侵害しない内容にすることが大切です。
遺留分とは、亡くなった人の配偶者や子供、両親が最低限度遺産を受け取ることができる権利です。
遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行い遺留分侵害額に相当する金銭を支払うように要求できます。

遺留分は遺言内容より優先されるため、「愛人にすべての財産を相続させる」などといった遺言書を作成すると、故人の配偶者や子供が愛人に対して遺留分を主張する可能性があります。

希望する遺産分割を実現させたい、相続トラブルを減らしたいと思って遺言書を作成したとしても、遺留分侵害した内容の遺言書を作成するとかえってトラブルに発展する恐れもあるためご注意ください。

相続に詳しい司法書士や弁護士であれば、遺留分侵害していない遺言書の作成や相続財産を減らしておくなどの遺留分対策のご提案も可能です。

遺言よりも遺留分が優先される!【効果的な5つの遺留分対策とは】

4-6 検認手続きが必要であることを遺族に伝えておく

自筆証書遺言は相続発生後に家庭裁判所での検認手続きが必要です。
検認手続きとは、遺言書の発見者や保管者が家庭裁判所に遺言書を提出して、相続人立会のもと開封し、遺言書の内容を確認することです。

検認手続きの済んでいない遺言書は相続手続きに使用できないだけでなく、封筒に入っていた遺言書を検認前に開封すると5万円以下の過料に処せられる恐れがあります。
そのため、自筆証書遺言の作成後は家族や親族に遺言書を作成した事実とともに検認手続きについても伝えておきましょう。

なお、法務局による自筆証書遺言の保管制度を利用した場合は、相続発生後の検認手続きが不要になります。
遺言書の検認手続きの概要および必要書類は、下記の通りです。

手続きできる人遺言書の保管者・遺言書を発見した相続人
手続き先故人の最後の住所地の家庭裁判所
費用収入印紙800円分 連絡用の郵便切手
必要書類遺言書の検認申立書 遺言書 相続関係がわかる戸籍謄本など(除籍、改製原戸籍など)
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4-7 遺言書に記載した財産を生前のうちに処分しても良い

「遺言書に記載した財産は必ず、指定した人物に受け継がなければならない」と誤解されがちですが、遺言書に記載した財産を遺言者が使用、処分してしまっても全く問題ありません。
単純に老後の生活費として使用しても良いですし、「長男に財産を遺したくないから長男に遺す予定だった財産を使用する」などの理由も認められています。

遺言書に記載された財産の一部を使用した場合、使用した財産に関する内容は無効になり、残りの部分に関しては効力を持ち続けます。

そのため「まだ老後のことがわからないから遺言書を作成できない」と考えるのではなく、早い段階から不測の事態に備えて遺言書を作成しておくことが大切です。
相続対策や遺言書の作成について何から始めればよいかわからない、自分の希望を整理するところから始めたい場合は相続に詳しい司法書士や弁護士への相談もご検討ください。

遺言で失敗したくない方へ。相続業務に特化した司法書士・行政書士がベストな遺言を提案します!

まとめ

自筆証書遺言に効力を持たせるには、すべて自著で作成する、作成日を記載しておくなどの要件を満たさなければなりません。
法務局による自筆証書遺言の保管制度を利用すれば、自筆証書遺言が法的要件を満たしているか確認してもらえるので、自分で遺言書を作成した場合は利用するのが良いでしょう。

しかし、自分で遺言書を作成した場合、遺言書の内容が遺留分を侵害しているなど内容の不備が生じるリスクがあります。
そのため、遺言書の内容を確実に実現させたい、相続トラブルや遺族の負担を減らしたいのであれば相続を専門とする司法書士や弁護士に遺言書の作成を依頼するのが良いでしょう。

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