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【雛形付】全財産を特定の人物に相続させる公正証書遺言の作成方法

【雛形付】全財産を特定の人物に相続させる公正証書遺言の作成方法
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 7

全財産を配偶者など特定の人物に相続させたいときには、公正証書遺言の作成がおすすめです。
公正証書遺言を作成しておけば、遺された家族の相続手続きの手間を減らせますし、相続人同士のトラブルも回避しやすくなります。
ただし、公正証書遺言を作成する際には遺留分対策や遺言執行者の選任などいくつか注意しなければならない点もあります。

また、公正証書遺言の作成は自分で行えますが、司法書士や弁護士に依頼すれば作成の手間を減らせるだけでなく、相続対策に関する提案や相続トラブルを回避するためのアドバイスも受けられるのでおすすめです。

本記事では、全財産を特定の人物に相続させるときの公正証書遺言の作成方法を紹介していきます。
公正証書遺言については、下記の記事でも詳しく解説しています。

公正証書遺言の必要書類と遺言作成の流れ【簡単チェックリスト付】

1章 全財産を特定の人物に相続させる公正証書遺言の作成は可能

結論から言うと、全財産を特定の人物に相続させることは可能です。
公正証書遺言書に「全財産を妻である〇〇に遺す」と記載しておくことも問題ありません。

ただし、故人の配偶者や子供、両親には最低限度遺産を相続できる権利である遺留分が認められています。
特定の人物に財産を相続させる公正証書遺言を作成しても、遺留分を侵害した部分に関しては無効になるのでご注意ください。
遺留分対策を始めとした公正証書遺言作成時の注意点については、本記事の3章で詳しく解説していきます。

次の章では、全財産を特定の人物に相続させる公正証書遺言を作成する流れについて詳しく確認していきましょう。

遺言で失敗したくない方へ。相続業務に特化した司法書士・行政書士がベストな遺言を提案します!

2章 全財産を特定の人物に相続させる公正証書遺言の作成方法

公正証書遺言作成の流れ

遺言書の内容に関わらず、公正証書遺言は上記の流れで作成可能です。
それぞれの手順について詳しく解説していきます。

公正証書遺言の作成は自分でも行えますが、司法書士に依頼することも可能です。
司法書士に依頼した場合、遺言書の作成だけでなく相続対策の提案や相続トラブル回避のアドバイスなども受けられます。
遺言書作成の手間を減らしたい、ミスや将来発生する相続トラブルを回避したいとお考えの人は、司法書士への依頼がおすすめです。

STEP① 自分の財産を把握する

まずは、自分が所有する財産の金額や種類を把握しておきましょう。
全財産を特定の人物一人に相続させる場合でも、下記の目的で自分の資産状況を整理しておくことをおすすめします。

  • 相続発生時に手続きをスムーズにする
  • 他の相続人とのトラブルを避ける

相続財産に含まれるものについては下記の記事で詳しく解説しています。

相続財産とは?【簡単】正しく理解するために知っておくべき基礎知識

STEP② 必要書類を準備する

全財産を特定の人物一人に相続させたい場合、「誰にどの財産を相続させるか」はすでに決まっています。
そのため、財産状況の把握が完了したら必要書類の準備を進めましょう。
公正証書遺言作成に必要な書類は、下記の通りです。

公正証書遺言作成に必要な書類等の一覧

なお、公正証書遺言には証人2人も必要ですので合わせて準備しておきましょう。

公正証書遺言の証人の準備方法

公正証書遺言作成時に必要な証人2人の準備方法は、下記の通りです。

  1. ご自身で証人になってくれる人を探す
  2. 司法書士や弁護士などの専門家に依頼する
  3. 公証人役場で証人を準備してもらう

なお、以下の人は証人になれないのでご注意ください。

  • 推定相続人や受遺者、配偶者、直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇人

証人について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参考にしてください。

公正証書遺言の証人資格・準備方法・必要物・当日の流れ・責任とは?

STEP③ 最寄りの公証人役場を調べる

必要書類の準備が完了したら、全国各地に約300ヶ所ある公証人役場のうち、最寄りの役場を探しましょう。

STEP④ 公証人と事前の打ち合わせをする

事前に担当してくれる公証人と打ち合わせをし、遺言書の案を作成するための必要書類を提出しましょう。公証人との事前打ち合わせの内容は、主に下記の通りです。

  • 遺言者について
  • 相続人について
  • 遺言の内容
  • 証人の準備について
  • 遺言作成の日時、場所

遺言書作成場所は原則として公証人役場になりますが、体調不良などが理由で公証人役場に行くことが難しい場合には自宅や病院などへ公証人に出張してもらえます。
また、公正証書作成時には以下の手数料がかかります。

公正証書遺言の作成方法金額
公証人役場で作成してもらう財産額が1億円以下の場合は3万円~8万円程度
公証人に自宅・病院などに出張してもらう財産額が1億円以下の場合は8万円~15万円程度
公正証書遺言の作成にかかる費用まとめ【専門家別の報酬も紹介】

STEP⑤ 遺言書を作成する

公証人との打ち合わせが完了した後は、作成当日に実際に遺言書を作成します。
作成当日の流れは、下記の通りです。

  1. 公証人が遺言者、証人の本人確認をおこなう
  2. 公証人が遺言書の原案を読み上げる
  3. 遺言者、証人が遺言内容を確認する
  4. 遺言者、証人、公証人が遺言書原本に署名押印する
  5. 遺言書の正本、謄本の交付を受ける
  6. 公証人手数料を現金で支払う
自分で遺言書を作成する方法!文例付きで書き方や注意点を簡単解説

3章 公正証書遺言を作成するときの注意点

公正証書遺言を作成し将来発生する相続トラブルの回避や遺族の負担軽減をするためには、以下の4点に注意が必要です。

  1. 遺留分対策をしておく
  2. 遺言執行人を選任しておく
  3. 予備的な内容を定めておく
  4. 証人が欠格事由に該当しないか注意する

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1 遺留分対策をしておく

全財産を一人の人物に相続させる公正証書遺言を作成する際には、遺留分対策をしておきましょう。
遺留分とは、亡くなった人の配偶者や子供などが最低限度遺産を受け取れる権利です。

例えば、愛人に全財産を相続させる内容の公正証書遺言を作成したとしても、故人の配偶者や子供が遺留分を請求した場合には、愛人が遺留分相当額を支払わなければなりません。
公証人は遺言書の内容が正しいかは判断してくれますが、将来発生しうる相続トラブルについてはアドバイスを原則してくれません。

相続対策に詳しい司法書士や弁護士に相談して遺留分トラブルに発展しない遺言書の作成をしてもらうのが良いでしょう。
司法書士や弁護士であれば、生前贈与や生命保険の活用といった遺留分対策にも対応可能です。

遺言よりも遺留分が優先される!【効果的な5つの遺留分対策とは】

3-2 遺言執行者を選任しておく

全財産を特定の人物に相続させる公正証書遺言を作成するのであれば、遺言執行者も合わせて選んでおきましょう。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために手続きを行う人物です。

遺言執行者を選任しておくメリットは、主に下記の通りです。

  • 遺言の内容を確実に実行できる
  • 相続手続きをスムーズに進められる
  • 相続人同士のトラブルを回避できる
  • 受遺者が遺言書の内容を他の相続人に伝えなくてすむ

全財産を特定の人物に相続させる場合には、他の相続人と相続トラブルに発展する恐れもあります。
自分だけが財産を相続すると書かれた遺言書を自ら他の相続人に伝えなくてすむようにするためにも遺言執行者を選任しておくのがおすすめです。

遺言執行者とは|誰がなれる?選任方法や仕事内容を徹底解説【完全版】

3-3 予備的な内容を定めておく

相続は人が亡くなったときに発生するので、発生タイミングを完全に予測することは不可能です。
予測していた相続の順番にズレが生じても問題ないように、遺言書には予備的な内容も定めておきましょう。

例えば、全財産を妻に残すと公正証書遺言に記載していたものの妻が遺言者よりも先に亡くなってしまう可能性もあります。
予備的な遺言を設定しておかないと、上記のケースではせっかく遺言書を作成したにもかかわらず、妻が相続する予定だった遺産を誰が相続するのか遺産分割協議によって話し合わなければなりません。

自分の意図しない遺産分割が行われるのを防ぐ、遺された家族の負担を少しでも軽減するためにも、公正証書遺言作成時には予備的な内容を定めておきましょう。

3-4 証人が欠格事由に該当しないか注意する

公正証書遺言作成時には証人が2人必要であり、証人は自分で見つけるもしくは公証人役場で準備してもらう必要があります。
証人になれるのは以下に当てはまる欠格事由に該当しない人なのでご注意ください。

  • 未成年者
  • 推定相続人・受遺者及びその配偶者並びに直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇人

公正証書遺言は遺言書そのものは公証人が内容を保証するので信頼性は高いです。
一方で、遺言書作成時の判断能力の有無や証人が欠格事由に該当するなどで無効を主張される恐れがあるので注意しましょう。

公正証書遺言の証人資格・準備方法・必要物・当日の流れ・責任とは?

4章 遺言書作成以外でできる相続対策

相続対策は遺言書作成以外にも以下の3つの方法があります。

  1. 生前贈与
  2. 生命保険
  3. 家族信託

それぞれメリットとデメリットがあるので、自分に合った相続対策を行う、複数の相続対策を組み合わせることが大切です。
それぞれの相続対策について詳しく解説していきます。

4-1 生前贈与

生前贈与とは?

生前贈与をすれば、自由なタイミングで自分の財産を配偶者や子供に渡せます。
生前贈与をすると贈与税がかかりますが、毎年110万円の基礎控除の範囲内であれば贈与税はかかりません。

相続対策に生前贈与を活用するのがおすすめな人の特徴は、下記の通りです。

  • 自分が死亡する前に財産を受け継ぎたい人
  • 贈与者の年齢が若く暦年贈与で相続税や贈与税を節約できそうな人
  • 贈与税の控除や特例を適用できそうな人
生前贈与とは?メリット・デメリットや贈与税の計算方法について

4-2 生命保険

生命保険を活用すれば、希望する人物に財産を遺せます。
また、生命保険金は故人の死亡後すぐに支払われるので、葬儀費用の支払いや遺された家族の当面の生活費、入院費用の支払いにも充てられます。
また、生命保険金は遺産分割の対象ではないので、遺留分として支払う現金を用意するのにも適しています。

一方で、生命保険金は相続税の課税対象財産には含まれるのでご注意ください。
また、元本割れやインフレリスクなどもあるので生命保険だけで相続対策を行わず、他の相続対策と組み合わせるのがおすすめです。

生命保険で生前贈与を行う方法まとめ【メリット・デメリットも紹介】

4-3 家族信託

家族信託とは、自分の財産を「誰に」「どのような目的で」「いつ」渡すかをあらかじめに契約し、その財産を管理できる権利を移して、その契約を確実に実行させていくこと。

家族信託とは、あらかじめ決めておいた契約内容に基づき、信頼できる家族に自分の財産の管理や運用、処分を任せられる制度です。
家族信託は柔軟な財産管理が可能であり、以下のメリットがあります。

  • 契約内容によっては財産の積極的な運用や処分も可能
  • 家族間の信託契約なのでランニングコストがほとんどかからない
  • 二次相続対策まで可能

家族信託では自分が亡くなったときに財産を受け継ぐ相手を指定するだけではなく、次の代の相続発生時に財産を受け継ぐ人物も指定可能です。
そのため、自分が亡くなったときは不動産を配偶者に相続させ、配偶者が亡くなったときは自分の甥や姪に相続させるように指定できます。

先祖代々所有している不動産を自分の血縁者に受け継いでいってほしいと考えている人にも、おすすめの制度といえるでしょう。

家族信託とは|メリット・デメリットや活用事例をわかりやすく解説

まとめ

全財産を特定の人物に相続させることは可能ですし、公正証書遺言を作成しておけば相続発生後に希望の内容で遺産分割をしてもらえます。
子供がいなく配偶者に全ての財産を遺したい場合には、公正証書遺言を作成しておくと他の相続人と配偶者の相続トラブルを回避できる可能性が高まります。

公正証書遺言の作成は自分で行えますが、司法書士や弁護士に依頼すれば遺言書の作成だけでなく資産状況や希望に合った相続対策や将来の相続トラブルを回避する方法も提案してもらえます。
遺された家族の負担を減らしたい、自分が希望する遺産分割方法を実現したい人は相続に詳しい司法書士や弁護士への相談がおすすめです。

グリーン司法書士法人では、遺言書作成を始めとする相続に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですのでまずはお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

公正証書遺言の作成費用の相場はいくら?

公正証書遺言の作成費用相場は、41,000~405,000円程度です。
▶公正証書遺言の作成費用について詳しくはコチラ

公正証書遺言を作成する流れは?

公正証書遺言を作成する流れは下記の通りです。
相続・遺言に詳しい司法書士事務所を探す
無料相談の予約をする
司法書士が遺言者本人(または家族から)遺言者の希望と必要な情報を聞き取る
司法書士が遺言者のおかれた状況をふまえ最適な遺言内容を提案する
司法書士が公証人役場と打ち合わせをする
遺言書の草案を遺言者本人が確認する
司法書士が遺言作成の日時を予約する
公証人が証人2名(うち1名司法書士)の前で遺言者の本人確認を行い、用意していた遺言書の原案を読み上げる 
内容に間違いがなければ、遺言者本人が遺言書の原案に署名押印する 
続いて証人2名(うち1名司法書士)、公証人が遺言書の原案に署名押印する
こちらで保管しておく公正証書遺言書(正本・謄本)を受け取る
▶公正証書遺言作成の流れについて詳しくはコチラ

全財産を妻に相続させる遺言書は書ける?

全財産を妻や夫に遺すと遺言書で指定することは可能です。
ただし、相続人に子供や両親などがいる場合は、遺言書を作成しても遺留分侵害額請求をされる可能性がある点に注意しなければなりません。
▶遺言と遺留分の関係について詳しくはコチラ

公正証書遺言でもめることはありますか?

公正証書遺言を作成したのに、もめてしまうケースは主に下記の通りです。
・遺言の効力が争われる
・遺言者が認知症だった
・勘違い・誤解によって公正証書遺言が作成された
・証人が欠格事由に該当していた
・公証人への口授要件を満たしていなかった
・遺言書の内容が遺留分を侵害している
・遺言書に記載されていない遺産があった
・遺言書の内容が公序良俗に違反している
・遺言書が相続人の想像と異なるものだった
▶公正証書遺言作成後にもめるケースについて詳しくはコチラ

公正証書遺言があると遺留分はどうなる?

遺言書の内容よりも遺留分が優先されるため、公正証書遺言があっても遺留分を侵害している場合、遺留分侵害額請求を行えます。
▶遺言と遺留分について詳しくはコチラ

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