公正証書遺言を作成するには、遺言が本人のものであることや本人の意思によって作成されたことを証明する証人が2名必要です。
公正証書遺言の証人になる人物は、未成年者や将来の相続人になる人物など以外であれば誰でもなれます。
そのため、司法書士や弁護士など資格を持った専門家だけでなく、知人や友人に公正証書遺言の証人を依頼することも可能です。
本記事では、公正証書遺言の証人になれる人物や証人を依頼する方法を紹介していきます。
記事の最後では自分が公正証書遺言の証人になったときにすべきことも紹介するのでご参考にしてください。
公正証書遺言については、下記の記事でも詳しく解説しています。
目次
1章 公正証書遺言作成時には証人が2人必要
公正証書遺言とは、公証役場で原本を保管してもらう形式の遺言書です。
公正証書遺言は公証人によって内容を証明してもらえますし、原本を公証役場で保管できるので遺言書の改ざんや紛失のリスクを失くせます。
信頼性が高く最もおすすめできる遺言書が公正証書遺言といえますが、公証役場で作成する際には2人の証人による立会いが必要です。
公正証書遺言の証人が必要な理由は、以下の通りです。
- 遺言者に人違いがないことを確認するため
- 遺言者が正常な判断により、自らの意思で遺言していることを確認するため
- 遺言者の真意を確保し、後日の紛争を防止するため
なお、公正証書遺言の証人を誰に依頼するかは、遺言者が自由に決められます。
次の章では、公正証書遺言の証人になれる人物となれない人物について詳しく確認していきましょう。
2章 公正証書遺言の証人になれない人は誰?
公正証書遺言の証人になるためには、司法書士や弁護士などといった専門的な資格は特に必要ありません。
後述する公正証書遺言の証人になれない人物以外であれば、誰でもなることが可能です。
公正証書遺言の証人になれない人物は、下記の通りです。
- 未成年者
- 推定相続人や受遺者・これらの配偶者や直系血族
- 公証人の配偶者や四親等内の親族・書記および使用人
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 未成年者
未成年者は十分な判断能力がないとされるので、公正証書遺言の証人になることはできません。
2-2 推定相続人や受遺者・これらの配偶者や直系血族
将来的に相続人になることが予想される親族や遺言書によって財産を受け取る受遺者は公正証書遺言の証人になることができません。
また、推定相続人や受遺者の配偶者や直系血族も同様に、公正証書遺言の証人にはなれません。
推定相続人になる人物は、以下の通りです。
- 遺言者の配偶者
- 遺言者の子供
- 遺言者の親(子供がいない場合)
- 遺言者の兄弟姉妹(子供や親がいない場合)
さらに、上記の推定相続人の直系血族や配偶者も公正証書遺言の証人になれないので、上図のイラストのように親族はほとんど公正証書遺言の証人になれないと思った方が良いでしょう。
また、自分を長年面倒見てくれた内縁の妻や長男の嫁などに財産を遺したい場合、下図のように遺言書によって財産を渡すと指定した人物の直系血族も公正証書遺言の証人になれません。
2-3 公証人の配偶者や四親等内の親族・書記および使用人
公正証書遺言作成時には証人のみでなく公証人も立会います。
公証人の不正を防ぐために、公証人に近しい人物は証人として認められないと決められています。
公正証書遺言の証人は、本章で紹介した証人になれない人物(欠格者)以外であれば誰がなっても法律上は問題ありません。
次の章では、公正証書遺言の証人を見つける方法や方法別の費用相場を解説していきます。
3章 公正証書遺言の証人を見つける方法・費用相場
公正証書遺言の証人は原則として自分で見つける必要があります。
証人を見つけ、依頼する方法は主に下記の3つです。
- 遺言書を作成した司法書士や弁護士・行政書士に依頼する
- 公証人役場で紹介してもらう
- 信頼できる知人や友人に依頼する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 遺言書を作成した司法書士や弁護士・行政書士に依頼する
公正証書遺言を専門家に依頼する場合、証人もセットで依頼できるケースがほとんどです。
司法書士や弁護士、行政書士などの専門家には守秘義務があるので、遺言書の内容を秘密にしておきたい場合におすすめできます。
費用相場は司法書士や行政書士であれば、遺言書作成とセットで10~15万円前後から依頼可能です。
弁護士に依頼する場合は司法書士や行政書士より高額で1.5~2倍程度かかると思った方が良いでしょう。
3-2 公証人役場で紹介してもらう
公正証書遺言の作成を行う公証役場でも証人になる人物を紹介してもらえます。
証人を紹介してもらった場合には、証人に対して6,000~7,000円程度の報酬の支払いが必要です。
司法書士や弁護士など専門家に証人になってもらうより費用を節約できるので、遺言書の作成は自分で行ったものの証人が見つからない場合などに利用を検討するのがおすすめです。
紹介時の報酬は公証役場によって金額が異なるので確認しておきましょう。
3-3 信頼できる知人や友人に依頼する
2章で解説したように、公正証書遺言の証人になるには特別な資格などは必要ありません。
そのため、信頼できる知人や友人に証人になってもらうことも可能です。
知人や友人に公正証書遺言の遺言になってもらうときには、以下の人物を選ぶのが良いでしょう。
- プライベートなことまで知られても問題ない人
- 口が堅い人
- 信頼できる人
知人や友人に公正証書遺言の証人を依頼する場合は報酬に関しては決まっていないので、絶対に支払わなければならないものではありません。
ただし、一人あたり5,000~1万円程度のお礼を渡すケースも多いようです。
本章までは公正証書遺言の証人になれる人物や依頼方法について解説していきました。
次の章では、自分が公正証書遺言の証人になったときの当日の流れやすべきことを確認していきましょう。
4章 自分が公正証書遺言の証人になったときの流れ
公正証書遺言の証人を依頼されたときには、作成当日に公証人役場にて以下の手順で遺言書の確認をします。
- 公証人役場(自宅や病院など遺言の作成場所)へ行く
- 公証人が読み上げる遺言内容と遺言者の真意、意思を確認する
- 遺言書原本に署名と押印をする
公正証書遺言の作成にかかる時間は30分から1時間程度です。
公正証書遺言の作成は平日9:00~17:00の公証人役場が開庁している時間に行われます。
作成当日には証人も本人確認書類や印鑑を持参しておく必要があります。
当日準備すべきものについてみていきましょう。
4-1 準備するもの
公正証書遺言の証人になった人が当日に準備、持参するものは下記の2点です。
- 本人確認書類(免許証、写真付住基カードなど)
- 認印
公正証書遺言の証人になった場合、署名押印をした遺言書に対して責任を負わなければなりません。
詳しく見ていきましょう。
4-2 証人としての責任
公正証書遺言の証人になった人物は、遺言書に関して以下の責任を負う必要があります。
- 相続発生後に遺言書の有効性などについて、争いになったときに裁判で証言を求められる可能性がある
- 裁判により遺言書が無効になった場合など、証人の過失により不利益を被った遺族から損害賠償請求される可能性がある
上記のように、自分が証人になった遺言書がもとで相続トラブルが起きると、トラブル解決に巻き込まれる恐れもあります。
証人が故意もしくは過失により遺言書の問題点に気付かなかった場合、損害賠償責任が発生する可能性もあるので慎重に署名と押印をしましょう。
まとめ
公正証書遺言作成時には証人が2人必要です。
証人は以下の欠格者以外の人物であれば誰でもなることができ、資格などは必要ありません。
- 未成年者
- 推定相続人や受遺者・これらの配偶者や直系血族
- 公証人の配偶者や四親等内の親族・書記および使用人
知人や友人などに依頼することもできますが、遺言書を司法書士や弁護士などに作成してもらうのであれば、セットで証人になってもらうのがスムーズでおすすめです。
多くの司法書士や弁護士事務所では、公正証書遺言の作成と証人サービスをセットで提供しているので、まずは見積もりを取ってみるのが良いでしょう。
グリーン司法書士法人でも公正証書遺言の作成および証人サービスを行っています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですのでまずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
公正証書遺言でもめるケースとは?
下記のケースでは、公正証書遺言の有効性が争われ、トラブルに発展する恐れがあります。
・遺言能力がなかった
・証人が欠格事由に該当していた
・遺言書の内容が公序良俗に反していた
・遺言者が脅迫や詐欺、錯誤にあっていた
・遺言書の内容が遺留分を侵害していた
▶公正証書遺言のトラブルについて詳しくはコチラ公正証書遺言の証人の謝礼はいくら?
公正証書遺言の証人を友人や知人に依頼した場合、5,000円から1万円程度の謝礼を用意することもあります。