- 税務署が個人の銀行口座を調べる方法がわかる
- 税務署によるお尋ね・税務調査が行われやすいケースがわかる
税金の申告漏れや無申告などが疑われるケースでは、税務署は個人の銀行口座を調査できます。
税務署が個人の銀行口座を調べるときは過去10年分の取引を調べるケースが多いですし、調査対象者だけでなく家族や親族、関係者の口座も調査可能です。
他にも、税務署が不審に思う点があれば細かく追及し必要な書類を提出するように求めてきます。
また、税務署は過去に行われた報告や申請から海外送金も把握していますし、税務署が把握している銀行口座の送金先を調べて隠し口座を見つけることも容易です。
そのため、隠し口座やタンス預金などで相続税を少なく申告するのはほぼ不可能でしょう。
本記事では、税務署は個人の口座をどのように調べるのか、税務署によるお尋ねや税務調査が行われやすいケースを解説します。
目次
1章 税務署は個人の口座を調べられる
税務署の調査権限は強力であり、税務調査の際には個人の銀行口座を調べられます。
また、調査対象者本人だけでなく家族や親族、その他関係者の口座も調査可能です。
申告漏れや無申告は高確率で税務署にばれてしまうので、相続発生時に財産隠しや過去に行われた生前贈与を隠すことはやめた方が良いでしょう。
2章 税務署が個人の銀行口座を調べる方法
相続税の申告漏れや無申告が疑われ、税務署が個人の銀行口座を調べるときは10年分にもおよぶ資金の移動を調査可能です。
また、調査対象者本人だけでなく、家族や親族、関係者の口座も調べます。
税務署が個人の銀行口座を調べる主な方法は、下記の通りです。
- 税務署は10年分の資金移動を調査できる
- 相続税では故人だけでなく関係者の口座も調査される
- 税務署は申告した銀行口座以外も調査できる
- 税務署は海外資産も調査できる
- マイナンバーと銀行口座の紐づけが進む可能性もある
- 税務署は不明出金があると解明するまで調査する
それぞれ解説していきます。
2-1 税務署は10年分の資金移動を調査できる
税務署が個人の銀行口座を調べる際には、過去10年分の資金移動を調査することが多いです。
銀行などの金融機関では過去10年分の取引履歴を保管しているからです。
相続税の税務調査でも、過去10年にわたる資金の移動を調査します。
相続税の時効は5〜7年なので、税務署に個人の銀行口座を調べられたら高確率でバレるでしょう。
2-2 相続税では故人だけでなく関係者の口座も調査される
税務署が相続税の調査をするときは、故人だけでなく相続人などの関係者の銀行口座も調査します。
そのため、相続税の申告漏れや無申告だけでなく、過去に行われた贈与税の申告漏れについてもばれてしまう可能性が高いです。
例えば、故人が亡くなる前に多額の預貯金を引き出していた場合、税務署は相続人や親族に生前贈与をしていないか関係者の銀行口座を調査して資金の移動先を把握します。
2-3 税務署は申告した銀行口座以外も調査できる
税務署は相続税の申告書に記載していない銀行口座に関しても調査を行えます。
そのため、いわゆる隠し口座やタンス預金を作成しておき、故人の相続財産を少なく申告することは難しいでしょう。
隠し口座がバレてしまうのは、隠し口座に入金するときのお金の流れを税務署が調査するからです。
また、税務署は国税総合管理システム(KSK)で過去に行われた申告状況や口座を把握しているため、隠し口座への入金や多額の出金は気付かれてしまいます。
2-4 税務署は海外資産も調査できる
海外口座への送金や一定額を超える海外資産の保有も税務署にはばれてしまいます。
下記のケースでは、税務署への報告が義務付けられているからです。
- 海外へ100万円以上送金する場合
- 1年間で5,000万円以上の海外資産を保有している場合
上記の報告が義務付けられているため、タンス預金を海外口座に送金することや海外資産を隠して相続税申告をするのも難しいでしょう。
2-5 マイナンバーと銀行口座の紐づけが進む可能性もある
今後、マイナンバーと銀行口座の紐付けが進めば、税務署に個人が所有している銀行口座を隠し通すことが難しくなるでしょう。
現在もマイナンバー制度を用いて、税務署は個人の所得や資産状況を把握しています。
マイナンバー制度と銀行口座を紐付けできれば、税務署が調査しやすくなり業務効率が上がると考えられます。
そのため、口座開設時のマイナンバー提出やすでに所有している口座とマイナンバーの紐付けが義務付けられる可能性も十分にあるでしょう。
2-6 税務署は不明出金があると解明するまで調査する
税務署が相続税の調査を行うとき故人の口座から使途不明な出金があると、徹底的に調査をします。
- 過去に行われた無申告の生前贈与
- タンス預金
- 隠し口座への入金
- 故人が生前した高額な買い物
税務署は個人の所得や資産状況も把握しているので、上記の行為はばれてしまう可能性が高いです。
3章 税務署によるお尋ね・税務調査が行われやすいケース
税務署は個人の銀行口座を調査できますし、所得や資産状況もある程度把握しています。
そのため下記のように相続税の申告漏れや無申告が疑われるケースでは、税務署によるお尋ねや税務調査が行われる恐れがあります。
- 税務署が把握している財産より相続税申告された財産が少ない
- 資産・収入状況に見合わない出金や買い物をしている
- 相続税申告書を税理士が作成していない
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 税務署が把握している財産より相続税申告された財産が少ない
税務署が予想している相続税額よりも著しく少なく申告された場合や申告をしなかった場合は、相続税のお尋ねや税務調査が行われやすいです。
税務署は過去の様々な税金の申告状況から、個人の所得や資産状況を把握しているからです。
なお、相続が発生し役所で死亡届が提出されると、税務署にも連絡が届きますそのため、資産家が亡くなり相続税が発生したことも税務署は気付きますし、家族状況も把握しているのでおおよその納税額も予想しています。
3-2 資産・収入状況に見合わない出金や買い物をしている
故人や相続人が資産や収入、生活に見合わない出金や買い物をしたタイミングで、税務署からお尋ねや税務調査が行われる場合があります。
- 故人が生活費とは考えられない高額な出金を繰り返している
- 相続人や故人の家族、親族が収入に見合わない高額な買い物をしている
上記のケースでは相続税の申告漏れだけでなく、タンス預金や現金手渡しでの贈与が疑われ税務署から指摘される恐れがあります。
3-3 相続税申告書を税理士が作成していない
相続税申告書を税理士に依頼せず相続人が自分で作成しているケースも、お尋ねや税務調査が行われやすいです。
相続税申告は専門的な知識や経験が必要であり、自分で申告書を作成した場合ミスが発生している可能性があるからです。
また、税理士が申告書作成を行い書面添付制度にて申告書の内容を証明していれば、適正申告である可能性が高いと税務署が判断しやすくなります。
4章 相続税を無申告・申告漏れするリスク
税務署からのお尋ねや税務調査の結果、相続税の無申告や申告漏れがバレると、追徴課税などのペナルティが発生する恐れがあります。
また、相続税の配偶者控除や小規模宅地等の特例など期限内申告が適用要件となっている制度を利用できなくなる恐れもあるのでご注意ください。
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 無申告や申告漏れはペナルティが加算される
相続税がかかるのに申告していなかった場合や本来の納税額より少なく申告していた場合は、無申告加算税や延滞税などのペナルティがかかります。
相続税の無申告や申告漏れ時に発生するペナルティは、下記の4つです。
ペナルティ | 概要 |
延滞税 | 相続税の納付が遅れたときに発生する |
無申告加算税 | 期限内に相続税の申告書を提出しなかった際に発生する |
過少申告加算税 | 相続税期限内に申告書を提出したものの申告税額が本来納付すべき金額よりも少なかった際に発生する |
重加算税 | 相続税を払わなくてすむようにするために、意図的に財産隠しや偽装などを行った場合に発生する |
4-2 相続税の控除・特例が利用できない恐れがある
相続税には様々な控除や特例が用意されていますが、いくつかの控除や特例は相続税の期限内申告が適用要件となっています。
具体的には、下記の2つを利用して相続税を節税するのであれば、相続発生から10ヶ月以内に申告書の提出が必要です。
控除・特例 | 概要 |
小規模宅地等の特例 | 相続した土地の評価額が最大80%減額される制度 |
相続税の配偶者控除 | 配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円まで相続税がかからなくなる制度 |
上記の控除や特例を利用した結果、相続税額が0円になったとしても申告は必要であり、無申告だと税務署からお尋ねや税務調査が来る恐れがあります。
まとめ
税務署の調査権限は非常に強力であり、口座名義人の同意がなくても銀行口座の取引履歴などを調べることが可能です。
税務署が調査する銀行口座の取引履歴は10年と長いですし、調査対象者だけでなく家族や親族、関係者などの口座も調査できます。
隠し口座やタンス預金などで相続財産を少なく申告することは難しいですし、過去に行われた生前贈与なども相続発生時に気付かれる可能性が高いです。
相続財産が多いと相続税の負担もそれだけ重くなりますが、適切に申告書を作成し納税するのが結果的には最も面倒が少ない選択肢となっています。
相続税申告は自分で申告書を作成するとミスが発生しやすく、お尋ねや税務調査が来る確率も上がります。
そのため、相続に詳しい税理士に相続税の申告書作成を依頼するのも良いでしょう。
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