相続税の申告漏れ・忘れが起きてしまうケース|発生時の対処法とは

相続税の申告漏れ・忘れが起きてしまうケース|発生時の対処法とは
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 6

相続税の申告漏れや申告忘れは決して珍しいことではなく、相続税の課税対象者のうち2割ほどが税務署から指摘を受けています。
相続税の申告漏れや申告忘れが起きてしまう原因としては、相続財産に漏れがある、特例を適用し相続税がかからなくなり申告不要だと判断してしまったなどが多いです。

悪意がなかったとしても相続税の申告漏れや申告忘れが発見されると、延滞税などのペナルティを支払わなければなりません。

相続税の申告漏れや申告忘れを防ぐためには、相続に精通した税理士に相続税の計算や申告を依頼する、相続財産調査を漏れなく行うなどが大切です。

本記事では、相続税の申告漏れや申告忘れが起きてしまう原因や発生時のペナルティ、対処法を解説します。
相続税については下記の記事でも詳しく解説しているので、ご参考にしてください。

相続税とは?基礎知識から具体的な計算方法や節税対策まで簡単解説

1章 相続税の申告漏れ・忘れが指摘される割合

相続税の申告漏れや申告忘れを税務署に指摘され、実地調査の対象となるのは約2~3割です。
また相続税の実地調査が行われると、約8~9割の人が申告漏れや申告忘れなど税法に違反する行為があったことを発見されてしまいます。

相続税の申告漏れ・忘れが指摘される割合

例えば、令和3年度は税務署による実地調査が6,317件行われたのに対し、申告漏れなどの違反行為を指摘された件数は5,532件です。
このように、実地調査を受けた人のうち87.6%が違反行為を指摘される結果となりました。

相続税の申告において約2~3割といった決して少なくない人数が税務調査の対象になること、税務調査の対象になるとほとんどの人が違反行為を指摘されることは前提として押さえておきましょう。

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2章 相続税の申告漏れ・忘れが起きてしまうケース

相続税の申告漏れや申告忘れは財産隠しなど意図的に行うものだけでなく、相続財産に漏れがあったなど意図しないケースで起きてしまうこともあります。
意図せず相続税の申告漏れや申告忘れが起きてしまうケースは、主に下記の3つです。

  1. 相続財産に漏れがあった
  2. 相続税がかかるのに申告していなかった
  3. 相続税の申告が必要なのに申告していなかった

それぞれ詳しく解説していきます。

2-1 相続財産に漏れがあった

相続税は、預貯金や土地、故人が亡くなったことにより発生した死亡保険金などを合計して算出します。
そのため相続財産に漏れがあると、申告時の相続税額が本来納める税額よりも少なくなってしまい、申告漏れとなってしまいます。

相続税の計算時や申告時に漏れやすい財産は、主に下記の通りです。

  • 預貯金(名義預金を含む)
  • 土地
  • 有価証券
  • 海外資産
  • 骨とう品

亡くなった人が財産目録を用意していなかったケースなどでは、相続人が故人名義の預貯金や土地、有価証券などを発見しきれず、結果として申告漏れになってしまうことがあります。

また、亡くなった人が子供や孫名義で預金をしていた場合は「名義預金」と判断されます
名義預金は口座名義人の資産ではなく、本来の預貯金の持ち主のものとされるため、相続税の計算対象に含めなければなりません。

美術品や骨とう品も価値が高いものは相続税の計算に含める必要があるため、相続発生時に専門家に価値を評価してもらうと良いでしょう。

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2-2 相続税がかかるのに申告していなかった

相続人は「相続税がかからない」と判断していたものの税金の計算方法を間違えてしまい、相続税の納税義務が発生している場合もあります。

相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除が用意されており、基礎控除内であれば相続税の申告や納税は必要ありません。
相続財産が預貯金しかなく基礎控除内に収まっているケースは申告不要とわかりやすいですが、遺産に土地や建物の不動産がある場合は注意しなければなりません。

預貯金や上場株式と異なり不動産は価値を測定しにくいため、相続税を計算する際には相続した不動産の相続税評価額を計算する必要があります。
不動産の相続税評価額を本来の価格より安く計算してしまうと、相続税の申告義務があるにもかかわらず申告不要であると判断してしまう恐れがあります。

不動産や非上場株式などが遺産にある場合は相続税評価額の計算が複雑になるため、相続に詳しい税理士に計算を依頼するのがおすすめです。

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2-3 相続税の申告が必要なのに申告していなかった

相続税の特例を適用し納税額が0円になったため、相続人が申告不要と判断し、後になって税務署に申告忘れを指摘されるケースも多いです。
相続税には「小規模宅地等の特例」「相続税の配偶者控除」などの控除や特例が用意されています。

これらの控除や特例は節税効果が大きく利用すれば、相続税額が0円になるケースも珍しくありません。
しかし小規模宅地等の特例や相続税の配偶者控除は、適用後に相続税額が0円になったとしても、期限内に申告をしなければならないと決められています。

小規模宅地等の特例や相続税の配偶者控除を適用して相続税額が0円になったからといって申告しないでいると、申告忘れのペナルティも発生しますし、控除や特例を適用できなくなってしまうのでご注意ください。

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3章 相続税の申告漏れ・忘れで発生するペナルティ

相続税の申告漏れや申告忘れが発生すると、延滞税などのペナルティを支払う必要があります。
申告漏れや申告忘れで発生するペナルティは、主に下記の通りです。

  • 延滞税
  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 重加算税

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1 【申告漏れ・申告忘れ】延滞税

延滞税とは相続税の納付が遅れたときに発生する課税される税金であり、税率は下記の通りです。

延滞期間税率
納付期限の翌日から2ヶ月後まで年利7.3%
納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降年利14.6%

なお、延滞税の税率は原則であり令和5年の税率は2.4%と8.7%となっています。

3-2 【申告漏れ】過少申告加算税

過少申告加算税とは、申告税額が本来納付すべき金額よりも少なかった際に発生するかかる税金です。
相続税の申告後に税務調査が入り、申告漏れを指摘されたときなどに発生します。

過少申告加算税の税率は、自主的に申告した場合と税務調査を受けてから申告した場合で下記のように異なります。

修正申告した時期税率
自主的に申告した場合かからない
税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに申告した場合
  • 5%(当初の納税額もしくは50万円のいずれか多い方に収まる部分)
  • 10%(上記を超える部分)
税務調査を受けてから申告した場合
  • 10%(当初の納税額もしくは50万円のいずれか多い方に収まる部分)
  • 15%(上記を超える部分)

上記のように、過少申告加算税は税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば発生しません。
ただし、自主的に修正申告した場合でも延滞税はかかるのでご注意ください。

3-3 【申告忘れ】無申告加算税

無申告加算税とは、相続税を期限までに申告しなかった場合に課せられる税金です。
小規模宅地等の特例や相続税の配偶者控除を適用し税額が0円になったため、申告しなかった場合などに発生するペナルティです。

無申告加算税の税率は自主的に申告した場合と税務署に指摘を受けた後に申告した場合で、下記のように税率が変わります。

申告時期税率
自主的に申告した追加で納めた税金の5%
税務調査後に申告した
  • 追加で納めた税金の15%(50万円以内)
  • 追加で納めた税金の20%(50万円を超える部分)

3-4 【申告漏れ・申告忘れ】重加算税

重加算税とは、相続税の脱税を目的とした財産隠しや偽装を行ったときに発生するペナルティです。
重加算税の税率は、下記の通りです。

申告書の提出状況税率
申告書を提出していた35%
申告書を提出していなかった40%
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4章 相続税の申告漏れ・忘れが発覚したときの対処法

相続税の申告漏れや申告忘れに気付いた場合は、速やかに修正申告をするのが良いでしょう。
自主的に修正申告をした場合も延滞税はかかりますが、過少申告加算税は不要になりますし、無申告加算税の税率も低くなるからです。

なお、相続税の申告漏れや申告忘れに気付いた場合、相続税の時効を迎えるまで放置するのはおすすめできません。
相続税の時効は通常は5年ですが、悪意を持って申告を怠ったと判断されると時効が7年まで延長します。
さらに、税務署の調査能力は非常に高いため、時効を迎えるまでに税務調査や税務署からの指摘を受ける可能性が高いです。

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5章 相続税の申告漏れ・忘れを防ぐコツ

相続税の申告漏れや申告忘れを防ぐには、相続人が自分で相続税を計算、申告するのではなく税理士に依頼するのがおすすめです。
相続税の申告漏れや申告忘れを防ぐには、下記を行いましょう。

  1. 相続税の計算や申告を税理士に依頼する
  2. 相続財産調査を漏れなく行う
  3. 生前贈与の証拠を残しておく

それぞれ詳しく解説していきます。

5-1 相続税の計算や申告を税理士に依頼する

相続税の申告漏れや申告忘れを防ぎたいのであれば、税理士に申告書作成を依頼するのが良いでしょう。
相続や税金に関する知識が少ない相続人が自分で相続税を計算、申告すると、どうしてもミスが発生しやすいからです。

また、税理士に相続税の申告書作成を依頼すると、申告書に担当した税理士の署名押印をしてもらえます。
税理士の署名押印がある申告書は「申告書のミスも少ないだろう」と税務署に判断され、税務調査の対象から外されやすくなります。

中には、税理士に依頼したときの費用を負担に感じる人もいるかもしれません。
しかし、相続に強い税理士に申告書作成を依頼すると、下記のように相続税の節税もしやすくなります。

  • 控除や特例を漏れなく活用してもらえる
  • 不動産や非上場株式の相続税評価額を適正に評価してもらえる
  • 二次相続対策まで行ってもらえる

上記のように、今回発生した相続や将来発生する相続の節税対策を行ってもらえるため、結果として節税効果が依頼費用を上回る可能性もあります。

5-2 相続財産調査を漏れなく行う

相続税の申告漏れや申告忘れを防ぐには、相続財産調査を漏れなく行うことが大切です。
相続税は預貯金や不動産、有価証券などすべての遺産を合算して計算します。

そのため、相続財産に漏れがあると本来納めるべき税額よりも申告税額が少なくなってしまいます。

相続財産調査は相続人でもできますが、漏れなく確実に行いたい場合には相続を専門とする司法書士や行政書士に依頼するのが確実です。
専門家であれば過去の経験をもとに、様々な可能性を考慮して故人の遺産を網羅的に調査できます。

5-3 生前贈与の証拠を残しておく

相続対策として過去に生前贈与を行った場合には、贈与契約書などの証拠を残しておきましょう。

生前贈与の証拠を残しておかないと、税務署に過去の生前贈与は無効であると判断される可能性があります。
結果として、贈与財産も相続税の計算対象に含めなければならず、相続税の申告漏れや申告忘れを指摘される恐れもあるでしょう。

家族間の生前贈与や年間110万円以内の贈与で基礎控除に収まる場合でも、贈与時には契約書を作成し証拠を残すことが大切です。
また、名義預金と判断されないように贈与財産は受贈者が管理できる状態にしておきましょう。

自己判断で生前贈与を行い税務署に無効と判断されるのを防ぐためには、生前贈与の段階で相続対策に詳しい専門家に相談しておくのが確実です。

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まとめ

相続税の申告漏れや申告忘れが起きる原因として多いのは、相続財産に漏れがあった、申告が必要なのにしていなかったなどです。
意図せず相続税の申告漏れや申告忘れをしてしまったケースでも、修正申告が必要であり延滞税などのペナルティも発生してしまうのでご注意ください。

相続税の申告漏れや申告忘れを防ぐためには、相続に詳しい税理士や司法書士、行政書士に頼るのがおすすめです。
税理士に申告書作成を依頼すれば税務調査が来る可能性を減らせますし、司法書士や行政書士に相続財産の調査を依頼すれば、相続税の申告漏れを防げます。

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