相続税はすべての人が申告しなければいけないわけではありません。
相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除が用意されており、基礎控除内に相続した財産の合計額が収まる場合は相続税を申告する必要がありません。
ただし、相続税の配偶者控除や小規模宅地等の特例を利用した結果、相続税がかからなくなったときは申告自体はしなければなりません。
相続税が発生しているにもかかわらず、相続税を申告しないでいると無申告加算税や延滞税などのペナルティがかかります。
なお、税務署は法務局や金融機関と連携を取り、故人や家族の資産状況を把握しているので相続税の無申告や過少申告には高確率で気付きます。
本記事では、相続税を申告しないで良いケースや無申告や過少申告時に生じるペナルティを解説します。
なお、相続財産が基礎控除ギリギリだった場合は、下記の記事もご参考にしてください。
目次
1章 相続税は基礎控除内に収まれば申告・納税は不要
相続税は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除が用意されています。
相続財産の課税対象合計額が基礎控除内に収まる場合は、相続税の申告も納税も必要ありません。
相続税は故人が遺した預貯金や不動産、株式などだけでなく、故人の生命保険金や死亡退職金、相続開始3〜7年前に贈与された財産にもかかります。
相続税がかかるのか判断が難しい場合は、相続に詳しい税理士に一度相談してみるのもおすすめです。
相続税には基礎控除のほかにも配偶者控除や小規模宅地等の特例が用意されています。
これらの控除や特例は節税効果が大きいので、利用すれば相続税がかからなくなるケースもあるでしょう。
しかし、控除や特例を利用して相続税がかからなくなった場合も、申告だけはしなければならないのでご注意ください。
2章 相続税を申告しない場合のペナルティ
相続税を期限までに申告、納税しなかった場合は無申告加算税などのペナルティが発生するので注意が必要です。
相続税の申告漏れや申告忘れによるペナルティは、下記の4つです。
- 無申告加算税
- 延滞税
- 過少申告加算税
- 重加算税
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 無申告加算税
無申告加算税とは、相続税を期限までに申告しなかった場合に課せられる税金です。
無申告加算税の税率は、自主的に申告した場合と税務署に指摘を受けた後に申告した場合で下記のように税率が変わります。
申告時期 | 税率 |
自主的に申告した | 追加で納めた税金の5% |
税務調査後に申告した | 追加で納めた税金の15%(50万円以内) 追加で納めた税金の20%(50万円を超える部分) |
2-2 延滞税
延滞税とは、相続税の納付が遅れたときに発生する課税される税金です。
延滞税の税率は下記の通りです。
延滞期間 | 税率 |
納付期限の翌日から2ヶ月後まで | 年利7.3% |
納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降 | 年利14.6% |
なお、延滞税の税率は原則であり令和5年の税率は2.4%と8.7%となっています。
2-3 過少申告加算税
過少申告加算税とは、申告税額が本来納付すべき金額よりも少なかった際に発生するかかる税金です。
期限内に相続税の申告は完了したものの修正申告で相続税を納めるときなどにかかります。
過少申告加算税の税率は、自主的に申告した場合と税務調査を受けてから申告した場合で異なります。
申告した時期 | 税率 |
自主的に申告した場合 | かからない |
税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに申告した場合 |
|
税務調査を受けてから申告した場合 |
|
無申告加算税と異なり、過少申告加算税では税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合には発生しません。
ただし、過少申告加算税がかからなくても延滞税はかかるのでご注意ください。
2-4 重加算税
相続税を脱税するために、意図的に財産隠しや偽装を行うと、重加算税がかかります。
重加算税の税率は、下記の通りです。
申告書の提出状況 | 税率 |
申告書を提出していた | 35% |
申告書を提出していなかった | 40% |
3章 相続税の無申告が税務署にバレる理由
「納税者は大勢いるのだかれ相続税を申告しないでもバレない」「自分1人くらいが相続税の申告もれをしても大丈夫だろう」と考える人もいるかもしれません。
しかし、相続税の無申告はかなりの確率で税務署にバレてしまいます。
税務署は法務局や金融機関と連携を取り、亡くなった人やその家族の資産状況を把握しているからです。
税務署が相続税の無申告に気づく理由やタイミングは、主に下記の4つです。
- 不動産の名義変更手続きでバレる
- 死亡保険金の受け取りでバレる
- 相続した株の売却でバレる
- 税務署は富裕層の収入・資産状況を把握している
それぞれ解説していきます。
3-1 不動産の名義変更手続きでバレる
不動産を相続したときは、故人から相続人に名義変更手続きが必要です。
不動産の名義変更手続きは法務局にて行いますが、税務署は法務局と連携しており相続により名義変更が行われるとバレてしまいます。
相続した不動産の名義変更手続きをしなければ、税務署に相続があったことを知られないと考える人もいるのではないでしょうか。
確かに、相続登記をしなければ法務局経由で相続発生がバレる確率は減るでしょう。
しかし、2024年4月1日から相続登記は義務化され、相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科される恐れがあります。
相続登記の義務化は過去に発生した相続に関しても適用されるので、相続登記をしないまま放置し相続発生を税務署に隠し通すことはほぼ不可能です。
3-2 死亡保険金の受け取りでバレる
故人が亡くなり死亡保険金が支払われると、生命保険会社は受取人と税務署に支払調書という書類を送ります。
そのため、税務署は死亡保険金の内容および金額についても確認可能です。
死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が用意されています。
非課税枠を超えて死亡保険金を受け取ったにもかかわらず、相続税を申告、納税しない場合は税務署からお尋ねや税務調査が入る恐れもあるでしょう。
3-3 相続した株の売却でバレる
故人が所有していた株式や投資信託を受け継ぎ、相続人が売却した場合は税務署に証券会社から取引報告書が送られます。
税務署が取引報告書を確認すれば、株式や投資信託によって生じた利益だけでなく、株や投資信託を相続によって取得したこともバレてしまいます。
また、株式や投資信託を売却しなくても、相続した株式の配当金を受け取ると支払調書が税務署に送られるのでご注意ください。
税務署は税金の申告漏れや過少申告が疑われるときに、職務権限で金融機関や証券会社に取引履歴を請求可能です。
そのため、税務署に疑わしいと判断された時点で相続の事実を隠し通すことはほぼ無理でしょう。
3-4 税務署は富裕層の収入・資産状況を把握している
税務署は普段から資産家やその家族の収入、資産状況を調査しています。
税務署は国税庁の国税総合管理システム(KSK)を使用し、個人の資産状況を確認できるからです。
加えて、死亡の事実は市区町村役場から税務署に連絡が行くので、資産家が亡くなったタイミングも税務署は把握しています。
資産家は税務署から目をつけられていることも多く、相続が発生すると税務署から連絡がくるケースもあるほどです。
仮に相続発生時点で税務署がマークしていなかったとしても、近所や知人からのタレコミなどでお尋ねや税務調査が入る可能性もあります。
まとめ
相続した財産の課税対象合計額が基礎控除額を超えるときは、相続税の申告および納税が必要です。
相続税の申告が必要にもかかわらず申告しないでいると、無申告加算税や延滞税などのペナルティがかかってしまいます。
「相続税を申告しないでも税務署にはバレないだろう」と考える人もいるかもしれませんが、相続財産の名義変更手続きのタイミングでバレますし、税務署は納税者の資産や収入状況をある程度把握しています。
そのため、相続税の申告が必要なケースではきちんとい期限内申告をするのがおすすめです。
相続税の申告が必要かわからない場合や節税方法を知りたい場合は相続税に詳しい税理士に相談するのが良いでしょう。
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