
- 宝石も相続税の課税対象となるのか
- 宝石にかかる相続税の計算で押さえておくべきこと
- 宝石の相続税評価額を算出する方法
宝石や貴金属は、現金や不動産と違って評価が難しく、相続税の申告で見落とされがちな財産です。
しかし、ダイヤモンドやブランドジュエリーなど高額品は、相続税の課税対象に含まれます。
適正な評価をせずに申告漏れとなると、後から追徴課税を受ける可能性もあるのでご注意ください。
本記事では、宝石の評価方法や申告時の計上方法について詳しく解説していきます。
目次
1章 宝石も相続税の課税対象となる
相続税の対象となる財産は、故人が死亡時に所有していたすべての財産であり、現金や不動産だけでなく、宝石や貴金属、骨董品などの動産も含まれます。
したがって、指輪やネックレス、ブローチなど高価な宝石類を所有していた場合、それらも相続税の課税対象となります。
2章 宝石にかかる相続税の計算で押さえておくべきこと
相続税は宝石や預貯金、不動産と遺産ごとにかかるのではなく、遺産全体にかかります。
また、すべての相続で相続税がかかるわけではなく、遺産総額が相続税の基礎控除を上回る場合のみ相続税がかかります。
相続税を計算する際に押さえておくべきポイントを詳しく見ていきましょう。
2-1 相続税は遺産ごとではなく遺産全体に対してかかる
相続税は、宝石や不動産、預貯金など個別の財産ごとに課税されるわけではありません。
故人が残したすべての遺産を合計し、そこから基礎控除や債務・葬式費用などを差し引いた残額に対して相続税が課税されます。
例えば、預貯金3,000万円、土地2,000万円、宝石500万円の遺産があった場合には、「3,000万円+2,000万円+500万円=5,500万円」が遺産総額となります。
そのため、「宝石単体ではそれほど高額ではないから大丈夫」と考えていても、他の財産と合算した結果、相続税の負担が重くなる場合もあるのでご注意ください。
2-2 相続財産が基礎控除以下であれば相続税はかからない

相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除が用意されています。
遺産総額が基礎控除を下回る場合、相続税の申告や納税は必要ありません。
例えば、相続人が配偶者と子供2人の合計3人の場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」と計算します。
3章 宝石の相続税評価額を算出する方法
故人が所有していた宝石は相続税の課税対象となります。
故人が所有していた宝石は購入時の価格をもとに相続税を計算するのではなく、相続発生時点の評価額を算出しなければなりません。
宝石の相続税評価額を計算する方法は、主に以下の通りです。
- 購入した店に確認する
- 故人の銀行口座の履歴を確認する
- 質屋・買取業者に査定してもらう
- インターネットなどで売買相場を調べる
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 購入した店に確認する
まずは、購入した店舗に問い合わせてみるのが良いでしょう。
購入先の店舗であれば、類似商品や相場変動などを踏まえて、現在の販売価格の目安や当時の価格を教えてもらえるケースもあります。
ただし、宝石の価値は「購入価格=現在の時価」とは限らないので、店舗で教えてくれた価格はあくまで参考値のひとつとして扱い、他の評価方法と併用するのが望ましいでしょう。
3-2 故人の銀行口座の履歴を確認する
購入時の価格を推定するために有効な方法が、故人の銀行口座の出金履歴の確認です。
宝石店で高額な買い物をしていた場合、カード決済や振込履歴が残っていることが多く、当時の支出金額を確認する手がかりになります。
特に、数十万円〜数百万円規模の取引であれば、相続財産として無視できない金額なので相続税申告時に漏れがないようにしましょう。
出金履歴から購入時期や支払先が分かれば、その宝石がどの程度の価値を持つものだったかの目安が立てられます。
3-3 質屋・買取業者に査定してもらう
宝石の評価で、最も現実的で信頼性が高いのが、専門の査定業者に依頼する方法です。
質屋や貴金属買取店では、鑑定士が宝石の品質や市場相場をもとに査定を行ってくれます。
鑑定結果を文書(査定書・見積書など)として受け取っておくと、相続税申告時の根拠資料として活用できます。
より正確に宝石の相続税評価額を算出したいのであれば、複数の業者に査定してもらい、平均値をとる方法が有効です。
業者によって査定基準や買い取り意欲が異なるため、1社だけの金額に頼ると誤差が生じる可能性があるからです。
3-4 インターネットなどで売買相場を調べる
インターネット上の販売・買取相場を確認する方法も有効です。
リユースショップのオンラインサイト、オークションサイト、フリマアプリでは、同一ブランドや同等グレードの宝石がどの程度の価格で取引されているかを確認できる場合もあります。
こうした情報は、時価の裏付けとして申告書に添付することも可能です。
ただし、インターネットの相場はあくまで一般消費者間の取引価格であり、税務署が認める評価額の根拠としてはやや弱い点に注意が必要です。
そのため、正確に相続税評価額を算出したい場合には、先ほど解説した質屋や買取業者などの専門家に査定してもらうのが良いでしょう。
4章 宝石を相続税計算時に計上する方法
故人が所有していた宝石を相続税申告する際には、主に2つの計上方法があります。
それぞれ確認していきましょう。
4-1 個別に計上する
まず、宝石の価値が明確であり、一定額以上になる場合は個別に計上する方法が基本です。
例えば、ブランドジュエリーや、鑑定書付きの高価なダイヤモンド、希少な色石は、単独で市場価値をもつため、他の動産とは分けて計上するのが原則です。
具体的には、相続した宝石の価値が5万円を超える場合には、一つひとつ計上しなければなりません。
4-2 他の家財と一緒に計上する
一方で、宝石の価値が5万円以下の場合には、他の家財と一緒に計上できます。
他の動産とあわせて、「家財一式 〇〇万円」と記載すれば問題ありません。
まとめ
宝石は、相続税の対象となる「動産」として扱われます。
宝石の相続税を計算する際には、購入時の価格ではなく、現在の価格をもとに相続税評価額を算出する必要があるのでご注意ください。
故人が高額な宝石を所有していたにもかかわらず、相続税申告時に計上しないでいると、税務調査のリスクも上がってしまいます。
ミスなく確実に相続税申告をしたいのであれば、相続に精通した税理士に依頼することも検討しましょう。
グリーン司法書士法人では、相続手続きについての相談をお受けしています。
信頼できる税理士を紹介することもできますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
宝石類は相続税の計算対象に含まれますか?
宝石類は相続税の計算対象に含まれます。
相続税の対象となるのは、故人が死亡時に所有していたすべての財産であり、現金や不動産だけでなく、宝石・貴金属・美術品・骨董品などの動産も課税対象に含まれます。宝石を相続すると税務署にバレますか?
故人の宝石を相続したとき、税務署にバレないと考えるのは危険です。
税務署は、個人の資産状況や資産の流れを調査できるため、振込履歴やカードの支払い履歴から故人が宝石を所有していたことを把握している可能性もあるからです。親からジュエリーをもらうと税金がかかりますか?
親からジュエリーをもらった場合、贈与税または相続税の対象になる可能性があります。
生前に受け取った場合は贈与税、亡くなった後に受け取った場合は相続税の対象となります。
まず、贈与として受け取る場合、1年間(1月1日~12月31日)に受けた贈与の合計額が基礎控除110万円を超えると課税対象となる可能性があります。
一方、相続によってジュエリーを受け取った場合は、他の遺産(預金・不動産など)と合算して相続税を計算します。
たとえ形見分けとして受け取った場合でも、高額な宝石やブランドジュエリーであれば課税対象です。







