贈与税の申告義務を知らなかったときも取消不可!無申告のペナルティ

贈与税の申告義務を知らなかったときも取消不可!無申告のペナルティ
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 5
 この記事を読んでわかること

  • 贈与税の申告・納税を知らなかったことを理由に生前贈与を取り消せるのかがわかる
  • 贈与税を申告しなかった場合のペナルティがわかる

年間110万円を超える贈与を受けたときには、翌年の2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告および納税をしなければなりません。
贈与税は固定資産税と異なり税務署が計算するわけではなく、自分で計算して申告しなければなりません。

贈与税の申告や納税義務を知らなかったからといって贈与を後から取り消すことは難しいですし、贈与税の無申告や申告期限に遅れた場合は加算税や延滞税のペナルティが発生します。

年間110万円を超える贈与を受けたときは、必ず贈与税の申告を行いましょう。
また、贈与を行う際には事前に贈与税をシミュレーションしておくのがおすすめです。

本記事では、贈与税を申告しなかったときに発生するペナルティや贈与税の時効成立が難しい理由を解説します。
贈与税の計算方法については、下記の記事で詳しく解説しているのでご参考にしてください。

【簡単シミュレーション付】贈与税の計算方法と6つの節税方法を解説

1章 贈与税の申告・納税を知らなかった場合も贈与の取り消しはできない

贈与税の申告や納税義務を知らなかったケースで「贈与税がかかるなら生前贈与なんてしなかった」「贈与税がかかるなら贈与を取り消したい」と考えても、原則として贈与を取り消すことはできません。
例外的に贈与を取り消せるケースは、下記の通りです。

  • 錯誤や詐欺、強迫によって贈与が行われた
  • 未成年者もしくは成年後見制度の被後見人が単独で贈与した
  • 負担付贈与の負担が履行されない
  • 贈与者・受贈者双方の合意で贈与契約が解約された
  • 口頭による贈与で履行が完了していない

贈与の履行とは、預貯金や不動産などの贈与財産を贈与者から受贈者に引き渡したことを指します。
例えば、口頭で不動産の贈与を契約し、贈与する不動産の名義変更手続きが完了していなければ贈与を取り消せます。

このように、贈与方法や財産の引き渡し状況によって贈与を取り消せるかの判断が変わってきますので、生前贈与を取り消したい場合は司法書士や弁護士に相談してみるのが良いでしょう。

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2章 贈与税を申告しなかったときに発生するペナルティ

贈与税の申告が必要なことを知らなかった故に期限内に贈与税の申告をしなかった場合は、下記のペナルティが発生します。

  • 無申告加算税
  • 延滞税
  • 重加算税

なお、贈与税の申告漏れや無申告で発生するペナルティには上記の他に「過少申告加算税」もあります。
過少申告加算税とは、本来納めるべき贈与税額より少ない金額で申告した場合に支払うペナルティです。

それぞれのペナルティの計算方法について詳しく見ていきましょう。

2-1 無申告加算税

無申告加算税とは、贈与税の申告をしないでいた場合に発生するペナルティです。
過少申告加算税は申告時期に合わせて下記のように0~15%の税率となります。

申告時期税率
税務調査の連絡前に自主的に申告した0%
税務調査の連絡が来たものの指摘を受ける前に申告した贈与税額50万円以下の場合:5%
贈与税額50万円を超える場合:10%
税務調査の連絡、指摘を受けた後に申告した贈与税額50万円以下の場合:10%
贈与税額50万円を超える場合:15%

2-2 延滞税

延滞税とは、贈与税を期限内申告しなかった場合に支払うペナルティです。
延滞税の税率は期間ごとに異なり、令和5年12月31日までは下記のように設定されています。

延滞期間税率
申告期限の翌日から2ヶ月以内2.4%
申告期限の翌日から2ヶ月超8.7%

2-3 重加算税

贈与税を申告しなければならないと知っていたにもかかわらず申告しなかった場合や意図的に贈与財産を隠した場合は重加算税が課されます。
重加算税の税率は、下記のように設定されています。

過少申告無申告
下記に該当するケース
・平成29年以降が申告期限
・過去5年以内に贈与税で無申告加算税もしくは重加算税が課された
45%50%
上記のケース以外35%40%

また、申告漏れや無申告が悪質だった場合は脱税として扱われ、刑事罰の対象になる恐れもあります。


3章 贈与税の時効は6~7年

贈与税には時効が設定されており、贈与税の申告期限から6年経過すると、贈与税を支払う義務が消滅します。
なお、贈与税の申告義務を把握していて意図的に申告や納税をしなかった場合は、時効が7年に延びてしまいます。
そのため、贈与税の申告期限から6年が経過した段階で税務署が申告漏れを発見し、故意であると判断されると、時効が延長されペナルティも重くなってしまうのでご注意ください。

贈与税の時効および起算点は下図の通りです。

贈与税の時効および起算点


4章 贈与税の時効が成立しにくい理由

先ほどの章で贈与税の時効について解説しましたが、結論として贈与税の時効が成立する可能性は非常に低いです。

税務署の調査能力は非常に高く、贈与税を申告しなかったとしても贈与が行われたことに気付かれてしまいます。
また、仮に気付かれなかったとしても、贈与者が亡くなったときに税務署が過去の贈与を認めず贈与財産を相続財産に含めるように指摘をしてくるケースが多いからです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

4-1 税務署の調査能力は非常に高い

税務署が贈与税の無申告や申告漏れを疑い調査をするときには、過去10年分にもおよぶ資金移動を調査できます。
また、調査対象者本人だけでなく、家族や親族、関係者の口座に関しても調査可能ですし、贈与税を申告、納税した口座以外も調査可能です。

このように税務署の調査能力は非常に高いので、多額の資金移動や収入に見合わない資産の購入があれば高確率で贈与が行われたことがバレてしまいます。

税務署が個人の銀行口座を調べる方法!お尋ねが入りやすいケースとは
生前贈与はなぜばれる?いつばれるかやペナルティ・節税方法を解説

4-2 贈与を否認され相続税の課税対象にされる場合がある

仮に贈与が行われたことがバレず贈与税の時効を迎えたとしても、税務署が過去に行った贈与を否認する恐れがあります。
税務署に贈与を否認されると、贈与者が亡くなったときに過去に行った贈与がなかったことにされ、贈与財産を相続財産に含めて相続税を計算しなければなりません。

結果として、贈与税は払わなくてよくなったとしても相続税の負担が重くなりますし、相続税対策として生前贈与を行っていた場合は意味がなくなってしまいます。

このように、贈与税の時効を迎えることや贈与税および相続税を払わずにすむ可能性はほぼないので、年間110万円を超える贈与を受けたときには贈与税の申告を行いましょう。


まとめ

年間110万円を超える贈与を受けたときは、贈与税の申告および納税が必要です。
贈与税の申告義務を知らなかったとしても、後から贈与を取り消すことは難しいですし、加算税や延滞税などのペナルティが発生してしまいます。

贈与税の申告漏れを防ぐために、生前贈与を行う前に贈与税の計算や行うべき手続きの把握をしておきましょう。
また、税務署に生前贈与を否認されるリスクや相続トラブルが起きるリスクに備えて、口頭ではなく贈与契約書を作成しておくことも大切です。

このように、生前贈与は自己判断で行うことが難しく、専門的な知識や経験が必要な場合もあります。
必要に応じて、生前贈与や相続対策に詳しい専門家への相談もご検討ください。

グリーン司法書士法人では、生前贈与や相続対策に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料ですし、贈与税に詳しい税理士への紹介も可能ですのでまずはお気軽にお問い合わせください。


よくあるご質問

贈与税の申告義務を知らなかった場合、贈与を取り消せる?

贈与税の申告や納税義務を知らなかったケースで「贈与税がかかるなら生前贈与なんてしなかった」「贈与税がかかるなら贈与を取り消したい」と考えても、原則として贈与を取り消すことはできません。
▶贈与税の申告を知らなかった場合について詳しくはコチラ

贈与税の申告漏れはどうなる?

贈与税を申告しなかった場合、下記のペナルティが発生します。
・無申告加算税
・延滞税
・重加算税
▶贈与税の申告漏れについて詳しくはコチラ

贈与税の時効は何年?

贈与税の時効は通常であれば6年ですが、贈与を意図的に隠していた場合や申告が必要であることを知っていてしなかった場合、時効は7年に延長されます。

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