
- 墓じまいの流れはどのように進めるのか
- 墓じまいにかかる費用の内訳・相場
- 墓じまいをした後の主な選択肢
近年、お墓の管理をする人の負担を考え、墓じまいを検討する方が増えてきています。
しかし、墓じまいには手続きや費用、そしてご遺骨の行き先を考える必要があり、正しい知識がないとトラブルにつながりかねません。
墓じまいを考えたときには、家族や親族と相談して、ご遺骨の行き先を検討していくことから始めていきましょう。
本記事では、墓じまいの流れや必要書類、かかる費用の内訳と相場について詳しく解説します。
1章 墓じまいの流れ
墓じまいは、一般的には以下のような流れで進めていきます。
- 家族・親族の同意を得る
- 墓じまいの必要書類を確認する
- 次の納骨先を決定する
- 墓じまいの依頼先を決定する
- お墓の管理者に連絡をする
- 自治体にて改葬許可証を発行してもらう
- ご遺骨を取り出す
- 墓石を撤去し次の受け入れ先に納骨する
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP① 家族・親族の同意を得る
墓じまいを行う上で最も重要なことが、家族や親族の同意を得ることです。
お墓は先祖代々が眠る場所であり、感情的な思い入れも強いため、家族や親族の同意を得ていないと後々トラブルが起きる恐れもあります。
「遠方でお墓の維持が難しい」「承継者がいない」などといった墓じまいの理由を丁寧に説明し、納得を得るようにしましょう。
STEP② 墓じまいの必要書類を確認する
家族や親族の同意を得たら、改葬許可申請に必要な書類を確認しておきましょう。
具体的には、以下のような書類が必要です。
| 埋葬証明書 | 現在のお墓がある寺院や霊園の管理者が発行する |
|---|---|
| 受入証明書 | 次の納骨先から発行される |
自治体や墓地・霊園ごとに必要書類が異なる場合があるため、事前に役所などに確認しておくと安心です。
STEP③ 次の納骨先を決定する
墓じまいの際には、ご遺骨をどこに移すのかを決めなければなりません。
近年では、永代供養墓や納骨堂、樹木葬など選択肢が多様化しています。
費用やアクセス、供養の方法を比較し、家族にとって無理のない納骨先を選ぶことが大切です。
STEP④ 墓じまいの依頼先を決定する
納骨先を決めたら、実際に墓石を撤去し、ご遺骨を取り出す作業の計画をしていきましょう。
墓じまい当日の作業は、石材店や霊園と提携する専門業者に依頼することがほとんどです。
複数社に見積もりを取り、費用や作業内容を比較しておくと良いでしょう。
また、依頼先によっては役所手続きのサポートを行ってくれる場合もあります。
申請手続きに不安がある場合には、サポートの有無や内容を確認しておきましょう。
STEP⑤ お墓の管理者に連絡をする
続いて、現在利用している墓地や寺院の管理者に墓じまいの意思を伝えましょう。
管理規約に従って、改葬に必要な手続きを案内してもらえます。
なお、寺院にあるお墓の場合には、閉眼供養(魂抜き)といった宗教儀式が行われることが一般的です。
STEP⑥ 自治体にて改葬許可証を発行してもらう
墓地の所在地を管轄する市区町村役場に改葬許可申請を行い「改葬許可証」を取得しましょう。
改葬許可証がなければ、次の納骨先にご遺骨を移すことはできません。
申請の際には、埋葬証明書や受入証明書など、各種書類の提出が必要となります。
STEP⑦ ご遺骨を取り出す
改葬許可証が発行されたら、いよいよご遺骨を取り出します。
当日の流れは、一般的には以下のように進められます
- 僧侶による閉眼供養(魂抜き)の実施
- 墓石の開封作業
- ご遺骨を丁寧に取り出す(新しい容器に移し替えることもある)
- ご遺骨を次の納骨先へ移送
宗教儀式の有無や進め方は宗派や地域によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
STEP⑧ 墓石を撤去し次の受け入れ先に納骨する
最後に、墓石を撤去し更地に戻します。
具体的には、石材店が重機を使って解体・処分を行い、墓地管理者に引き渡す形となります。
その後、ご遺骨を新しい納骨先へ納め、納骨式や開眼供養を行えば墓じまいは完了です。
2章 墓じまいにかかる費用の内訳・相場
墓じまいでは手続きにかかる費用だけでなく、実際の工事やお寺とのやり取り、新しい納骨先の準備などといった様々な費用が発生します。
合計で数十万円から数百万円程度かかることが多く、費用に幅があるので事前に確認しておくことが大切です。
本章では、主な費用の内訳と相場を解説します。
2-1 墓石の解体・撤去工事費
墓じまいで最も大きな費用となるのが、墓石の撤去工事費です。
墓石の大きさや墓地の立地条件によって金額が変わり、相場は1㎡あたり10万円前後と言われています。
一般的な広さのお墓であれば、15万〜50万円程度が目安です。
ただし、お墓が山間部や重機が入りにくい場所にある場合には、追加費用が発生することもあります。
必ず複数の石材店から見積もりを取り、比較検討しておきましょう。
極端に見積もり費用が安い石材店は、後から追加費用が発生することはないのか確認しておくことも大切です。
2-2 必要書類の交付費用
改葬許可申請を行うためには、埋葬証明書や受入証明書などの書類が必要となります。
これらの発行には、1通あたり数百円〜数千円程度の手数料がかかります。
自治体によって異なりますが、全体として数千円〜1万円以内に収まるケースが多いでしょう。
大きな負担にはなりにくいですが、複数の遺骨を改葬する場合は通数分の費用がかかる点に注意しておきましょう。
2-3 お布施
寺院にお墓がある場合、墓じまいの際には「閉眼供養(魂抜き)」を行うのが一般的です。
このとき僧侶に数万円程度のお布施をお渡しする必要があります。
金額は宗派や地域によって差があるので、あらかじめ寺院に確認し、不明な点は包み隠さず相談すると安心です。
2-4 離檀料
お寺の檀家となっている場合、墓じまいの際には「離檀料」が必要になることがあります。
離檀料は、お寺とのご縁を解消する際の謝礼のような意味合いを持ち、これまでの供養への感謝を示す費用です。
金額は決まっておらず、相場は数万円〜20万円程度 と幅がある点が特徴です。
寺院と丁寧に話し合い、金額の根拠や趣旨を確認しておくと、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
2-5 ご遺骨のメンテナンス費用
長年お墓に納められていたご遺骨は、カビや湿気で骨壷が劣化している場合があります。
そのままでは新しい納骨先に移せないこともあり、専門業者による洗浄や乾燥が必要になるケースも多々あります。
ご遺骨のメンテナンスにかかる費用は、1体あたり1万〜3万円程度が目安です。
必ず必要となる費用ではありませんが、複数の遺骨がある場合や、古い遺骨がある場合には合計金額が膨らむため、事前に見積もりを取っておきましょう。
2-6 新しい納骨先にかかる費用
墓じまいは、現在のお墓を撤去するだけで終わりではありません。
ご遺骨を受け入れる新しい納骨先を準備する必要があり、そちらに支払う費用がかかります。
納骨先の選択肢はいくつかあり、それぞれの費用相場は以下の通りです。
| 納骨先 | 費用相場 |
|---|---|
| 永代供養墓 | 10万〜50万円 |
| 納骨堂 | 1体あたり数十万円 |
| 樹木葬 | 30万〜80万円 |
| 新たに墓地を建てる | 100万円以上 |
永代供養墓以外は、管理費が取られることも多いため、初期費用だけでなくランニングコストも見積もっておくことが大切です。
3章 墓じまいをした後の選択肢
墓じまいを終えた後、ご遺骨をどのように供養するかはご家族にとって検討すべきことのひとつです。
近年は供養の形が多様化しており、従来の一般墓だけでなく、ライフスタイルや価値観に応じて選べる方法が増えています。
墓じまい後の選択肢は、主に以下の通りです。
- 一般墓へ改葬する
- 納骨堂に改葬する
- 手元供養する
- 樹木葬にする
- 散骨する
- 永代供養する
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 一般墓へ改葬する
最も伝統的な方法が、別の霊園や寺院に新たにお墓を建て直す一般墓への改葬です。
従来と同じように墓石を建てるため、手を合わせる場所を確保でき、親族で集まる習慣も継続できます。
一方で、新たに墓石を購入する費用や将来的な管理費がかかる点がデメリットです。
加えて、後継者が必要になるため、承継者がいない場合には、他の方法も検討しておくと良いでしょう。
3-2 納骨堂に改葬する
近年利用者が増えている選択肢のひとつが納骨堂です。
納骨堂は、建物内に納骨スペースを設けており、屋内で参拝できる点が特徴です。
屋内型は天候に左右されず、アクセスの良い都市部に多く見られるため、遠方の墓地に比べてお参りがしやすく、高齢者でもお参りをしやすいでしょう。
費用は1体あたり数十万円〜100万円程度が相場であり、使用期限が決まっている場合には、一定期間の後に合祀されることもあります。
3-3 手元供養する
手元供養とは、ご遺骨の一部を骨壷やオブジェに納め、自宅で供養する方法です。
ペンダントや小さなカプセルにご遺骨を収めて身近に置くことも可能であり「いつも一緒にいたい」という遺族の思いを叶えられます。
ただし、手元供養を選んだ場合でも、残りのご遺骨をどこに納めるかを決める必要があります。
すべてのご遺骨を自宅で保管する場合には、将来的に処分方法を検討しなければなりません。
3-4 樹木葬にする
自然志向の方から支持を集めている供養の方法が樹木葬です。
樹木葬では、墓石を建てず樹木や草花を墓標とし、その周囲にご遺骨を埋葬する方法です。
里山型や公園型など形態はさまざまで、費用は30万〜80万円程度が一般的です。
自然に囲まれた場所で安らかに眠れる一方、場所によっては将来的な維持・管理体制が不透明なケースもあるため、事業者の信頼性を確認しておくことが大切です。
また、樹木葬は自然豊かな場所を墓地としていることも多いため、高齢者や自家用車がない方はアクセスが難しい場合もある点には注意しなければなりません。
3-5 散骨する
散骨は、ご遺骨を粉末状にして海や山などに撒く供養方法です。
散骨は墓地の維持管理が不要であり、自然へ還るという考え方に共感する方に選ばれています。
散骨は、海洋散骨や山林散骨が一般的であり、費用は10万〜30万円程度です。
なお、散骨について法的な規制はないものの、実際には「節度をもって行うこと」が求められるため、散布場所や方法に気を配る必要があります。
地域によっては、散骨について、条例で制限を設けていることもあるので、事前に確認しておくことも大切です。
近隣住民や家族・親族とのトラブルを避けるためにも、散骨をする際には自分たちで行うのではなく、専門業者に依頼することを強くおすすめします。
3-6 永代供養する
お墓の承継者がいない場合に、最もおすすめできる方法が永代供養です。
永大供養では、寺院や霊園が永続的に供養や管理を行ってくれるため、子供や孫に負担をかけずに済みます。
費用は一霊あたり10万〜50万円程度が目安であり、供養や管理方法によっても費用が変わってきます。
供養や管理の方法としては、①個別に納めるタイプと、②一定期間後に合祀されるタイプがあるので、家族や親族が納得する方法を選ぶと良いでしょう。
永大供養の場合、永続的に管理を行ってくれる点が特徴であるため、原則として納骨後は管理費などのランニングコストがかからない点もメリットです。
まとめ
墓じまいは単にお墓を撤去するだけでなく、家族や親族の同意を得たり、役所への申請をしたりといった様々な手続きや準備が必要です。
また、墓じまいの際には、墓石の解体や撤去費用、寺院に支払うお布施や離檀料などもかかるので、費用の見積もりをあらかじめ取っておきましょう。
さらに、その後の供養方法は一般墓から永代供養まで多様であり、家族の価値観やライフスタイルによって選択肢が変わります。
だからこそ、事前に情報収集をしておき、家族や親族が納得する供養方法や子供や孫の負担を減らせる供養方法を検討することが大切です。
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