
- 相続登記をしないまま相続人が死亡したときの取り扱い
- 相続登記の中間省略登記が認められるケース
- 相続登記しないまま相続人が死亡し登記申請を放置するリスク・デメリット
相続登記をしないまま相続人が亡くなってしまうと、登記手続きは一気に複雑化します。
中間省略登記は原則認められず、一次相続と二次相続それぞれの登記申請をしなければならないからです。
そのため、相続人の確定や書類の収集の手間も膨大となり、自分で行うのは難しいこともあるでしょう。
加えて、2024年からは相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に申請しないと過料が科せられる恐れもあるのでご注意ください。
本記事では、相続登記をしないまま相続人が死亡したときの登記申請の流れを解説します。
目次
1章 相続登記をしないまま相続人が死亡したときの取り扱い
家族や親族が亡くなり相続が発生した後、相続人が相続登記をしないままさらに亡くなってしまうことがあります。
例えば、夫の不動産を相続した妻が登記申請をしないうちに亡くなってしまうケースなどです。
このような場合、登記手続きは通常より、複雑になるので注意しなければなりません。
登記は登記名義人から次の所有者へと連続して移転していくものであり、連続して相続が発生した場合でも、原則として間に存在する相続人を省略して登記する中間省略登記は認められません。
したがって、相続登記をしないまま相続人が亡くなると、まず最初の被相続人から一度相続登記を行う必要があります。
そして、その後に二次相続の登記を行うという、いわば二重の相続登記をしなければなりません。
そのため、戸籍の収集や相続人の確定にも時間と労力がかかります。
2章 相続登記の中間省略登記が認められるケース
相続の状況や不動産を受け継ぐ人物によっては、相続登記の中間省略登記が認められる場合があります。
具体的に、確認していきましょう。
2-1 中間の相続人が1人のみのケース

中間の相続(一次相続)で法定相続人が1人だけのケースは、中間の相続で誰が不動産を相続したのか戸籍謄本を確認すればはっきりするので相続登記の中間省略が可能です。
2-2 相続人が1人のみのケース

中間の相続(一次相続)で法定相続人が複数人いたものの1人だけで不動産を相続し、その人物が相続登記を行わず亡くなった場合には相続登記の中間省略が認められます。
3章 相続登記しないまま相続人が死亡し登記申請を放置するリスク・デメリット
相続登記しないまま相続人が亡くなってしまい、そのまま登記申請を放置すると、以下のようなデメリットがあります。
- 相続登記の義務違反の過料が科せられる恐れがある
- 相続人が増え話し合いが困難になる
- 相続人の一部が認知症などになり遺産分割協議ができなくなる
- 相続人と連絡が取れなくなり遺産分割協議が難航する
- 公的書類が取得できなくなる
- 相続持分を売却され不動産の権利を主張できなくなる可能性がある
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 相続登記の義務違反の過料が科せられる恐れがある
2024年4月から、相続登記が義務され、相続発生から3年以内に登記申請しないと、10万円以下の過料が科せられる恐れがあります。
相続登記の義務化は、過去に発生した相続にも適用されるので、相続登記を済ませていない不動産をお持ちの方は早めに手続きする必要があります。
3-2 相続人が増え話し合いが困難になる
相続登記をしないまま相続人が死亡すると、権利関係者が増えて、誰が不動産を受け継ぐのか決めるのが難しくなります。
例えば、父の相続登記をしないまま長男が亡くなった場合、長男の妻や子供などが新たな相続人として加わり、相続関係が複雑化します。
本来3人だった相続人が、次の世代では10人以上に増えることも珍しくありません。
人数が増えるほど意見の調整が難しくなり、遺産分割協議そのものが長期化するリスクが高まります。
3-3 相続人の一部が認知症などになり遺産分割協議ができなくなる
相続登記を長年放置していると、相続人の中には高齢化や病気により判断能力を失う人が出てくる場合があります。
認知症などにより判断能力を失うと、そのままでは遺産分割協議に参加できません。
認知症になった相続人がいる場合には、家庭裁判所で成年後見人を選任してもらう必要があり、その分手続きが増え、費用も発生します。
また、成年後見人は本人の利益を最優先に行動するため、他の相続人が希望する分割案に同意してもらえないこともあります。
結果として協議が難航し、登記完了まで数年かかるケースもあります。
3-4 相続人と連絡が取れなくなり遺産分割協議が難航する
相続登記を長期間放置すると、相続人の住所変更や転居、婚姻・離婚などにより、連絡が取れなくなるケースが増えます。
遺産分割協議は相続人全員の同意が必要なため、1人でも連絡がつかないと、協議を進めることができません。
音信不通の相続人がいる場合、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任する必要があり、時間も費用もかかってしまうのでご注意ください。
3-5 公的書類が取得できなくなる
相続登記のためには、被相続人や相続人全員の戸籍謄本類や住民票などが必要ですが、時間が経つほどこれらの書類が取得しにくくなります。
加えて、すでに亡くなっている相続人がいる場合には、さらにその相続人の戸籍までさかのぼる必要があり、書類の収集だけで数ヶ月かかることも珍しくありません。
3-6 相続持分を売却され不動産の権利を主張できなくなる可能性がある
遺産分割協議がまとまったにもかかわらず、相続登記を放置していると、相続人の1人が勝手に持分を第三者へ売却してしまう場合もあります。
法定相続分による相続登記は、相続人が単独で行えるとされているからです。
- 遺産分割協議と異なる内容(法定相続分)で相続人の1人が相続登記する
- 相続人の1人が第三者に自分の持分を売却する
上記のような状態になると、遺産分割協議をしていたとしても、第三者に不動産の権利を主張できなくなってしまいます。
悪質な買取業者などが持分を買い取った場合、残りの持分も買い叩かれる恐れがあるのでご注意ください。
4章 相続登記しないまま相続人が死亡した場合の登記申請の流れ
相続登記をしないまま相続人の1人が死亡してしまった場合、原則として中間省略登記は認められず、2つの登記申請を順番に行っていく必要があります。
個々の登記申請の内容自体は変わらないものの、2回分の相続登記を行うこととなるため、必要書類の数が膨大になります。
相続登記の流れは、以下の通りです。
- 不動産についての必要情報を集める
- 戸籍関係書類を集める
- 固定資産税の評価証明書を取得しる
- 相続登記に必要な書類を作成しる
- 登記申請書類を組み上げる
- 法務局へ登記申請する
- 登記の完了を確認する
相続登記しないまま、相続人の1人が亡くなってしまっている場合、手続きが複雑となり、自分で行うことは現実的ではありません。
費用はかかりますが、確実に登記申請を完了させるためにも、司法書士に依頼することをおすすめします。
まとめ
相続登記をしないまま相続人が死亡すると、相続関係の確認も煩雑になり、登記申請もそれぞれ行わなければなりません。
2024年4 月からは相続登記が義務化されましたし、相続登記を放置していると様々なリスクやデメリットがあります。
相続登記をしないまま相続人の1人が亡くなってしまった場合には、司法書士に登記申請を依頼するのが良いでしょう。
グリーン司法書士法人では、相続登記についての相談をお受けしています。
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よくあるご質問
相続登記をせずに相続人が死亡した場合、中間省略登記はできますか?
原則として、中間省略登記はできません。
登記名義は実際の権利変動の順序に沿って行うこととされているからです。
しかし、以下のようなケースでは例外的に中間省略登記が認められています。
・中間の相続人が1人のみのケース
・相続人が1人のみのケース







