【2024年~義務化】認知症の相続人がいる時に相続登記をする方法

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司法書士山中泉

 監修者:山中泉

この記事を読む およそ時間: 5
 この記事を読んでわかること

  • 認知症の相続人がいても相続登記ができるのか
  • 認知症の相続人がいても相続登記する方法
  • 認知症の相続人がいるときの注意点

不動産を所有している人が亡くなったときには、相続登記が必要です。
2024年4月からは相続登記が義務化され、相続から3年以内に登記申請をしないと10万円以下の過料が発生する恐れがあるのでご注意ください。

ただし、相続人が認知症になり判断能力を失っている場合、相続登記を行うことはできません。
認知症になり判断能力を失った相続人が相続登記を行うには、成年後見制度を利用する必要があります。

本記事では、認知症になった相続人がいる場合の対処法を解説します。

認知症の人が相続人になったときに起きうる問題と対処法まとめ

1章 相続登記の義務化とは

相続登記とは、亡くなった人が所有していた不動産の名義変更手続きです。
2024年4月からは相続登記が義務化され、相続開始から3年以内に登記申請を行わないと10万円以下の過料が発生する恐れがあります。

相続登記の義務化は過去に発生した相続についても適用されるので、まだ登記申請がお済みでない不動産をお持ちの人はできるだけ早く手続きを行いましょう。
特に相続人の中に高齢の方が含まれている場合は、認知症リスクが潜在しているので注意が必要です。

相続登記は自分で手続きもできますが、司法書士に数万円程度で依頼も可能です。
グリーン司法書士法人でも相続登記についての相談をお受けしているので、お気軽にお問い合わせください。

2024年4月から相続登記が義務化される!放置するリスクとは

2章 認知症の相続人がいると相続手続きを進められない

本記事の冒頭でも解説しましたが、認知症になり判断能力を失った相続人がいる場合、相続登記を始めとする相続手続きを行えなくなってしまいます。
認知症になり判断能力を失った人は、法律上有効な契約行為や財産管理を行えないからです。

認知症になり判断能力を失った人が相続人となった場合は、成年後見制度を活用して相続手続きを進める必要があります。
次の章では、認知症の相続人がいる場合に相続登記を進める方法を解説していきます。

認知症の相続人がいることは相続登記できない正当な理由にはならない?!

2024年4月から始まる相続登記の義務化は「正当な理由」があれば、期限内に相続登記が完了しなくても過料の対象にならないとされています。

正当な理由の中には「相続人が重病で登記申請できる状態ではない」ことも含まれています。
ただし、法務局HPには重病の定義や具体例が記載されていません。

そのため、認知症になって判断能力を失った状態が相続登記できないほどの重病に該当するかは現時点では判断できません。
過料が発生するリスクを少しでも軽減するなら、認知症になった相続人がいたとしても相続登記や相続人申告登記を行っておくのが良いでしょう。

相続登記義務化の過料の対象にならない「正当な理由」の具体例とは

3章 認知症の相続人がいる場合に相続登記をする方法

認知症になり判断能力を失った相続人がいる場合、成年後見制度を利用するか、法定相続による登記申請を行えば相続登記を行えます。
相続登記の義務化違反の過料の対象にならないようにするには、下記のいずれかの手続きを行いましょう。

  1. 成年後見制度を利用して遺産分割による登記申請を行う
  2. 法定相続による登記申請を行う
  3. 相続人申告登記を行う
  4. 遺言による登記申請を行う

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1 成年後見制度を利用して遺産分割による登記申請を行う

成年後見制度を利用すれば、認知症になり判断能力を失った相続人がいても相続登記を行えます。
成年後見制度とは、認知症や知的障がいなどで判断能力を失った人の代わりに財産管理や法的手続き、契約行為を行うための制度です。

成年後見人を選任すれば、認知症になった相続人の代わりに遺産分割協議に参加してもらえるので、遺産分割による登記申請も可能です。

ただし、成年後見人は被後見人の利益のために行動する義務があります。
そのため、被後見人の法定相続割合を下回る遺産分割には合意しない可能性が高いでしょう。

したがって、成年後見制度を活用したとしても相続人全員が合意できる遺産分割を行えるとは限りません。
成年後見制度の利用にはデメリットや注意点もあるので、利用を検討する場合は事前に司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。

成年後見制度とは?利用方法からメリットデメリットまで簡単理解!

3-2 法定相続による登記申請を行う

認知症になり判断能力を失った相続人がいても、法定相続による登記申請であれば手続きできます。
法定相続による登記申請は相続人全員の合意がなくても単独申請で手続きできるからです。

しかし、法定相続による登記申請では、不動産を共有状態で相続することになるため将来的にトラブルにつながる恐れがあるのでご注意ください。

【完全版】相続登記が自分でできる!司法書士直伝の簡単申請マニュアル

3-3 相続人申告登記を行う

相続登記の義務化違反による過料を避けたいだけであれば、相続人申告登記を行うのも良いでしょう。
相続人申告登記とは、①不動産の所有者が亡くなったこと②自分が相続人であることを証明する手続きです。

相続人申告登記を行っておけば、義務化違反による過料の対象から外れます。
そのため、認知症になって判断能力を失った相続人がいて登記申請を行えない場合は、相続人申告登記だけでも行っておきましょう。

相続人申告登記は先ほど解説した法定相続による登記申請と異なり、手続き時に費用もかかりません。
ただし、相続人申告登記を行う際には、下記の点に注意しましょう。

  • 手続き後に遺産分割が完了したら相続登記をしなければならない
  • 正式な登記申請ではないので手続き後も相続不動産の活用や売却はできない
  • 相続人ごとに手続きが必要(代表者がまとめて手続きすることはできる)

相続人申告登記の手続き方法および必要書類は、下記の通りです。

手続きできる人
  • 相続人(単独で行える)
  • 代理人
手続き先相続不動産の住所地を管轄する法務局
手続き方法
  • オンライン
  • 郵送
  • 持参
費用無料
(戸籍謄本類の収集費用は別途かかる)
必要書類
  • 申出書
  • 申出人が相続人であることを証明できる戸籍謄本類
  • 申出人の住所を証明できる書類
  • 委任状(代理人が提出する場合)
【相続登記義務化】相続人申告登記とは?手続き方法やメリット

3-4 遺言による登記申請を行う

亡くなった人が遺言書を作成していれば、認知症になり判断能力を失った相続人がいても、遺言書の内容通りに登記申請を行えます。
そのため、相続人が高齢の場合や認知症が疑われる場合は、元気なうちに遺言書を作成しておくことで遺族の負担を軽減可能です。


4章 認知症の相続人がいるときの注意点

認知症の相続人がいる場合は、相続手続きを進めるにあたり成年後見人を用意しなければならない、共有名義による相続を避けられないこともあるでしょう。
ただし、成年後見制度や共有名義の相続はリスクがあるのでご注意ください。

認知症の相続人がいるときの注意点は、下記の通りです。

  • 成年後見制度を利用すると途中でやめられない
  • 共有名義による相続にはリスクやデメリットがある
  • 相続人となる予定の方が高齢の場合は遺言書の作成を検討しておく

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 成年後見制度を利用すると途中でやめられない

認知症になり判断能力を失った相続人がいる場合、手続きを進めるために成年後見制度の利用を検討するケースもあるでしょう。
しかし、成年後見制度は、一度利用を開始すると原則として途中でやめることはできません。
「相続手続きが完了するまで」「登記申請の間だけ」などのスポットでの活用はできないことを理解しておきましょう。

加えて、成年後見人に司法書士や弁護士などの専門家が選ばれると、毎月3~5万円程度の報酬がかかり続けてしまいます。
近年では、司法書士や弁護士が選ばれるケースが増えてきているので成年後見制度を本当に利用しなければならないか吟味した上で手続きに臨みましょう。

成年後見制度の問題点8つ!回避方法と対処法をわかりやすく解説

4-2 共有名義による相続にはリスクやデメリットがある

認知症の相続人がいて法定相続による登記申請をした場合、不動産を共有状態で所有しなければならない場合があります。
ただし、共有名義による相続はリスクやデメリットがあるので、可能であれば避けた方が良いでしょう。

共有名義で不動産を所有するリスクやデメリットは、下記の通りです。

  • 不動産の活用や売却をしにくい
  • 将来的に権利関係者が増える恐れがある

共有名義の不動産を活用、売却するには共有名義人の同意が必要です。
また、共有名義人が亡くなると相続人が雪だるま式に増えていき、権利関係がより複雑になる可能性もあります。

このように、共有名義による相続はリスクがあるので可能な限り回避した方が良いでしょう。
相続や認知症対策に精通した司法書士や弁護士であれば、共有状態を回避する方法や相続対策についても提案できるのでお気軽にお問い合わせください。

4-3 相続人となる予定の方が高齢の場合は遺言書の作成を検討しておく

相続人になるであろう人物が高齢の場合は、自分が元気なうちに遺言書を作成しておき、相続人が認知症になるリスクに備えておきましょう。
特に配偶者(妻・夫)は第一順位の相続人なので注意が必要です。
本記事の3章で解説したように、認知症の相続人がいても遺言書があれば、残りの相続人が遺言による相続登記を行えるからです。

高齢の相続人には預貯金など管理しやすい財産を相続させる、あわせて家族信託を行っておき自分と配偶者の認知症対策などを行っておけば、成年後見制度を利用せずとも財産管理を行える可能性もあります。

相続対策や認知症対策には複数あり、それぞれメリットやデメリットがあります。
複数の方法を掛け合わせることも多いため、自分に合う相続対策や認知症対策をしたい場合は司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。

成年後見制度を利用しない方法とは?認知症でも後見人が不要なケースとは
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まとめ

認知症になり判断能力を失った相続人がいると、相続登記を始めとする手続きを進めることができません。
また、認知症になった相続人がいる場合、相続登記義務化違反の過料の対象から外れるかは現時点では明らかになっていません。

認知症の相続人がいる場合や相続人が高齢の場合は、自分が元気なうちに遺言書を作成しておくと、遺族の負担を減らせます。
また、自分の配偶者の認知症リスクに備えて、相続対策や認知症対策を行っておくのも良いでしょう。

グリーン司法書士法人では、相続登記や認知症対策についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですのでまずはお気軽にお問い合わせください。

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