
目次
住まない実家は相続してはいけない5つの理由|実家を手放す方法とは
【この記事でわかること】
- 住まない実家を相続してはいけない理由
- 住まない実家だけを相続放棄することはできるのか
- 住まない実家を相続したときの対処法
- 住まない実家を活用する方法
亡くなった両親が所有していた実家は相続財産に含まれます。
実家に住む予定のない人が実家を相続してしまうと、固定資産税や管理コストがかかり続けてしまうので、相続するかを慎重に判断しなければなりません。
ただし、住まない実家だけを相続放棄することはできないので、預貯金や株式など他の遺産がある場合は相続放棄しない方が良いケースもあります。
住まない実家を相続した場合は、活用や売却、寄付なども検討しましょう。
本記事では、住まない実家は相続してはいけない理由、相続した場合の対処法を解説します。
実家の相続手続きの流れは、下記の記事で詳しく紹介していきます。
1章 住まない実家を相続してはいけない5つの理由
住まない実家を相続すると、空き家であっても固定資産税などの管理コストがかかってしまいます。
他にも、住まない実家を相続するデメリットは、下記の通りです。
- 固定資産税や管理コストがかかり続ける
- 管理不全空き家・特定空き家として自治体に指定されると固定資産税が最大6倍になる
- 田舎にある実家は活用・売却が難しい可能性がある
- 空き家になった実家を放置するとトラブルが起きる恐れもある
- 相続税がかかる
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 固定資産税や管理コストがかかり続ける
空き家になった実家を相続してしまうと、固定資産税や管理コストがかかり続けてしまいます。
固定資産税は、その年の1月1日時点に不動産を所有している人にかかる税金だからです。
不動産の価値によっては年間10万円を超える固定資産税がかかる場合もあるため、住まない実家を相続した場合は活用や売却を検討しましょう。
1-2 管理不全空き家・特定空き家として自治体に指定されると固定資産税が最大6倍になる
住まない実家を放置していて状態が悪くなり、自治体によって管理不全空き家や特定空き家に指定されると固定資産税が最大6倍になってしまいます。
管理不全空き家や特定空き家として指定されると、固定資産税の軽減措置を適用できなくなってしまうからです。
管理不全空き家と特定空き家の定義は、それぞれ下記の通りです。
特定空き家 | 放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある空き家 |
---|---|
管理不全空き家 | このまま放っておくと特定空き家になりそうな物件 |
特定空き家や管理不全空き家に関する制度は、放置される空き家が増えているため、国の施策として法制化されました。
空き家の管理が行き届かない状態が続くと、固定資産税の負担が増える恐れもあります。
そのため、住まない実家であっても相続したからには、適切な管理を続ける必要があります。
1-3 田舎にある実家は活用・売却が難しい可能性がある
田舎にある実家を相続してしまうと、いざ活用、売却しようとしても需要が低く借り手や買い手が見つからない場合があります。
借り手や買い手が見つからないといつまで経っても活用や売却を行えず、管理コストや固定資産税のみがかかり続けるのでご注意ください。
1-4 空き家になった実家を放置するとトラブルが起きる恐れもある
誰も住まなくなった実家を相続し放置してしまうと、近隣住民とトラブルになる恐れもあります。
具体的には、下記のトラブルが起きる可能性があります。
- 庭が荒れてしまい雑草や害虫・害獣トラブルが発生する
- 住宅や塀が倒壊してしまい近隣の住宅を傷つけてしまう
- 空き家が放火されたり、犯罪者の潜伏場所に使われたりする
上記のように、管理状態の悪い空き家は倒壊リスクもありますし、犯罪に巻き込まれるリスクもあります。
したがって、住まない空き家を放置していると1-2で紹介したように固定資産税の負担が上がるだけでなく、近隣住民とのトラブルや訴訟リスクもあるのでご注意ください。
1-5 相続税がかかる
誰も住む予定がなく活用予定のない実家であっても、相続すると相続税がかかってしまいます。
加えて、相続税は現金一括納付が原則であり、遺産が実家しかない場合、納税資金を用意するのが難しいこともあるでしょう。
田舎にある実家は安易に相続してしまうのではなく、どれくらいの価値があるのか、相続税はいくらになるのかシミュレーションするのが重要です。
2章 【注意】住まない実家だけ相続放棄することはできない
本記事の1章で解説したように、住まない実家を安易に相続してしまうと管理コストもかかりますし、将来的に様々なリスクが発生します。
そのため「住む予定がない田舎の実家だけ手放して預貯金や株式だけ受け継ぎたい」「実家は相続放棄してそれ以外の遺産だけ相続したい」と考える人もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、住まない実家だけを相続放棄することはできません。
一部の財産のみを相続放棄し、残りの遺産を受け継ぐことは認められておらず、相続放棄する場合は、すべての遺産を一切相続できなくなります。
住む予定のない実家を相続したものの手放したい場合、売却や寄付、贈与などを検討しましょう。
また、相続した実家の建物を解体し更地にすれば相続土地国庫帰属制度を活用し手放すことも可能です。
次の章では、住まない実家を相続したときの対処法を解説します。
3章 住まない実家を相続したときの対処法
故人が住んでいた不動産を相続したものの誰も住む予定がない場合は、活用や売却、他の遺産によっては相続放棄を検討しても良いでしょう。
住まない実家を相続したとき、または相続しそうなときの対処法は、下記の通りです。
- 活用・売却をする
- 相続放棄する
- 相続土地国庫帰属制度を活用する
- 寄付・贈与をする
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 活用・売却をする
自分や家族、親族が住む予定のない実家を相続した場合は、活用や売却を検討しましょう。
自宅の築年数や立地、広さによってはそのまま賃貸住宅として貸し出せる可能性があります。
仕事が忙しい、自宅と相続した実家が離れているなどの理由で、不動産経営をするのは大変だと感じる場合は、相続した実家の活用ではなく売却を検討しても良いでしょう。
実家を売却してしまえば売却代金を手元に残せますし、売却代金を相続税の納税に充てられます。
ただし、実家を活用・売却できるかは、実家の状態や立地、需要による部分も大きく影響します。
そのため、相続した実家の活用や売却を検討する場合は、まずは実家のある地域の不動産会社に相談してみるのが良いでしょう。
実家の活用方法については、下記の記事や本記事の4章で詳しく解説しています。
【相続不動産の活用・売却前には登記申請が必要です】
相続した不動産を活用、売却する際には、故人から相続人へ名義変更手続きをすませなければなりません。
不動産の名義変更手続きは、法務局にて相続登記の申請を行う必要があります。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士に数万円程度で依頼も可能です。
グリーン司法書士法人でも相続登記に関する相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
3-2 相続放棄する
遺産のほとんどが実家を占める場合は、相続放棄を検討しても良いでしょう。
相続放棄をすれば、実家だけでなくすべての遺産を受け継がなくてすみます。
ただし、相続放棄をすると預貯金や株式など他の遺産も一切受け継げなくなりますし、下記の点にも注意しなければなりません。
- 自分が相続人になってから3ヶ月以内に相続放棄の申立てをしなければならない
- 遺産の使用、処分をしてしまうと相続放棄が認められなくなる
- 一度、相続放棄が受理されると原則として取り消せない
また、相続発生時点で実家を現に占有していたと認められる場合は、相続放棄をしても実家の管理義務が残ってしまいます。
故人と生前同居していたケースなど不安がある場合は、相続放棄に詳しい司法書士や弁護士に一度相談してみることをおすすめします。
3-3 相続土地国庫帰属制度を活用する
預貯金や株式など他に価値の高い遺産があり相続放棄をしたくない場合は、相続土地国庫帰属制度を検討しましょう。
相続土地国庫帰属制度とは、相続・遺贈によって取得した土地を国に返還できる制度です。
相続土地国庫帰属制度であればいらない土地のみを手放せますが、下記のデメリットがあります。
- 空き家を解体し更地にする必要がある
- すべての土地で相続土地国庫帰属制度を利用できるわけではない
- 宅地ひとつにつき20万円の負担金を納める必要がある
- 制度を活用する前には相続登記が必要である
相続土地国庫帰属制度の利用を検討する場合、相続登記の申請もすませておく必要があるので、まずは相続に詳しい司法書士に登記申請の件も含めて相談してみるのが良いでしょう。
3-4 寄付・贈与をする
相続した実家に借り手や買い手が見つからない場合、寄付や贈与も検討しましょう。
例えば、隣人であれば実家を無償で譲り受けても良いと考える可能性がありますし、土地の立地や広さによっては企業や自治体が寄付を受け付けてくれる可能性もあります。
ただし、寄付や贈与をすると、贈与を受けた側に贈与税、贈与をした側に譲渡所得税・住民税がかかる場合があるのでご注意ください。
土地を寄付、贈与した際にかかる税金は、それぞれ下記の通りです。
贈与を受けた側 | 税金を払う人物 | かかる税金 |
---|---|---|
個人 | 贈与を受けた人物 | 贈与税がかかる |
法人 | 贈与をした人物 | 譲渡所得税・住民税がかかる |
4章 住まない実家を活用する方法
本記事で解説したように、住まない実家を相続した場合も管理コストや固定資産税がかかり続けてしまいます。
そのため、下記の方法で活用することを検討しましょう。
- 賃貸住宅として貸し出す
- 店舗として貸し出す
- 民泊・レンタルスペースとして活用する
- サテライトオフィスとして貸し出す
- 駐車場経営をする
- トランクルーム経営をする
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 賃貸として貸し出す
実家の築年数が新しい場合や立地が良く借り手が見つかりそうであれば、そのまま賃貸住宅として貸し出しても良いでしょう。
特に、戸建ての賃貸経営はアパートやマンションの需要が低い地域でも借り手が見つかる可能性があるので、不動産会社に相談してみることをおすすめします。
実家の土地が広く建物の築年数が古い場合は、今の建物を解体しアパートやマンションを建築する方が適している可能性もあります。
4-2 店舗として貸し出す
実家のある土地が住宅の賃貸需要が少ない場合は、賃貸住宅ではなく店舗として貸し出すことを検討しましょう。
例えば、駅近などアクセスが良い場合は、貸店舗やテナントオフィスの建築、経営を考えてみるのもおすすめです。
反対に、実家の立地が悪い場合は古民家カフェやギャラリーなどとして活用することを検討してみても良いでしょう。
4-3 民泊・レンタルスペースとして活用する
田舎にある実家を相続した場合は、民泊やレンタルスペースとして活用するのもおすすめです。
2018年から住宅宿泊事業法という法律が施行され、届出をすれば年間180日まで民泊を営業できるようになりました。
民泊には自分の自宅を民泊として提供する「家主居住型」と空き家を民泊として使用してもらう「家主不在型」の2種類に分けられます。
自宅が離れている人は、家主不在型で民泊経営をするのが良いでしょう。
なお、家主不在型で民泊経営する場合は、国土交通省に登録された住宅宿泊管理業者に管理を委託する必要があります。
地域の不動産会社が受託宿泊管理を行っていることも多いので、まずは相談してみると良いでしょう。
4-4 サテライトオフィスとして貸し出す
実家が田舎にある場合、IT企業などに向けてサテライトオフィスとして貸し出すのも有効です。
サテライトオフィスとは、本社を中心に衛星(サテライト)のように配置されたオフィスです。
サテライトオフィスはオフィスビルというより、一般的な住宅と似た形をしているのが特徴で古民家や田舎の雰囲気を活かした見た目の住宅などが好まれる傾向にあります。
4-5 駐車場経営をする
実家の土地を活用したいものの初期費用を抑えたい場合は、駐車場経営を考えてみても良いでしょう。
駐車場経営は建物を建築する必要がないので、土地活用方法の中でも初期費用を抑えられます。
ただし、駐車場経営をするにあたり実家を取り壊す必要があります。
実家を取り壊して更地にすると固定資産税の負担が増えるので、事前に利回りを計算しておくことが大切です。
また、実家の土地の大きさによっては再建築不可となっていることがあり、駐車場にしてしまうとそれ以外の活用が難しくなる可能性もゼロではありません。
そのため、実家の土地を活用する際には駐車場経営に絞ってしまうのではなく、様々な可能性を検討する必要があります。
4-6 トランクルーム経営をする
実家が田舎にあり店舗としての需要や賃貸需要が少ない場合は、トランクルーム経営を検討しても良いでしょう。
市街地にあるイメージが強いトランクルームですが、田舎でも一定の需要を見込めます。
また、アパートやマンションではなくコンテナを建築すれば良いので、初期費用を抑えられるのもメリットです。
一方、アパートやマンション、テナントオフィスほど利回りを見込めるわけではないのでご注意ください。
まとめ
住まない実家を安易な気持ちで相続してしまうと、固定資産税や管理コストの負担に悩まされる恐れがあります。
また、空き家になった実家の管理を疎かにしてしまうと、固定資産税が最大6倍になる、近隣住民とトラブルになるなどの恐れもあるのでご注意ください。
故人の自宅を相続しても使用する予定がないのであれば、活用や売却はできそうか、そもそも相続すべきかどうかを考えなければなりません。
なお、相続した実家を活用、売却する場合は事前に登記申請をすませておく必要があるのでご注意ください。
グリーン司法書士法人では、相続登記についての相談をお受けしています。
グループ会社には不動産会社もありますので、相続不動産の活用や売却についての相談もお受け可能です。
初回相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。