やってはいけない実家の相続6選|相続のプロが徹底解説

やってはいけない実家の相続6選|相続のプロが徹底解説
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司法書士日野 修亮

 監修者:日野 修亮

この記事を読む およそ時間: 8
 この記事を読んでわかること

  • 実家の相続時にやってはいけないこと
  • 相続した実家の活用方法
  • 相続した実家を処分する方法

親が亡くなると、実家を相続することは多いです。
親と同居しており相続後も実家に住み続ける場合は良いですが、すでに自分の持ち家がある場合や実家が田舎にあり資産価値が低い場合には、相続する前に活用方法や処分方法について検討しておきましょう。

活用方法を決めずに実家を相続してしまうと、固定資産税がかかり続けてしまいますし、自分が亡くなり次の相続が発生したときに子供や孫の負担になってしまう恐れがあるからです。

本記事では、実家の相続時にやってはいけないことや実家の活用、処分方法について解説します。
実家の相続手続きについては、下記の記事で詳しく解説しているのであわせてお読みください。

実家を相続したらどうする?|名義変更の手続きや税金の注意点を解説

1章 やってはいけない実家の相続6選

活用方法を決めずに実家を相続してしまうと、相続後も持て余してしまい固定資産税などの管理コストがかかり続けてしまいます。
実家の相続時にやってはいけないことは、主に下記の通りです。

  1. 活用方法を決めないまま実家を相続する
  2. 兄弟姉妹などで共有名義として相続する
  3. 相続した実家の名義変更をせずに放置する
  4. 相続した実家を放置する
  5. 相続した実家を無計画に解体する
  6. 相続直後に実家を売却してしまう

それぞれ詳しくみていきましょう。

1-1 活用方法を決めないまま実家を相続する

実家の活用方法や処分方法を決めないまま相続してしまうと、相続後も実家を活用できず持て余してしまう恐れがあります。
不動産は誰も住んでいなくても、毎年1月1日時点の所有者に対して、固定資産税と都市計画税がかかり続けます。

また、実家を適切に管理しようとすると草刈りや建物の修繕なども必要です。
活用方法や処分方法が決まっていないと、使用予定のない実家に対して管理コストがかかり続けてしまう状況も考えられます。

余計な費用を負担しなくてすむように、実家を相続する際には事前に活用方法や処分方法を決めておくのが良いでしょう。
実家の活用方法や処分方法は、本記事の後半で解説します。

空き家管理の3大原則と空き家を所有すると生じるコストとリスク

1-2 兄弟姉妹などで共有名義として相続する

父親や母親が亡くなり実家を相続する際に、子供たち全員で共有名義として相続するのは避けましょう。
不動産を共有名義で相続すると、活用や売却しにくくなるなど下記のデメリットやリスクがあるからです。

  • 将来所有者がどんどん増えていってしまう
  • 共有持分のみを買い取ってもらえるケースは少ない
  • 土地のすべてを売却するには所有者全員の同意が必要
  • 土地を自由に活用しにくい

上記のように、不動産を共有名義で所有してしまうと、自分の次の世代にまで迷惑がかかる恐れがあります。

遺産のほとんどが実家不動産で兄弟姉妹で公平に分割するのが難しい場合は、相続不動産を現金化し、売却代金を分けて相続する換価分割も検討しましょう。
相続に詳しい司法書士や弁護士であれば、相続人や遺産の状況に合った遺産分割方法を提案可能です。

土地の共有持分はトラブルのもと!共有持分でできることと処分方法
換価分割とは?代償分割との違いや遺産分割協議書の書き方について

1-3 相続した実家の名義変更をせずに放置する

実家を相続した際に、故人から相続人へ名義変更手続きをせず放置することはやめましょう。
不動産の名義変更は、法務局にて相続登記の申請を行う必要があります。

2024年4月からは、相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科される恐れがあります。
相続登記の義務化は、過去に発生した相続に対しても適用されるので、まだ実家の相続登記がおすみでない人は早めに手続きを行いましょう。

上記の罰則以外にも、相続した不動産を名義変更せず放置すると下記のリスクやデメリットがあります。

  • 相続関係が複雑になって登記できなくなる
  • 相続人の高齢化で遺産分割が困難になる
  • 相続登記の必要書類の保管期限が切れる
  • 不動産の活用ができなくなる

相続登記は自分で手続きもできますが、司法書士に数万円程度で依頼することも可能です。
グリーン司法書士法人でも、相続登記についての相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。

相続登記の義務化は2024年4月!法改正で変更される4つのポイント

1-4 相続した実家を放置する

実家を相続したときに名義変更手続きだけはすませたものの、その後、実家の土地や建物を手入れせず放置することはやめましょう。
空き家になった実家の管理状態が悪いと、特定空き家管理不全空き家に指定されてしまう恐れがあるからです。

相続した実家が特定空き家や管理不全空き家に指定されてしまうと、実家の土地の固定資産税が最大6倍になってしまいます。
固定資産税には住宅用地の特例があり、住宅が建築されている土地の固定資産税は最大6分の1まで減額される仕組みだからです。

住宅用地の減額特例

特定空き家や管理不全空き家に指定されると、上記の住宅用地の特例を適用できないので、固定資産税が最大6倍になってしまいます。

空き家の固定資産税は最大6倍!高くなるケースや対処法を解説

1-5 相続した実家を無計画に解体する

実家を相続し、更地として活用や売却を考えたとしても、無計画に建物を解体してしまうのはやめましょう。
先ほど解説したように、建物を解体してしまうと固定資産税の住宅用地の特例を適用できなくなるからです。

安易に実家を解体し、更地の借り手や買い手が見つからない状態が続くと、高額になった固定資産税を払い続けなければなりません。

また、相続した実家の築年数が古い場合、建物を解体しても希望していた建物を再建築できない恐れがあります。
実家を建てたときの建築基準法と現在の建築基準法が異なる場合、実家解体後の再建築では、現在の建築基準法に従わなければならず建物の面積などの制限を受けてしまう可能性があります。

また、実家を解体した後に現在の建築基準法では再建築不可な土地であると判明すると、借り手や買い手が見つかりにくくなる可能性が高いのでご注意ください。

1-6 相続直後に実家を売却してしまう

実家を使用する相続人がいなく早く手放したいと考えていても、相続してすぐに実家を売却するのはやめましょう。
相続から10ヶ月以内に実家を売却してしまうと、小規模宅地等の特例を適用できなくなってしまうからでう。
小規模宅地等の特例とは、亡くなった人が住んでいた自宅の土地の相続税評価額を最大8割軽減できる制度です。

小規模宅地等の特例の要件のひとつに「相続開始時から相続税申告期限(相続発生を知った翌日から10カ月以内)まで相続した不動産を保有していること」があります。
したがって、実家を相続後すぐに売却してしまうと、小規模宅地等の特例を適用できない可能性があります。
小規模宅地等の特例は節税効果が非常に大きいので、特例を適用できないと相続税の負担が重くなる恐れがあるのでご注意ください。

一方で、相続した不動産を売却する際には、下記の控除や特例を適用できる場合もあります。

相続空き家の3,000万円特別控除の特例相続した空き家を3年以内に売却したときに、譲渡所得から3,000万円を控除できる制度
取得費加算の特例相続した不動産を相続税の申告期限から3年を経過する日までに売却したときに、相続税を不動産の売却費用に加算できる特例

上記の特例を活用するには、相続後3年以内に不動産を売却する必要があります。
小規模宅地等の特例を適用した上で、上記の特例も活用して売却しようとすると売却活動を効率よく進めていかなければなりません。

相続した実家の売却を考えるときには、相続税や売却時にかかる譲渡所得税や住民税のシミュレーションをした上で、売却タイミングについて検討していきましょう。

相続した不動産を3年以内に売却したときに使える税金の控除・特例
小規模宅地等の特例とは?適用要件や土地の種類・手続きの流れまとめ
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2章 相続した実家の活用方法

相続した実家をそのまま放置すると、固定資産税などの管理コストなどがかかり続けます。
コストを回収するためにも、自分で住むだけでなく、賃貸として他人に貸すことなども検討しましょう。

相続した実家の活用方法は、主に下記の通りです。

  1. 自分が住む
  2. 賃貸として他人に貸す
  3. 更地にして土地を他人に貸す
  4. 土地活用する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

2-1 自分が住む

相続した実家の立地が良い場合や建物の状態が良い場合は、自分で住んでも良いでしょう。
特に、持ち家がない人が相続した実家に住めば家賃や住宅購入費用を浮かせられます。

ただし、相続した実家の状態によっては建物の大規模修繕が必要な場合もあるので、事前に建物の状態やリフォーム費用を確認しておきましょう。

2-2 賃貸として他人に貸す

すでに自分も住宅を購入していて相続した実家に住む予定がない場合は、賃貸として他人に貸すのもおすすめです。
相続した実家を賃貸に出せば、定期的に家賃収入を受け取れます。

ただし、自分で住む場合と同様に他人に貸し出す場合も、実家の状態によっては大規模修繕が必要となるでしょう。
また、他人に賃貸として貸し出した場合、大家側の都合で退去してもらうことが難しくなるため、活用や売却の自由度が下がるのもデメリットといえます。

2-3 更地にして土地を他人に貸す

実家の状態が悪く賃貸として貸し出すことが難しいのであれば、建物を解体し更地を活用するのもおすすめです。
更地にした状態の方が借り手が見つかりやすくなることもあります。

ただし、実家が田舎にある場合や立地が悪い場合、更地にしたとしても需要が低く借り手が見つかりにくい可能性もあります。
本記事の1章で解説したように、更地にしてしまうと固定資産税の金額が最大6倍となるので、事前に借り手や活用方法を検討した上で実家の解体を行いましょう。

2-4 土地活用する

実家を解体し更地にして他人や企業に貸し出すのではなく、自分で土地を活用するのも選択肢のひとつです。
相続した実家の立地や広さにもよりますが、下記の土地活用などが考えられます。

  • アパート・マンション経営をする
  • 戸建て賃貸経営をする
  • 賃貸併用住宅の経営をする
  • 駐車場経営をする
  • トランクルームを経営する
  • 太陽光発電を建築する
  • 資材置き場を建築する
  • 高齢者向け施設を建築する
  • 貸し店舗・テナントオフィスを建築する

例えば、実家の面積が広いものの田舎にあり住宅需要が見込めない場合でも、高齢者向け施設などの需要は見込める場合もあります。
土地活用方法には複数ありますので、地域の不動産会社に相談し、どのような活用ができそうか提案してもらうのも良いでしょう。

実家の土地を活用する9つの方法|活用の流れや確認すべきこと

3章 相続した実家を手放す方法

相続した実家の活用をするのが難しい場合や次世代に受け継ぎたくない場合は、自分の代で売却、処分してしまうのも良いでしょう。
相続した実家を手放す方法は、主に下記の通りです。

  1. 売却する
  2. 相続放棄する
  3. 相続土地国庫帰属制度を利用する
  4. 寄附や贈与をする
  5. 空き家バンクに登録する

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1 売却する

相続した実家を売却してしまえば、その後の管理は不要になりますし、売却代金も受け取れます。
また、遺産のほとんどが実家不動産であり、相続人同士で公平に分割することが難しい場合は、実家を売却して売却代金をそれぞれ相続する「換価分割」も有効です。

ただし、実家を売却すると発生した利益に対して譲渡所得税と住民税がかかります。
また、不動産の売買は需要と供給の一致によって成立するため、実家の立地や広さ、状態、希望価格によってはなかなか買い手がみつからない恐れもあるでしょう。

実家の売却を考えたときには、売却が可能そうか、いくらくらいで売れそうか、地域の不動産会社に相談してみるのがおすすめです。
なお、相続した実家を売却することが決まっている場合でも、売却前に故人から相続人に名義変更手続きをすませておく必要があるのでご注意ください。

実家の売却はいつがベスト?手続きの流れや税金についても徹底解説

3-2 相続放棄する

相続放棄すれば、実家を受け継がずにすむため、その後の固定資産税や管理の手間もかかりません。
相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しなくなる手続きです。

相続放棄をすれば、実家を相続せずにすむ一方で、他の財産を受け取れないなど下記のデメリットもあります。

  • 相続放棄の期間は3ヶ月である
  • 相続放棄は原則撤回できない
  • 亡くなった人が残した財産に手を付けてしまうと相続放棄ができなくなる
  • 相続放棄をしても保証人から外れられない
  • 生前に相続放棄をすることはできない
  • 一部財産だけの相続放棄はできない

相続放棄をする際には、家庭裁判所での申立てが必要です。
申立て方法および必要書類は、それぞれ下記の通りです。

提出先故人の住所地を管轄する家庭裁判所
手続きする人相続放棄する人(または法定代理人)
手数料の目安
  • 収入印紙800円
  • 郵便費用1000円程度
必要なもの
  • 相続放棄申述書(裁判所窓口またはHPからダウンロード)
  • 故人の死亡および相続人であることがわかる戸籍謄本
  • 故人の住民票除票または戸籍附票
    など
相続放棄とは?検討すべきケース3つや手続きの流れ・注意点まとめ

3-3 相続土地国庫帰属制度を利用する

実家以外の不動産や預貯金を相続したい場合は、相続放棄ではなく相続土地国庫帰属制度の利用を検討しましょう。
相続土地国庫帰属制度とは、相続によって取得したいらない土地を国に返還できる制度です。

相続土地国庫帰属制度であれば、相続放棄と異なり、いらない土地のみを手放せます。
ただし、相続土地国庫帰属制度を利用する際には、下記の点に注意しなければなりません。

  • すべての土地に対して利用できるわけではない
  • 土地は更地にしておく必要がある
  • 土地1筆に対して20万円程度の負担金が必要である

相続土地国庫帰属制度を利用する際には、法務局による審査を受け、負担金を納める必要があります。
相続土地国庫帰属制度の申請方法および必要書類は、下記の通りです。

手続きする人相続もしくは遺贈で土地を取得した人
手続き先土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局
費用審査手数料:土地1筆あたり14,000円
必要書類
  • 承認申請書
  • 承認申請に係る土地の位置および範囲を明らかにする図面
  • 承認申請に係る土地および当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
  • 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
  • 申請者の印鑑証明書
  • 固定資産税評価額証明書(任意)
  • 承認申請土地の境界等に関する資料(あれば)
  • 申請土地に辿り着くことが難しい場合は現地案内図(任意)
    など
相続土地国庫帰属法とは?いつから施行?手続き方法や費用まとめ

3-4 寄附や贈与をする

実家を処分したいのであれば、実家の土地を自治体や企業に寄付する、隣家に贈与するなども有効です。
寄附や贈与では、売却代金を受け取ることはできませんが、実家不動産を手放すことができるので、その後の固定資産税や管理の負担からは解放されます。

ただし、自治体や企業もすべての土地の寄付を受け付けているわけではありません。
利用価値の低い土地の場合や管理に手間がかかる土地は、寄付を申し出ても断られる可能性があります。

また、不動産を寄付、贈与した際には、寄付をした側に譲渡所得税や住民税、贈与を受けた側に贈与税がかかる場合がある点にも注意しておきましょう。

いらない土地はどうしたらいい?相続すると放棄不可!土地の処分方法

3-5 空き家バンクに登録する

空き家問題が深刻化している自治体では、空き家バンクを運営していることがあります。
空き家バンクとは、空き家の利用を希望する人に空き家を紹介する制度であり、登録しておけば希望者が現れたときに賃貸や売却を行えます。

思い入れのある実家を有効活用してほしい、売却に焦っていないので購入相手をじっくり選びたい場合は、空き家バンクに登録しておいても良いでしょう。

空き家バンクは国土交通省のホームページなどで空き家情報のリンクを確認できるので、利用を検討している人はぜひ参考にしてみましょう。

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まとめ

実家を相続する際には、事前に活用方法や売却方法を検討しておくことが大切です。
相続した実家は使用していなくても固定資産税がかかり続けますし、管理の手間もかかるからです。

また、遺産分割方法に揉めてしまい共有名義で相続してしまうと、実家の活用や売却も難しくなるのでご注意ください。

実家の活用や売却方法には複数あるので、相続した実家の立地や状態、広さなどに応じてベストな活用、売却方法を見つけていくのが良いでしょう。
なお、相続した実家の活用や売却をする際には、事前に相続登記をすませておく必要があります。

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