親が亡くなり実家を相続すると、自分が使用しなくても固定資産税や管理義務が発生し続けます。
そのため、使用する予定がない実家はアパート、マンション経営などで活用するのがおすすめです。
相続した実家を活用できれば、賃貸収入などを得られます。
一方で、すべての土地が活用に適しているわけではなく、活用を始める際には土地の需要などを調べなければなりません。
土地活用には複数の方法があるため、どの方法で活用するか迷う場合は不動産に関する専門家に相談しながら行うのが良いでしょう。
本記事では、相続した実家を活用する方法やメリット、デメリットを解説します。
実家の相続手続きの流れは、下記の記事で詳しく解説しているのであわせてご参考にしてください。
目次
1章 実家の土地を活用する9つの方法
相続した実家を使用する予定がない場合、実家の建物や土地を放置するのではなく、下記の方法で活用することも検討しましょう。
- アパート・マンション経営をする
- 戸建て賃貸経営をする
- 賃貸併用住宅の経営をする
- 駐車場経営をする
- トランクルームを経営する
- 太陽光発電を建築する
- 資材置き場を建築する
- 高齢者向け施設を建築する
- 貸し店舗・テナントオフィスを建築する
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 アパート・マンション経営をする
実家を解体しアパートやマンションを建築、経営すれば、定期的に賃貸収入を受け取れるようになります。
さらに、アパートやマンションなど他人に貸している建物や土地は、相続税評価額が下がるので節税対策としても有効です。
相続した実家の土地が広く、建築費用を用意できそうであれば、アパートやマンション経営を考えてみても良いでしょう。
一方で、アパートやマンション経営には、下記のリスクがあります。
- 入居者が集まらないリスク
- 入居者とのトラブルリスク
- 災害リスク
- 家賃滞納リスク
上記のリスク以外にも、管理会社に支払う費用や十数年に一度行う大規模リフォーム費用などのランニングコストがかかります。
1-2 戸建て賃貸経営をする
実家の土地があまり広くなく、アパートやマンションの建築が難しい場合は戸建ての賃貸経営もおすすめです。
実家が新しければリフォームをして賃貸に出しても良いですし、相続した実家が古い場合は建て替えやリノベーション後に貸し出しするのが良いでしょう。
戸建ての賃貸経営は、アパートやマンションの需要が低い地域でも借り手が見つかる可能性があります。
加えて、ファミリー世帯に借りてもらえれば借入期間が長くなる傾向があるため、賃貸収入が安定しやすいメリットもあります。
1-3 賃貸併用住宅の経営をする
相続した実家を自分で使用しつつ活用もしていきたい場合は、賃貸併用住宅を建てるのはいかがでしょうか。
賃貸併用住宅は名前の通り、自宅部分と賃貸部分が合わさった建物であり、老後資産の形成にも有効です。
加えて、賃貸併用住宅は小規模宅地等の特例を適用できるため、土地の相続税評価額を大幅に軽減できます。
一方で、賃貸併用住宅を建築する場合、認知症対策や相続対策をしておくことが大切です。
認知症になってしまうと賃貸併用住宅のリフォームや売却ができなくなってしまいますし、相続が発生すると子供や遺された配偶者で分割しにくくトラブルになってしまう恐れがあります。
1-4 駐車場経営をする
相続した実家周辺に賃貸需要がないのであれば、更地にして駐車場経営をすることも考えてみましょう。
駐車場経営は自分で月極駐車場を経営する以外にも、コインパーキング経営をするコインパーキングの事業者に土地を貸すなどの選択肢があります。
月極駐車場とコインパーキングではニーズが異なるので、駐車場経営をする際には周辺地域のニーズ調査を念入りに行うことが重要です。
また、駐車場は住宅が建築されていないため、アパートやマンション経営と異なり固定資産税の軽減措置が適用されない点にも注意しなければなりません。
1-5 トランクルームを経営する
100坪以上の土地を相続した場合は、トランクルーム経営も選択肢に入ってきます。
トランクルームはコンテナを建築し貸し出せばよいので、アパートやマンション経営よりも初期費用を節約しやすい点がメリットです。
また、ランニングコストや管理の手間もアパートやマンション経営と比較すると、少なくて済みます。
ただし、トランクルーム経営はアパートやマンション経営ほど利回りが高くならない点、利用者の多くは価格を重視するため近隣地域に安いトランクルームができると利用者が移ってしまうリスクがあります。
1-6 太陽光発電を建築する
実家だけでなく山を相続した場合や斜面のある土地を相続した場合は、太陽光発電を建築し活用するのも良いでしょう。
太陽光発電では、発電した電力を売却することで利益を受け取れます。
ただし、日当たりが良い地域でないと発電量が下がってしまい利益になりにくいこと、太陽光発電の買取価格は年々下落しており昔よりは利益を出しにくい点には注意しなければなりません。
1-7 資材置き場を建築する
実家が田舎にあり賃貸需要や駐車場の需要が見込めない場合は、資材置き場を建築することも検討しましょう。
資材置き場とは、建築資材などを一時的に保管しておく場所です。
資材置き場は建築費用が安くすむので初期費用を抑えられますし、他の活用方法が見つかったときに転用しやすい点がメリットです。
ただし、資材置き場として事業者に貸し出すのであれば、ある程度土地が平坦である必要があります。
1-8 高齢者向け施設を建築する
実家が田舎にあり賃貸需要が見込めない場合でも、高齢者向け施設の建築、経営であれば行える可能性があります。
介護施設やサービス付き高齢者向け住宅は、駅から離れているアクセスが悪い土地でも需要が見込める可能性があるからです。
高齢者向け施設を建築、経営する場合は、土地だけを事業者に貸す場合と、所有者が施設を建築し事業者に土地・建物を一括で貸す場合があります。
初期費用は借入先の事業者にあわせて選択するのが良いでしょう。
1-9 貸し店舗・テナントオフィスを建築する
駅近など実家のアクセスが良い場合は、貸し店舗やテナントオフィスを建築、経営するのもおすすめです。
テナント経営は法人が借入先であり、アパートやマンションよりも賃料が高くなる場合もあります。
居住用物件でないため、内装や設備などにかかる初期費用を節約できる点もメリットです。
ただし、駅から遠い場所や商業施設やオフィス需要のない地域に貸し店舗やテナントオフィスを建築しても、借り手が見つかる可能性が低いです。
建築、経営前には不動産会社やハウスメーカーに相談し、周辺地域の調査をしておきましょう。
2章 実家の土地を活用するメリット
使用予定のない実家の土地を相続したとき、そのまま放置するのではなく上手に活用できれば賃貸収入などを得られます。
加えて、固定資産税や管理コストなどは不動産経営の経費として申告できるようになります。
実家の土地を活用するメリットを詳しく見ていきましょう。
2-1 賃貸収入などを得られる
相続した実家の土地を放置せず、アパートやマンション、テナントオフィス経営などを行えば、定期的に賃貸収入を受け取れます。
建築する建物の種類や規模にもよりますが、月に数十万円から数百万円近い利益を得られる場合もあります。
ただし、土地活用にはリスクがありますし、様々な方法があるので実行前には周辺地域の調査や相続した実家の土地について調査しておきましょう。
2-2 空き家や土地を有効活用できる
相続した実家の土地を活用すれば、実家の建物や土地を有効活用できます。
相続した建物や土地は使用する予定がなくても、固定資産税がかかりますし管理義務も発生します。
空き家を放置すると放火リスクや犯罪に使用されるリスクがありますし、土地に生えた雑草を放置すると周辺環境の悪化を招くこともあるでしょう。
実家を放置せず活用できれば、これらのトラブルも回避できます。
相続した実家の活用に成功すれば、固定資産税や管理にかかった費用も不動産経営の経費として申告可能です。
3章 実家の土地を活用するデメリット
相続した実家を活用する際には、建築費用などまとまったお金が必要になります。
他にも、活用方法によっては実家の解体が必要な場合もあるでしょう。
相続した実家の土地を活用するデメリットは、主に下記の通りです。
- まとまった資金がかかる
- 建物の解体費用がかかる場合がある
- 売却よりもリスクがある
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 まとまった資金がかかる
相続した実家で土地活用を始める場合、建築費用などの初期費用がかかります。
活用方法や建築する建物の大きさによっても初期費用は変わりますが、アパートやマンションの場合、数千万円から数億円もの費用がかかることも珍しくありません。
アパートローンを組むにしても、返済していくことはできるのか、資金繰りに余裕はあるかをシミュレーションしておく必要があるでしょう。
土地活用の中でも、土地のみを事業者や個人に貸す場合は初期費用がほとんどかかりません。
アパートやマンション経営より利回りは低くなりますが、リスクや初期費用を抑えたい人に適しています。
3-2 建物の解体費用がかかる場合がある
実家の土地を活用する際には、すでに建っている実家の建物の解体が必要な場合も多いです。
解体時には解体費用がかかり、初期費用に上乗せされてしまいます。
解体費用の相場は、建物の構造や大きさによって変わり、構造別の坪単価はそれぞれ下記の通りです。
建物の構造 | 1坪あたりの解体費用相場 |
木造住宅 | 3~5万円程度 |
鉄骨造住宅 | 4~6万円程度 |
RC造住宅 | 6~8万円程度 |
解体費用を用意することが難しい場合は、実家の建物ごと売却してしまうことも検討しましょう。
3-3 売却よりもリスクがある
土地活用は中長期的に賃貸収入を受け取れるメリットがある一方で、リスクもあります。
退去者が出れば賃貸収入は減額もしくはなくなってしまいますし、定期的に建物のメンテナンスや大規模リフォームもしなければなりません。
このように、土地活用はメリットだけでなくリスクやランニングコストがかかる点も理解しておきましょう。
相続した実家が田舎にあり、将来的に価値がどんどん下がっていくことが予想されるのであれば、活用ではなく売却してしまった方が良いケースもあります。
自分で実家の活用方法や売却すべきかの判断が難しい場合は、複数の不動産会社やハウスメーカーに相談し、自分たちの希望に合う方法を見つけていきましょう。
4章 実家の土地を活用する前に確認すべきこと
相続した実家の土地を活用する際には、活用前に不動産の所有者や実家の立地について確認しておかなければなりません。
これらのことを確認しないと、実家の土地に合う活用方法を決められないからです。
具体的には、実家の土地を活用する前に下記の内容を確認しておきましょう。
- 不動産の名義人
- 実家の立地
- 土地の規制
- 初期費用
- 利回り
- 節税効果
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 不動産の名義人
実家を相続した際には、最初に不動産の名義人を確認しましょう。
そもそも、親が所有していたと思っていた実家が借家である可能性もゼロではありませんし、実家の土地が祖父や曾祖父から名義変更されていない恐れもあるからです。
他にも、実家の土地や建物に抵当権が設定されていて、そもそも活用が難しい場合もあります。
建物の建築が決まってから名義人に関する問題が発生することを防ぐためにも、最初に相続した実家の名義人に関する情報を集めておきましょう。
不動産の名義人に関する情報は、法務局で登記簿謄本を取得すれば確認できます。
登記簿謄本の取得方法および必要書類は、下記の通りです。
取得できる人 | 誰でも取得できる |
取得できる場所 | 法務局 (不動産の所有地を管轄する法務局以外でも取得可能) |
取得費用 | 1通:480円 |
取得方法 |
|
4-2 実家の立地
土地活用を行う際には、実家の立地や形状も確認しておきましょう。
土地の広さや形状によって、適した活用方法は変わってきます。
例えば、駅に近いアクセスが良い土地を活用するのであれば、アパートやマンション経営だけでなく貸し店舗やテナントオフィス経営も選択肢に入ってきます。
一方で、駅から遠く立地が悪い土地を活用する場合は、介護施設や高齢者向け住宅などの建築を検討する方が良いケースもあるでしょう。
4-3 土地の規制
日本の土地は法律により、地域ごとに建築できる建物の種類や活用方法が決められています。
土地活用をするために既存の建物を解体したが、規制されていて新たな住宅は建築できなかったなどとならないように、活用前には規制の有無や内容を確認しておくことが大切です。
活用予定の土地で建てられる建物を知りたい場合は国土交通省 国土数値情報️もしくは、各自治体にて確認してみましょう。
4-4 初期費用
土地活用には、建物の建築費用などの初期費用がかかります。
初期費用は活用方法や建築する建物の種類によって大きく変わってくるため、初期費用をいくら用意できそうかも確認しておきましょう。
例えば、アパートやマンションの建築には、数千万円から数億円もの費用がかかることも珍しくありません。
自己資金で用意するのではなくローンを組むにしても、返済できそうか審査は通るのか計画を立てておく必要があります。
4-5 利回り
相続した実家の土地を活用する場合は、活用方法ごとの利回りも調べておきましょう。
土地の活用方法は複数あり、それぞれ利回りも変わってきます。
アパートやマンション経営、テナントオフィス経営などは利回りが高くなりやすいですが、初期費用もかかりますしリスクもその分高くなります。
利回りをシミュレーションしておけば、ローンを何円で返せるのか修繕費用を積み立てられるかも分析可能です。
また、利回りを計算するときには不動産会社やハウスメーカーが算出する利回りをそのまま参考にするのではなく、自分で計算してみることも大切です。
不動産会社などが出してくれる利回りは表面利回りであることが多いですが、実際にはランニングコストも見据えた実質利回りで計算した方が資金繰りなどの計画も立てやすくなります。
4-6 節税効果
土地活用をする際には、節税効果についても調べておきましょう。
土地活用は固定資産税や都市計画税、相続税などを節税できる可能性がありますが、活用方法によって節税効果が大きく変わってくるからです。
例えば、アパートやマンションを建築、経営した場合は、建物および土地の相続税評価額を大幅に軽減できます。
加えて、アパートやマンションが建築されている土地に関しては軽減措置が適用されるため、固定資産税や都市計画税も節税可能です。
一方で、駐車場経営をしている土地は経営内容や駐車場の状態によっては相続税の節税効果が期待できない場合もあります。
加えて、住宅が建築されているわけではないので、駐車場には固定資産税の節税効果はありません。
このように、土地活用の方法ごとに節税効果が変わってくるので、節税目的で活用するのであれば相続対策や土地活用に詳しい税理士に相談してみることをおすすめします。
5章 実家の土地を活用する流れ
相続した実家の土地を活用する際には、周辺地域の市場調査をしてニーズを把握することから始めましょう。
具体的には、下記の流れで活用を始めていくのがおすすめです。
- 実家のエリア付近の市場調査をする
- 専門家・不動産会社に相談し活用方法を提案してもらう
- 契約を結び施工する
- 土地活用を開始する
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP① 実家のエリア付近の市場調査をする
相続した実家の活用を考える場合、最初に実家周辺地域の需要の把握や規制について調べておきましょう。
都市計画法によって規制された地域に実家がある場合は、建築できる建物の種類や高さが制限される場合もあるからです。
また、実家の立地や周辺環境によっては、賃貸需要の大きさや入居者の属性も変わってきます。
例えば、アパートやマンションを建築するにしても入居者の属性に応じて単身者用の間取りかファミリー向けの間取りかなどを決定しなければなりません。
周辺地域の調査を行う際には不動産会社などに依頼することも可能ですが、まずは実家周辺を歩いてみるなど自分で調査することも大切です。
STEP② 専門家・不動産会社に相談し活用方法を提案してもらう
相続した実家周辺のニーズや規制に関する確認が完了したら、土地の活用について不動産会社やハウスメーカーに相談してみましょう。
不動産会社やハウスメーカーは土地活用についてノウハウを持っているので、相続した土地に合う活用方法を提案してくれます。
ただし、不動産会社やハウスメーカーごとに得意とする活用方法が異なるので、複数の業者に相談し提案してもらうのがおすすめです。
STEP③ 契約を結び施工する
活用方法および不動産会社やハウスメーカーが決定したら、契約を結びましょう。
建物の建築や土地の造成が必要な場合は、作業が開始されます。
STEP④ 土地活用を開始する
建築物が無事完成し、入居者や借入先の事業者が決定すれば土地活用が始まります。
借入先がいる間は定期的に賃貸収入を受け取りれますが、入居者や事業者が退去すると、賃貸収入が入らなくなってしまいます。
その結果、利回りが低下し、資金繰りが厳しくなる可能性もあるでしょう。
そのため、退去者が出た場合は入居者募集の広告掲載をする、普段から建物の管理をしておくなども大切です。
相続した不動産を活用、売却する際には、故人から相続人へ名義変更手続きをすませなければなりません。
不動産の名義変更手続きは、法務局にて相続登記の申請を行う必要があります。
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まとめ
相続した実家を放置していても、固定資産税や管理義務は発生し続けてしまいます。
そのため、自分で使用するのが難しい土地や建物は、賃貸経営をするなども検討しましょう。
土地活用には複数の方法があり、相続した土地の立地や形状、広さによってもベストな活用方法は変わってきます。
相続した実家に合う活用方法がわからない場合は、不動産会社はハウスメーカーに相談してみるのがおすすめです。
また、相続した実家を活用する際には、事前に故人から相続人へ名義変更手続きをすませておく必要があります。
相続した不動産の名義変更手続きは、自分で行う以外にも司法書士への依頼も可能です。
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