- 祖父が所有している土地に孫が家を建てることはできるか
- 祖父の土地に孫が家を建てるときにかかる税金
- 祖父の土地に孫が家を建てるときの注意点
住宅の建築、購入費用は年々値上がりを続けているため、孫が住宅を建築、購入する際に援助をしたいと考える祖父母も多いのではないでしょうか。
特に、自分が使っていない土地を持っているのであれば、そこを使って孫が家を建てて土地代を浮かせば良いと考えることもあるでしょう。
結論から言うと、祖父名義の土地に孫が家を建てることは全く問題ありません。
しかし、孫が住宅ローンを組むときには土地の名義人である祖父の協力が必要不可欠ですし、土地の名義を譲る場合は贈与税がかかることを理解しておきましょう。
本記事では、祖父が所有している土地に孫が家を建てることは認められるか、建てるときにかかる税金について解説します。
目次
1章 祖父の土地に孫が家を建てることは問題ない
結論から言うと、祖父が所有している土地に孫が家を建てることは何も問題がありません。
祖父名義の土地に孫が家を建てるときには、下記の選択肢が考えられます。
- 祖父名義の土地を孫が無償で借り家を建てる(使用貸借)
- 祖父名義の土地を孫が有償で借り家を建てる
- 祖父名義の土地を孫に譲り、そこに家を建てる
それぞれの方法でかかる税金や必要な手続きが異なってくるので、ご注意ください。
どの方法が良いか迷ったときは、贈与や相続に詳しい司法書士や税理士などの専門家に相談しても良いでしょう。
次の章では、祖父の土地に孫が家を建てるときにかかる税金について詳しく解説していきます。
2章 祖父の土地に孫が家を建てるときにかかる税金
祖父名義の土地に孫が家を建てるときは、土地の名義が誰か、土地を借りる場合は地代を払っているかなどによって発生する税金が下記のように変わります。
祖父の土地を無償で借りるケース | 税金はかからない |
祖父の土地を有償で借りるケース |
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祖父の土地を無償で譲り受けるケース |
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それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 祖父の土地を無償で借りるケース
祖父が所有している土地を無償で借り、孫が家を建てた場合、贈与税などの税金はかかりません。
無償で土地を借りることを「使用貸借」と言い、個人間の使用貸借には、贈与税などの税金はかからないと決められているからです。
なお、土地を借りている孫が固定資産税程度のお金を負担するケースも使用貸借に該当するためで税金はかかりません。
ただし、使用貸借していた土地は相続時に自用地といって「更地と同じ状態」になります。
したがって、孫に無償で土地を貸しただけでは、土地にかかる相続税を節税することはできないのてご注意ください。
2-2 祖父の土地を有償で借りるケース
親の土地を有償で借りた場合は、地代として支払っている金額や方法によって税金の取り扱いが下記のように変わります。
地代だけを支払う場合 | 権利金相当額について贈与税がかかる可能性がある |
権利金と地代を払う場合 |
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孫が祖父に対して地代のみを支払っている場合は、権利金相当額の贈与を受けていると判断され、贈与税がかかる場合があります。
ただし、権利金相当額が110万円以内の場合や相続時精算課税制度を利用している場合は贈与税がかからないこともあります。
一方、孫が権利金および地代を払っている場合は贈与税はかかりませんが、祖父が受け取った権利金と地代は所得税・住民税の課税対象となるのでご注意ください。
2-3 祖父の土地を無償で譲り受けるケース
祖父から孫に無償で土地を譲る場合は、贈与にあたるため下記の税金が発生します。
- 贈与税:贈与したことについてかかる税金
- 不動産取得税:不動産を取得したときにかかる税金
- 登録免許税:不動産の名義変更をしたときにかかる税金
贈与税は累進課税制度を採用しており、贈与の金額に応じて10%から55%までの税率がかかります。
不動産取得税は固定資産税評価額の3~4%、登録免許税は固定資産税評価額の2%かかります。
贈与税については、相続時精算課税制度を活用すれば発生しない可能性があるので、生前贈与や相続税対策に詳しい税理士に相談し税金を計算してもらうのが良いでしょう。
また、祖父から孫へ土地を譲る場合、贈与契約書の作成や土地の名義変更手続きなことも理解しておく必要があります。
3章 祖父の土地を孫が譲り受けるときの手続き
孫が家を建てるにあたり、祖父名義の土地を譲り受ける場合、贈与契約書の作成や法務局での名義変更手続きをしなければなりません。
土地を贈与するときの流れは、下記の通りです。
- 不動産贈与契約を締結する
- 不動産贈与契約書を作成する
- 法務局で不動産の名義変更手続きをする
- 税務署で贈与税の申告手続きをする
贈与契約書の作成や登記申請は自分で行うこともできますが、不備なく行いたい場合や将来のトラブルを避けたい場合は司法書士に相談することも検討しましょう。
4章 祖父の土地に孫が家を建てるときの注意点
祖父が所有している土地に孫が家を建てる場合、住宅ローンを組む際に土地を担保にする必要があることに注意しましょう。
また、将来の相続トラブルにつながらないように対策をしておくことも肝心です。
祖父名義の土地に孫が家を建てるときには、下記に注意しましょう。
- 相続トラブルが発生する可能性がある
- 祖父の土地も住宅ローンの担保にしなければならない可能性が高い
- 祖父から孫に遺贈で土地を譲ると相続税が2割加算になる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1 相続トラブルが発生する可能性がある
祖父の土地に孫が家を建てるときには、相続トラブルが起きないように注意しなければなりません。
孫に土地を生前贈与していない場合、孫が家を建てていても祖父の遺産であることに変わりはないからでせ。
孫が家を建てていた土地を相続人が受け継ぎ、無償で貸し続けてもらえなくなる恐れもあります。
他にも、祖父の遺産のほとんどが土地であり、孫が土地を受け継ぐ場合は他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性もあるでしょう。
このような相続トラブルを避けるためには、祖父に遺言書を書いてもらう、生前贈与してもらうなどが有効です。
祖父の土地に孫が家を建てるときにしておきたい相続対策については、本記事の後半で解説しています。
4-2 祖父の土地も住宅ローンの担保にしなければならない可能性が高い
祖父が所有している土地に孫が家を建てる場合、建築費用のみを借入する場合も、①祖父名義の土地と②孫が建築する住宅の両方を担保に入れなければなりません。
祖父が会社経営などをしており、土地を他の借入の担保にしている場合は、そもそも住宅ローンの審査に通らない恐れもあります。
他にも、万が一孫が住宅ローンを滞納した場合、祖父の土地まで強制的に競売にかけられるリスクがある点に注意しましょう。
また、祖父が建物完成までに認知症などにより判断能力がなくなっていれば、できなくなります。
4-3 祖父から孫に遺贈で土地を譲ると相続税が2割加算になる
祖父の土地に孫が家を建て、祖父が亡くなったら孫がその土地を受け継ごうと考えている場合もあるでしょう。
しかし、祖父から孫に遺贈で土地を譲ると相続税が2割加算されるのでご注意ください。
亡くなった人の配偶者や子供、両親以外は相続性が2割加算されると決められているからです。
なお、孫については祖父母と養子縁組をしていても相続税が2割加算されるのでご注意ください。
また、祖父名義の土地に孫が家を建て、その家に祖父と孫が同居している場合は、孫が土地を相続したら小規模宅地等の特例を適用し相続税を節税できる可能性があります。
ただし、適用要件や節税効果の計算が複雑なのて、自己判断するのではなく相続に詳しい税理士に相続財対策をシミュレーションしてもらうのが良いでしょう。
5章 祖父の土地に孫が家を建てるときにすべき相続対策
祖父の土地に孫が家を建てる場合、祖父がなくなった後のトラブルを減らすために相続対策をしておくとよいでしょう。
孫は法定相続人ではないため、祖父が孫に土地を遺したい場合は、遺言書作成や生前贈与などの対策が必要だからです。
相続対策には、主に下記の方法があります。
- 遺言書の作成
- 生前贈与
- 家族信託
- 生命保険
- 養子縁組
それぞれ詳しく解説していきます。
5-1 遺言書の作成
遺言書を作成すれば、相続人でない孫にも土地を遺せます。
ただし、法的な効力を持つ遺言書を作成するのであれば要件を満たす必要があります。
加えて、偏った内容の遺言書は遺留分を侵害してしまう恐れがある点にも注意しなければなりません。
遺留分とは、亡くなった人の配偶者や子供、両親に認められている遺産を最低限度受け取れる権利です。
遺留分は遺言書の内容よりも優先されるので、孫に全財産を遺すと行った遺言書を作成すると他の相続人が孫に対して遺留分侵害額請求をする可能性があります。
また、他の家族(叔父叔母)の感情を抑えるため、一度自分の親が相続する形の遺言にした方が良いこともあります。
要件を満たし遺留分トラブルも回避できる遺言書を作成したいのであれば、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談しながら作成しましょう。
5-2 生前贈与
祖父名義の土地を孫に生前贈与で譲れば、祖父が亡くなる前から孫が土地を所有できます。
なお、広い土地の一部に建物を建てさせてもらう場合は、土地を分筆して必要な部分だけ生前贈与してもらう方法も可能です。
ただし、本記事の2章で解説したように、生前贈与を受けると孫に贈与税や不動産取得税、登録免許税がかかることを理解しておきましょう。
5-3 家族信託
家族信託とは、信頼できる家族に自分の財産の管理や運用、処分を任せる制度です。
家族信託を利用すれば、祖父が認知症になってからも孫が土地などの財産を管理できます。
加えて、家族信託では財産の管理や運用、処分を任せられるだけでなく、自分が亡くなった後に財産を受け継ぐ人物も指定可能です。
したがって、遺言書同様に、祖父がなくなった後に孫が土地を受け継ぐようにも指定できます。
ただし、家族信託の契約書を自分で作成することや手続きを進めるのは難しいので、家族信託に精通した司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。
5-4 養子縁組
孫を養子にすれば法律上の親子関係が生じるため、孫も相続人になり土地を相続させられます。
また、相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除が用意されているため、養子縁組により相続人の人数が増えれば相続税が減る場合もあります。
ただし、孫を養子にすると下記のデメリットもあるので、注意しなければなりません。
- 相続トラブルが起きやすくなる
- 孫養子は相続税が2割加算になる
- 相続対策のみの養子縁組は無効になる恐れがある
特に、孫養子は祖父からみて法律上の子供であっても、相続税は2割加算されるので生前贈与などをした方が相続税の節税につながる可能性もあります。
また、孫を養子にすることついて他の相続人が「自分の相続分が減る」と反発する可能性があることも理解しておきましょう。
5-5 生命保険
遺言書などで孫に土地を相続させる際に、他の相続人の遺留分を侵害してしまいそうであれば、孫を受取人とした生命保険に加入しておくのもおすすめです。
生命保険金は受取人固有の財産として扱われるため、遺産分割の対象にならないからです。
したがって、孫を受取人にした生命保険に加入しておけば、孫は保険金から遺留分侵害額相当分の金銭を支払えます。
まとめ
祖父が所有している土地に孫が家を建てることは可能であり、家を建てるだけであれば祖父から孫に土地の名義変更を行う必要もありません。
ただし、孫が家を建てていたとしても祖父名義の土地は、祖父が亡くなったときに遺産として相続人に権利が移ります。
したがって、祖父が孫に土地を遺したいと考えるのであれば、遺言書の作成や生前贈与、家族信託などで相続対策をしなければなりません。
相続対策には複数の方法があるので、自分に合う方法を選びたいのであれば相続に詳しい司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
グリーン司法書士法人では、生前贈与や遺言書作成などの相続対策についての相談をお受けしています。
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