家族や親族が亡くなり相続が発生すると、様々な手続きが必要です。
相続税申告や財産の名義変更手続きを進めていく中で「遺産分割」と「相続」の2つの言葉の違いがわからず、疑問をお持ちの人もいるのではないでしょうか。
遺産分割と相続の違いは、下記の通りです。
遺産分割 | 相続人全員で遺産の分け方を決めること |
相続 | 故人の財産や義務、権利、地位を受け継ぐこと |
上記のように、相続は亡くなった人の遺産を受け継ぐことであり、複数の相続人で遺産の分け方を決めることが遺産分割です。
家族や親族が亡くなり故人の財産を相続するときには、相続人全員で遺産の分け方を話し合う遺産分割協議を行わなければなりません。
このように、遺産分割と相続は似た意味で使用されますが厳密には意味が異なります。
相続手続きに関する用語は専門性が高く、なかなか理解しにくいものも多いので、一つずつ整理していきましょう。
本記事では、遺産分割と相続の違いをわかりやすく解説します。
家族や親族が亡くなったときの手続きの流れは、下記の記事をご参考にしてください。
目次
1章 遺産分割と相続の違い
遺産分割と相続はどちらも似た言葉で区別が難しいですが、厳密に言えば下記のように使い分けされています。
遺産分割 | 相続人全員で遺産の分け方を決めること |
相続 | 故人の財産や義務、権利、地位を受け継ぐこと |
故人が遺言書を用意していなかった場合には、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行わなければなりません。
遺産分割協議が完了してから、故人の財産を各相続人に受け継ぐ名義変更手続きが行われます。
ただし、下記のケースでは遺産分割協議を行う必要はありません。
- 故人が遺言書を作成していた
- 法定相続人が1人だった
遺産分割と相続について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1 遺産分割とは
遺産分割とは、相続人全員でどの遺産を誰がどれくらい相続するかを決定することです。
故人が遺言書を用意していなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。
相続人が複数人いるにもかかわらず遺産分割を完了していないと、相続財産は相続人全員の共有状態となってしまいます。
なお、相続人になれる人物は法律によって下記のように優先順位が決められています。
故人との関係 | 相続順位 |
配偶者 | 常に相続人になる |
子供(孫) | 第一順位 |
親(祖父母) | 第二順位 |
兄弟姉妹(甥・姪) | 第三順位 |
優先順位が高い相続人が一人でもいる場合、優先順位が低い人物は相続人にはなれません。
1-2 相続とは
相続とは、故人の財産や権利、義務などを受け継ぐことです。
相続財産は預貯金や不動産だけでなく、下記のように様々なものがあります。
- 預貯金
- 不動産
- 株式などの有価証券
- 自動車などの動産
- 賃借人、賃貸人などの地位
- 損害賠償請求権、損害賠償義務などの権利や義務
- 借金や滞納家賃、税金などの負債
先ほど解説したように、故人が遺言書を作成していなかった場合は遺産分割を行わない限り、上記の相続財産を相続人全員が共有状態で相続します。
相続は様々な意味で使用されている
先ほど解説したように、相続という言葉が厳密に意味することは「故人の財産や権利、義務を受け継ぐこと」です。
しかし、相続は「相続手続き」や「法定相続分で財産を受け継ぐこと」など、幅広い意味で使用されることも多いです。
2章 遺産分割には3種類ある
本記事の1章で解説したように、家族や親族が亡くなったときには遺産分割を行い、誰がどの遺産をどれくらい相続するかを決定しなければなりません。
遺産分割には、大きく分けて下記の3種類があります。
- 遺言書通りに遺産分割する
- 法定相続分で遺産分割する
- 相続人全員で話し合い遺産分割する
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 遺言書通りに遺産分割する
故人が生前のうちに遺言書を作成していた場合には、原則として遺言書通りに相続が行われます。
ただし、下記のケースでは遺言書通りに相続をしなくても問題ありません。
- 相続人全員が遺言書の内容に従わないことに合意した場合
- 遺言書の内容が遺留分を侵害している場合
相続人全員や遺言書で指定されている受遺者や遺言執行者も同意している場合には遺言書の内容に従わず、遺産分割協議を行えます。
遺留分とは、故人の配偶者や子供、親に用意されている遺産を最低限度受けとる権利です。
遺留分は遺言書よりも優先されるので、遺言書の内容が遺留分を侵害していた場合、侵害額相当分の金銭を遺産を多く受け取る人物に請求可能です。
2-2 法定相続分で遺産分割する
法律では財産を受け継ぐ相続人だけではなく、相続人ごとに財産を受け継ぐ割合も指定しています。
- 相続人同士の関係が良好なケース
- 相続財産が預貯金のみなど分割しやすいケース
上記のケースでは、相続人全員で法定相続分による遺産分割に合意する可能性もあるでしょう。
なお、法定相続分は相続人の構成ごとに下記のように決められています。
法定相続人の構成 | 法定相続分 | 備考 |
配偶者のみ | 配偶者がすべて相続する | |
配偶者+子 | 配偶者:1/2 子:1/2 | 子が複数人いる場合は均等に分配する |
配偶者+両親などの直系尊属 | 配偶者:2/3 両親などの直系尊属:1/3 |
|
配偶者+兄弟・姉妹 | 配偶者:3/4 兄弟・姉妹:1/4 | 兄弟・姉妹が複数人いる場合は均等に分配 |
子のみ | 子がすべて相続する | 子が複数人いる場合は均等に分配する |
両親などの直系尊属のみ | 直系尊属がすべて相続する | 親が複数人いる場合は均等に分配する |
兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹がすべて相続する | 兄弟・姉妹が複数人いる場合は均等に分配 |
2-3 相続人全員で話し合い遺産分割する
法定相続分による相続を望まない場合や土地など分割しにくい相続財産がある場合は、相続人全員で話し合い遺産分割を決定します。
誰がどの遺産をどれくらい相続するか決める話し合いを遺産分割協議と呼びます。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、1ヶ所で行う必要はなく、電話やメール、LINEなどでも可能です。
なお遺産分割方法には、下記のように複数の方法があります。
遺産分割方法 | 概要 |
現物分割> |
|
換価分割 |
|
代償分割 |
|
共有分割 |
|
上記のうち、共有分割のみはデメリットやリスクが多いのでおすすめできません。
どの遺産分割方法が良いか迷ってしまい決められない場合には、相続に詳しい司法書士や弁護士への相談をおすすめします。
専門家に相談すれば資産や相続人状況に合った遺産分割方法を提案可能です。
3章 遺産分割協議の流れ
本記事で解説してきたように、家族や親族が亡くなったときには相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。
遺産分割協議のやり直しなどを防ぐために、下記の流れで行いましょう。
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人調査を行う
- 相続財産調査を行う
- 相続人全員で遺産分割協議を行う
- 話し合った内容を遺産分割協議書にまとめる
遺産分割協議自体に期限はありませんが、遺産分割協議書は相続税申告や相続登記、各財産の名義変更手続き時に提出しなければなりません。
そのため、相続税申告の期限である相続開始から10ヶ月以内に完了させるのがおすすめです。
遺産分割協議を10ヶ月以内に完了させられそうにない、相続人全員が忙しいので話し合いや各種調査が進まない場合には相続に詳しい司法書士や弁護士への依頼もご検討ください。
司法書士や弁護士であれば、各相続人が納得できる公平な遺産分割協議書を作成可能ですし、その後の相続手続きも一括で対応可能です。
まとめ
遺産分割と相続はよく似た言葉であり、特に使い分けずに言葉を使用していた人も多いでしょう。
しかし、厳密に言えば遺産分割と相続は違う意味で使用される言葉です。
家族や親族が亡くなったときには、遺産分割によって誰がどの財産をどれくらいの割合で相続するかを決めなければなりません。
遺産分割を行うためには、相続人が誰か漏れなく特定する相続人調査や故人が遺した財産の調査も必要です。
平日の日中は仕事をしていて各種調査や相続人同士の話し合いが進められない、どのように遺産分割すれば良いかわからず話し合いが難航している場合には、相続に詳しい司法書士や弁護士への相談もおすすめします。
専門家であれば、故人の財産状況や相続人の状況に合った遺産分割方法の提案を行えますし、相続人調査や相続財産調査、各財産の名義変更手続きまでワンストップで対応できます。
グリーン司法書士法人では、遺産分割協議書の作成や相続手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
遺産分割と相続の違いとは?
遺産分割と相続には、下記の違いがあります。
・遺産分割:相続人全員で遺産の分け方を決めること
・相続:故人の財産や義務、権利、地位を受け継ぐこと
▶遺産分割と相続の違いについて詳しくはコチラ遺産分割はどうやって決める?
故人が遺言書を用意していなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。
遺産分割を行う際には、相続人全員でどの遺産を誰がどれくらい相続するかを決定します。
▶遺産分割について詳しくはコチラ