
- 遺言書を書く紙やペンに決まりはあるのか
- 自筆証書遺言を書く紙・ペンの選び方
相続対策で作成する遺言書には、①自筆証書遺言と②公正証書遺言と③秘密証書遺言があります。
このうち、手書きで作成する遺言書は自筆証書遺言であり、最も手軽に作成できる遺言書でもあります。
自筆証書遺言はすべて自筆で作成するなどの要件は設定されていますが、紙やペンについての決まりはありません。
ただし、長期にわたり遺言書を保管することを考えると、保管に耐えうる紙やペン、間違って捨てられない材質の紙を選ぶと安心です。
本記事では、遺言書の作成に使用する紙やペンはなんでも良いのか、どんな紙やペンを選ぶべきかを解説します。
遺言書の種類については、下記の記事で詳しく解説しているので合わせてお読みください。
1章 遺言書を書く紙はなんでもいいの?
自筆証書遺言は名前の通り、すべて自筆で作成するなどの要件が設定されています。
一方で、紙やペンについての決まりはなく、どんな紙やペンを使用して作成しても効力を持たせられます。
遺言書を書く紙やペンについて、詳しく解説していきます。
1-1 紙やペンに関する決まりはない
自筆証書遺言は、使用する紙やペンについての決まりはありません。
法律上はどんな紙やペンを使用しても良く、極端な話、チラシの裏に鉛筆で遺言書を書いても効力を持たせられます。
ただし、現実的にはチラシの裏に遺言書を作成すれば誤って捨てられるリスクがありますし、鉛筆など簡単に消せる筆記用具で書いてしまうとトラブルに発展する恐れもあるでしょう。
本記事の2章で、自筆証書遺言の作成に適した紙やペンを詳しく解説します。
1-2 法的な要件を満たしていれば効力を発揮する
自筆証書遺言は、紙やペンについての決まりはないものの作成にあたり、下記の要件を満たさなければなりません。
- 遺言者本人が全て自筆で記入する(財産に関する部分を除く)
- 作成した正確な日付を自筆で書く
- 名前の後に印鑑を押す
- 訂正時には訂正印を押しどこを訂正したか明確にする
要件を満たした自筆証書遺言のサンプルは、下記の通りです。
上記の要件を満たしていないと、どんな紙やペンを使っていたとしても自筆証書遺言が効力を持たないのでご注意ください。
1-3 法務局による自筆証書遺言の保管制度を活用する場合は様式が決まっている
作成した自筆証書遺言は自分で大切に保管するだけでなく、法務局による保管制度を利用して相続発生まで保管できます。
ただし、法務局による自筆証書遺言の保管制度を利用する場合、紙の種類は問われませんがサイズが決まっているのでご注意ください。
法務局による自筆証書遺言の保管制度の要件については、本記事の2章で詳しく解説します。
2章 自筆証書遺言に使用する紙・ペンの選び方
自筆証書遺言の作成に使用する紙やペンに決まりはありませんが、実務の面では長期間の保管に耐えうる紙やペン、間違って捨てられない紙を選ぶ必要があります。
使用する紙やペンを選ぶときには、下記を基準にすると良いでしょう。
- 長期間の保管に耐えうる紙・ペンを選ぶ
- 間違って捨てられない・紛失しない紙を選ぶ
- 法務局による自筆証書遺言保管制度の様式にあった紙・ペンを選ぶ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 長期間の保管に耐えうる紙・ペンを選ぶ
遺言書は作成した後、長期にわたり保管する可能性があるので、長期間の保管に耐えうる紙やペンを選ばなければいけません。
例えば、紙について言えば和紙を選んでおくと長期間保管しても劣化しにくくおすすめです。
ペンは万年筆やボールペンなどインクが消えてしまわないようなものが良いでしょう。
鉛筆やフリクションインキを使用したペンは、温度変化や摩擦などで消える恐れがあるので使用しないことをおすすめします。
2-2 間違って捨てられない・紛失しない紙を選ぶ
法律上はどんな紙を使用しても良いですが、保管中や遺族が遺品整理をする際に誤って捨てられない紙や紛失してしまわない紙を選びましょう。
例えば、チラシの裏などに書いても自筆証書遺言は効力を持ちますが、紛失リスクや誤って捨ててしまうリスクがあるのでおすすめできません。
2-3 法務局による自筆証書遺言保管制度の様式にあった紙・ペンを選ぶ
法務局による自筆証書遺言保管制度を利用したい場合は、制度の様式にあった紙やペンを選ばなければなりません。
法務局による自筆証書遺言保管制度を利用する場合の紙、ペンについては下記のルールを守る必要があります。
- A4サイズ
- 記載した文字が読み辛くなるような模様・彩色がない(一般的な罫線は問題ない)
- 上部5mm、下部10mm、左20mm、右5mm以上の余白を確保している
- 片面のみに記載している
長期間の保管に耐えうる万年筆やボールペン
なお、自筆証書遺言の保管制度では、遺言書が要件を満たしているかは確認してもらえます。
一方で、遺言書の内容については精査してもらえないのでご注意ください。
遺言書の内容に問題ないか確認してもらった上で、信頼性の高い遺言書を作成したいのであれば、司法書士や弁護士に公正証書遺言を作成してもらうのが良いでしょう。
次の章では、公正証書遺言について詳しく解説していきます。
3章 信頼性が高い遺言書を作りたいなら公正証書遺言がおすすめ
自筆証書遺言は作成した遺言書を自分で保管する必要があり、原本の紛失・改ざんリスクがあります。
また、法務局による保管制度を利用したとしても、遺言書の内容まで精査してもらえるわけではありません。
信頼性の高い遺言書を作成したいのであれば、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言を作成することも検討しましょう。
公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成し、保管してくれる遺言書です。
公正証書遺言のメリットとデメリット、作成時の流れを詳しく解説していきます。
3-1 公正証書遺言を作成するメリット
公正証書遺言は公証人が作成するため、形式不備による無効リスクが少ないなどのメリットがあります。
メリットは、主に下記の通りです。
- 公証人が作成するので内容に不備がない
- 原本が公証役場にて保管されるので、偽造の恐れがない
- 紛失しても再発行してもらえる
- 検認が不要
公正証書遺言は検認手続きが不要なので、遺族の負担も減らせるのが魅力といえるでしょう。
3-2 公正証書遺言を作成するデメリット
公正証書遺言は自筆証書遺言と比較して、作成時に手間や費用がかかるデメリットがあります。
デメリットは、主に下記の通りです。
- 作成時に費用がかかる
- 公証人と証人に遺言書の内容を知られてしまう
公正証書遺言は、作成時に公証人に支払う手数料が4~10万円程度かかります。
遺言内容の相談や公証人との打ち合わせ代行などを司法書士や弁護士などの専門家に依頼すると追加で8~20万円程度の費用がかかります。
3-3 公正証書遺言を作成する流れ
公正証書遺言を作成する方法は①自分で公証役場に依頼して作成する方法と②司法書士・弁護士に作成を依頼する方法があります。
司法書士や弁護士に作成を依頼する場合、下記の流れで作成します。
- 相続・遺言に詳しい司法書士事務所を探す
- 無料相談の予約をする
- 司法書士が遺言者本人(または家族から)遺言者の希望と必要な情報を聞き取る
- 司法書士が遺言者のおかれた状況をふまえ最適な遺言内容を提案する
- 司法書士が公証人役場と打ち合わせをする
- 遺言書の草案を遺言者本人が確認する
- 司法書士が遺言作成の日時を予約する
- 公証人が証人2名(うち1名司法書士)の前で遺言者の本人確認を行い、用意していた遺言書の原案を読み上げる
- 内容に間違いがなければ、遺言者本人が遺言書の原案に署名押印する
- 続いて証人2名(うち1名司法書士)、公証人が遺言書の原案に署名押印する
- こちらで保管しておく公正証書遺言書(正本・謄本)を受け取る(場合によっては司法書士に1部保管してもらう。)
司法書士や弁護士に相談すれば手間のかかる作業や手続きを代行してもらえるだけでなく、遺言内容について提案もしてもらえます。
公証役場では遺言内容の相談には応じてもらえないため、自分が希望している遺産分割を必ず実現させたい場合は、司法書士や弁護士に相談しておきましょう。
まとめ
相続対策で用いられる遺言書は複数の種類があり、中でも自筆証書遺言はすべて自筆で作成する必要があります。
自筆証書遺言は、すべて自筆で作成するなどの要件が設定されていますが、一方で使用する紙やペンについては、特に決まりはありません。
しかし、現実的に考えると遺言書作成後は長期にわたり保管することもあるため、保管に耐えうる紙やペンを選ぶのが良いでしょう。
また、できるだけ信頼性の高い遺言書を作成したい、遺言書の内容を専門家に相談したい場合は、司法書士や弁護士に相談した上で公正証書遺言を作成するのがおすすめです。
グリーン司法書士法人では、遺言書作成についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですのでまずはお気軽にお問い合わせください。