
- 故人とのDNA鑑定も可能なのか
- 故人とのDNA鑑定で検体に使用できるもの・できないもの
- DNA鑑定で故人との血縁関係を調べる流れ
- DNA鑑定で故人との親子関係が証明されたらどうなるのか
DNA鑑定は生きている方同士で行うだけでなく、故人との間でも行えます。
故人との血縁関係を証明したい場合や、相続や親子関係をめぐる争いが起きている場合には、DNA鑑定を行っても良いでしょう。
故人とのDNA鑑定を行う場合、遺族の許可を得て、遺品や遺体から検体を採取する必要があります。
本記事では、故人とのDNA鑑定の基本的な仕組みや使用できる検体、鑑定の流れ、親子関係が証明された場合に生じる法律上の効果について解説します。
目次
1章 故人とのDNA鑑定も可能である
結論から言うと、故人との間でもDNA鑑定を行うことが可能です。
相続関係や戸籍上の親子関係をめぐって争いが生じた場合、故人のDNAをもとに血縁関係の有無を確認できます。
ただし、DNA鑑定の可否には検体の状態が大きく影響します。
そのため、死亡後の経過時間や保管状況によってDNAが劣化し、検査が難しくなる場合もあるのでご注意ください。
故人とのDNA鑑定を検討する場合は、鑑定機関に早めに相談しましょう。
2章 故人とのDNA鑑定で検体に使用できるもの・できないもの
DNA鑑定と言うと、唾液などを検体に使用するイメージが大きいかもしれません。
しかし、故人とのDNA鑑定をする場合には、検体に唾液を使用できないため、遺品や遺体の一部を検体にする必要があります。
本章では、検体に使用できるものと使用できないものを詳しく見ていきましょう。
2-1 検体に使用できるもの
故人からのDNA鑑定にあたり、使用可能な検体には以下のようなものがあります。
- 遺体から直接採取した組織や血液
- 抜去した歯や骨
- 生前に使用していた歯ブラシの毛先
- 使い捨てカミソリや電気シェーバーに付着したひげ
- たばこの吸い殻に残った唾液成分
- 使用済みマスクやストロー、ペットボトルの飲み口部分
これらはいずれも唾液や皮膚細胞、血液など、DNAが含まれる可能性の高いものです。
実際の鑑定では、鑑定機関が検体を受け取り、DNAを抽出できるかどうかを確認した上で検査を行います。状態によっては、検体として使用できないものもあるのでご注意ください。
なお、相続や裁判に関連する鑑定を行う場合、鑑定結果が証拠能力を持つかどうかが重要となってきます。
信頼性の高い機関に依頼することはもちろんですが、適切な手段で検体を入手することも大切です。
遺品や遺体の一部から勝手に検体を採取して鑑定をするのは絶対にやめましょう。
2-2 検体に使用できないもの
一方で、故人とのDNA鑑定に検体として利用できないものも存在します。
- 火葬後の遺体
- 時間が経ちすぎて劣化した体液や血痕
- 洗濯や強い消毒を受けた遺品
残念ながら、DNAが高温により完全に破壊されるため、火葬後の遺体を検体として使用することはできません。
そのため、親子関係や相続に関して争いが生じる可能性がある場合には、火葬前に検体を採取しておくことが非常に重要です。
また、遺品を検体とする場合でも、保存状態によってはDNAの抽出ができないこともあります。
見た目には、検体として有効であるように見えても分子レベルでは分解が進んでいるケースもあるため、必ずしも遺品が残っているから安心とは言えません。
3章 DNA鑑定で故人との血縁関係を調べる流れ
故人とのDNA鑑定をする場合、裁判などの証拠として提出することも多いため、検体採取の段階から法的手続きに従うことが大切です。
一般的には、以下のような流れでDNA鑑定を行います。
- 専門機関への相談・申し込み
- 依頼目的や必要書類の確認
- 遺族の了承を得て検体の採取・提出
- 対照となる親族の検体採取
- DNA解析の実施
- 結果の報告書受領
まずは、DNA鑑定を取り扱う専門機関へ相談し、依頼を行います。
法的な証拠能力が必要な場合は、法的鑑定に対応している機関を選ぶことが重要です。
そして、故人の遺体から直接採取する場合は、信ぴょう性を高めるため、病院などを通じて行うことが一般的です。
遺品を検体として用いる場合には、遺族の許可を得て、鑑定機関の指示に従って提出しましょう。
なお、DNA鑑定をしてから結果を受け取るまでは数週間程度かかります。
4章 DNA鑑定で故人との親子関係が証明されたらどうなる?
DNA鑑定によって、故人と依頼者との間に親子関係があることが証明されたとしても、自動的に法律上の親子関係も生じるわけではありません。
故人との法律上の親子関係は、死後認知によって生まれるからです。
死後認知が成立すれば、法律上の親子関係が認められ、嫡出子(法律婚をしている夫婦との間に生まれた子供)と同様の相続権を得られるようになります。
嫡出子と同様に遺産分割協議にも参加できますし、相続権や遺留分を主張可能です。
死後認知の手続き方法や必要書類は、以下の通りです。
| 申立てできる人 |
|
|---|---|
| 申立て先 | 父親の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
| 費用 |
|
| 必要書類 |
など |
まとめ
故人とのDNA鑑定は、相続や死後認知といった場面で重要な証拠となる場合もあります。
火葬後の遺骨からは検体を採取できないので、鑑定を検討する場合は早期の対応が不可欠です。
また、遺体からの採取や遺品を利用して血縁関係を確認することはできますが、法律上の親子関係を生じさせるには死後認知の手続きが必要です。
手続き時には、DNA鑑定の結果を証拠として提出する必要があるので、信頼性の高い方法でDNA鑑定や検体採取をすることが大切です。
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よくあるご質問
孤独死した遺体はDNA鑑定が必要ですか?
孤独死の場合、必ずしもDNA鑑定が必要になるわけではありません。
基本的には、警察や医師による身元確認や戸籍、住民票の照合により本人確認が行われます。
ただし、以下のような場合にはDNA鑑定が行われることがあります。
・身元不明な場合
・相続人の範囲に争いがある場合
・認知や相続に関連する手続きが必要な場合
こっそりDNA鑑定をするのは違法ですか?
故人や親族の遺品を無断で入手してDNA鑑定を行う行為は、状況によっては刑事罰に問われる恐れがあります。
遺品を勝手に持ち出して検体とすると窃盗罪に問われる恐れがありますし、医師や遺族の承諾を得ずに遺体から検体を採取することは、死体損壊罪に該当する恐れもあるからです。
加えて、正規の手続きを踏まずに鑑定をしても、裁判などで証拠能力が認められない場合もあるので絶対にやめましょう。
DNA鑑定の結果はどれくらいで出ますか?
DNA鑑定の結果が出るまでには、数週間程度かかることがほとんどです。







