- 山林にも相続登記の義務化が適用されるのか
- 山林の相続手続きの流れ
- 山林の相続登記が間に合わないときの対処法
2024年4月からは相続登記が義務化され、相続開始から3年以内に登記申請が行われないと、10万円以下の過料が発生する恐れがあります。
相続登記の義務化は一般的な宅地だけでなく、山林に対しても適用されます。
そのため、まだ相続登記がお済みでない山林をお持ちの人は、できるだけ早く手続きを行いましょう。
また、山林の相続手続きは相続登記だけでなく、市区町村に所有者届けを提出する必要もあります。
本記事では、山林にも相続登記の義務化は適用されるのか、山林の相続手続きの流れを解説します。
相続登記については、下記の記事でも詳しく解説しているので合わせてお読みください。
目次
1章 山林にも相続登記の義務化は適用される
2024年4月から始まる相続登記の義務化は、山林に対しても適用されます。
相続登記の義務化の目的は、所有者不明の土地を減らすことであり、田舎にある価値の低い山林の中には登記申請を長年にわたり放置しているものも多いからです。
このように放置され適切に管理されなくなるリスクがある山林に対処していくために、法制度が整備された経緯があります。
相続登記の義務化は2024年4月以降に発生した相続だけでなく、過去に発生した相続についても適用されます。
そのため、まだ相続登記が完了していない山林をお持ちの人はできるだけ早く手続きを行いましょう。
2章 山林の相続手続きの流れ
亡くなった人が山林を所有していた場合、相続登記の申請だけでなく市区町村へ山林の所有者届出を提出する必要があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 相続登記の申請をする
亡くなった人が山林などの不動産を所有していた場合、亡くなった人から相続人へ名義変更手続きをしなければなりません。
相続による名義変更手続きを相続登記と呼びます。
山林の相続登記も一般的な宅地などの不動産の登記申請と同様であり、下記の手順で進めます。
- 相続不動産の調査をする
- 戸籍・戸籍附票を収集する
- 登記記録上の住所と本籍地・死亡時の住所を確認する
- 遺産分割協議を行う
- 管轄法務局を調べる
- 登録免許税を計算する
- 登記申請書を作成する
- 完了書類の受取方法を選択する
- 収入印紙を購入・貼り付けする
- 原本還付の用意をする
- 管轄法務局へ申請を行う
亡くなった人が遺言書を用意していなかった場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が山林を相続するか決定しましょう。
後述しますが、共有持分で山林を相続するとリスクやデメリットが大きいので、必ず遺産分割協議が完了してから登記申請を行うことをおすすめします。
相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士に数万円程度で依頼することも可能です。
グリーン司法書士法人でも登記申請についての相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
2-2 市区町村へ山林の所有者届出を行う
山林を相続した場合、登記申請だけでなく市区町村へ所有者届出を行うと法律によって決められています。
ただし、市区町村への届出が必要なのは、都道府県知事が立案した地域森林計画に含まれる山林(地域森林計画対象民有林)のみです。
対象の山林を所有した場合、所有した日から90日以内に届出をする必要があるのでご注意ください。
市区町村への届出は義務であり、届出をしない場合や虚偽の届出をすると10万円以下の過料を課せられる恐れがあります。
相続した山林が地域森林計画対象民有林に該当しているかは、市区町村の林務担当部局にて確認可能です。
3章 山林の相続登記が間に合わないときの対処法
本記事の2章で解説したように、相続登記を行う際には事前に遺産分割協議を済ませる必要があります。
また、登記申請の際には登記申請書の作成や添付書類の用意をしなければなりません。
万が一、期限までに相続登記の手続きが間に合わない場合は相続人申告登記や司法書士に相続登記を依頼することも検討しましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 相続人申告登記を行う
遺産分割協議がまとまらず、相続登記をすることが難しい場合は「相続人申告登記」を行うことをご検討ください。
相続人申告登記とは、①不動産の所有者が亡くなったことと②自分が相続人であることを証明する手続きです。
相続人申告登記を行っておけば、義務化違反による過料の対象から外れます。
また、相続人申告登記は無料で手続きできる点もメリットです。
ただし、相続人申告登記を行う際には、下記の点に注意しましょう。
- 手続き後に遺産分割が完了したら相続登記をしなければならない
- 正式な登記申請ではないので手続き後も相続不動産の活用や売却はできない
- 相続人ごとに手続きが必要(代表者がまとめて手続きすることはできる)
相続人申告登記の手続き方法および必要書類は、下記の通りです。
手続きできる人 |
|
手続き先 | 相続不動産の住所地を管轄する法務局 |
手続き方法 |
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費用 | 無料 |
必要書類 |
|
3-2 司法書士に相続登記を依頼する
相続人同士での話し合いでは遺産分割協議がまとまりそうにない、相続登記の手続きをする時間が取れない場合は、相続した山林の登記申請を司法書士に依頼するのもおすすめです。
登記申請は司法書士が得意としている業務であり、相続に精通した司法書士であれば単に登記申請を代行するだけでなく、下記の提案やサポートも可能です。
- 相続人や相続財産の状況に合う遺産分割方法の提案
- 二次相続や相続人の認知症対策についての提案
- 相続登記以外の相続手続きのサポート
司法書士に依頼すれば、相続手続きをワンストップで依頼することも可能ですので、仕事が忙しく時間がない人やミスなく手続きを完了させたい人は、相談してみるのが良いでしょう。
4章 山林を相続したくないときの選択肢
亡くなった人が田舎にある価値の低い山林を所有していた場合、相続したくない、登記申請をしてもその後の管理に困るケースも珍しくありません。
その場合は、下記の方法で山林を相続しないことも検討しましょう。
- 相続放棄する
- 売却する
- 企業や自治体に山林を寄付する
- 相続土地国庫帰属制度を利用する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1 相続放棄する
亡くなった人が借金を遺していた場合や山林以外に遺産がほとんどない場合は、相続放棄を検討しても良いでしょう。
相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しなくなる手続きです。
相続放棄をするには、自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の申立てをしなければなりません。
すでに相続開始から時間が経っており、相続放棄の期限を過ぎている場合は相続放棄以外の方法で山林を手放せないか検討しましょう。
また、相続放棄をすると他の遺産も一切受け継げなくなるので預貯金や不動産など相続したい遺産がある場合は、別の方法を選択しなければなりません。
相続放棄の手続き方法や必要書類は、下記の通りです。
提出先 | 故人の住所地を管轄する家庭裁判所 |
手続きする人 | 相続放棄する人(または法定代理人) |
手数料の目安 |
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必要なもの |
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4-2 売却する
相続した山林を活用する予定がないのであれば、売却を検討しましょう。
売却してしまえば、山林の管理をする必要がなくなりますし、売却代金も受け取れます。
ただし、相続した山林を売却する際には、事前に相続登記を済ませておく必要があるのでご注意ください。
山林を売却する場合は買い手が見つかりにくいことがあるので、森林組合や山林バンクなどに相談してみるのが良いでしょう。
山林バンクとは、全国の山林の売買のマッチングを行っているサイトです。
4-3 企業や自治体に山林を寄付する
山林を相続したものの使い道がなく売却も難しい場合、寄付を受け付けてもらえないか調べてみましょう。
自然保護のために有用な山林や市民のレクリエーションの場として活用しやすい山林などであれば、自治体が寄付を受け入れてくれる可能性もあります。
必ず寄付できるわけではありませんが、一度役所で相談してみるのがおすすめです。
寄付の相談をする際には、山林に関する情報をまとめておき公図や不動産全部事項証明書、写真などの資料をもっていくと良いでしょう。
自治体の他には、法人や個人で山林を受け取ってくれる人があらわれる可能性もあります。
なお、寄付する場合でも、事前に法務局で不動産の登記申請を行う必要があります。
4-4 相続土地国庫帰属制度を利用する
相続した山林の売却や寄付が難しい場合は、相続土地国庫帰属制度の利用を検討しましょう。
相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈によって取得したいらない山林を国に返却できる制度です。
相続土地国庫帰属制度を利用すれば、相続放棄と異なり相続によって取得したいらない土地のみ返還できます。
しかし、相続土地国庫帰属制度を利用する際には、下記の点に注意しなければなりません。
- 面積に応じて負担金を納めなければならない
- 事前に相続登記を済ませておく必要がある
- 利用できる土地の要件が決まっている
相続土地国庫帰属制度を利用する際には、事前に相続登記を済ませておく必要があります。
そのため、相続登記を司法書士に依頼し、合わせて相続土地国庫帰属制度を利用すべきか相談してみるのが良いでしょう。
まとめ
2024年4月から始まった相続登記の義務化は、山林に対しても適用されます。
そのため、まだ相続登記が完了していない山林をお持ちの場合は、できるだけ早く手続きを行いましょう。
田舎にある価値の低い山林を相続してしまい、活用や売却が難しいのであれば、相続放棄や売却、相続土地国庫帰属制度などの利用も検討しましょう。
山林を相続したくない場合の選択肢は複数あり、それぞれメリットとデメリットがあります。
相続した山林に合う方法を選択したいのであれば、相続に強い司法書士に相談してみることをおすすめします。
グリーン司法書士法人では、相続登記についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。