- 遺産分割調停中にやってはいけないこと
- 遺産分割調停に出席できないときの対処法
- 遺産分割調停の前にすべき準備
遺産分割調停とは、相続人同士の話し合いでの解決が見込めない場合に、家庭裁判所で第三者である調停委員を交えて話し合いによる合意を目指す手続きです。
遺産分割調停では、調停委員が間に入ってくれるため、相続人同士で話し合いをしなくてすむなどのメリットがあります。
ただし、遺産分割調停で感情的な主張を繰り返す、他の相続人の主張を受け入れない場合は、調停が不成立に終わり遺産分割審判へと手続きが進む可能性が高くなるのでご注意ください。
本記事では、遺産分割調停中にやってはいけないことや調停に出席できないときの対処法を解説します。
1章 遺産分割調停とは
遺産分割調停とは、相続人同士の話し合いでの解決が見込めない場合に、家庭裁判所で第三者である調停委員を交えて話し合いによる合意を目指す手続きです。
遺産分割調停では調停委員が間に入ってくれるため、相続人同士で話し合いをしなくてすみますし、互いの妥協できる部分を見つけやすいです。
一方で、遺産分割調停はあくまでも話し合いのため相続人同士の合意が得られず不成立で終わる場合もあります。
遺産分割調停で解決できなければ、遺産分割審判へと進み裁判官が遺産分配方法を決定します。
なお、遺産分割審判へと手続きが進んだ場合、裁判官は法定相続分通りで遺産分割するよう決定することがほとんどです。
結果として、相続人が誰一人望んでいない遺産分割方法となる可能性や不動産を共有名義で相続しなければならない可能性もあります。
2章 遺産分割調停中にやってはいけない5つのこと
遺産分割調停では、調停委員を交えて話し合いを行うため、調停委員の心象を悪くすると不利に働く恐れがあります。
下記の行為は、調停委員への印象が悪くなるため、やめておきましょう。
- 調停期日に無断遅刻・欠席する
- 調停で嘘をつく・事実を誇張する
- 調停委員に不誠実な対応をする
- 感情的な主張を繰り返す
- 他の相続人の意見を一切受け入れない
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 調停期日に無断遅刻・欠席する
調停期日に無断で欠席するのは、絶対にやめましょう。
他の相続人に迷惑がかかりますし、自分の主張も伝えられないまま調停が不成立に終わってしまうからです。
万が一、調停期日に出席できない場合は裁判所に事情を伝え、弁護士に代理人として出席してもらう。テレビ会議を活用するなど対応をしましょう。
遺産分割調停に出席できないときの対処法は、本記事の3章で解説しています。
2-2 調停で嘘をつく・事実を誇張する
遺産分割調停を有利に進めようとして、嘘をつく、事実を大げさに伝えることもやめましょう。
嘘がばれると正しい発言も嘘ではないかと疑われるようになるからです
2-3 調停委員に不誠実な対応をする
遺産分割調停では、調停委員に誠実な対応を心がけましょう。
調停委員の役割は、公正な立場で相続人同士の問題を解決することです。
しかし、公正な立場でいることが求められる調停委員であっても、相続人の1人から不誠実な対応をされ続けると気分を害する場合もあります。
調停委員の気分を害すと、相続人全員に良い結果でまとめようという気持ちが損なわれ、調停不成立となる可能性もあるでしょう。
2-4 感情的な主張を繰り返す
遺産分割調停では、感情的な主張ばかりを繰り返すのもやめましょう。
調停委員は感情的な主張も聞いてはくれるものの、法律や過去の判例からかけ離れた主張は受け入れてくれない可能性が高いです。
相続人は冷静な話し合いができる状態ではないとされ、調停が不成立となってしまう恐れもあるのでご注意ください。
2-5 他の相続人の意見を一切受け入れない
遺産分割調停では自分の意見を一方的に伝えるのではなく、他の相続人の意見を聞き入れる姿勢も持ちましょう。
遺産分割調停はあくまで話し合いの場だからです。
自分ばかり主張して他の意見を聞き入れないと、遺産分割調停が不成立になる恐れがあります。
先ほど解説した通り、遺産分割審判へと手続きが進むと相続人が合意しなくても法定相続分での遺産分割となる可能性が高いです。
遺産分割審判で不本意な結果になるのを避けたいのであれば、遺産分割調停の時点である程度譲歩できる部分は譲歩したほうが良いケースもあります。
3章 遺産分割調停に出席できないときの対処法
本記事の2章で解説したように、遺産分割調停に欠席するのは絶対に避けましょう。
とはいえ、仕事や家庭の都合などでどうしても調停に出席できないことがあるかもしれません。
遺産分割調停に参加できない場合は、下記の方法で対処しましょう。
- 弁護士に代理人になってもらう
- 調停期日変更の申立てを行う
- 電話会議やテレビ会議を活用する
- 相続放棄や相続分の譲渡を検討する
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 弁護士に代理人になってもらう
遺産分割調停に出席できない場合は、弁護士に依頼し代理人として出席してもらいましょう。
なお、遺産分割調停に代理人として出席できる専門家は、弁護士のみです。
3-2 調停期日変更の申立てを行う
調停期日は変更申立ても可能なので、どうしても出席できない場合は裁判所に申立てをしましょう。
ただし、調停期日を変更するか最終的に判断するのは裁判所です。
したがって、変更申立てをしても調停期日が変更されないこともあると理解しておきましょう。
3-3 電話会議やテレビ会議を活用する
遺産分割調停は相手方の住所地を管轄する裁判所で行うため、相続人によっては遠方の裁判所で調停が行われ参加が難しいケースもあるでしょう。
裁判所が遠方で参加が難しい場合は、電話会議やテレビ会議により自分の意見を伝えることも認められます。
ただし、電話会議やテレビ会議にて調停に出席する場合、本人確認する必要があるため最寄りの家庭裁判所に出頭して参加しなければなりません。
自宅で電話会議やテレビ会議を行うことはできないのでご注意ください。
また、弁護士に依頼していれば、依頼先の弁護士事務所から電話会議やテレビ会議を行うことも可能です。
3-4 相続放棄や相続分の譲渡を検討する
遺産を受け取る気がない、相続トラブルに巻き込まれたくないから遺産分割調停に出席したくないのであれば、相続放棄や相続分の譲渡も検討しましょう。
相続放棄をすれば最初から相続人ではない扱いになるため、遺産分割調停に参加する必要はなくなります。
また、相続分の譲渡をすれば、自分が財産を譲りたい相続人に相続権を譲れます。
4章 遺産分割調停の前にしておくべき準備
遺産分割調停を成功させ、相続人全員が納得する遺産分割を行う、自分の主張を認めてもらうには、下記の準備をしておきましょう。
- 事実関係をまとめておく
- 遺産をリストアップし資料を揃えておく
- 法律や過去の裁判例を踏まえて主張内容を決める
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1 事実関係をまとめておく
遺産分割調停にて特別受益や寄与分などを主張したいのであれば、主張する内容だけでなく事実関係を時系列に沿ってまとめておきましょう。
調停委員や他の相続人も主張内容を把握しやすくなり、遺産分割調停化スムーズに進みやすくなるからです。
4-2 遺産をリストアップし資料を揃えておく
遺産分割調停申立て時には、遺産目録と呼ばれる遺産のリストや遺産の内容を証明する書類が必要です。
申立てをスムーズにするためにも、亡くなった人の遺産を整理しておきましょう。
また、特別受益や寄与分など主張したい内容についての証拠も用意しておくと良いでしょう。
4-3 法律や過去の裁判例を踏まえて主張内容を決める
遺産分割調停に出席する前には、法律や過去の判例を理解し、自分の主張を整理しておきましょう。
遺産分割調停では、感情的な主張ではなく法律や裁判例に基づき話し合いが進むからです。
本記事の2章で解説したように、法律や過去の判例を無視して感情的な主張を繰り返しても調停委員の理解を得られません。
相続に詳しい司法書士や弁護士に相談すれば、自分の主張が法律に則っているか、遺産分割調停で認められそうか判断してもらえます。
遺産分割協議がまとまらず、調停になりそうな場合は相続に詳しい専門家に相談してみましょう。
まとめ
遺産分割調停はあくまでも話し合いであり、調停委員や他の相続人の理解を得なければなりません。
感情的な主張をしていたり、他の相続人の主張を一切受け入れたりしない状態では、調停が不成立となってしまうでしょう。
遺産分割調停が不成立になると遺産分割審判となり、相続人が望まなくても裁判官が遺産分割方法を決定してしまいます。
また、遺産分割調停や審判が終了するまでは、数年近くかかることも珍しくありません。
遺産分割協議がまとまらず調停になりそうな場合は、相続に精通した司法書士や弁護士に相談して、遺産分割方法について提案してもらうのも良いでしょう。
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