寄与分とは?誰がどんなときに請求できる?要件や請求方法まとめ

寄与分とは?誰がどんなときに請求できる?要件や請求方法まとめ
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 7

寄与分とは、亡くなった人の財産の維持や増加に貢献していた相続人に対し、他の相続人よりも多く財産を相続させられる制度です。
例えば、亡くなった人の介護を10年以上続けていた場合や亡くなった人が経営している会社で長年手伝いをしていたケースは、寄与分を主張できる可能性があります。

寄与分は全ての人に認められるわけではなく、条件が設定されています。
また、寄与分は自動的に与えられるわけではなく、基本的には相続人自らが主張して他の相続人に納得してもらうか、裁判所で争う必要があります。

本記事では、寄与分とは何か、どんなときに認められるのかを解説していきます。


1章 寄与分とは

寄与分とは、亡くなった方の財産の維持や増加に貢献していた相続人が他の相続人よりも多く財産を相続できる制度です。
寄与分が認められれば、法定相続分よりも多く遺産を相続できる可能性があります。

寄与分とは

例えば、亡くなった方の介護を10年以上行っていた人は、寄与分を請求すれば数百万円以上遺産を上乗せしてもらえるケースもあります。
ただし、寄与分の請求には条件が決められており、満たしていない相続人は寄与分を請求できません。
次の章では、寄与分が認められる人の要件を詳しく解説していきます。

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2章 寄与分が認められる人の要件

寄与分を請求し他の相続人よりも多く遺産を相続するには、以下の4つの要件を全て満たす必要があります。

  1. 亡くなった方の相続人であること
  2. 亡くなった方の財産の維持や増加に貢献したこと
  3. 「特別の寄与」に該当する期待以上の後見をしたこと
  4. 無償で継続的に行為を行っていたこと

それぞれの要件について、詳しく解説していきます。

2-1 亡くなった方の相続人であること

寄与分が認められるのは、亡くなった方の法定相続人のみです。
たとえ、亡くなった方の財産の維持や増加に貢献していたとしても、亡くなった方の知人や友人、法定相続人以外の親族は寄与分を受け取れません。

2019年7月1日から特別寄与請求権が認められるようになりました

2019年7月から亡くなった方の法定相続人以外の親族にも寄与分が認められるようになりました。
これにより、亡くなった方の長男の嫁などが長年介護をしていたケースなどで寄与分が認められる可能性が生じます。

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2-2 亡くなった方の財産の維持や増加に貢献した

寄与分は亡くなった方の財産を維持した、増加したと認められるときにのみ受け取れます。
そのため、亡くなった方の生活を長年支えていたとしても、財産の維持や増加をしていなかった場合には寄与分は認められません。
亡くなった方の財産の維持や増加に貢献したと判断されるケースは、主に以下の通りです。

  • 亡くなった方の事業を無償もしくは低額報酬で手伝っていた場合
  • 亡くなった方の介護を無償で行っていた場合
  • 亡くなった方の介護費用を負担していた場合
  • 亡くなった方の生活費を負担していた場合
  • 亡くなった方の財産を管理するための費用を負担した場合

また、亡くなった方の事業を手伝ったものの事業が上手くいかず倒産してしまった等のケースでは、亡くなった方の財産の維持や増加に貢献していなかったと判断され、寄与分が認められない可能性もあります。

2-3 「特別の寄与」に該当する期待以上の貢献をした

寄与分は当たり前の行為に対しては認められず、特別を超える行為をした場合にのみ認められます。
そのため、夫婦や親子間で身の回りの世話をした程度では寄与分を受け取ることはできません。
特別の寄与として認められる例は、主に以下の通りです。

  • 亡くなった方の介護を10年間行っていた
  • 亡くなった方の家事を10年間行っていた
  • 亡くなった方と一緒に農業を10年間行っていた
  • 亡くなった方が経営していた会社に資金援助をした

逆に「1週間だけ介護を行った」「入院のときに付き添いをした」などのケースでは、寄与分が認められない可能性は高いです。

2-4 無償で継続的に行為を行っていた

寄与分が認められるのは、無償で継続的に亡くなった方に貢献していた場合です。
継続的とは具体的に何年以上の貢献が該当するのかは、判断が難しいですが、一般的には3年以上継続していると寄与分が認められる可能性が高くなります。

このように、寄与分を受け取るには様々な要件を満たす必要があります。
次の章では、具体的に寄与分が認められるケースを確認していきましょう。


3章 寄与分が認められる主なケース

2章で寄与分が認められる人の要件を詳しく解説しましたが、実際のところ、寄与分が認められる主なケースは決まっています。
具体的には、以下のケースで寄与分が認められやすいです。

  • 亡くなった方の事業に相続人が従事していた場合(稼業従事型)
  • 亡くなった方に対し自分の資金を負担していた場合(金銭等出資型)
  • 亡くなった方の介護や療養を相続人が行っていた場合(療養看護・介護型)
  • 亡くなった方を相続人が扶養していた場合(扶養型)
  • 亡くなった方の財産を相続人が管理していた場合(財産管理型)

どのケースも2章で解説した要件をそれぞれ満たしている必要があります。
例えば、亡くなった方に対し相続人がお金を貸していた場合には、財産の維持や増加との因果関係は薄いと判断され、寄与分は認められません。


4章 寄与分を請求する方法

寄与分は自動的に与えられるものではなく、亡くなった方の財産の維持や増加に貢献した相続人が自分で請求する必要があります。
具体的には、寄与分を請求する方法は以下の3つです。

  1. 遺産分割協議で話し合う
  2. 遺産分割調停を申立てる
  3. 遺産分割審判を行う

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 遺産分割協議で話し合う

相続人全員で遺産の分割方法について話し合う遺産分割協議で寄与分を主張し認めてもらうのが、最も手軽でトラブルになりにくい方法です。
寄与分を認めてもらえる証拠を用意して相続人に対し、常識的な金額の寄与分を請求すれば認めてもらえるケースも多いです。

また、遺産分割協議で相続人全員が合意していれば、相続財産の分け方に制限はありません。
そのため、2章や3章で解説した寄与分が認められるケースや要件を満たしていない場合でも、寄与分として遺産を多く受け取れる場合もあります。

亡くなった方の生活や財産の維持、増加に貢献したと考える場合には、遺産分割協議でまずは自分の意見を伝えてみましょう。

【遺産分割協議】大原則ルールと知っておくべき注意点や協議の進め方

4-2 遺産分割調停を申立てる

遺産分割協議で相続人が寄与分の主張を認めてもらえなかった場合には、遺産分割調停の申立てを行い寄与分を請求できます。
遺産分割調停とは、遺産分割協議で相続に関する話し合いがまとまらなかった場合に家庭裁判所で行う手続きです。

一般的に寄与分が認められるケースにもかかわらず、相続人が寄与分を認めてくれない場合には、調停委員が相続人を説得してくれます。
ただし、あくまでも遺産分割調停は話し合いの場であり、相続人が納得しない場合には次のステップである遺産分割審判で争わなければなりません。

説得に応じて相続人が寄与分を認めてくれる場合は、合意内容について法定器拘束力を持つ調停証書を作成してもらえます。
遺産分割調停の申立て手続きと必要書類は、以下の通りです。

申立てする人相続人
申立先
  • 相手方のうちの一人の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 当事者が合意で定めた家庭裁判所
かかる費用
  • 収入印紙1,200円分
  • 連絡用の郵便切手代
必要書類
  • 申立書
  • 亡くなった方の生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票又は戸籍附票
  • 相続財産に関する証明書

【遺産分割調停】申立てから解決までの手続き・費用・期間を解説

4-3 遺産分割審判を行う

遺産分割調停で調停を交えた話し合いでも、寄与分の主張を認めてもらえなかった場合には、遺産分割審判で寄与分を請求できます。
遺産分割審判は、遺産分割調停とは違い裁判であり、裁判所によって判決が下されます。
そのため、遺産分割審判で寄与分を主張する際には法的に有効な証拠を用意しなければなりません。

ただし、証拠を用意していたとしても寄与分が認められるケースは少なく、遺産分割審判では法定相続分による遺産分割と判決が下される場合が多いです。
遺産分割審判の手続きと必要書類は、下記の通りです。

申立人相続人
申立先
  • 亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 当事者が合意で定めた家庭裁判所
かかる費用
  • 収入印紙1,200円分
  • 連絡用の郵便切手代
必要書類
  • 申立書
  • 相続人の人数分の申立書の写し
  • 亡くなった方の生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍附表
  • 相続財産に関する証明書

なお、遺産分割調停から遺産分割審判へと移行する場合は、自分で手続きを行う必要がありません。


5章 寄与分の計算方法

寄与分の請求が認められれば、本来の相続分よりも多く遺産を受け取れます。
ただし、寄与分が認められたことにより増えるのは相続割合ではなく、相続金額です。

寄与分は、亡くなった方の財産の維持や増加に貢献した相当分を計算して算出されます。
例えば、亡くなった方の介護を10年間行っていた場合の寄与分は、介護費用を外注した場合の実費相当分が計算され支払われます。

もしかしたら、寄与分を計算したとしても金額が少なく「自分の貢献分に見合っていない」と遺産分割の結果に納得できないこともあるかもしれません。
将来、寄与分の金額が少なく納得できないという状況を避けたいのであれば、寄与分の主張ではなく事前に相続対策をしてもらうのが良いでしょう。

次の章では、寄与分の請求以外でできる相続対策について詳しく解説していきます。


6章 寄与分の請求以外でできる相続対策

本記事で解説したように、寄与分を受け取るには相続人に主張を認めてもらうか裁判の場で有効な証拠を用意しなければなりません。
また、寄与分の主張が認められたとしても、受け取れる金額は実費相当分であり、多くないと感じるかもしれません。

自分がしてきた貢献に対し納得できるだけの遺産を受け取りたいとおもうのであれば、相続対策をしてもらっておくのがおすすめです。
寄与分の請求以外で出来る相続対策は主に以下の3つです。

  1. 遺言書の作成
  2. 生前贈与を行う
  3. 生命保険を活用する

それぞれ詳しく解説していきます。

6-1 遺言書の作成

遺言書を作成すれば、生前世話になった人に自分の財産を遺せます。
遺言書であれば、法定相続人以外の人物に財産を相続させることもできるので、自分の面倒を見てくれた長男の嫁や孫などに遺産を相続させられます。

遺言書の作成

ただし、法的に有効な遺言書を作成するためには所定の形式やルールを守らなければなりませんし、遺留分についても考慮しておく必要があります。
遺言書は自分で作成することもできますが、要件を満たし遺留分について考慮した遺言書をミスなく作成したいのであれば、相続に詳しい司法書士や弁護士等の専門家への相談もご検討ください。

これで遺言書が作成できる!遺言書の書き方・作成手順・注意点まで

6-2 生前贈与を行う

生前贈与を行えば、世話になっている人に感謝の印として財産を渡せます。

生前贈与の例

贈与を受けた側には、贈与税がかかりますが年間110万円以内であれば、贈与税はかかりません。
また、贈与の形式によっては控除や特例を利用できるので、贈与税を大幅に節税できます。

生前贈与とは?生前贈与のメリット5つと知っておきたい7つの特例制度・7つの注意点

6-3 生命保険を活用する

生命保険に加入し、受取人に希望の人物を指定しておけば、自分が亡くなったときに受取人にまとまった現金を遺せます。
生命保険金は遺産分割の対象にならず、受取人固有の財産として扱われます。
そのため、遺産分割協議が完了する前に生命保険金を受け取れるのもメリットです。

ただし、生命保険金は相続税の課税対象財産には含まれる点には、注意が必要です。

生命保険が相続対策になる4つの理由と相続対策のポイント

まとめ

寄与分とは、相続人が亡くなった方の財産の維持や増加に貢献していた場合に認められる制度です。
寄与分が認められる代表的なケースは、長年にわたり相続人が亡くなった方の介護をしていた場合などです。

寄与分は自動的に与えられるものではなく、相続人自らが遺産分割協議等で主張する必要があります。
遺産分割協議で残りの相続人が納得してくれなかった場合には、遺産分割調停や審判でも請求可能です。

ただし、寄与分が認められたとしても受け取れる金額は貢献の実費相当分であり、長年にわたる貢献に見合った金額ではないと感じる方もいるかもしれません。
自分の働きに見合った納得できる遺産分割をしたいのであれば、相続発生前に遺言書の作成や生前贈与など相続対策をしてもらうのが確実です。

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寄与とは?

寄与分とは、亡くなった人の財産の維持や増加に貢献していた相続人に対し、他の相続人よりも多く財産を相続させられる制度です。

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