遺産相続で揉めたときに行う裁判とは?【調停・審判の流れまとめ】

遺産相続で揉めたときに行う裁判とは?【調停・審判の流れまとめ】
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 5

遺産相続で相続人同士が揉めてしまい解決できない場合や何らかの理由で遺産相続ができない場合には、裁判所にて調停や審判を行い解決を目指します。
しかし遺産相続に関する前提条件を争うときには訴訟によって解決します。

調停や審判、訴訟は時間と手間がかかるので、遺産相続で揉めないように事前に対処しておくのも重要です。
本記事では遺産相続で【裁判(訴訟)】になるケースや【調停】や【審判】を申し込む流れを確認していきましょう。

具体的な棲み分けは次のとおりです。
遺産相続の前提条件を争いたい・・裁判(訴訟)の提起
それ以外のトラブルの解決は・・・調停の申し立て
それでも解決できない場合は・・・審判へと進む
1章では裁判所で遺産相続の調停や審判を行う流れを解説し、3章では遺産相続を裁判で争うケースを詳しく解説していきます。


1章 遺産相続を裁判所で争うときの流れ

相続人同士の話し合いでは、分配方法など合意することができず裁判所で争うことになったとき、最初から訴訟を行うのではなく、まずは調停を行います。
そして調停でも解決が難しい場合には、訴訟(審判)を行います。

遺産相続を裁判所で争うときの流れについて図解しております。

調停や審判の内容や特徴について詳しく確認していきましょう。

1-1 調停とは

相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合に行うのが、家庭裁判所による遺産分割調停です。
遺産分割調停では、相続人同士の間に調停委員と裁判官が入り、意見のすり合わせや解決を話し合います。
遺産分割調停で話がまとまれば、調停証書が作成され、記載された内容にもとづいて遺産分割や登記を進めていきます。

遺産分割調停はあくまでも相続人同士の話し合いを主体としており、調停の中で話し合いがまとまらなければ、解決できません。
遺産分割調停で解決が難しい場合には、次のステップである遺産分割審判へと移ります。

【遺産分割調停】申立てから解決までの手続き・費用・期間を解説

1-2 審判とは

 遺産分割調停で相続人同士が合意にいたらず、調停不成立と判断されると、自動で遺産分割審判に移ります。
遺産分割審判では、相続人それぞれが自分の主張を証明する証拠を提出し、裁判官に審判を下してもらいます。

審判で判決が決まると、望み通りの結果でなかったとしても、その通りに相続手続きを行わなければなりません。
ただし判決に納得ができなかった場合、2週間以内であれば、即時抗告という不服申し立て手続きを行うことが可能です。

相続人がそれぞれ主張を述べる点や証拠を用意する点において、裁判や訴訟と似ていると感じるかもしれませんが、遺産分割では訴訟ではなく、遺産分割審判と呼ばれています。

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2章 遺産相続の調停や審判を申し込む手順

遺産相続について当事者間で解決できない場合には、調停や審判を行い家庭裁判所で解決してもらえます。
調停や審判を申し込む流れは以下の通りです。

遺産分割調停の流れについて。成立したケースの場合

  1. 遺産分割調停の申立てを行う
  2. 調停当日に出頭する
  3. 調停成立もしくは調停不成立
  4. 審判当日に出頭する
  5. 審判内容の確定もしくは不服申立てを行う
  6. 調停や審判の内容に従って遺産分割手続きを行う

それぞれの流れを詳しく確認していきましょう。
手続きに必要な書類や費用、かかる期間の目安も紹介していきます。

2-1 遺産分割調停の申立てを行う

遺産分割協議が相続人同士でまとまらない場合には、遺産分割調停の申立て手続きを行います。
遺産分割に関しては離婚調停などのように、最初に調停を行ってから審判を行うと順番が決められているわけではありません。
そのため、いきなり遺産分割審判の申立てをしても良いのですが、一般的にはまずは調停の申立て手続きをするケースが多いです。

遺産分割調停の申立てに必要な書類は以下の通りです。

  • 申立書
  • 事情説明書
  • 連絡先等の届出書
  • 進行に関する照会回答書
  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍
  • 相続人全員の住民票もしくは戸籍謄本
  • 相続関係図
  • 遺産目録及び遺産を証明する資料

遺産分割調停の申立て手数料は、故人1人に対して収入印紙代1,200円が必要です。

2-2 調停当日に出頭する

申立書が受理されて相手方に送付された後、調停の日時が決定されます。
調停は申立てから1~2ヶ月程度たってから行われるケースが多いです。

調停当日に家庭裁判所に出頭し、調停委員に自分の意見を伝えます。
申立人と他の相続人は控室が分かれているので、直接顔を合わせることはほとんどありません。
意見を直接伝える必要もありませんので、ご安心ください。

2-3 調停成立もしくは調停不成立

1回目の調停が行われた後は1ヶ月に1度くらいのペースで、調停を繰り返し、問題の解決を目指します。
相続人全員で話し合い内容に合意できた場合には、調停成立となり、調停証書が作成されます。
調停証書が作成された後は、記載内容に基づいて相続手続きを進めれば完了です。

一方で調停を繰り返しても相続人同士で納得できない場合には、調停不成立と判断されます。
調停不成立と判断されるまでには約1年くらいかかるケースが多いです。
調停不成立と判断された後は、調停の取り下げをしない限り、審判手続きに自動で移ります。

2-4 審判当日に出頭する

遺産分割調停を行った後に、審判に移行する場合には自動で手続きが進むので、遺産分割審判の申立てを行う必要はありません。
遺産分割調停を行わず、最初から審判を行う場合には調停の申立て手続き同様に、遺産分割審判の申立て手続きが必要です。

ただし遺産分割審判の申立てを行ったとしても、裁判所では当事者間の話し合いによる解決を推奨しているので、調停から始まる場合が多いです。

2-5 審判内容の確定もしくは不服申立てを行う

遺産分割審判も調停同様に、設定された審判期日に裁判所に出頭します。
調停では当事者同士が顔を合わす機会はほとんどありませんが、審判では各相続人の主張に反論する機会が与えられるので同席しなければなりません。

裁判官はそれぞれの相続人の主張や証拠を精査して、争点の整理や事実の調査を行い、最終判断を下します。
遺産分割審判では、裁判所は法定相続分による遺産分割を行うように指示を出します。
内容に納得がいかなければ審判が出されてから2週間以内に即時抗告を行い、不服申立てをしなければなりません。

2-6 調停や審判の内容に従って遺産分割手続きを行う

遺産分割調停や審判で決まった内容に問題がなければ、その内容に従って相続手続きを進めていきます。
遺産分割調停や審判で決まった内容には強制力があるので、相続人は納得していなくても決まった内容で相続手続きを進めなければなりません。

また遺産分割協議や遺産分割調停では、相続人全員の合意が得られれば法定相続分以外の相続も可能です。
それに対し、遺産分割審判では裁判官が審判を下すため、法定相続分以外の相続が認められる可能性はほとんどありません。


3章 遺産相続で訴訟が行われるケース

遺産相続の前提条件を争う場合には、調停や審判ではなく訴訟を行う必要があります。
遺産相続で前提条件を争う主なケースは以下の6つです。

  1. 遺産の範囲を確認するケース
  2. 相続人の範囲を確認するケース
  3. 遺言書が有効かを確認するケース
  4. 遺産分割協議の取り消しや無効を主張するケース
  5. 遺産の使い込みがあったと疑われるケース
  6. 遺留分の主張をするケース

具体的にどんなケースが該当するか、詳しく確認していきましょう。

3-1 遺産の範囲を確認するケース【遺産確認訴訟】

相続財産の漏れがある場合や相続人の1人が財産隠しをしていると疑われる場合には、相続財産の範囲を裁判によって争います。
遺産の範囲を裁判で争う際には、遺産確認訴訟を行います。

3-2 相続人の範囲を確認するケース【相続人の地位不存在確認訴訟】

養子縁組を無効とする争いや亡くなった方の隠し子が認知を要求するケースでは、相続人の範囲を裁判によって決定します。
特定の人の相続権を争う裁判は相続人の地位不存在確認訴訟と呼ばれます。

相続権とは?|法定相続人の範囲と相続割合をわかりやすく解説

3-3 遺言書が有効かを確認するケース【遺言無効確認訴訟】

亡くなった方が遺した遺言書が発見されたものの、形式に不備がある場合や偽造が疑われる場合には、遺言書の有効性を裁判所が判断します。
遺言無効確認訴訟によって、遺言書が無効と判断されれば、遺言書の内容に従う必要はありません。

3-4 遺産分割協議の取り消しや無効を主張するケース【遺産分割協議無効確認訴訟】

一度、遺産分割協議が完了したものの本人の同意がない状態で作成されたなどの理由で、無効を主張する場合には遺産分割協議無効確認訴訟を行う必要があります。

遺言書が無効になる6つのケース|公正証書遺言も無効になる?

3-5 遺産の使い込みがあったと疑われるケース【損害賠償請求訴訟・不当利得返還請求訴訟】

相続人の一部が遺産を使い込んでしまっていた場合には、遺産の返還もしくは同等金額の賠償を行わなければなりません。
遺産の使い込みが疑われるケースでは、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟もしくは不当利得返還請求訴訟を行います。

3-6 遺留分の主張をするケース【遺留分侵害額請求訴訟】

配偶者や子供、両親などは最低限度の相続を受け取ることができる権利である遺留分が認められています。
遺留分に満たない金額の財産しか相続できなかった場合には、​遺留分侵害額請求権​を行使し、遺留分と同等の金額を補償してもらうことが可能です。
これを遺留分侵害額請求訴訟といいます。

遺留分の主張は裁判を行わず当事者同士でも解決可能ですが、遺留分をなかなか支払ってもらえない場合には、裁判で法的に争うのも選択肢のひとつです。

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まとめ

遺産相続を行う際に相続人間で争う場合には、裁判ではなく遺産分割調停や遺産分割審判を行います。
しかし遺産相続の前提条件となる相続人の範囲や遺産の範囲を争うときには、裁判で決着をつける必要があります。

遺産分割調停や遺産分割審判は個人で手続きを行うこともできますが、非常に手間がかかるのであまり現実的ではありません。
また一度、遺産分割調停や審判を起こしてしまうと、その後も相続人間の関係が壊れてしまうはずです。

まずは裁判所で争わなくてすむように、遺産分割協議の段階で相続人同士で話をまとめることを目指しましょう。
もしくは亡くなる前から遺言書の作成等で相続トラブルが起きないように対処しておくのもおすすめです。

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