代襲相続とは、相続発生時点で本来であれば相続人になる人物が先に亡くなっている場合に、亡くなっている相続人の代わりにその子供が直接相続をする制度です。
例えば、故人が死亡した時点で相続人である子供が亡くなっている場合には、代襲相続が発生し孫が代襲相続人になります。
代襲相続は相続人が亡くなっている場合や相続欠格などで相続権を失った場合に発生する制度であり、相続放棄した相続人に対しては代襲相続が発生しません。
本記事では、代襲相続が発生しないケースを6つわかりやすく解説していきます。
代襲相続人については、下記の記事もご参考にしてください。
目次
1章 代襲相続できないケース6つ
相続発生時点で、相続人にあたる人物がすでに死亡している場合に代襲相続は発生します。
ただし、下記のケースでは代襲相続が発生しないのでご注意ください。
- 相続人が相続放棄した場合
- 被相続人より相続人が後に亡くなった場合
- 遺言書で指定された人物が亡くなっていた場合
- 甥・姪の子供
- 養子縁組より前に生まれた養子の子
- 配偶者の連れ子
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 相続人が相続放棄した場合
相続放棄をした人の子供は、代襲相続人になれません。
相続放棄は、初めから相続人ではなかったものとして扱われるので、代襲相続が発生しないからです。
そのため、相続人である子供が相続放棄した場合、孫は相続人にはなりません。
1-2 被相続人より相続人が後に亡くなった場合
相続人が故人より後に死亡していた場合には、代襲相続が発生しません。
代襲相続は相続人が先に亡くなっているケースでのみ発生するからです。
家族や親族同士が生前から交流していた場合には、故人より相続人が後に亡くなったかどうかはすぐに判断できるでしょう。
しかし、疎遠にしていた親族が相次いで亡くなった場合、どちらが先に死亡したか判断できないケースもあります。
その場合には、戸籍謄本などでそれぞれの人物の死亡日を確認し、代襲相続が発生しているか判断が必要です。
なお、故人が死亡し相続人になった人物が遺産分割協議を行わないうちに亡くなった場合には、代襲相続ではなく数次相続として扱われます。
1-3 遺言書で指定された人物が亡くなっていた場合
遺言書にて財産を残すと指定された人物が、遺言の作成者よりも先に亡くなっていた場合には、代襲相続が発生しません。
例えば、下記のように遺言書が作成されていた場合を考えてみましょう。
- 長男に不動産を相続させる
- 次男に預貯金を相続させる
遺言書を作成した人より先に長男が亡くなった場合には、不動産は長男の子供が相続するのではなく相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
次男が先に亡くなった場合も同様に、預貯金は相続人全員の共有財産となってしまいます。
このような事態を避け、確実に希望通りの遺産分割方法を遺言書で指定するには予備的な内容を定めておかなければなりません。
自分で遺言書を作成した場合、予備的遺言の部分まで手が回らないことも多いです。
ミスなく遺言書を作成したいときには、相続に詳しい司法書士や弁護士への依頼をおすすめします。
1-4 甥・姪の子供
兄弟姉妹の代襲相続は一代限りで再代襲はしないとされています。
そのため、故人の兄弟姉妹および甥姪がすでに死亡していたとしても、甥や姪の子供は代襲相続人にはなれません。
一方で直系卑属の代襲相続は回数に制限がありません。
故人の子供や孫が亡くなっていてひ孫が生きている場合には、ひ孫が代襲相続人になれます。
1-5 養子縁組より前に生まれた養子の子
養子縁組をするより前に生まれた養子の子に関しては、養親と養子の子の間に血族関係が生じません。
そのため、養子縁組前に生まれた子は代襲相続人になれません。
一方で、養子縁組後に生まれた養子の子に関しては、養親と養子の子の間に法律上の関係が生じているので代襲相続が発生します。
1-6 配偶者の連れ子
代襲相続は故人の子供と兄弟姉妹に対してのみ発生する制度であり、配偶者は相続人であっても代襲相続は発生しません。
そのため、故人が死亡した時点で配偶者がすでに亡くなっていた場合でも、配偶者の連れ子は代襲相続人にはなれません。
再婚相手の連れ子とは法律上の親子関係がないので、財産を遺したい場合には遺言書の作成や生前贈与、養子縁組などの対策が必要です。
2章 代襲相続が発生した場合に注意すべきこと
本記事の1章で解説したように、代襲相続は発生したかどうかの判断自体が難しいケースもあります。
「代襲相続が発生していると思っていた」と勘違いのまま遺産分割協議や相続手続きを進めてしまうと、相続人が間違っていて手続きを始めからやり直さなければならなくなってしまいます。
また、代襲相続が発生したときには、相続人同士の関係性が希薄な場合もあり、相続トラブルにも注意が必要です。
代襲相続が発生したときには、下記の点に注意しましょう。
- 相続税の基礎控除額が変わる
- 相続手続きに必要な書類の数が増える
- 甥・姪は相続税が2割加算になる
- 相続トラブルが起きやすい
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 相続税の基礎控除額が変わる
代襲相続が発生したことで相続人の数が増えた場合、相続税の基礎控除額が変わります。
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算可能です。
例えば、下記のケースで相続税の基礎控除額を計算してみましょう。
- 相続人は長男A、孫B、孫D
- 本来相続人であるはずだった長女Cは死亡していて、代襲相続が発生している
仮に、長女Cが死亡していなかった場合の相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」です。
それに対し、代襲相続が発生すると相続人が3人になるので基礎控除額が「3,000万円+600万円×2人=4,800万円」になります。
代襲相続が発生していると思って基礎控除額を計算してしまうと、相続税の申告を間違えてしまう恐れがあります。
本来納税すべき税額より少なく申告した場合には、過少申告加算税などのペナルティがかかるのでご注意ください。
2-2 相続手続きに必要な書類の数が増える
代襲相続は本来相続人になる人物が亡くなっている場合、自動的に発生します。
ただし、代襲相続人が相続手続きを行うためには、下記のように様々な書類を収集しなければなりません。
- 故人が生まれてから死亡するまで連続した戸籍謄本
- 代襲相続人全員の戸籍謄本
- 亡くなった相続人が生まれてから死亡するまで連続した戸籍謄本
代襲相続人が遺産を受け継ぐ場合には、①代襲相続が発生していることと②他に代襲相続人にあたる人物がいないことの2点を証明しなければならないからです。
例えば、相続発生時点ですでに死亡していた故人の子供に隠し子がいた場合、隠し子も代襲相続人になります。
このように、代襲相続人の漏れが発生しないように、代襲相続発生時の相続手続きは必要書類の数が多くなってしまいます。
どんな書類が必要かわからない、書類を収集する手間と時間を負担に感じる場合には、相続手続きを司法書士などの専門家に依頼するのもご検討ください。
2-3 甥・姪は相続税が2割加算になる
故人の配偶者や子供、両親以外が財産を相続したときには、相続税が2割加算されてしまいます。
故人の兄弟姉妹が財産を相続するときには相続税が2割加算され、代襲相続人として甥や姪が財産を受け継いだときにも相続税が2割加算になります。
代襲相続で孫が相続人になったときには、すでに亡くなっている子供のかわりに孫が財産を相続するので相続税は2割加算になりません。
2-4 相続トラブルが起きやすい
代襲相続が発生すると、相続人同士の年齢差が大きくなる可能性や関係性の薄い人物同士が相続人になる恐れがあります。
その結果、下記のような相続トラブルの発生に注意が必要です。
- 関係性の薄い人が相続人になり相続手続きが難航する
- 代襲相続人が親族間の事情を考えず権利を主張してくる
- 代襲相続人が相続手続きに協力してくれない
- 代襲相続人に相続させないために、他の相続人が財産を隠す
代襲相続が発生したときには、代襲相続人も法律によって決められた正当な相続人であることを理解しなければなりません。
お互いに誠意を持って対応しようとしても相続トラブルが発生した場合には、相続トラブルに詳しい弁護士への相談も検討しましょう。
また、自分より子供が先に亡くなった場合など代襲相続が発生することが予想されるケースでは、相続トラブル回避のために対策をしておくのがおすすめです。
遺言書の作成や生前贈与をしておけば、そもそも相続人全員で遺産分割協議を行う必要がなくなり相続トラブルも発生しにくいでしょう。
まとめ
相続発生時点で本来であれば相続人になる人物が死亡している場合には、代襲相続が発生します。
しかし、相続発生時の状況や故人と相続人が疎遠だったケースでは、そもそも代襲相続が発生しているかの判断が難しいときもあるでしょう。
代襲相続が発生していると勘違いして相続手続きをすると、後から相続手続きや遺産分割協議がやり直しになる恐れもあるのでご注意ください。
また、代襲相続は関係性の薄い人物同士が相続人になり、相続トラブルも発生しやすいです。
生前のうちに代襲相続が発生しそうとわかっているのであれば、遺言書の作成や生前贈与をしておき相続手続きの手間や相続トラブル発生リスクを減らしておくのも大切です。
相続対策には様々な方法があるので、資産や相続人の状況に合った対策をしたい人は、相続に精通した専門家への相談をおすすめします。
グリーン司法書士法人では、相続対策や相続手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
代襲相続できないケースとは?
代襲相続できないケースは、主に下記の6つです。
・相続人が相続放棄した場合
・被相続人より相続人が後に亡くなった場合
・遺言書で指定された人物が亡くなっていた場合
・甥・姪の子供
・養子縁組より前に生まれた養子の子
・配偶者の連れ子
▶代襲相続できないケースについて詳しくはコチラ
兄弟の代襲相続は何代まで?
兄弟姉妹の代襲相続は一代限りで再代襲はしないとされています。
そのため、故人の兄弟姉妹および甥姪がすでに死亡していたとしても、甥や姪の子供は代襲相続人にはなれません。
▶兄弟姉妹の代襲相続について詳しくはコチラ