財産分与による登記手続き|手続き方法や注意点を司法書士が解説

財産分与による登記手続き|手続き方法や注意点を司法書士が解説
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 7

婚姻期間中に築いた財産は夫婦の共有財産となり、離婚時にはその財産を「財産分与」として分け合うのが原則です。
また、不動産を財産分与するときには、不動産の所有者を変更する「所有者移転登記」を行わなければなりません。

財産分与による所有権移転登記を行わなくても罰則はありませんが登記手続きをすませないと、不動産の所有権を第三者に主張できない、もともとの所有者に固定資産税の支払い義務が課され続けるなどのデメリットがあります。
そのため、離婚により財産分与が行われたときには、速やかに所有権移転登記を行いましょう。

本記事では、財産分与による所有者移転登記手続きの方法や、手続きをする際の注意点を解説します。


1章 財産分与後に所有権移転登記を行わないリスク・デメリット

本記事の冒頭でも解説したように、離婚時に財産分与をしたものの不動産の所有権移転登記を行わなかった場合、以下のリスクやデメリットがあります。

  • もともとの所有者に固定資産税の支払い義務が課され続ける
  • 財産分与を受けた側が不動産の所有権を第三者に主張できない

例えば、もともとの所有者が他の人に売却し所有者移転登記をした場合に、離婚時に財産分与を受けた人は所有権を主張できず、購入した人に権利が渡ってしまう可能性があります。
このようなトラブルを避けるためにも、財産分与後は速やかに所有権移転登記を行いましょう。

なお、離婚時に財産分与の取り決めをしなかった場合でも、後から財産分与を請求できます。
ただし、財産分与を請求できる期間は離婚したときから2年以内という期限がありますので、ご注意ください。

財産分与|離婚時に損をしないで賢くもらう方法・注意点を詳しく解説!
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2章 財産分与による所有権移転登記の手続き

財産分与による所有者移転登記の手続きは、以下の2つのパターンによって異なります。

  1. 協議離婚の場合
  2. 裁判上での離婚の場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

2-1 協議離婚の場合

財産分与による所有権移転登記の手続き/協議離婚の場合

協議離婚の場合、財産分与による所有者移転登記の手続きには夫婦共同で申請する必要があります。
司法書士に登記手続きを依頼する場合でも、両者の署名・押印がされた委任状が必要です。

しかし、実際に所有者移転登記を申請するのは離婚後です。
離婚して赤の他人になってしまうと、連絡が途絶えて協力してもらえなくなる可能性があるため、離婚の成立前から登記手続きの準備を進めることをおすすめします。

協議離婚をした際の所有者移転登記に必要な書類は以下の通りです。

財産分与を受ける方(登録権利者)
書類備考
住民票
  • 発行後3ヶ月以内のもの
  • 市区町村役場で取得可能
  • 発行手数料は300円程度
印鑑認印可
財産分与をする方(登記義務者)
書類備考
不動産の登記済権利証または、登記識別情報通知
印鑑証明書
  • 発行後3ヶ月以内のもの
  • 市区町村役場で取得可能
  • 発行手数料は500円程度
実印印鑑登録をしている印鑑
固定資産評価証明書
  • 市区料村役場で取得可能
  • 発行手数料は400円程度
離婚の記載のある戸籍謄本
  • 離婚が成立してから取得する
  • 市区町村役場で取得可能
  • 発行手数料は450円
司法書士に用意してもらうもの
書類備考
司法書士への委任状司法書士に手続きを依頼する場合に必要です
双方の署名・押印をしたものを用意する
登記原因証明情報登記に至った原因や法律行為を記載する書面
自身で作成するのは難しいため、司法書士に作成してもらうことが一般的です
所有者移転登記申請書登記をする際に必要な申請書です。
自身で作成することも一応可能ですが、通常は専門家である司法書士が作成します。

上記の書類を揃えて、財産分与受けた人、財産分与をする人2人で法務局へ提出しましょう。
なお、司法書士に依頼をしている場合は司法書士が代理で手続きを行ってるので、当事者が法務局に行く必要はありません。

【所有権移転登記とは?】手続きの流れから必要物・費用まで簡単解説
【パターン別】不動産の財産分与|確認事項と失敗しないための注意点

2-1-1 【手続時の注意点】財産分与する方の住所・氏名

財産分与する方の登記簿上の住所・氏名が現在と異なる場合、所有移転登記の手続前(または同時)に、所有権登記名義人の住所・氏名を変更する登記手続きが必要です。
その場合は、住所・氏名を変更した経緯が分かる住民票・戸籍謄本などの書類を用意しておきましょう。

場合によっては、相手方に転居先の住所を知られたくないこともあると思いますが、住所の変更登記をすると、変更した住所が一般に公開されてしまうため注意が必要です。
なお、DVや児童虐待などの被害を受けている方を守るために、DV防止法や児童虐待防止法、ストーカー行為規制法で以下のようなことが定められています。

【DV・ストーカーに不安がある場合は特例措置があります!】

DV防止法やストーカー行為規制法、児童虐待防止法における被害者などは、被支援措置を受けている場合「住民票」と「支援措置を受けていることを証する情報」を登記申請書に添付すると、登記記録上の住所から転居しても、登記義務者である登記名義人の住所についての変更の登記をしなくても良いとされています。

2-2 裁判上の離婚の場合

財産分与による所有権移転登記の手続き/裁判上の離婚の場合

以下のケースによる離婚の場合には、財産分与を受ける人が単独で所有権移転登記を行えます。

  • 調停や審判、訴訟など裁判上の離婚の場合
  • 調停調書等に「申立人は、相手方に対し、離婚に伴う財産分与として、別紙物件目録記載の不動産を譲渡することとし、本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする」記載がある場合

もし、調停証書等に上記の記載がない場合は、協議離婚の場合と同様に双方で書類を集めて手続きをしなければなりません。
財産分与を受ける人が単独で手続きをする場合に必要な書類は以下の通りです。

財産分与を受ける方(登記権利者)
書類備考
住民票
  • 発行後3ヶ月以内のもの
  • 市区町村役場で取得可能
  • 発行手数料は500円程度
印鑑認印でよい
固定資産評価証明書登記する年度のもの
登記原因証明情報調停証書や審判書、和解調書など

2-2-1 【手続時の注意点】財産分与する方の住所・氏名

財産分与する人の登記簿上の住所・氏名が調停調書等に記載されているものと異なる場合には、所有移転登記をする前(または同時)に、所有権登記名義人の住所・氏名を変更する登記手続きをしなければなりません。

住所や氏名の変更登記手続きに関しても、相手方の協力がなくても単独で手続きを行えます。
住所・氏名を変更した経緯が分かる住民票・戸籍謄本などの書類を用意しておきましょう。

なお、協議離婚時の手続きと同様に、相手方に転居先の住所を知られたくない場合でも、住所の変更登記後は変更した住所が一般に公開されてしまうので、ご注意ください。
先ほど紹介したように、DVや児童虐待などの被害を受けている方を守るための特例措置が用意されています。


3章 財産分与による所有権移転登記をする際の注意点

続いて、財産分与による所有権移転登記をする際の注意点を4つ紹介していきます。

  1. 所有権移転登記をしても債務者は変わらない
  2. 行に無断で所有権登記移転すると契約違反の恐れがある
  3. できれば離婚公正証書を作成する
  4. 譲渡所得税がかかる場合がある

住宅ローンや税金などお金に関することもあるので、しっかりと理解しておきましょう。

3-1 所有権移転登記をしても債務者は変わらない

所有権移転登記をして家の名義人を変更しても、住宅ローンの債務者は変更されません。
例えば、夫名義で住宅ローンを組んでいる家を妻名義に所有者移転登記をした場合、登記上の所有者は妻になりますが住宅ローンの名義は夫のままです。

3-2 銀行に無断で所有権登記移転すると契約違反の恐れがある

住宅ローンの契約では「銀行の承諾なく所有権を移転した場合、残りの債務を一括で請求する」と取り決められていることがほとんどです。
そのため、銀行に無断で所有者移転登記すると契約違反となり、残債を一括で請求される可能性がある点はご留意ください。

なお、銀行の承諾を得るためには債務者の変更や借り換えの手続きが必要です。
しかし、住宅ローンを組む際には債務者の年収や職業を鑑みて審査していますので、他の人に契約を移すことは現実的ではありません。

とはいえ、所有者移転登記をしたからといって必ず一括請求されるわけではなく、債務の返済さえしっかりと続けていれば期限の利益喪失をしてまで一括請求されることはないのが実情です。
そのため、銀行に伝えずに所有者移転登記を行う人は一定数いらっしゃいます。
ただし、契約違反となるのは変わりないため、このような場合は司法書士と相談しながら進めるのが良いでしょう。

離婚時の財産分与で住宅ローンのある家を財産分与する方法と注意点

3-3 できれば離婚公正証書を作成する

協議離婚をする場合は、財産分与を含め、慰謝料や養育費などの取り決めは離婚公正証書を作成しておきましょう。
公正証書を作成しておけば、万が一相手方が支払いなどを怠った場合、ただちに強制執行(財産の差押え)を行えます(民事執行法第22条5号参照)。

財産分与手続きにおいて、協議離婚の場合は所有者移転登記に相手方の協力が不可欠ですが、公正証書を作成しておけば法的効力を持って協力を要請可能です。
そのため、公正証書を作成しておけば、財産分与による所有権移転登記もスムーズに進みやすいです。

3-4 譲渡所得税がかかる場合がある

財産分与で不動産の所有者移転登記をした場合、原則として贈与税はかかりません。
財産分与は夫婦の共有財産を分け合う行為であり、贈与ではないからです。
また、不動産を取得した際に課税される不動産取得税についても課税されません。

しかし、財産分与を行った時点でその不動産の時価が取得時の価格よりも上回る場合には、財産分与をした人に譲渡所得税が課税されます。
また、財産分与を受けた人も、対象となる不動産を売却した場合には同じく譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税の計算方法は以下の通りです。

【譲渡所得の計算式】

譲渡所得=不動産の時価-(取得費+譲渡費用+特別控除額)

不動産の保有期間が5年超の場合】
譲渡所得(売却して得た利益)×(15%【所得税】+5%【住民税】)=譲渡所得税額

【不動産の保有期間が5年以内の場合】
譲渡所得(売却して得た利益)×(30%【所得税】+9%【住民税】)=譲渡所得税額

 

譲渡所得税についての詳しい解説はこちらもご参考にしてください。

土地を売却した際にかかる譲渡所得税とは?計算方法と節税方法を解説

4章 財産分与による所有者移転登記をした場合の費用

財産分与による所有権移転登記をした際には、以下の費用がかかります。

  1. 登録免許税
  2. 司法書士への依頼費用

それぞれ計算方法を詳しく解説していきます。

3-1 登録免許税

登録免許税とは、登記手続きをする際に課税される税金です。
財産分与による所有者移転登記の場合、対象となる不動産の固定資産税評価額の2%が課税されます。

例えば、固定資産税評価額が2,000万円の場合、登録免許税は40万円です。
なお、固定資産税評価額は、固定資産税納付通知書に記載があるので確認しておきましょう。

3-2 司法書士への依頼費用

登記手続きを司法書士へ依頼した場合、依頼費用がかかります。
司法書士への依頼費用の相場は以下の通りです。

  • 登記手続き一式:7〜12万円
  • 財産分与等契約書作成:2〜3万円

まとめ

離婚時に不動産を財産分与した場合には、所有権移転登記が必要です。
所有権移転登記は法務局にて自分で行えるますが、手続きが複雑で慣れていない人は大変と感じてしまう場合も多いです。

また、財産分与における所有者移転登記の場合、相手方と協力して所有権移転登記をしなければなりません。
場合によっては連絡が取りにくかったり、極力連絡を避けたかったりすることもあるでしょう。

司法書士へ依頼すれば、財産分与による登記手続きを一任可能です。
手続きに不安がある人や、時間がない人は司法書士へ依頼することをおすすめします。

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初回の相談料は無料ですので、ぜひお気軽にご利用ください。

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よくあるご質問

財産分与登記の必要書類は?

協議離婚により財産分与登記を行うときの必要書類は、下記の通りです。
・住民票
・印鑑証明書
・印鑑、実印
・不動産の登記済権利証もしくは登記識別情報通知
・固定資産評価証明書
・離婚の記載のある戸籍謄本
▶財産分与登記について詳しくはコチラ

財産分与登記にはいくらかかる?

財産分与登記は登録免許税と司法書士への依頼費用がかかります。
計算方法および相場は下記の通りです。
登録免許税:不動産の固定資産税評価額の2%
司法書士への報酬:10万~15万円程度
▶財産分与登記について詳しくはコチラ

財産分与登記とは?

財産分与登記とは、離婚により不動産の財産分与を行うときに申請する所有権移転登記です。
▶財産分与登記について詳しくはコチラ

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