本人の手書きや押印が必要な遺言書は自筆証書遺言|作成時の注意点は?

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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 5
 この記事でわかること

  • 本人の手書きや押印が必要な遺言書の種類とは何か
  • 自筆証書遺言・公正証書遺言を作成するメリット・デメリット
  • 遺言書を作成するときの注意点

遺言書にはいくつか種類がありますが、本人による手書きや押印が必要な遺言書は「自筆証書遺言」です。
自筆証書遺言は自分で作成できるため、作成時にかかる手間や費用を抑えられるメリットがあります。

一方、法務局による保管制度を利用しない場合、原本の紛失や改ざんリスクがある点には注意しなければなりません。
信頼性が高い遺言書を作成したいのであれば、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言を作成するのが良いでしょう。

本記事では、本人の手書きや押印が必要な遺言書は何か、遺言書作成時の注意点を解説します。


1章 本人の手書きや押印が必要な遺言書は自筆証書遺言

本人の手書きや押印が必要な遺言書は「自筆証書遺言」です。
なお、遺言書は自筆証書遺言以外にも「公正証書遺言」や「秘密証書遺言」などがあります。

遺言書の種類作成がおすすめな人
自筆証書遺言遺言書の作成に費用をかけたくない人
公正証書遺言信頼性が高い遺言書を作成したい人
秘密証書遺言遺言の内容を誰にも知られたくない人

それぞれの遺言書の特徴について、詳しく見ていきましょう。

1-1 自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者本人がすべて自筆で書く形式の遺言書です。
署名部分だけでなく、遺言部分も自筆で作成する必要があります。

自筆証書遺言に効力を持たせるには、下記の要件を満たす必要があります。

  • 遺言者が自筆で全文書く
  • 作成日を自筆で書く
  • 署名する
  • 印鑑を押す
  • 決められた方法で訂正する

したがって、本人が手書きで遺言書を作成したい場合は、自筆証書遺言を作成しましょう。

自筆証書遺言の要件まとめ|記載例や作成時の注意点について

1-2 公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言書です。
公証人が作成するので形式不備の可能性はほとんどありませんし、原本を公証役場で保管してもらえるため、紛失や改ざんリスクもなくせます。

遺言書をすべて自筆で作成するのは不安な場合や形式不備による無効リスクを減らしたい場合は、公正証書遺言を選択しましょう。

公正証書遺言の必要書類と遺言作成の流れ【簡単チェックリスト付】

1-3 秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、公証役場にて遺言書の存在のみを証明してもらう遺言書です。
「秘密」と名前がついているように、遺言内容を秘密にしたまま作成できます。

秘密証書遺言は実務ではほとんど作成されていないため、本記事では割愛します。

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2章 自筆証書遺言を作成するメリット・デメリット

自筆証書遺言は自筆で作成できるため、他の遺言書よりも気軽に作成できる点がメリットです。
一方で、形式不備による無効リスクや原本の紛失や改ざんリスクがある点はデメリットといえるでしょう。

自筆証書遺言のメリットとデメリットを詳しく解説していきます。

2-1 メリット

公正証書遺言や秘密証書遺言と比較した自筆証書遺言のメリットは、主に下記の4つです。

  • 遺言書の存在や内容を秘密にできる
  • 作成時に費用がかからない
  • 気軽に書き直しができる
  • 自分1人で作成できる

自筆証書遺言は、公正証書遺言や秘密証書遺言と比較して、手軽かつ安価に作成できる点が魅力です。
書き直しもしやすいので、年齢が若く遺言書の内容が将来的に変わる可能性がある人や仮の内容で遺言書を作成しておきたい人に向いています。

2-2 デメリット

残り2つの遺言書と比較して、自筆証書遺言は信頼性に不安がある点がデメリットといえます。

  • 相続発生後は、家庭裁判所にて検認手続きをしなければならない(保管制度を利用した場合は不要)
  • 要件を満たしていないと法的拘束力を持たない
  • 紛失や改ざんの恐れがある

自筆証書遺言は自宅で本人が保管するケースも多く、遺言内容に納得していない相続人が改ざんもしくは破棄してしまう可能性もゼロではありません。
また、家族や親族に遺言書の存在を伝えていないと、自分が亡くなった後にせっかく書いた遺言書を見つけてもらえない恐れもあります。

自筆証書遺言のリスクやデメリットを少しでも減らしたいのであれば、自筆証書遺言保管制度を活用するのが良いでしょう。
法務局による保管制度を利用すれば、自筆証書遺言を自分で保管する必要がなくなりますし、相続発生後の検認手続きが不要になります。

法務局による自筆証書遺言の保管制度とは?申請方法について

3章 公正証書遺言を作成するメリット・デメリット

公正証書遺言は、形式不備による無効リスクを減らせる点や原本の紛失や改ざんリスクをなくせる点がメリットです。
一方、公正証書遺言は証人2名を用意する必要があるなど作成時に手間がかかる点がデメリットといえるでしょう。

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1 メリット

他2つの遺言書と比べて、公正証書遺言を作成するメリットには、主に下記のものがあります。

  • 公証人が作成するので形式不備による無効をほぼなくせる
  • 原本を公証役場にて保管してもらえるので、紛失・改ざんのリスクがなくなる
  • 公正証書遺言の写しを紛失しても再発行してもらえる
  • 相続発生後の検認手続きが不要である

相続対策で遺言書を作成するのであれば、公正証書遺言で作るのが最もおすすめです。
公正証書遺言は他の遺言書と比較して信頼性も高いですし、検認手続きが不要なため、遺族の相続手続きの負担を減らせるからです。

3-2 デメリット

自筆証書遺言や秘密証書遺言と比較した場合の公正証書遺言のデメリットは、主に下記の通りです。

  • 作成時に費用がかかる
  • 公証人と証人に遺言書の内容を知られてしまう

公正証書遺言は、作成時に公証人に支払う手数料が4~10万円程度かかります。
遺言内容の相談や公証人との打ち合わせ代行などを司法書士や弁護士などの専門家に依頼すると追加で8~20万円程度の費用がかかります。

公正証書遺言作成に必要な費用と専門家の報酬をまとめて紹介

4章 遺言書を作成するときの注意点

遺言書を作成する際には、保管制度を利用しない自筆証書遺言と秘密証書遺言は、家庭裁判所での検認手続きが必要なことなどに注意しておきましょう。
遺言書作成時の注意点は、主に下記の通りです。

  • 自筆証書遺言・秘密証書遺言は検認手続きが必要である
  • 自筆証書遺言は法務局による保管制度を利用できる
  • 遺族の負担やトラブルを減らしたいなら遺言執行者を選任しておく
  • 遺留分を侵害しない遺言書を作成する
  • 司法書士・弁護士に遺言内容を相談しておく

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 自筆証書遺言・秘密証書遺言は検認手続きが必要である

法務局による保管制度を利用していない自筆証書遺言や秘密証書遺言は、相続発生後に家庭裁判所での検認手続きが必要となります。
検認手続きが完了していない遺言書は、相続手続きに使用できないのでご注意ください。

遺言書の検認手続きは家庭裁判所で行う必要があり、手続き方法および必要書類は、下記の通りです。

手続先故人の最後の住所地の家庭裁判所
手続できる人遺言書の保管者・遺言書を発見した相続人
必要なもの
  • 遺言書の検認申立書
  • 遺言書
  • 相続関係がわかる戸籍謄本など(除籍、改製原戸籍など)
手数料
  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手
【遺言書の検認】手続方法と流れ・費用・注意点まで図解で簡単解説!

4-2 自筆証書遺言は法務局による保管制度を利用できる

自筆証書遺言は要件を満たせば、法務局による保管制度を利用できます。
法務局による保管制度を利用するメリットは、主に下記の通りです。

  • 自分で書いた遺言書が法的な要件を満たしているか、法務局で確認してもらえる
  • 保管制度を利用した自筆証書遺言書は、家庭裁判所での検認が不要となる
  • 相続開始後に相続人は自筆証書遺言書のデータを閲覧できる
  • 相続人の1人が遺言書の情報を閲覧した際に、他の相続人に連絡が届く
  • 遺言者が死亡したとき、事前に指定した人物(法人)に遺言書が保管されていることを通知してもらえる

検認手続きを不要にしたい場合や遺言書原本の紛失や改ざんリスクをなくしたいのであれば、保管制度の利用を検討しましょう。

しかし、法務局では遺言書が形式上の要件を満たしているかは確認してくれますが、遺言内容については精査してくれません。
そのため、法務局の保管制度を利用した遺言書も、遺留分トラブルなどが起きるリスクは残ってしまいます。

法務局による自筆証書遺言の保管制度とは?申請方法について

4-3 遺族の負担やトラブルを減らしたいなら遺言執行者を選任しておく

相続発生後の遺族の負担を減らしたり、相続トラブルをできるだけ回避したかったりするのであれば、遺言執行者を選任しておきましょう。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために手続きを行う人です。

遺言執行者を選任しておけば、単独で遺産の名義変更手続きを行えますし、相続人に遺言書の内容を伝えてくれます。

遺言執行者は相続人がなることもできますが、遺言書の作成を依頼した司法書士や弁護士を選任すれば、作成時の意図や遺志も伝えてもらえます。

遺言執行者とは|誰がなれる?選任方法や仕事内容を徹底解説【完全版】

4-4 遺留分を侵害しない遺言書を作成する

遺言書を作成する際には、相続人の遺留分を侵害しない内容にしましょう。
遺留分とは、故人の配偶者や子供、両親に認められる最低限度の遺産を受け取れる権利です。

遺留分は遺言より優先されるため、遺留分を侵害した遺言書を作成してしまうとトラブルが起きる可能性があります。
遺留分を侵害された人物から遺留分侵害額請求があると、遺産を多く受け取った人物は相当額の金銭を支払わなければなりません。

遺言よりも遺留分が優先される!【効果的な5つの遺留分対策とは】

4-5 司法書士・弁護士に遺言内容を相談しておく

どの種類の遺言書を作成するにしても、作成前に司法書士や弁護士に遺言内容を相談しておくことをおすすめします。
遺言内容を自分で考えると、内容に漏れが発生する可能性もありますし、遺留分を侵害した遺言書を作成してしまう可能性もあるからです。

なお、本人が手書きで作成する自筆証書遺言だけでなく、公正証書遺言を作成するときも、司法書士や弁護士に相談しておきましょう。
というのも、公証人は遺言内容を確認し遺言書を作成してくれるものの、遺言内容についてのアドバイスはしてくれないからです。

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まとめ

本人が手書きや押印をする遺言書は自筆証書遺言です。
自筆証書遺言は他の遺言書と比較して手軽に作成できるメリットがありますが、検認手続きが必要などのデメリットもあります。

信頼性が高い遺言書を作成したい場合や遺族の負担を減らしたい場合などは、公正証書遺言を作成することをおすすめします。
また、遺言書を作成するときには、事前に司法書士や弁護士に相談し、遺言内容についてアドバイスをもらうと良いでしょう。

グリーン司法書士法人では、遺言書作成についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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