兄弟など他の相続人に相続放棄してもらう際には、お礼の手紙を書くケースが一般的です。
また、お礼状と共に相続人にお礼(ハンコ代)を支払うケースもあります。
ただ、兄弟が相続放棄してくれた際にお礼を支払うことは法律で決められているわけではなく、金額にも決まりはありません。
お礼の金額相場としては、5~30万円程度の心づけ程度の金額を払う場合と法定相続分の一定割合を支払う場合が多いです。
ただし、相続放棄のお礼が110万円を超える場合には、贈与税がかかる恐れがあるのでご注意ください。
贈与税がかからないようにするには、お礼として支払うのではなく代償分割として遺産分割協議を行うのがおすすめです。
本記事では、相続放棄をしてくれた兄弟にお礼は必要なのか、金額相場やお礼を渡すときの注意点についてわかりやすく解説していきます。
相続放棄については、下記の記事でも詳しく解説しています。
目次
1章 法律上は相続放棄をした兄弟にお礼(ハンコ代)を払う義務はない
本記事の冒頭でも解説したように、相続放棄をした兄弟にお礼を支払うことに関しては法律では決められていません。
ただし、実際の相続手続きでは下記の理由によりお礼を支払うケースも多いです。
- 相続人同士の相続トラブルを避けるため
- 相続放棄に異議がないことを証明するため
また、相続放棄は相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所への申立てが必要であり、必要書類の収集や手続きなどに手間がかかります。
兄弟間の関係が良好であり相続トラブルが起きそうにない状況でも、相続放棄をしてくれた兄弟への手間賃としてお礼を支払っておくのがおすすめです。
2章 相続放棄をした兄弟へのお礼相場
1章で解説したように、相続放棄をした兄弟へのお礼は法律で決められているわけではありません。
そのため、金額に関しても決まりはなく、相続人間の関係や相続の状況によって決まってきます。
相続放棄をした兄弟へのお礼の相場は、下記の場合が多いです。
- 5~30万円程度(心づけ程度)
- 法定相続分の半分程度(遺留分程度)
あくまでも、相続放棄に合意してくれたことや手続きをしてくれることに対するお礼ですので、金額面だけでなく誠意を持って支払い相続放棄に納得してもらうことが大切です。
また、お礼の金額が多く110万円を超える場合には、お礼を受け取った兄弟に贈与税がかかってしまう恐れがあります。
次の章では、お礼に贈与税がかからなくする方法を詳しく解説していきます。
3章 お礼が110万円を超えるときには代償分割しよう
2章で解説したように、相続放棄のお礼が110万円を超える場合には贈与税がかかる恐れがあります。
贈与税がかからないようにするには、お礼として支払うのではなく、代償分割として遺産分割を行うのが良いでしょう。
代償分割とは、相続分が多い相続人が他の相続人に代償金を渡す遺産分割方法です。
上記のイラストのように、不動産をすべて兄が相続するかわりに弟が1,000万円をお礼として受け取るケースでは代償分割を選択すれば贈与税はかかりません。
代償分割をする際には、遺産分割協議書にその旨を記載しておく必要があります。
本記事では、代償分割の遺産分割協議書の雛形もご用意しましたので、ぜひご活用ください。
4章 相続放棄をした兄弟にお礼を渡す流れ
相続放棄をした兄弟にお礼を渡す際にはいきなり渡すのではなく、お礼状の送付と共に行いましょう。
具体的には、以下の流れで渡すのが良いでしょう。
- 相続放棄の手続きをしてもらう
- お礼を渡す
- お礼状を送付する
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 相続放棄の手続きをしてもらう
まずは、兄弟に相続放棄の手続きをしてもらいましょう。
兄弟に相続放棄を依頼する際には、丁寧に事情を説明し納得してもらうことが大切です。
また、相続放棄は相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所への申立手続きが必要です。
具体的には、下記の流れで行ってもらいましょう。
相続放棄は亡くなった人と手続きする人の関係性によって必要書類が異なるので、漏れのないように収集することが大切です。
司法書士や弁護士などの専門家は相続放棄の手続きを代行できるので、平日日中仕事をしている人や小さい子供を育てている人は専門家に依頼してしまうのも良いでしょう。
4-2 お礼を渡す
兄弟が相続放棄をしてくれたら、お礼を渡しましょう。
相続放棄のお礼は相手へのお礼だけでなく、受け取った相手にとっては「相続放棄に異議がない」ことを示す証拠にもなります。
本記事でも解説しましたが、将来的な相続トラブルを避けるためにもお礼を渡す方が良いでしょう。
4-3 お礼状を送付する
相続放棄を始めとした相続手続きのすべてが完了したら、兄弟にお礼状を送付します。
文例は特に決まっていないので、相手に誠意を持って書き、相続手続きを終えられたことのお礼を伝えましょう。
下記に文例のサンプルを掲載しておきます。
〇〇様
拝啓
このたびは、亡き母の件で大変お世話になりました。
相続手続きが無事完了いたしましたことを、謹んでご報告させていただきます。
ありがとうございました。
敬具
まとめ
相続放棄をした兄弟に対してお礼を支払うことは、法律では決められていません。
ただ、後々の相続トラブルを避けるためにもお礼を渡した方が良いケースは多いです。
相続放棄をした兄弟にお礼を渡す際の金額相場は、5万円から30万円程度の心づけ程度もしくは法定相続分の半額程度を渡す場合が多いです。
ただし、お礼の金額が110万円を超える場合には受け取った兄弟に贈与税がかかる恐れもあるのでご注意ください。
贈与税がかからないようにするには、相続放棄の手続きをするのではなく代償分割によって遺産分割を行うのがおすすめです。
相続放棄には期限があり、家庭裁判所への申立て手続きが必要になります。
手続きの負担を少しでも減らしたいのであれば、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談するのも良いでしょう。
専門家であれば、代償分割など相続放棄以外の提案が出来る場合もあり、ご相談者様に合った遺産分割や相続手続きを行えます。
グリーン司法書士法人では、相続放棄に関する相談をお受けしてします。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
相続放棄のハンコ代の相場はいくら?
5~30万円程度の心づけ程度の金額を払う場合と法定相続分の一定割合を支払う場合が多いです。
ただし、相続放棄のお礼が110万円を超える場合には、贈与税がかかる恐れがあるのでご注意ください。
▶相続放棄のお礼相場について詳しくはコチラ相続放棄を司法書士に依頼するといくらかかる?
相続放棄を司法書士に依頼したときの費用相場は、4~7万円程度です。
▶相続放棄を司法書士に依頼したときの費用相場について詳しくはコチラ相続放棄をしてくれた人にお礼は必要?
遺産分割協議や相続放棄に協力してくれた人に対して、お礼を支払う義務はありません。
ただし協力に対するお礼として、心づけ程度の金額を払うこともあります。相続放棄のハンコ代は誰が払う?
他の相続人に相続放棄してもらいハンコ代を払う場合、遺産を多く受け取る人物が払うことが一般的です。
相続放棄のハンコ代はいつ払う?
兄弟が相続放棄をしてくれたタイミングでお礼を渡すのが良いでしょう。
相続放棄するメリットとは?
相続放棄するメリットは、主に下記の2つです。
・マイナスの財産を引き継がないですむ
・相続人間のトラブルに巻き込まれずにすむ
▶相続放棄のメリットについて詳しくはコチラ