
- 相続放棄は自分一人だけでもできるのか
- 自分だけ相続放棄した場合、他の相続人はどうなるのか
- 自分だけ相続放棄したことで起こりやすいトラブル
- トラブルを避けるために知っておくべき注意点と対処法
相続が発生したとき、「自分は相続に関わりたくない」「借金があるかもしれないので相続放棄したい」と考える方は少なくありません。
特に、
- 故人と疎遠だった
- 財産状況がよく分からない
- 相続トラブルに巻き込まれたくない
といった事情がある場合、「自分だけ相続放棄することはできるのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。
相続放棄とは、家庭裁判所に申述を行うことで、最初から相続人でなかったものとして扱われる制度です。
相続放棄が認められれば、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も一切引き継がずに済みます。
本記事では、相続放棄は自分一人だけでもできるのかという基本的な疑問から、実際に起こりやすいトラブルやその対処法まで、わかりやすく解説します。
目次
1章 相続人の中で自分だけ相続放棄することもできる
結論から言うと、相続放棄は相続人のうち自分一人だけでも行うことが可能です。
相続放棄は、相続人全員の合意が必要な手続きではありません。
法律上、相続放棄は「各相続人が個別に判断し、個別に行う手続き」とされています。
そのため、「兄弟姉妹のうち自分だけ相続放棄する」「他の相続人が相続する中で、自分だけ相続放棄する」といったことも、問題なく認められます。
他の相続人から
「みんなで決めないといけないのでは?」
「勝手に放棄できないのでは?」
と言われることもありますが、法的にはそのような制限はありません。
重要なのは、
- 相続開始後であること
- 家庭裁判所に期限内に申立てをすること
この2点を満たしていれば、他の相続人の意思に関係なく、自分だけ相続放棄することができるという点です。
2章 自分だけ相続放棄した場合の取り扱い
相続放棄をすると、「最初から相続人ではなかったもの」として扱われます。
その結果、残りの相続人の範囲や相続の進み方が変わる点には注意が必要です。
ここでは、
- 同じ順位の相続人がいる場合
- 同じ順位の相続人がいない場合
に分けて、具体的に解説します。
2-1 同順位の相続人がいる場合は残りの相続人で遺産を分割する
自分と同じ相続順位の相続人がいる場合、自分だけ相続放棄をすると、その分を残りの同順位の相続人で分け合うことになります。
たとえば、次のようなケースです。
- 父が亡くなった
- 相続人は子供3人(長男・次男・三男)
- 次男である自分だけが相続放棄した
この場合、次男は最初から相続人ではなかったものと扱われ、長男と三男の2人だけで相続することになります。
重要なポイントは、「自分が放棄した分を誰かに指定して渡せるわけではない」という点です。
あくまで法律のルールに従い、残った相続人の法定相続分が自動的に増える仕組みになっています。
2-2 同順位の相続人がいない場合には次の順位の相続人に相続権が移る
一方で、同順位の相続人が自分しかいない場合には注意が必要です。
たとえば、
- 父が亡くなった
- 相続人は自分1人(子供が1人だけ)
このような状況で自分が相続放棄をすると、相続はそこで終わらず、次の順位の相続人へと移ります。
具体的には、相続順位に従って、
- 被相続人(父)の直系尊属(自分からみた祖父母)
- 被相続人(父)の兄弟姉妹(自分からみたおじ・おば。亡くなっていればその子供が代襲相続する)
といった人たちが、新たに相続人となります。
そのため、自分だけ相続放棄をした結果、被相続人の高齢の親(自分から見ると祖父母)に相続権が移ってしまったり、被相続人と疎遠の甥・姪が相続人になるといったケースも実際に起こります。
「自分が放棄すればすべて終わり」と思っていると、思わぬ相続トラブルを別の家族に引き継いでしまう可能性があるため注意が必要です。
3章 自分だけ相続放棄をした場合に起こりうるトラブル
相続放棄は法律上、自分一人だけでも正当に行える手続きです。
しかし、「法律上できること」と「現実に問題が起きないこと」は別である点には注意が必要です。
特に、他にも相続人がいる場合には、自分だけ相続放棄をしたことで思わぬトラブルに発展することがあります。
3-1 残りの相続人が不満を持つことがある
自分だけ相続放棄をした場合、同順位の相続人(兄弟姉妹など)から不満を持たれることがあります。
実際によくあるのが、次のような反応です。
- 「借金があるなんて聞いていない」
- 「都合の悪いところだけ押し付けるのか」
- 「自分だけ逃げるつもりか」
相続放棄をすると、その人は最初から相続人ではなかったものとして扱われます。
その結果、借金や管理の負担が、残った相続人に集中することになります。
たとえ法的には正当な行為であっても、他の相続人からすれば「説明もなく放棄された」と感じ、感情的な対立につながるケースは少なくありません。
特に、相続財産の内容がはっきりしていない段階で放棄すると、「なぜ放棄したのか分からない」という不信感を生みやすくなります。
3-2 次の順位の相続人に迷惑をかける恐れがある
自分だけ相続放棄をした結果、次の順位の相続人に相続権が移ることで、別のトラブルが発生することもあります。
典型的なのは、次のようなケースです。
- 子供が自分1人しかおらず、自分が相続放棄した
- 相続権が故人の兄弟姉妹(自分からみたおじ・おば)に移った
- その兄弟姉妹がすでに亡くなっており、故人の甥・姪が相続人になった
こうした場合、本来は関わる予定のなかった人が、突然相続手続きに巻き込まれることになります。
故人の甥や姪にとっては、
- 故人とほとんど面識がない
- 相続の知識がなく、どうしていいか分からない
- 借金があるかもしれないという不安だけが残る
といった状況になり、「なぜ自分が?」と困惑するケースも少なくありません。
結果として、
- 親族関係が悪化する
- 相続放棄の連鎖が起こる
- 誰も動かず、問題が長期化する
といった事態に発展することもあります。
4章 自分だけ相続放棄をした場合のトラブルを避ける方法
自分だけ相続放棄すること自体は、法律上まったく問題ありません。
しかし、何の配慮もなく相続放棄をすると、親族間のトラブルに発展しやすいのも事実です。
ここでは、自分だけ相続放棄する場合でも、できる限りトラブルを避けるための具体的な方法を紹介します。
4-1 他の相続人・次の相続人に相続放棄することと理由を説明しておく
まず大切なのは、相続放棄する事実とその理由を、できる範囲で説明しておくことです。
説明をせずに突然相続放棄すると、「なぜ放棄したのか分からない」「何か隠しているのではないか」といった不信感を持たれやすくなります。
例えば、
- 故人の借金が心配であること
- 財産状況が分からず、リスクを負えないこと
- 家庭や仕事の事情で相続手続きに関われないこと
など、正直な理由を簡単に伝えるだけでも、受け止め方は大きく変わります。
特に、自分が放棄することで相続権が移る可能性のある次順位の相続人(兄弟姉妹・甥姪など)には、事前に伝えておく配慮が望ましいでしょう。
4-2 相続人全員で相続放棄の申立てをする
もし相続財産の状況を調べた結果、「明らかに借金の方が多い」「相続するメリットがほとんどない」という場合には、相続人全員で相続放棄をするという選択肢もあります。
相続人全員で相続放棄を行えば、
- 誰か一人に負担が集中しない
- 「自分だけ逃げた」という印象を与えにくい
- 相続トラブルそのものを回避できる
といったメリットがあります。
また、手続きをまとめて進めることで、
- 戸籍謄本などの書類収集を手分けできる
- 専門家に依頼した場合、費用が抑えられることがある
など、実務面でもメリットがあります。
4-3 司法書士・弁護士に相談する
相続放棄をめぐるトラブルを避けたい場合、早い段階で司法書士や弁護士に相談することは非常に有効です。
専門家に相談することで、
- 自分が相続放棄すべきかどうかの判断
- 相続放棄をした場合の影響範囲
- 他の相続人への説明方法
などについて、客観的かつ法的に整理されたアドバイスを受けることができます。
また、
- 「専門家がそう言っているなら仕方ない」と他の相続人が冷静に受け止めてくれる
- 相続放棄の申立て手続きを任せられる
といった点も大きなメリットです。
感情が絡みやすい相続問題だからこそ、第三者である専門家の存在が、トラブル防止につながるケースは少なくありません。
4-4 相続人全員で限定承認をする
相続放棄以外の選択肢として、限定承認という方法もあります。
限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内でのみ、借金などを引き継ぐという制度です。
例えば、「借金があるとは聞いているが具体的な金額が分からない」「すべて放棄するのはためらいがある」といった場合に検討されます。
ただし、限定承認には、
- 相続人全員で手続きする必要がある
- 家庭裁判所への申立てが必要
- 手続きが煩雑で実務負担が大きい
といったデメリットもあります。
そのため、限定承認が適しているかどうかは、専門家に相談したうえで慎重に判断することが重要です。
5章 相続放棄をする際の注意点
相続放棄は、借金などのリスクを回避できる有効な制度ですが、一度行うと取り消せない重要な手続きでもあります。
「とりあえず放棄しておこう」と安易に判断すると、後から後悔してしまうケースもあるため、以下の注意点を必ず押さえておきましょう。
5-1 相続放棄をするとプラスの遺産もすべて受け取れない
相続放棄をすると、借金などのマイナスの財産だけでなく、預貯金や不動産といったプラスの財産も一切受け取れなくなります。
相続放棄は、「借金だけ放棄する」「プラスの財産だけ相続する」といった都合の良い選択はできません。
たとえ相続放棄後に、思っていたより預貯金が多かったことが判明したり、価値のある不動産が見つかったりしても、原則として相続することはできません。
そのため、可能な限り事前に相続財産の調査を行ったうえで判断することが重要です。
5-2 相続発生前に相続放棄することはできない
相続放棄は、被相続人が亡くなって相続が発生した後でなければ行うことができません。
「生前に放棄しておく」「将来の相続をあらかじめ断る」といったことは、法律上認められていない点に注意が必要です。
なお、
- 「遺産はいらない」と口頭で伝えていた
- 親族間で書面を交わしていた
といった場合でも、法的な相続放棄としての効力はありません。
相続放棄をするためには、必ず家庭裁判所への正式な申立てが必要です。
5-3 一度相続放棄が認められると取り消せない
相続放棄は、家庭裁判所に申立てを行い、受理されると原則として取り消すことができません。
そのため、「勢いで放棄してしまった」「他の相続人に強く勧められて放棄した」といった理由があっても、後から「やっぱり相続したい」という主張は認められないのが原則です。
例外的に、詐欺や強迫によって放棄させられたなどの特殊な事情があれば争える余地はありますが、一般的なケースでは取り消しは非常に困難です。
5-4 相続放棄には期限がある
相続放棄には、期限(熟慮期間)が設けられています。
原則として、「自己が相続人であることを知った日から3か月以内」に家庭裁判所へ申立てをしなければなりません。
この期限を過ぎてしまうと、単純承認したものとみなされ、借金も含めて相続する扱いになる可能性があります。
相続財産の調査に時間がかかる場合には、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申し立てることもできますので、期限管理は非常に重要です。
5-5 遺産を使用・処分すると相続放棄が認められなくなる
相続放棄を考えている場合、相続財産を使用したり処分したりしないよう注意が必要です。
例えば、
- 故人の預金を引き出して使ってしまう
- 不動産を売却する
- 借金を一部返済する
といった行為をすると、「相続する意思があった」と判断され、相続放棄が認められなくなる可能性があります。
一方で、葬儀費用の支払いや、最低限の保存行為など、例外的に問題とならないケースもありますが、判断が難しい場面も多いため、自己判断は危険です。
まとめ
相続放棄は、相続人のうち自分一人だけでも行うことができる手続きです。
他の相続人の同意は不要であり、法律上は正当な選択といえます。
しかし、自分だけ相続放棄をすると、
- 残りの相続人の相続割合が増える
- 同順位の相続人から不満を持たれる
- 次の順位の相続人(兄弟姉妹や甥・姪)に相続権が移る
といった影響が生じる点には注意が必要です。
そのため、自分だけ相続放棄をする場合には、
- 相続放棄する理由をできる範囲で説明しておく
- 相続人全員で相続放棄や限定承認を検討する
- 早めに司法書士・弁護士へ相談する
といった配慮や準備をしておくことで、無用なトラブルを避けやすくなります。
また、相続放棄には、
- 期限(原則3か月)がある
- 一度認められると原則取り消せない
- 遺産を使用・処分すると放棄できなくなる
といった重要な注意点もあります。
「自分だけ相続放棄したいが、これで本当に大丈夫なのか」
「他の相続人にどう影響するのか不安」
このように感じている方は、自己判断で進めず、専門家に相談したうえで手続きを進めることが大切です。
グリーン司法書士法人では、自分だけ相続放棄をしたいケースや、相続人同士の関係に配慮が必要なケースについても、多数の相談実績があります。
初回相談は無料ですので、相続放棄を検討している方は、早めにご相談ください。










