孤独死した人の遺品整理は、最も近しい親族が行うのが一般的です。
なお、亡くなった人に相続人がいる場合は、相続人が遺品整理を行うと法律によって義務付けられています。
これは、相続が発生したときに遺品はすべて相続人の財産となり管理義務が生じると考えられるからです。
ただし、孤独死があった現場は遺体が放置されていることも多く、遺品整理を行う前に特殊清掃が必要なケースがほとんどです。
そのため、遺族が自分で遺品整理を行うことは現実的ではなく特殊清掃も請け負っている遺品整理業者に依頼するのが良いでしょう。
本記事では、孤独死した人の遺品整理を行う人物や流れ、注意点を詳しく解説します。
なお、家族や親族が亡くなると遺品整理以外にも様々な手続きが必要です。
家族や親族が亡くなったときの手続きの流れは、下記の記事でも解説しているのでご参考にしてください。
目次
1章 孤独死した人の遺品整理を行う人物
家族や親族が亡くなった場合、最も近しい親族が遺品整理を行うことが一般的です。
しかし、法律上は相続人にあたる人物が遺品整理を行う義務があるとされています。
相続人になる人物および優先順位は、下記のように法律で決められています。
常に相続人になる | 配偶者 |
第一順位 | 子供や孫 |
第二順位 | 親や祖父母 |
第三順位 | 兄弟姉妹や甥・姪 |
そのため、家族や親族が孤独死した場合は、故人の配偶者や子供、兄弟姉妹などが遺品整理を行います。
なお、遺品整理は義務なので担当することが決まった場合、放棄はできないのでご注意ください。
また、孤独死した人に身寄りがいない場合は、相続財産清算人が選任され、遺品整理や遺産の管理、処分を行います。
2章 孤独死した人の遺品整理の特徴
孤独死した人の遺品整理では、遺品のほとんどが処分されることも多いです。
というのも、故人が孤独死だった場合、腐敗臭が遺品に染み付いてしまい使えなくなってしまうこともあるからです。
孤独死した人の遺品整理の特徴を詳しく解説していきます。
2-1 遺品の8割は処分される
孤独死した人の遺品整理では、遺品の8割ほどが処分されることも多いです。
孤独死では亡くなってから時間が経過して遺体が発見されることも多く、遺品にも死体の腐敗臭が染み付いてしまうからです。
そのため、遺品のほとんどが使えない状態となり、処分されてしまいます。
2-2 特殊清掃が必要な場合もある
孤独死した人の遺品整理では、死体が放置されていたケースも多いため、特殊清掃が必要な可能性も高いです。
遺体を数日間放置しただけでも腐敗し、悪臭や雑菌が発生してしまいます。
遺族が遺体が放置された部屋の遺品整理や清掃を行うと、発生した臭いや細菌によって健康を害する恐れもあるのでご注意ください。
そのため、孤独死した人の遺品整理や部屋の清掃は遺族が行うのは現実的ではなく、特殊清掃も行える遺品整理業者に依頼するのがおすすめです。
孤独死した人の遺品整理を行うのが難しい場合や故人と長年疎遠であり関わりたくない場合は、相続放棄も選択肢のひとつです。
相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかった扱いになるので、遺品整理を行う必要がなくなります。
ただし、相続放棄をすると預貯金や不動産など故人のプラスの財産を一切受け継げなくなるのでご注意ください。
また、相続放棄をする際には自分が相続人になってから3ヶ月以内に家庭裁判所での申立てが必要です。
相続放棄を検討する場合は、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。
専門家であれば、相続放棄すべきかの判断や申立て手続きまで一括で対応可能です。
3章 孤独死した人の遺品整理をする流れ
本記事の2章で解説したように、孤独死した人の遺品整理は遺族が行うのではなく、遺品整理業者に依頼するのがおすすめです。
なお、そもそも「遺品整理をしたくない」「孤独死した人の相続に関わりたくない」といった場合は、相続放棄も検討するのが良いでしょう。
下記の流れで業者の選定や依頼をしていきましょう。
- 特殊清掃・遺品整理を行う業者を調べる
- 複数に業者に見積もりを依頼する
- 特殊清掃をしてもらう
- 遺品を形見と処分するものに分類する
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP① 特殊清掃・遺品整理を行う業者を調べる
親族が孤独死していた場合は、できるだけ早く特殊整理と遺品整理を行なっている業者を調べましょう。
遺体を放置する時間が長くなればなるほど、悪臭や細菌、ウジ虫の発生がひどくなってしまうからです。
また、特殊清掃と遺品整理はそれぞれ単独で依頼するのではなく、まとめて行なってくれる業者を見つけるのが良いでしょう。
特殊清掃と遺品整理を単独で依頼するよりも、セットで依頼した方が安くすむことが多いからです。
STEP② 複数に業者に見積もりを依頼する
特殊清掃と遺品整理を行なってくれる業者を見つけたら、見積もり依頼を出してみましょう。
遺品整理は業者によって費用が異なるので、複数の業者に見積もり依頼を出すのがおすすめです。
また、遺族が遠方に住んでいて現地に行くことが難しい場合は、業者に鍵を渡し立ち会いなしで現地調査や見積もりをしてもらえます。
STEP③ 特殊清掃をしてもらう
見積もり内容や金額に問題がなければ、遺品整理業者と契約を結びます。
契約成立後は特殊清掃から作業が開始され、具体的には下記の作業が行われます。
- 体液や血液の除去
- 残置物の撤去
- 消毒や消臭
特殊清掃にかかる日数は、遺体や建物の状態、構造によって大きく変わります。
また、状況によっては建物や部屋の修復、リフォームが必要な場合もあります。
STEP④ 遺品を形見と処分するものに分類する
- 特殊清掃中もしくは完了後に遺品整理が行われます。
遺品整理は、下記の流れで進みます。 - 遺品整理の時期・スケジュール・方法について業者と契約を結ぶ
- 遺品の仕分けをしてもらう
- 不用品の処分・買取をしてもらう
形見や貴重品などの仕分けに関しては、遺族の意見を尊重して行われます。
また、遺品の買取まで行っている業者であれば、買取可能な遺品をまとめて引き取ってもらえます。
4章 孤独死した人の特殊清掃・遺品整理を依頼したときの費用相場
孤独死した人の特殊清掃と遺品整理は、部屋の状態や間取りによって費用が大きく変わってきます。
依頼先の業者によって費用も異なるので一概にはいえませんが、数十万円はかかると考えておくと良いでしょう。
なお、故人が賃貸住宅に住んでおり原状回復やリフォームが必要な場合は、追加で費用がかかる場合もあります。
「こんなにかかると思わなかった」とトラブルにならないようにするためにも、複数の業者に見積もり依頼をすることをおすすめします。
5章 孤独死した人の遺品整理を行うときの注意点
親族が孤独死した場合、遺族であっても特殊清掃が完了するまでは部屋に入らないようにしましょう。
孤独死した人の遺品整理で注意すべき点は、下記の通りです。
- 特殊清掃が完了する前に部屋に立ち入らない
- 部屋に入るときにはマスク・手袋を装着する
- 勝手に窓を開けないようにする
- 遺品をきれいな状態で残す
それぞれ見ていきましょう。
5-1 特殊清掃が完了する前に部屋に立ち入らない
親族が孤独死した場合、故人が住んでいた部屋に特殊清掃完了前に立ち入るのはやめましょう。
遺体の腐敗臭や細菌などにより、体調を崩してしまう人もいるからです。
他にも、孤独死があった部屋は大量の血液や体液が流れていることも多く、目にしてしまうとトラウマになってしまう可能性もあります。
5-2 部屋に入るときにはマスク・手袋を装着する
特殊清掃が完了し、遺品の仕分けをする際にはマスクや手袋を装着しましょう。
特殊清掃が完了したとしても、家財や遺品には体液や雑菌がついている可能性があるからです。
感染症などのリスクを下げるためにも、必ず遺品に触れるときには手袋をご使用ください。
また、特殊清掃完了後でも腐敗臭が残る、雑菌が残留している可能性もあるので、マスクをしておくことも大切です。
5-3 勝手に窓を開けないようにする
孤独死のあった部屋では、勝手に窓を開けてしまわないようにご注意ください。
窓を開けて換気をしてしまうと、腐敗臭が外に流れ近隣に多大な迷惑をかけてしまうからです。
- 洗濯物に腐敗臭がついてしまった
- 腐敗臭のせいで具合が悪くなった
上記のように、苦情を言われる、損害賠償請求される恐れもあるので絶対にやめましょう。
なお、お風呂場で親族が孤独死していた場合、遺体を処分した後も自己判断でお風呂のお湯を流す、沸かすのは避けましょう。
遺体がなくても、皮膚や髪の毛、骨などの一部が残っており、排水溝を詰まらせてしまう恐れがあります。
5-4 遺品をきれいな状態で残す
孤独死した人の遺品を手元に残す場合は、きれいで状態の良いものだけを残しましょう。
孤独死をして遺体が何日も発見されないでいると、部屋中に細菌が舞っています。
遺品にも細菌が付着している可能性があるので、手元に残す場合は除菌スプレーなどで遺品を清潔にした上で保管することが大切です。
また、遺品を手元に残すか処分するか判断がつかない場合は、遺品整理業者に相談してみるのも良いでしょう。
6章 孤独死した人の相続手続きを行う流れ
孤独死した人の財産は、相続人や遺言書によって指定された受遺者が受け継ぎます。
また、相続人や受遺者は遺産の名義変更や相続税申告などの手続きを行う必要があります。
本章では、孤独死した人の相続手続きの流れについて詳しく見ていきましょう。
6-1 孤独死した人に家族・親族がいる場合
孤独死した人に家族や親族がいる場合は、相続人が遺産を受け継ぎ相続手続きを行います。
また、亡くなった人が遺言書を作成していた場合は、遺言書に指定されていた人物が相続手続きを行い遺産を受け継ぎます。
相続手続きの流れは、下記のように進めるのが効率的です。
- 遺言書の有無の調査・検認手続き
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
- 限定承認・相続放棄を検討
- 所得税の準確定申告
- 遺産分割協議の開始
- 遺産分割協議書の作成
- 預貯金・有価証券等の名義変更
- 不動産の名義変更
- 各種財産の名義変更
遺言書の有無の調査に関しては、本来であれば故人の自宅などを捜索するのですが、孤独死があった現場なので特殊清掃完了前に業者以外が立ち入るのは避けた方が良いでしょう。
そのため、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用有無の確認や公正証書遺言が保管されていないか公証役場に問い合わせてみるのがおすすめです。
それぞれの確認方法は、下記の通りです。
法務局による自筆証書遺言保管制度の確認方法 | |
手続きできる人 |
|
手続き先 | 全国各地の遺言書保管所 (法務局HPにて確認可能) |
費用 |
|
必要書類 |
【法定相続情報一覧図の写しがない場合】
|
公正証書遺言の作成・保管に関する確認方法 | |
手続きできる人 | 相続人(代理人でも可) |
手続き先 | 全国の公証役場(遺言書が作成された公証役場) |
費用 |
|
必要書類 |
|
孤独死した故人と長年疎遠であり、相続手続きを進めるのが難しい場合や遺産を受け取りたくない、関わりたくないとお考えの人は、相続手続きや相続放棄について司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。
6-2 孤独死した人に身寄りがいない場合
孤独死した人に身寄りがいない場合は、債権者や受遺者、特別縁故者などが財産を受け継ぎます。
相続人がいないケースで遺産を受け継ぐ人物、優先順位は、下記の通りです。
- 債権者、受遺者
- 特別縁故者
なお、特別縁故者もいない場合には、最終的に遺産は国のものになってしまいます。
亡くなった人に相続人がいない場合は、相続財産清算人を選定して相続手続きを進めてもらう必要があるのでご注意ください。
相続財産清算人とは、相続人がいない場合に残された遺産を管理して現金化し、債権者への配当や受遺者への分与、特別縁故者への分与などの具体的な手続きを行う人です。
なお、相続財産清算人とは令和5年の民法改正以降の名称であり、それまでは「相続財産管理人」という名称で呼ばれていました。
相続財産清算人を選任する方法、必要書類は、下記の通りです。
申立てできる人 | 利害関係者 検察官 |
申立て先 | 故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
費用 | 【申立て時にかかる費用】
【選任申立て後にかかる費用】 |
必要書類 |
|
まとめ
孤独死した人の遺品整理は相続人や最も近しい親族が行います。
ただし、孤独死があった現場は遺体による腐臭や細菌が発生しているため、遺品整理の前に特殊清掃が必要な場合がほとんどです。
相続人や親族が特殊清掃を行うことは現実的ではないので、孤独死を発見したら速やかに特殊清掃を行ってくれる業者を見つけましょう。
特殊清掃と遺品整理の両方に対応している業者に依頼すれば、セット割引などが適用される場合もあります。
なお、家族や親族が亡くなると様々な相続手続きが必要です。
故人と疎遠だったため相続手続きを行うことが難しいケースなどは、相続手続を司法書士や行政書士に依頼するのも良いでしょう。
グリーン司法書士法人では、相続手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。