- 改正空家対策推進特措法とは何か
- 改正空家対策推進特措法が制定された背景
- 空家の固定資産税が6倍にならないようにすべきこと
改正空家対策推進特措法とは、2023年12月に施行された管理の行き届いていない空き家を適切に管理することを目的とした法律です。
改正空家対策推進特措法が施行される前は、管理状態が特に悪いとされる「特定空き家」に指定されてしまうと、固定資産税の軽減措置が適用されず最大6倍になってしまいました。
しかし、改正空家対策推進特措法が施行された後は特定空き家だけでなく、管理不全空き家と指定されると固定資産税が6倍になってしまうので注意しなければなりません。
改正空家対策推進特措法の施行後はより一層空き家の管理状態に気を配る必要があります。
また、今後も活用、使用予定がない空き家をお持ちの人や将来的に空き家を相続しそうな人は空き家の売却や処分についても検討しなければなりません。
本記事では、改正空家対策推進特措法とは何か、設立された背景や管理不全空き家として指定されないようにする方法を解説します。
空き家の管理を疎かにするリスクは、下記の記事で詳しく紹介しているので合わせてお読みください。
目次
1章 改正空家対策推進特措法とは
改正空家対策推進特措法とは、2023年12月から施行された法律であり、空き家を適切に管理するために作られました。
改正空家対策推進特措法の内容は、主に下記の通りです。
- 管理不全空き家と指定された空き家の固定資産税が最大6倍になる
- 管理不全空き家と指定された空き家の所有者に対して市町村が指導や勧告を行う
- 行政代執行が行われた場合の費用は確定判決なしで徴収される
- 市町村が空き家の建て替えや用地変更を促進させる
上記のように、改正空家対策推進特措法では行政の指導や勧告が行われる空き家や固定資産税の軽減措置の特例が適用されない空き家の対象が増えるのが特徴です。
改正空家対策推進特措法の施行前後では、下記のように適用範囲が変わります。
施行前 | 特定空き家と指定された空き家が対象になる |
施行後 | 特定空き家・管理不全空き家と指定された空き家が対象になる |
そして、特定空き家と管理不全空き家の違いは、下記の通りです。
- 特定空き家:放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある空き家
- 管理不全空き家:このまま放っておくと特定空き家になりそうな空き家
上記のように、改正空家対策推進特措法では特定空き家だけでなく管理不全空き家まで指導や勧告、固定資産税の負担増の対象となるので、より一層空き家の管理に気を配る必要があります。
そもそも、なぜ改正空家対策推進特措法が制定されたのでしょうか。
次の章では、改正空家対策推進特措法が制定された背景について詳しく見ていきましょう。
2章 改正空家対策推進特措法が制定された背景
改正空家対策推進特措法が制定された理由は、空き家の数が年々増え続けており、管理状態が悪い空き家も同時に増え続けているからです。
日本では少子高齢化が進んでおり、人口も減少傾向にあります。
また、都市部の人口集中や田舎の過疎化が進み、地方にある空き家の数はどんどん増え続けているのが現状です。
管理状態が悪い空き家は、建物や塀が倒壊するリスクや雑草や害虫、害獣が問題になるリスク、周辺住民とのトラブルが発生するリスクがあります。
こうした空き家問題を少しでも解消するために改正空家対策推進特措法が設立されました。
3章 空き家の固定資産税が6倍にならないようにすべきこと
改正空家対策推進特措法後は、空き家の管理状態をより一層気をつけなければなりません。
使用、活用予定がない空き家でも定期的に清掃や風通しなどをする必要があります。
同時に、使用、活用予定がない空き家を所有している場合は、売却や処分も検討しなければなりません。
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 利用・活用予定がない空き家でも適切に管理する
利用や活用予定がない空き家でも放置せずに、適切な管理を続けましょう。
改正空家対策推進特措法が施行された2023年12月以降は、特定空き家だけでなく管理不全空き家として指定されるだけでも固定資産税が最大6倍になる恐れがあるからです。
実家を相続したケースなど空き家が自宅から離れている場合は、空き家管理サービスなどの利用を検討しても良いでしょう。
3-2 利用・活用予定がない空き家は処分を検討する
空き家の適切な管理を続けるだけではなく、今後も空き家を活用する予定がないのであれば、売却など処分を検討しましょう。
日本は少子高齢化や田舎の過疎化が進んでいるため、現時点で使用していない空き家は今後も価値が下がり続ける可能性が高いからです。
また、空き家などの不動産は相続財産に含まれるため、自分が亡くなった後は子供や孫など次世代に受け継がれます。
活用できず持て余している空き家を次世代に遺して負担をかけるのが正解なのか、自分の代で空き家を処分できないかを考えおくと良いでしょう。
次の章では、使用や活用が難しい空き家を処分する方法を解説していきます。
4章 利用・活用予定がない空き家を処分する方法
すでに自宅を所有している、空き家が田舎にあり借り手も見つからないなどの事情がある場合、管理コストをこれ以上負担しないためにも空き家の処分を検討しても良いでしょう。
空き家を処分するには、主に下記の方法があります。
処分方法 | おすすめな人の特徴 |
相続放棄する |
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相続土地国庫帰属制度を活用する |
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空き家を売却する | 空き家の状態や土地の立地が良く、買い手が見つかりそう |
空き家を解体して更地を活用・売却する |
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空き家・土地を寄付・贈与する |
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それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 相続放棄する
家族や親族が亡くなり空き家を相続した場合、相続放棄を検討しても良いでしょう。
相続放棄とは、亡くなった人のプラスの財産もマイナスの財産も一切受け継がなくする制度です。
相続放棄をすれば、空き家も相続せずにすむので固定資産税などの管理コストを負担しなくてすみます。
ただし、一部の財産のみを相続放棄することはできないので、空き家以外にも預貯金や株式などの遺産がある場合など、相続放棄しない方が良いケースもあるでしょう。
相続放棄をする際の注意点は、主に下記の通りです。
- 自分が相続人になってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てしなければならない
- 相続放棄すると、すべての遺産を相続できなくなる
- 相続放棄が受理されると、原則として取り消せない
- 遺産を使用、処分すると相続放棄が認められなくなる
- 一部のケースでは、相続放棄後も空き家の管理義務が残ってしまう
- 相続放棄すると、次の順位の相続人に迷惑がかかる場合がある
相続放棄後の遺産の管理義務については「相続放棄時に相続財産を現に占有している場合にのみ保存義務が発生する」とされています。
例えば、相続発生時に亡くなった人の自宅に住んでいて、その後引っ越しをして相続放棄をするケースなどでは空き家の管理義務が残ってしまう恐れがあります。
相続放棄後の空き家の管理義務や相続放棄する際の遺品整理や手続きのススメ型などは、自分で判断するのは難しいことが多いです。
そのため、自己判断するのではなく相続放棄を検討している段階で司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
4-2 相続土地国庫帰属制度を活用する
亡くなった人が預貯金や株式など空き家以外の遺産も所有していた場合や相続放棄の期限を過ぎてしまった場合は、相続土地国庫帰属制度を利用するのもおすすめです。
相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈によって取得したいらない土地を国に返還できる制度です。
相続土地国庫帰属制度は相続放棄と異なり、預貯金や株式など他の遺産を受け継いだ上でいらない土地のみ手放せます。
ただし、相続土地国庫帰属制度を利用する際には、下記の点に注意しなければなりません。
- 利用できる土地には要件が定められており、すべての土地を利用できるわけではない
- 制度を利用する場合は空き家を解体して更地にする必要がある
- 制度を利用するときには20万円の負担金が発生する
- 制度を利用する前には相続登記をすませておく必要がある
相続土地国庫帰属制度は更地に対して適用できるので、空き家および土地を手放したい場合は、空き家を解体し更地にした後に制度を活用する必要があります。
また、宅地の場合は負担金20万円がかかるので、申請にあたり用意しておきましょう。
4-3 空き家を売却する
築年数が新しく空き家の状態が良い場合や立地が良い場合は、空き家の売却も検討してみましょう。
売却できれば、空き家および土地を手放すことができますし、売却代金も受け取れます。
ただし、不動産売買は買い手が見つからないと成立しないので、空き家が田舎にある場合や古くて状態が悪い場合は売却しにくい傾向があります。
まずは、所有している空き家は売却できそうかどうか、地域の不動産会社に相談してみるのが良いでしょう。
相続した不動産を活用、売却する際には、故人から相続人へ名義変更手続きをすませなければなりません。
不動産の名義変更手続きは、法務局にて相続登記の申請を行う必要があります。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士に数万円程度で依頼も可能です。
グリーン司法書士法人でも相続登記に関する相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
4-4 空き家を解体して更地を活用・売却する
空き家の立地は良いものの建物の築年数が古い場合は、空き家を解体して更地にした方が活用や売却がしやすい場合があります。
解体費用はかかってしまうものの建物付の状態で買い手を探すよりも早く売却できる可能性もあるでしょう。
ただし、空き家を解体するのであれば、更地の方が売却可能性が上がるのかよく検討しておくことを強くおすすめします。
空き家の築年数が古く建築基準法の改正前に建てられていた場合は、その土地が再建築不可になっている可能性もあるからです。
再建築不可になっているにもかかわらず、空き家を解体して更地にしてしまうと、その土地を購入したとしても新たに建物を建てることはできません。
結果として、土地の需要が下がり解体したとしても買い手が見つからない恐れがあります。
このような事態を防ぐために、解体前には不動産会社に相談し土地の需要を確認しておきましょう。
4-5 空き家・土地を寄付・贈与する
空き家や土地の買い手がどうしても見つからない場合は、空き家や土地の寄付、贈与を検討しても良いでしょう。
例えば、空き家の隣家が土地をもらってくれる場合もあります。
他には、土地の立地によっては企業や自治体が土地の寄付を受け付けてくれる場合もあるでしょう。
ただし、空き家や土地の贈与をすると贈与を受けた側に贈与税がかかりますし、名義変更などの手間も発生します。
また、そもそもの問題として土地の利用価値が低い場合は贈与や寄付の相手が見つからない可能性もあり、寄付・贈与したくてもできないといった状況もあり得ます。
まとめ
改正空家対策推進特措法が施行された後は、特定空き家だけでなく管理不全空き家と指定された場合も行政指導の対象になりますし、固定資産税が最大6倍になる恐れがあるのでご注意ください。
そして、日本は少子高齢化や田舎の過疎化などが進んでいるため、現時点で活用や売却が難しい空き家を所有していても、活用方法や売却先が見つかる可能性は低いと言わざるをえません。
そのため、使用・活用予定のない空き家を所有している場合は、自分の代で売却や処分も検討しましょう。
相続によって取得した土地は相続土地国庫帰属制度を利用すれば、手放せる可能性があります。
また、不動産の活用方法には様々なものがあるので、不動産会社に相談してみることもおすすめします。
相続不動産の活用、売却をする際には、事前に相続登記をすませておく必要もあるので早めに手続きをしておきましょう。
グリーン司法書士法人では、相続登記についての相談をお受けしています。
初回相談は無料ですし、グループ会社には不動産会社もあるので、相続不動産の活用についての相談も可能です。