相続財産は田舎にあって資産価値のない土地など「いらない土地」も含まれます。
いわゆる「負動産」というものです。
いらない土地をそのまま相続してしまうと、固定資産税などの管理コストがかかり続ける、自分が亡くなり相続が発生したときに子供や孫に迷惑をかけてしまう恐れがあります。
そのため、亡くなった人の遺産にいらない土地が含まれる場合は、放置せず適切な対処をすることが肝心です。
本記事では、いらない土地を相続した場合の対処法や処分方法について解説します。
不動産の相続手続きについては、下記の記事で詳しく解説しているので合わせてお読みください。
目次
1章 いらない土地を相続してしまうと放棄はできない
「田舎で使用用途がない土地」「需要が少なく売却が難しい土地」などのいらない土地を相続してしまうと、扱いに困ってしまうこともあるでしょう。
「いらない土地だけ放棄して残りの預貯金や株式は相続したい」「田舎の土地は放棄して都心の土地だけ受け継ぎたい」と考える人もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、いらない土地だけ相続放棄することや一度相続してしまったいらない土地の所有権を後から放棄することはできません。
自治体や法人へ寄付することも不可能ではありませんが、そもそも需要のない土地の場合、寄付であっても受け取ってもらえる可能性は低いでしょう。
「別に損するわけじゃないし」と、安易に相続してしまうことによって、その後固定資産税を支払ったり、管理をしなければいけなかったりと、様々なリスクや手間を背負うことになるかもしれません。
次章では、いらない土地を放置してしまうリスクを詳しく見ていきましょう。
2章 相続したいらない土地の手続きを放置するリスク
先ほどの章で解説したように、相続したいらない土地を放置してしまうと、固定資産税がかかり続けてしまいまうのでご注意ください。
また、2024年4月以降は相続登記が義務化されており、名義変更手続きを放置していると10万円以下の過料が発生する恐れがあります。
相続したいらない土地の名義変更手続きや管理を放置するリスクは、主に下記の通りです。
- 2024年4月からは相続登記が義務化される
- 相続人がどんどん増えてしまう
- 相続人が認知症になり遺産分割協議や名義変更ができなくなる
- 相続した不動産を活用・売却できなくなる
- 不動産の権利を第三者に主張できなくなる
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 2024年4月からは相続登記が義務化される
2024年4月からは相続登記が義務化され、相続開始から3年以内に登記申請を行わないと、10万円以下の過料が発生する恐れがあります。
そのため、いらない土地であっても相続後に名義変更手続きを放置してしまうと余計な費用がかかる恐れがあるのでご注意ください。
相続した土地の名義変更は法務局にて登記申請を行う必要があります。
相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士に数万円程度で依頼も可能です。
グリーン司法書士法人でも、相続登記についての相談をお受けしているので、お気軽にお問合せください。
2-2 相続人がどんどん増えてしまう
いらない土地を相続した後に手続きや管理を放置していると、相続人も亡くなり次の相続が発生してしまう恐れがあります。
親から子、子から孫へと土地が代々受け継がれていくうちに、権利関係者が雪だるま式に増えてしまう恐れもあるのでご注意ください。
土地を共有状態で受け継いでしまうと、共有名義人が全員合意しないと活用や売却を行えない可能性もあります。
上記のように権利関係者が増えて、子供や孫などに迷惑がかからないようにするためにも、相続したいらない土地は早めに対処するのが良いでしょう。
2-3 相続人が認知症になり遺産分割協議や名義変更ができなくなる
相続したいらない土地の名義変更を放置しているうちに、相続人の1人が認知症になり遺産分割協議や相続手続きを進められなくなってしまう恐れがあります。
認知症になり判断能力を失った人は、相続手続きを行うことができません。
認知症になった相続人がいる場合は、成年後見人を選任し代わりに相続手続きを進めてもらう必要があります。
しかし、成年後見人を選任申立てには数ヶ月程度かかることが多いですし、一度成年後見人が選ばれると認知症になった人が亡くなるまで後見業務が続きます。
このように、成年後見制度にはデメリットもあるので、相続人の中に高齢者がいる場合は速やかに相続手続きを行うことが重要です。
2-4 相続した不動産を活用・売却できなくなる
相続したいらない土地の名義変更を放置していると、いつまでも活用や売却ができなくなります。
相続した土地の活用や売却をする際には、事前に相続登記をすませておかなければならないからです。
また、不動産を共有持分で相続してしまうと、共有名義人全員が合意しないと活用や売却ができなくなります。
売却に反対する相続人がいると、いらない土地であっても売却できず、他の相続人も代金を受け取れなくなってしまいます。
そのため、出来る限り共有持分での相続は避けた方が良いでしょう。
相続に強い司法書士であれば、登記申請だけでなく遺産分割方法の提案も可能ですので、相談することもご検討ください。
2-5 不動産の権利を第三者に主張できなくなる
遺産分割協議をして「不動産のすべてを取得する権利」を得ても、相続登記をしないと「所有権」を確保できたことにはなりません。
そのため、登記申請を放置していると他の相続人が自分の相続分を登記し、第三者に売却してしまう恐れもあります。
具体例を見てみましょう。
- 相続が発生、AさんとBさんは遺産分割協議を行い、Bさんが不動産をすべて相続すると決定した
- Aさんは、不動産の持分(1/2)を亡くなった人から自分へと名義変更してしまう
- AさんはCさんに不動産の持分(1/2)を売却してしまう
上記の事態では、遺産分割協議で土地をすべて受け継ぐと決まったBさんが土地を購入したCさんに対して所有権を主張することはできません。
そのため、遺産分割協議を行い土地を受け継ぐことが決まったら、速やかに登記申請を行いましょう。
3章 いらない土地を処分する4つの方法
いらない土地が遺産に含まれている場合は、相続放棄や土地の売却、寄付などを検討しましょう。
いらない土地を処分する方法は、主に下記の通りです。
- 相続放棄をする
- 土地を売却する
- 土地を寄付・贈与する
- 相続土地国庫帰属制度を活用する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 相続放棄をする
亡くなった人がいらない土地以外に資産を持っていなかった場合や亡くなった人が借金をしていた場合は、相続放棄を検討しましょう。
相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しなくなる手続きです。
ただし、相続放棄をすると預貯金や他の不動産、株式なども受け継げなくなるので、他に受け継ぎたい遺産がある人には不向きです。
また、相続放棄をする際には下記の点に注意しなければなりません。
- 相続放棄をする際には家庭裁判所での申立てが必要である
- 相続放棄は「自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内」に行うと期限が決まっている
- 次の順位の相続人に相続権が移り迷惑がかかる恐れがある
- 遺産を勝手に使用、処分すると相続放棄が認められない恐れがある
相続放棄の申立て方法および必要書類は、下記の通りです。
提出先 | 故人の住所地を管轄する家庭裁判所 |
手続きする人 | 相続放棄する人(または法定代理人) |
手数料の目安 |
|
必要なもの |
|
3-2 土地を売却する
自分は使用する予定がない土地であっても、資産価値があり買い手が見つかりそうであれば売却してしまうのもおすすめです。
相続した土地を売却すれば、売却代金を受け取れますし将来にわたり固定資産税などの管理コストがかからなくなります。
土地に関しては、立地や広さにもよりますが建物が建っていなければ、比較的買い手が付きやすい傾向にあります。
一方、建物が建っていて、その建物が古い場合にはなかなか買い手がつきにくい可能性があります。
とはいえ、建物を取り壊し更地にしたところで買い手が見つからない可能性もあるので、自己判断で建物を取り壊すのは避けた方が良いでしょう。
相続した土地が売れるかどうか判断したいのであれば、地域の不動産会社に相談してみることをおすすめします。
また、相続した土地を売却をする際には事前に相続登記を済ませなければなりません。
相続不動産の売却については、下記の記事で詳しく解説しているので合わせてお読みください。
3-3 土地を寄付・贈与する
買い手が見つからない場合は、無償で引き取ってくれる相手がいないか探してみましょう。
住宅地であれば、隣家が土地をもらってくれる可能性もありますし、田舎にある土地は自治体や企業などが寄付を受け付けてくれる場合もあるからです。
ただし、すべての土地を寄付できるわけではなく、田舎にあって資産価値が低い土地や建物など建築物が残っている場合は寄付したくてもできない可能性があります。
また、土地を法人や自治体などの団体に寄付すると、譲渡所得税や住民税が発生する可能性がある点にもご注意ください。
3-4 相続土地国庫帰属制度を活用する
相続土地国庫帰属制度を利用すれば、相続したいらない土地だけを国に返還できます。
相続放棄と異なり、相続したいらない土地だけを手放せるのがメリットです。
一方で、相続土地国庫帰属制度を利用する際には下記の点に注意しましょう。
- 利用できる土地の要件が決まっており、すべての土地で利用できるわけではない
- 負担金を納めなければならない(住宅地であれば20万円)
- 事前に相続登記をすませておく必要がある
活用も売却も難しく、次世代に遺しても仕方ないと考える土地を相続した場合は、相続土地国庫帰属制度を利用しても良いでしょう。
相続土地国庫帰属制度を利用する際には事前に登記申請を済ませておく必要があるので、まずは相続登記の手続きを司法書士に相談し、合わせて相続土地国庫帰属制度を利用すべきか相談すると良いでしょう。
まとめ
相続放棄はすべての遺産を放棄する必要があるため、いらない土地のみを手放すことはできません。
いらない土地だけを手放したい場合は、相続土地国庫帰属制度を利用する必要があります。
ただし、相続土地国庫帰属制度は利用できる土地の要件も決まっており、負担金も納めなければなりません。
そのため、相続した土地の活用が難しい、いらないと思っても、まずは本当に活用や売却が難しいのか専門家に相談してみるのが良いでしょう。
相続した土地の活用や売却をする際には、事前に名義変更を済ませておく必要があるのでご注意ください。
相続に強い司法書士であれば、登記申請とあわせて相続不動産の活用や売却についても相談可能です。
グリーン司法書士法人では、相続登記についての相談をお受けしています。
初回相談は無料ですし、関連会社には不動産会社もありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。