実家を相続したものの使い道がなく、売却して手放そうとするケースも多いです。
しかし、実家の売却方法や金額、タイミングによっては「こんなはずじゃなかった」と売却を後悔するケースもあります。
実家売却時に後悔しないようにするには、売却時にかかる費用を把握しておく、信頼できる不動産会社に売却を依頼するなどの対策をしておきましょう。
また、相続した実家を売却する際には亡くなった人から相続人へ実家の名義変更手続きを行う必要があります。
実家の名義変更手続きは自分で行うこともできますが、司法書士への依頼も可能です。
本記事では、実家を売却して後悔するケースや対処法を解説します。
相続した実家の活用方法については、下記の記事もご参考にしてください。
1章 実家の売却時に後悔するケース
実家を売却して後悔する原因は複数あり、売却後に多額の税金がかかる、希望金額で実家が売却できなかったなどがあげられます。
実家を売却して後悔するケースは、主に下記の6つです。
- 相続後に売却して多額の税金がかかってしまう
- 実家売却に費用と時間がかかってしまう
- 相場や希望金額より安く売却してしまう
- 実家売却を依頼する不動産会社選びに失敗してしまう
- 実家売却に罪悪感や喪失感を持ってしまう
- 相続人間で実家売却について意見が分かれてしまう
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 相続後に売却して多額の税金がかかってしまう
実家を売却すると、利益に対して20.315%から39.63%の譲渡所得税や住民税がかかります。
不動産の売却益は「売却代金−(取得費+売却費用)」で計算可能です。
相続した不動産を売却すると下記の理由により、売却益が高額になってしまう場合があるため注意しなければなりません。
- 故人が若いときに購入し所有している間に不動産の価値が高くなった
- 購入から年数が経っていて不動産の取得費がわからない
なお、取得費が不明な不動産は、下記の方法で調査、計算可能です。
- 購入時の売買関係書類を確認する
- 取得費を間接的に証明出来る書類を用意する
- 市街地価格指数を利用して取得費を計算する
- 土地の取得費がわからないときには概算取得費で計算する
上記のように、どうしても取得費がわからない不動産を売却する際には売却金額の5%を取得費として譲渡所得税や住民税を計算できます。
しかし、概算取得費を用いると売却代金の約9割が譲渡所得になってしまい、税金が高額になる恐れがあります。
そのため、相続した実家を売却する際には取得費に関する書類や証明書を用意するのがおすすめです。
1-2 実家売却に費用と時間がかかってしまう
相続した実家を売却する際に想定以上の費用と時間がかかってしまい後悔する人もいます。
不動産を売却する際には半年から1年程度かかることが多く、売却費用は売却代金の4〜6%程度です。
しかし、相続した実家を売却する際には通常の売却活動に加え、下記の相続手続きも行わなければなりません。
- 相続人調査をする
- 相続人全員で遺産分割協議を行う
- 相続登記をする
- 実家を査定する
- 必要書類を集める
- 売却する業者を決める
- 実家の査定・売却価格を決定する
- 仲介契約を締結して売りに出す
- 売買契約を締結する
- 物件の引き渡し・登記する
相続トラブルがなくスムーズに手続きがすんだ場合でも、実家の相続手続きには数ヶ月から半年近くかかってしまうことも珍しくありません。
また実家を誰が相続するかで揉めた場合や共有相続した実家の売却に合意しなかった相続人がいる場合、さらに売却まで時間がかかるでしょう。
売却までに時間がかかると、実家の固定資産税などの維持費がかさんでしまいます。
1-3 相場や希望金額より安く売却してしまう
相続した実家をできるだけ早く売却しようとして、希望金額や相場より低い金額で売ってしまうケースもあります。
特に相続財産のほとんどを実家の不動産が占めていて、相続税の納税資金を確保するために実家を売却しようとすると、焦って売却しやすいです。
また、相続した実家を空き家のまま放置してしまい、不動産会社による査定や購入希望者の内見時に悪い印象を与えてしまう可能性もあります。
相続した実家をできるだけ高値で売却したいのであれば、売却先が決まるまで手入れを怠らないようにしましょう。
1-4 実家売却を依頼する不動産会社選びに失敗してしまう
不動産を売却する際には、信頼できる不動産会社や担当者を見つけることが非常に大切です。
不動産会社や担当者選びを間違えてしまうと、販売実績やノウハウが少なく売却までに時間がかかる恐れがあります。
売却活動を成功させるために、下記の不動産会社は選ばない方が良いでしょう。
- 実家の近隣エリアや類似物件の販売実績が少ない不動産会社
- 根拠のない査定額を出す不動産会社
1-5 実家売却に罪悪感や喪失感を持ってしまう
相続する実家を売却することに罪悪感や喪失感を持つ相続人も一定数います。
亡くなった人や家族が住んでいた実家を失うと、思い出も失ってしまう気持ちになる人もいますし、離れて住む家族が集まる場所を失ってしまうからです。
1-6 相続人間で実家売却について意見が分かれてしまう
相続人同士で実家を売却したい人と残したい人で意見が割れてしまい、売却活動に進めないケースもあります。
亡くなった人が遺言書を用意していない場合、遺された実家は相続人全員の共有財産となります。
共有財産を売却するには相続人全員の合意が必要なため、売却に反対する相続人がいると売却できません。
また相続人全員が売却に合意したとしても、売却金額や時期に合意せずに、契約成立まで時間がかかる場合もあります。
2章 実家を売却しないで放置するリスク
実家売却で後悔したくないからといって、実家を相続したまま放置してしまうと固定資産税が増額されるリスクや売却が難しくなるリスがあります。
実家を売却せず放置するリスクは、下記の通りです。
- 固定資産税が最大6倍になる恐れがある
- 建物が傷み売却しにくくなる恐れがある
- 近隣住民や環境に悪影響を及ぼす恐れがある
- 所有者が認知症になると売却できなくなる
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 固定資産税が最大6倍になる恐れがある
実家が空き家になり誰も住んでいない状態で放置し続けると、固定資産税が最大6倍になる恐れがあります。
空き家が荒れ果ててしまい「特定空き家」として指定されると、固定資産税の住宅用地の減額特例を適用できなくなってしまうからです。
住宅が建っている土地は「住宅用地」として200㎡以下の部分に関しては固定資産税の金額が6分の1になります。
そして管理状態が悪く倒壊や火災リスクがあり特定空き家になると、住宅用地の減額特例を適用できず固定資産税の金額が上がってしまいます。
2-2 建物が傷み売却しにくくなる恐れがある
人が住んでいない実家は傷みやすく、相続後に修繕などの必要なケアを怠っていると、価値が下がり実家を売却しにくくなってしまいます。
売却が難しくなった実家をそのまま放置して、さらに価値が下がってしまう恐れもあります。
誰も住まなくなった実家を放置し状態が悪くなると、固定資産税の金額が上がる可能性もあり、売却もどんどん難しくなるのでご注意ください。
2-3 近隣住民や環境に悪影響を及ぼす恐れがある
相続した実家を空き家としてそのまま放置してしまうと、近隣住民や周辺環境に悪影響を及ぼす恐れがあります。
空き家を放置するリスクは、下記の通りです。
- 放火や犯罪に使用されるリスク
- 災害時に倒壊するリスク
- 周辺環境を悪化させ、地価を低下させるリスク
例えば災害時に実家が倒壊し、通行人や近隣住民をケガさせた場合は損害賠償請求される可能性もあります。
2-4 所有者が認知症になると売却できなくなる
実家の持ち主が亡くなり配偶者が相続した場合、実家を売却しないうちに遺された配偶者が認知症になってしまうと、実家を売却できなくなってしまいます。
認知症になり判断能力を失うと、実家の売却手続きなどの契約行為を行えなくなるからです。
実家を相続した配偶者が認知症になり判断能力を失い実家売却ができなくなると、下記の事態になる恐れもあります。
- 施設入居費用に実家の売却代金を充てられない
- 施設入居後も実家を売却できず、固定資産税などのコストがかかり続ける
最悪の場合、実家を受け継いだ配偶者が亡くなるまで実家を手放せない場合もあります。
3章 実家売却で後悔しないようにする方法
実家売却時には売却金額やタイミングなどで後悔しなくてすむように、下記の方法で対策する必要があります。
- 売却時にかかる費用や税金を把握しておく
- 相続した実家の名義変更手続きをすませておく
- 複数の不動産会社で査定してもらう
- 信頼できる不動産会社を選ぶ
- 実家が空き家になっても管理を続けておく
- 相続人間で実家をどうするか意見をすり合わせる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 売却時にかかる費用や税金を把握しておく
実家売却で後悔しないようにするには、売却費用や譲渡所得税がいくらくらいかかるのか、売却前に把握しておきましょう。
不動産を売却する際には、不動産会社に払う仲介手数料や印紙税などがかかります。
また、不動産を売却して利益が発生した際には譲渡所得税や住民税がかかります。
さらに、相続した実家を売却する際には事前に亡くなった人から相続人へ名義変更手続きを行わなければなりません。
不動産の名義変更手続き時には「相続した不動産の固定資産税評価額×0.4%」の登録免許税がかかります。
例えば、3,000万円の実家の名義変更をした場合の登録免許税は12万円です。
売却費用や税金は支払うタイミングも異なるので、いつまでにどの費用を用意しなければならないのか事前に確認し資金計画を立てておきましょう。
3-2 相続した実家の名義変更手続きをすませておく
相続した実家を売却する際には、亡くなった人から相続人に不動産の名義変更手続きを行う必要があります。
相続した実家の名義変更には、法務局にて相続登記の申請が必要です。
相続登記は必要書類の収集や登記申請書の作成に時間がかかります。
そのため、亡くなった人が遺言書などを用意していなかった場合は書類の収集や作成だけで数ヶ月かかることも珍しくありません。
売却タイミングを逃さないようにするためにも、実家の名義変更手続きは早めにすませるのがおすすめです。
これまで相続登記は義務化されておらず、相続人の意思によって行うとされていました。
しかし、2024年4月からは相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科される恐れがあります。
なお、相続登記の義務化は過去に発生した相続においても適用されます。
そのため、まだ実家の相続登記がおすみでない人は早めに手続きをすませましょう。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士に依頼すれば数万円程度で代行可能です。
グリーン司法書士法人でも相続登記に関する相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
3-3 複数の不動産会社で査定してもらう
相続した実家を売却する際には、複数の不動産会社で査定してもらいましょう。
査定結果は不動産会社ごとに異なるため、複数社に相見積もりしてもらえば、売却計画を立てやすくなります。
複数の不動産会社に査定依頼を出すことで、極端に査定結果を高くして仲介契約を結ぼうとする不動産会社を見分けられるのもメリットです。
3-4 信頼できる不動産会社を選ぶ
相続した実家を売却する際には、不動産会社や担当者選びにこだわりましょう。
不動産売却で売主が自分で行う売却活動は少なく、広告掲載や購入希望者への物件紹介などをメインで行うのは仲介してくれる不動産会社だからです。
そのため、販売実績が豊富で親身になってくれる不動産会社や担当者に売却を依頼することが非常に大切です。
不動産会社や担当者を選ぶ際には、下記の基準を意識しましょう。
- 担当者が親身になってくれる
- 近隣地域や類似物件の販売実績が豊富である
- 売却成立に向けてアドバイスをくれる
- サポート体制が豊富である
グリーン司法書士法人ではグループ会社に不動産会社もあります。
相続した不動産の活用、売却事例が豊富ですので、お気軽にお問い合わせください。
3-5 実家が空き家になっても管理を続けておく
相続した実家に住む予定がなく売却したい場合も、売買が成立するまで管理を続けておきましょう。
人が住んでいない空き家は傷みやすく放置してしまうと、建物の価値が下がってしまうからです。
また、購入希望者が内見に来た歳に好印象を持つように建物の管理だけでなく雑草を抜くなど土地の管理もしておきましょう。
相続後に空き家の管理をする際にあわせて遺品整理や形見分けも行うと、売却前に慌てて故人の遺品を整理する必要がなくなります。
3-6 相続人間で実家をどうするか意見をすり合わせる
相続した実家を売却するのか活用するのかを相続人同士で話し合い、意見を擦り合わせておきましょう。
可能であれば、持ち主が亡くなる前に実家の処分や受け継ぐ人物について決定しておくと、相続手続きの手間やトラブル発生のリスクを軽減できます。
万が一、当事者同士で意見が分かれてしまい解決が難しいのであれば、相続に詳しい司法書士や不動産売却に詳しい専門家に相談するのがおすすめです。
司法書士であれば、実家や相続人の状況に最適な遺産分割案や相続対策を提案できます。
グリーン司法書士法人では、相続対策や遺産分割協議に関する相談をお受けしています。
グループ会社には不動産会社もありますので、相続手続きの相談から実家の処分や活用まで一括で対応可能です。
まとめ
相続した実家を売却して後悔しないようにするには、売却前に計画を立てておくことが大切です。
査定依頼を出して実家がいくらくらいで売却できそうか、売却費用や税金はいくらくらいかかるのかなどをシミュレーションしておきましょう。
また、実家を売却する際には複数の会社に査定依頼を出すのがおすすめです。
査定結果は不動産会社ごとに異なるので、相見積もりを取ればより正確な査定結果がわかります。
なお相続した実家を売却する際には、亡くなった人から相続人へ名義変更手続きをすませておく必要があります。
不動産の名義変更手続きは相続人も行えますが、司法書士に数万円程度で依頼可能です。
グリーン司法書士法人では、相続登記を始めとする相続手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料ですし、グループ会社に不動産会社もありますので、相続した不動産の売却や活用の提案まで可能です。