
- 故人が所有していたNISA口座は相続時にどのように扱われるのか
- 故人のNISA口座の相続手続きの流れ
- NISA口座で保有していた上場株式等の相続税評価額を算出する方法
近年、資産形成手段として多くの方が活用しているNISA口座は運用益や配当金が非課税になるメリットがあります。
ただし、NISA口座の非課税措置は口座名義人が死亡した時点で終了し、その後に発生した含み益や配当金については所得税や住民税が課せられます。
NISA口座を利用して資産運用をする際には、相続時の取り扱いについても理解しておくと良いでしょう。
本記事では、NISA口座に関する相続の基本的な仕組みから手続きの流れ、相続税評価額の算出方法について解説します。
1章 NISA口座の相続の取り扱い
NISA(少額投資非課税制度)は、運用益が非課税となる制度として多くの個人投資家に利用されています。
しかし、NISA口座の名義人が亡くなった場合の取り扱いは複雑なのでご注意ください。
NISA口座の相続の取り扱いは、以下の通りです。
- NISA口座で保有していた上場株式等も相続財産に含まれる
- NISA口座の名義人が亡くなった時点で非課税措置は終了する
- 故人のNISA口座から相続人のNISA口座に金融商品を移管することはできない
- NISA口座で保有していた上場株式等の取得価額は相続発生日の時価となる
- 2024年から始まった新NISAの取り扱いもほぼ同じである
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 NISA口座で保有していた上場株式等も相続財産に含まれる
故人がNISA口座で保有していた上場株式や投資信託も、相続財産に含まれます。
故人が遺言書を用意していなかった場合、遺産分割協議を行い誰が上場株式や投資信託を受け継ぐか決める必要がありますし、相続税の課税対象にも含まれます。
1-2 NISA口座の名義人が亡くなった時点で非課税措置は終了する
口座名義人が亡くなった時点で、NISAの最大のメリットである非課税措置は終了します。
つまり、相続が発生してから、NISA口座内の金融商品に値上がり益や配当などが発生した場合には、所得税や住民税などが発生します。
1-3 故人のNISA口座から相続人のNISA口座に金融商品を移管することはできない
NISA口座は年々普及しつつあり、故人だけでなく相続人もNISA口座を開設している場合もあるでしょう。
しかし、故人のNISA口座から相続人のNISA口座に金融商品を移管することはできないのでご注意ください。
相続人自身のNISA口座の投資枠が余っていたとしても、NISA口座に移すことはできません。
1-4 NISA口座で保有していた上場株式等の取得価額は相続発生日の時価となる
故人がNISA口座で保有していた上場株式等の取得価額は、相続発生日の時価となる点に注意しましょう。
一方、特定口座や一般口座に保有されていた上場株式等の取得価額は故人の取得価額をそのまま引き継ぎます。
故人が保有していた金融資産を相続人が受け継ぎ、その後売却する場合、NISA口座とそれ以外の口座では税額が変わってくる場合があります。
1-5 2024年から始まった新NISAの取り扱いもほぼ同じである
2024年からスタートした新NISA制度では、年間の非課税投資枠が拡大され、恒久制度化されるなどの見直しが行われました。
その一方、相続における取り扱いは旧制度と大きくは変わっていないのでご注意ください。
すなわち、新NISAにおいても、名義人が亡くなった場合はその時点で非課税措置が終了し、保有していた金融商品は相続財産として取り扱われます。
新NISAは非課税期間が無期限となったので、今後は高齢者のNISA保有率も上がることが予想されます。
相続発生時の遺族の負担を減らすためにも、必要に応じて、相続対策や相続手続きについて専門家に相談することもご検討ください。
2章 NISA口座の相続手続きの流れ
故人がNISA口座を保有していた場合、以下のような流れで相続人に金融資産が受け継がれます。
- 故人がNISA口座を開設していた金融機関を特定する
- NISA口座の名義人が死亡したことを金融機関へ連絡し必要書類を提出する
- 相続人名義の口座に故人のNISA口座の金融資産を移管する
- 相続税の計算・申告をする
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP① 故人がNISA口座を開設していた金融機関を特定する
まずは、故人がNISA口座を開設していた金融機関を確認しましょう。
NISA口座は1人1口座が原則ですが、どの金融機関を選んでいたかは、人によって異なります。
口座を特定するには、以下のような資料が役立ちます。
- 故人の通帳
- 取引明細書
- 証券会社からの郵送物
- オンライン取引履歴
STEP② NISA口座の名義人が死亡したことを金融機関へ連絡し必要書類を提出する
次に、該当する金融機関に連絡し、名義人が死亡した旨を伝えます。
各金融機関では、名義人の死亡を確認するとNISA口座を閉鎖し、相続手続きについて案内をしてくれます。
金融機関によって必要書類が異なる場合もありますが、一般的には、以下のような書類提出を求められます。
- 名義人の死亡が確認できる書類(死亡診断書など)
- 相続人であることを証明する戸籍謄本類
- 遺言書または遺産分割協議書
- 相続人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
STEP③ 相続人名義の口座に故人のNISA口座の金融資産を移管する
NISA口座は名義人の死亡により閉鎖されるため、故人がNISA口座で保有していた株式や投資信託は特定口座または一般口座へと移管されます。
その後、相続手続きを進めると、相続人名義の特定口座や一般口座に故人の金融資産が移管される仕組みです。
相続人が証券口座を持っていない場合は、新たに証券口座の開設も必要となるのでご注意ください。
証券口座の開設には数日程度かかることもあるので、早めに準備しておくことをおすすめします。
STEP④ 相続税の計算・申告をする
故人の遺産総額が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)より多い場合には、相続税の計算や申告もしましょう。
故人がNISA口座で保有していた金融資産も相続税の課税対象となるので、漏れなく計算することが大切です。
3章 NISA口座で保有していた上場株式等の相続税評価額を算出する方法
故人がNISA口座で保有していた上場株式等も、相続税の課税対象となるため、相続開始時点での評価額を算出しなければなりません。
NISA口座で保有されていた金融資産の相続税評価額の計算方法は、以下の通りです。
【上場株式の相続税評価額】
以下のいずれか低い金額
- 相続開始日の終値
- 相続開始日の月の終値の平均額
- 相続開始日の前月の終値の平均額
- 相続開始日の前々月の終値の平均額
【投資信託】
1口当たりの基準価格×口数-解約請求等した場合に源泉徴収されるべき所得税に相当する額-信託財産留保額および解約手数料
保有資産の種類が多く、相続税評価額の計算が難しいようであれば、相続に詳しい税理士に相談しましょう。
まとめ
NISA口座は相続発生とともに非課税措置が終了するため、相続発生後に発生した運用益や配当金は課税対象となります。
また、故人のNISA口座から相続人のNISA口座に資産を移管することはできないのでご注意ください。
故人がNISA口座で保有していた資産も相続税の課税対象となるので、相続時には漏れなく評価額を計算し、必要に応じて相続税申告をしましょう。
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