亡くなった人が上場株式や投資信託を保有していた場合は、証券会社にて相続手続きが必要です。
ただ、家族が突然亡くなったケースなどでは、亡くなった人がどこの証券会社を利用していたかわからないケースもあります。
その場合は、亡くなった人の自宅で証券会社に関する書類を探す、証券保管振替機構(ほふり)に情報開示請求などの方法が有効です。
また、亡くなった人が非上場株式を相続した場合は証券会社ではなく発行先の会社にて相続手続きをしなければなりません。
本記事では、株式や投資信託を相続したものの証券会社がわからないときの対処法を解説します。
家族や親族が亡くなったときには、役所や遺産など様々な手続きが必要です。
どの手続きから始めて良いかわからない場合は、下記の記事で相続発生後の流れをご確認ください。
1章 故人が利用していた証券会社がわからないときの対処法
上場株式や投資信託を相続したときは、証券会社にて所定の手続きが必要です。
ただし、故人が利用していた証券会社がそもそもわからない場合は、下記の方法で証券会社の特定をしなければなりません。
- 故人の自宅で証券会社に関する書類を探す
- ネット証券であれば故人のスマホやパソコンも確認する
- 証券保管振替機構(ほふり)に情報開示請求を行う
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 故人の自宅で証券会社に関する書類を探す
まずは、亡くなった人の自宅などで証券会社に関する書類を探しましょう。
- 自宅に届いている取引残高報告書
- 特定口座年間取引報告書などの書類
- 目論見書
- 口座開設時の控え
上記が見つかれば、亡くなった人が口座開設していた証券会社を見つけやすいです。
1-2 ネット証券であれば故人のスマホやパソコンも確認する
近年はネット証券を利用する人も増えているので、郵便物だけでなく亡くなった人のスマホやパソコン内の情報も確認しましょう。
- スマホやパソコンのブックマークやアプリ
- 亡くなった人宛に届いたメール
上記から証券会社に関する情報を見つけられる場合もあります。
特に、亡くなった人のスマホやパソコンにはネット証券のログイン情報も保存されている可能性が高いです。
亡くなった人のスマホはすぐに解約せず、相続手続きが完了してから解約を検討しても良いでしょう。
1-3 証券保管振替機構(ほふり)に情報開示請求を行う
亡くなった人の自宅やスマホ、パソコンを確認しても証券会社に関する情報が見つからない場合は、証券保管振替機構(ほふり)にて情報開示請求を行いましょう。
証券保管振替機構とは、証券を預かり保管している機関であり、開示請求書と必要書類を郵送すれば、亡くなった人の取引情報を教えてもらえます。
証券保管振替機構で情報開示請求を行う方法および必要書類は、下記の通りです。
請求できる人 |
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費用 | 1件につき6,050円 (法務局発行の法定相続情報一覧図のコピーを提出すれば1,100円割引) |
宛先 | 〒103-0026 日本橋茅場町郵便局留 東京都中央区日本橋兜町7番1号 KABUTO ONE 株式会社証券保管振替機構 開示請求事務センター |
必要書類 | 【相続人が請求する場合】
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なお、証券保管振替機構で情報開示できるのは、あくまでも亡くなった人の口座開設状況のみです。
そのため、証券会社の残高や保有している株式の銘柄、株数はわかりません。
- 証券保管振替機構に情報開示請求をして証券会社を特定する
- 亡くなった人が利用していた証券会社に問い合わせ、手続きや残高証明を進める
亡くなった人が利用していた証券会社がわからない場合は、上記の流れで手続きを行う必要があります。
2章 株式・投資信託の相続手続きの流れ・必要書類
亡くなった人が株式や投資信託を所有していたときは、下記の流れで相続人への名義変更手続きを行いましょう。
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人を調査する
- 相続財産(株式)を調査する
- 相続放棄・限定承認を検討する
- 準確定申告をする
- 遺産分割協議をする
- 株の名義変更手続きをする
- 相続税の申告をする
上場株式や投資信託の相続手続きは、亡くなった人が利用していた証券会社に連絡し、所定の書類や添付書類を提出して名義変更を行います。
名義変更をする際には、遺言書や遺産分割協議書などで遺産分割の割合を指定する必要があります。
また、亡くなった人が投資で一定額を超える収入を得ていた場合には、相続人が亡くなった人のかわりに準確定申告を行わなければなりません。
準確定申告の期限は相続発生から4ヶ月以内と短いので、注意が必要です。
3章 株式・投資信託を相続したときの注意点
亡くなった人が所有していた上場株式や投資信託を相続人が受け継ぐ際には、相続人も証券口座の開設が必要です。
また、証券会社で名義変更手続きができるのはあくまでも上場株式や投資信託のみであり、非上場株式は発行会社ごとに手続きしなければなりません。
株式や投資信託を相続した際には、下記の4点に注意しましょう。
- 非上場株式は証券会社で保管していない
- 株式・投資信託の相続手続きでは相続人も証券口座開設が必要
- 単元未満株の相続手続きは株主名簿管理会社への連絡が必要
- 相続財産が後から見つかると遺産分割協議のやり直しが必要
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 非上場株式は証券会社で保管していない
証券会社に必要書類を提出して名義変更手続きを行えるのは、上場株式や投資信託のみとなっています。
証券会社で保管していない非上場株式に関しては、発行会社に連絡をし個別に相続手続きを進めなければなりません。
また、証券会社に問い合わせをしても非上場株式の保有状況についてはわからない点にも注意が必要です。
- 亡くなった人が会社を経営していた
- 同族会社や知人が経営する会社に出資していた
上記のケースでは、亡くなった人が非上場株式を所有していた可能性が高いので、発行先の会社に問い合わせてみましょう。
3-2 株式・投資信託の相続手続きでは相続人も証券口座開設が必要
上場株式や投資信託の相続手続きをする際には、相続人も証券口座を開設しておく必要があります。
なお、亡くなった人と同じ証券会社で口座を開設しておくと手続きをスムーズに進めやすいです。
証券会社の中には、口座開設時に認知能力の確認を厳しくしている会社もあるようです。
亡くなった人の配偶者が株式や投資信託を受け継ぐために証券口座を開設しようとしたものの、高齢であり認知能力に不安があるとの理由で口座開設を断られる恐れがあります。
そのため、相続対策や遺産分割協議で株式や投資信託を誰が受け継ぐか決める際には、株式や投資信託を受け継ぐ人は証券口座を開設できそうかも確認しておくと安心です。
3-3 単元未満株の相続手続きは株主名簿管理人への連絡が必要
亡くなった人が単元未満株を所有していた場合、相続手続きの際に株主名簿管理人への連絡をしなければなりません。
単元未満株とは最低売買単位である1単元の株数に満たない株式です。
2018年以降は株式の売買単位が100株に統一されていますが、証券会社の中には初期費用が少ない人向けに単元未満株の取引きも行っています。
ただし、単元未満株は証券口座で保管されるのではなく、信託銀行などの特別口座で保管されています。
そのため、株主名簿管理人にて連絡をし相続手続きを進めていきましょう。
なお、亡くなった人が単元未満株を持っていたかどうかや信託銀行の特別口座があるかどうかは、証券保管振替機構(ほふり)の情報開示請求で確認可能です。
そのため、亡くなった人が株式や投資信託を所有していたことがわかっているのであれば、念のため証券保管振替機構に情報開示請求を行い特別口座の有無を確認するのが良いでしょう。
3-4 相続財産が後から見つかると遺産分割協議のやり直しが必要
株式や投資信託に限りませんが、相続財産が後から発見されると遺産分割協議のやり直しが必要になり手間がかかります。
遺産分割協議とは、誰がどの遺産をどれくらいの割合で受け継ぐかを決める話し合いです。
遺産分割協議完了後に亡くなった人が所有していた株式や投資信託が見つかった場合は、新たに発見された遺産についてのみ遺産分割協議を行うかすべての遺産に対する遺産分割協議のやり直しをする必要があります。
遺産分割協議のやり直しを防ぐためには、相続人調査や相続財産調査を確実に行うことが大切です。
自分たちで行うのが難しい場合や時間がかかるとお悩みの場合は、相続に精通した司法書士や行政書士に相続財産調査を依頼することをおすすめします。
まとめ
亡くなった人が利用していた証券会社がわからない場合は、自宅などで郵便物を探すか証券保管振替機構(ほふり)に情報開示請求を行うのがおすすめです。
情報開示請求を行えば、亡くなった人が開設していた証券会社が漏れなくわかるため、相続手続きを進めやすくなります。
ただし、証券会社で保管している株式は上場株式のみです。
亡くなった人が会社経営をしていた場合や親族が経営している会社に出資していた場合は、非上場株式を所有していなかったか発行先の会社に問い合わせてみましょう。
亡くなった人の証券口座や保有株式の特定が難しい場合は、相続に詳しい司法書士や行政書士への相談もご検討ください。
グリーン司法書士法人では、相続手続きに関する相談をお受けしています。
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