
- 相続の話し合いの進め方
- 相続の話し合いがまとまらないときの対処法
- 相続について話し合うときに起きやすいトラブル
相続が発生すると、避けて通れないのが「相続の話し合い」です。
相続について話し合う際には、故人が遺言書を用意していないかを確認し、相続人調査や相続財産調査を漏れなく行うことが大切です。
相続についての話し合いがまとまったら、内容を遺産分割協議書にまとめ、遺産の名義変更手続きを進めていきましょう。
本記事では、相続の話し合いの進め方から、よくあるトラブルと対処法について解説します。
目次
1章 相続の話し合い・遺産分割協議とは
相続が発生すると、故人が残した財産の分け方を決める必要があります。
そして、相続人全員で「誰がどの財産をどれくらいの割合で相続するか」を決めていく話し合いを「遺産分割協議」と呼びます。
遺産分割協議にて相続人全員が合意すれば、法定相続分以外の割合で遺産を分割することも可能です。
遺産分割協議がまとまれば、その内容にしたがって遺産の名義変更手続きを進めていきます。
相続の話し合いは、相続人同士の意見がぶつかり合い、感情面のトラブルも起こりやすいので慎重に進めなければなりません。
生前の介護負担や金銭援助についての不満が持ち出されると、協議が長期化することもあるでしょう。
相続の話し合いをスムーズに進めるには、情報を整理することや、相続の基本的な知識を理解しておくことが大切です。
2章 相続の話し合いの進め方
相続の話し合いを進める際には、まずは相続人調査や相続財産調査を行う必要があり、一般的には以下の流れで進めていきます。
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人調査をする
- 相続財産調査をする
- 遺産分割協議をする
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP① 遺言書の有無を確認する
相続の話し合いを始める前に、故人が遺言書を作成していたかどうかを確認しましょう。
遺言書があり、その内容が法的に有効であれば、基本的には遺言の内容が優先されるため、遺産分割協議を行う必要がありません。
遺言書にはいくつか種類があり、法務局による保管制度を利用していない自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には、家庭裁判所による検認手続きが必要です。
公正証書遺言であれば、検認手続きは不要なので、そのまま相続手続きを進められます。
STEP② 相続人調査をする
続いて、相続人調査をして、相続人を確定させましょう。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、1人でも欠けていると無効になるので、漏れのないように調査しなければなりません。
相続人調査を行う際には、故人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて取得していきます。
故人の最後の戸籍謄本から遡って取得していくと、途切れなく戸籍謄本を収集可能です。
故人に離婚・再婚歴がある場合や、家族関係が複雑な場合で、相続人調査を自分たちで行うことが難しい場合には、司法書士や行政書士などの専門家に依頼することも検討しましょう。
STEP③ 相続財産調査をする
相続人が確定したら、次は相続財産の全体像を把握していきます。
相続財産は、以下のように多岐にわたるので、漏れのないように調査することが大切です。
相続財産調査をする際には、相続財産の全容を把握するだけでなく、相続財産に関する資料を収集しておくと、相続人同士で話し合いを進めやすくなります。
STEP④ 遺産分割協議をする
相続人と相続財産がすべて確定したら、いよいよ遺産分割協議を行いましょう。
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産をどのように分けるかを決める話し合いです。
全員が遺産分割協議に合意したら、内容を「遺産分割協議書」としてまとめ、相続人全員が押印します。
可能であれば、署名もしておくと、遺産分割協議書の信頼性をより高められるでしょう。
3章 相続の話し合いがまとまらないときの対処法
万が一、相続人同士で話し合いがまとまらない場合には、遺産分割調停や遺産分割審判といった手続きにより、遺産の分割方法を決定できます。
それぞれの手続きについて、詳しく見ていきましょう。
3-1 遺産分割調停
遺産分割調停とは、相続人同士の話し合いが上手くいかないときに、家庭裁判所の調停委員が間に入って話し合いを進める手続きです。
あくまで話し合いの延長線上にある制度であり、裁判所がいきなり結論を下すわけではありません。
調停では、調停委員が双方の主張を丁寧に聞き取り、公平な視点から妥協点や解決策を提案します。
相続人同士が直接顔を合わせて争う必要がないため、感情的な衝突を避けられる点も大きなメリットといえるでしょう。
一方、遺産分割調停はあくまで話し合いであり、内容がまとまらない可能性もゼロではありません。
調停でも話し合いがまとまらない場合には、「遺産分割審判」へ自動的に移行します。
3-2 遺産分割審判
遺産分割審判は、調停が不成立となった場合に、裁判所が相続財産の分け方を決定する手続きです。
遺産分割審判では、話し合いではなく、裁判所が法律や判例に基づいて最も合理的な分割方法を判断します。
遺産分割審判による判断は法的拘束力があるため、不服がある場合は2週間以内に即時抗告を行わなければなりません。
抗告しなければ審判が確定し、その内容に従って相続手続きを進めることになります。
審判は時間と費用がかかる傾向があるため、できる限り調停の段階で話し合いをまとめるのが現実的です。
また、遺産分割審判へと進むと、ほとんどのケースで法定相続分による遺産分割を行うこととなることも理解しておきましょう。
4章 相続について話し合うときに起きやすいトラブル
相続の話し合いは、法律や手続き、感情面など様々なものが絡み合うため、想定外のトラブルが発生しやすくなります。
具体的には、以下のようなトラブルが起きやすいので注意しましょう。
- 遺産分割協議の完了後に遺言書が見つかる
- 遺産分割協議の完了後に新たな財産が見つかる
- 相続人に認知症の方がいる
- 介護をしてきた相続人が遺産の取り分に不満を持つ
- 相続人の1人が故人から贈与を受けていた
- 遺産のほとんどが不動産であり分割方法で揉める
- 故人が借金をしており誰が受け継ぐかで揉める
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 遺産分割協議の完了後に遺言書が見つかる
相続人全員で遺産分割協議を行い、協議書まで作成した後に遺言書が見つかるケースは珍しくありません。
自筆証書遺言が金庫や引き出しの奥から発見されたり、親族が保管していた遺言書の存在が後から判明したりするといったケースが考えられます。
法的に有効な遺言書が見つかった場合、原則として、遺言の内容が優先されます。
そのため、すでに行った遺産分割協議は無効となり、改めて遺言の内容に沿って手続きを進めることとなります。
すでに財産の名義変更をしている場合は、再度手続きをやり直す必要が生じることもあるのでご注意ください。
ただし、相続人全員が「遺言書と異なる内容で分割したい」と合意する場合には、遺言に拘束されず、協議内容を優先させることが可能です。
いずれにしても、遺産分割協議や遺産の名義変更手続きが完了した後に遺言書が見つかると、相続人の負担が大きくなるので、話し合いを行う前に遺言書がないか探しておくことが大切です。
4-2 遺産分割協議の完了後に新たな財産が見つかる
遺産分割協議を終えた後に、故人が所有していた預貯金口座や株式、不動産、貸金庫の中身といった新たな財産が発覚することも多くあります。
この場合、発見された財産については、改めて遺産分割協議を行わなければなりません。
すでに作成した遺産分割協議書とは別に、追加財産だけを対象とした「追加の遺産分割協議書」を作成するのが一般的です。
万が一、協議がまとまらない場合には、通常の遺産分割と同様に家庭裁判所の調停・審判に進むこともあります。
このような事態を防ぐためにも、相続財産調査は漏れなく行いましょう。
自分たちで行うことが難しい場合には、相続に精通した司法書士や行政書士に調査を依頼することも可能です。
4-3 相続人に認知症の方がいる
相続人の中に認知症の方がいるケースでは、遺産分割協議がスムーズに進まないことがあります。
認知症になり判断能力を失った相続人がいると、そのままの状態では、遺産分割協議を進めることはできません。
認知症の相続人がいる場合には、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらう必要があります。
成年後見人とは、認知症などで判断能力を失った方の代わりに法的行為や財産管理を行ってくれる人物であり、親族がなることもあれば専門家が選任されることもあります。
しかし、成年後見人が一度選任されると、原則として被後見人(認知症となった方)が亡くなるまで、後見業務が続きます。
また、成年後見人は被後見人の利益を最優先とするため、遺産分割協議がまとまりにくくなる恐れもあるでしょう。
このような事態を防ぐためには、認知症の相続人がいる場合には、相続対策をしておくことを強くおすすめします。
4-4 介護をしてきた相続人が遺産の取り分に不満を持つ
相続の話し合いで特に揉めやすいのが、「生前に親の介護をしてきた相続人」が不公平感を抱くケースです。
介護には、多くの時間や労力、費用がかかるにもかかわらず、法定相続分には介護の負担が直接反映されません。
そのため、「介護をしてこなかった弟は何もしていないのに平等に財産をもらうのは納得できない」「自分は仕事を調整しながら介護してきたのに評価されていない」といった不満が生じやすく、感情的な対立へと発展することがあります。
このような場合、寄与分という制度により、介護による貢献度を遺産分割に反映できます。
寄与分とは、生前に故人の財産維持や増加に特別の貢献をした相続人について、法定相続分より多く相続できるとする制度です。
ただし、寄与分は認められるハードルが高く、単なる同居や介護の一部負担では評価されない場合もあるのでご注意ください。
したがって、介護の貢献度を遺産分割に確実に反映させたいのであれば、故人が元気なうちに相続対策を行っておく必要があります。
4-5 相続人の1人が故人から贈与を受けていた
生前に特定の相続人が多額の贈与を受けていた場合、他の相続人から「不公平だ」と不満を抱かれやすく、相続の話し合いが難航する原因になります。
相続人の1人が故人から特別な利益を受けていた場合、「特別受益」と判断される恐れがあります。
過去の生前贈与が特別受益と判断された場合、過去の贈与を相続財産に持ち戻し、各相続人の取り分を決める必要があります。
例えば、長男が住宅購入のために1,000万円の援助を受けていた場合、その1,000万円を遺産に加算した上で相続分を再計算することになります。
ただし、すべての贈与が特別受益の対象になるわけではなく、生活費の援助など「親として通常行う範囲」と判断されれば対象外です。
特別受益に該当するか否か、金額をどう評価するかで相続人同士の主張が対立しやすいため、専門的な判断が必要になることもあるでしょう。
4-6 遺産のほとんどが不動産であり分割方法で揉める
遺産の多くが不動産という場合、分割方法をどのようにするかで意見が割れやすくなります。
不動産は現金と違い、公平に分けることが難しい財産のひとつだからです。
具体的には、以下のようなトラブルが起きやすいのでご注意ください。
- 誰が不動産を取得するのか
- 不動産を売却するか、残すか
- 取得者が他の相続人へ支払う代償金の額
不動産を相続人の1人が取得する場合、他の相続人へ代償金を支払う場合がありますが、その金額をめぐってトラブルが起きることがあります。
不動産にはいくつかの評価額があるため、どの評価を採用するかで相続人が争うケースもあるでしょう。
4-7 故人が借金をしており誰が受け継ぐかで揉める
相続財産には現金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産も含まれます。
故人に借金があった場合、その返済義務も法定相続分に応じて相続人が引き継ぐため、相続人の間で「誰が負担するのか」をめぐって揉めることもあるでしょう。
故人の借金を受け継ぎたくない場合には、相続放棄や限定承認することも検討しましょう。
相続放棄をすれば、はじめから相続人ではないものとして扱われ、プラスの財産もマイナスの財産も一切受け継がなくなります。
相続放棄や限定承認は家庭裁判所に申立てする必要があり、自分が相続人であることを知ってから3ヶ月以内という期限も設定されているのでご注意ください。
まとめ
相続の話し合いをスムーズに進めるには、いきなり話し合いを始めるのではなく、遺言書の有無を確認したり、相続人・相続財産調査を念入りに行ったりすることが重要です。
これらの調査に漏れがあると、遺産分割協議がまとまった後、やり直しが必要となることもあるのでご注意ください。
また、相続についての話し合いは法律や財産、相続人の感情が交じり合うため、揉めてしまうことがしばしばあります。
話し合いを行う際には、どのようなトラブルが起きやすいのかを確認しておき、冷静に話し合うことも大切です。
グリーン司法書士法人では、相続手続きについての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
遺言が見つかったら相続について話し合いは不要ですか?
遺言書が見つかった場合、内容が法的に有効であれば、原則として遺言が優先されるため、相続人同士で遺産分割について話し合う必要はありません。
ただし、相続人全員が遺言書と異なる遺産分割をすることに合意している場合には、相続人同士で話し合って分割方法を決定することも可能です。遠方の相続人がいて日程が合いません。話し合いはオンラインで進められますか?
はい、オンラインでの話し合いは可能です。
近年は相続人が全国・海外に散らばっているケースも多く、対面で一堂に会することが難しい状況は珍しくありません。
ZoomやGoogle Meet、LINEのビデオ通話などを利用してオンラインで協議を進めることも問題なく認められています。
重要なのは、相続人全員が「話し合いの内容に参加し、理解し、意思表示できていること」です。遺産分割時に介護してきた分を考慮してほしい場合はどうすれば良いですか?
介護負担を遺産分割に反映させたい場合、「寄与分」を主張しましょう。
寄与分とは、他の相続人に比べて特別な貢献(故人の療養看護、事業手伝いなど)をした相続人に対し、法定相続分以上の取り分を認める制度です。
ただし、寄与分は単に同居していたり、頻繁に様子を見に行ったりした程度では認められません。
「介護の中心を担っていた」「経済的に継続的な援助をしていた」など、客観的に特別の寄与と認められる必要があります。相続についての話し合いの結果はどのように残しますか?
相続についての話し合い(遺産分割協議)の結果は、「遺産分割協議書」という正式な文書として残し、相続人全員で押印します。
その後は、作成した遺産分割協議書をもとに遺産の名義変更手続きを進めていきましょう。









