- 実勢価格とは何か
- 実勢価格を調べる方法
- 実勢価格と他の評価額の違い・関係
- 実勢価格を調べるときの注意点
実勢価格とは、実際に土地の売買が行われたときの市場価格であり、土地の売買が行われると価格などの情報が国土交通省に登録されます。
そのため、国土交通省の不動産情報ライブラリにて実勢価格を調べれば、自分の土地がいくらで売却できそうかを判断しやすくなります。
他にも、公示価格や相続税評価額、固定資産税評価額から実勢価格を算出することも可能です。
しかし、実勢価格はあくまでもそのときの取引価格であり、自分の土地と条件が似通っていても実際に売却できる保証はない点にご注意ください。
本記事では、実勢価格の調べ方や他の評価額との関係を解説します。
相続した土地を売却する流れは、下記の記事でも解説しているのでご参考にしてください。
1章 実勢価格の調べ方
実勢価格を調べるには、土地総合情報システムの取引価格情報を確認する、他の土地の評価額をもとに計算するなどの方法があります。
具体的には、下記の7つの方法で実勢価格を調査可能です。
- 不動産情報ライブラリの不動産取引価格情報をもとに調べる
- 公示価格をもとに計算する
- 路線価をもとに計算する
- 相続税評価額をもとに計算する
- 基準地価をもとに計算する
- 固定資産税評価額をもとに計算する
- 不動産会社に査定依頼をする
それぞれ詳しくみていきましょう。
1-1 不動産情報ライブラリの不動産取引価格情報をもとに調べる
実勢価格を調べる際には、国土交通省の 「不動産情報ライブラリ」を活用するのがおすすめです。
不動産情報ライブラリで実勢価格を調べる方法は、下記の通りです。
- 不動産情報ライブラリのトップページにアクセスし「不動産価格の情報を
ご覧になりたい方へ」の「データの検索・ダウンロード」をクリックする
- 「住所」もしくは「路線・駅名」を入力する
- 「価格情報区分」や「種類」「時期」など詳しい情報を入力し「一覧表示」を選択し検索する
- 実勢価格や土地の広さなどの情報が掲載されるため、調べたい土地と似ている条件のものを探す
不動産情報ライブラリでは、実勢価格だけでなく下記の情報も記載されています。
- 土地の広さ(面積)
- 最寄り駅の名称と距離
- 前面道路の幅員や種類・方位
- 都市計画
- 建蔽率・容積率
市区町村だけでなく上記の情報をもとに調べたい土地に似ているデータを探せば、実際の取引価格に近い評価額を確認可能です。
1-2 公示価格をもとに計算する
公示価格からも、実勢価格を計算可能です。
公示価格とは、土地売買の指標となる価格であり、毎年1月1日現在の価格を国土交通省が発表しています。
実勢価格は、公示価格の1.1〜1.2倍程度となる場合が多いです。
公示価格は下記の流れで調べられます。
- 不動産情報ライブラリにアクセスする
- 「地価の情報をご覧になりたい方へ」をクリックし「データの検索」をクリックする
- 「区分」や「地域」「用途」などの情報を入力し「一覧表示」をクリックする
なお、公示価格は全国2万3,000ヶ所の標準地のみの価格が決定されるため、調べたい土地によっては公示価格が設定されていない可能性もあります。
1-3 路線価をもとに計算する
実勢価格を調べる方法のひとつは、路線価をもとに計算する方法です。
路線価とは土地の評価額のひとつであり、相続税や贈与税の計算に使用されます。
路線価は1㎡あたりの土地の価格をあらわしており、調べる方法は下記の通りです。
- 国税庁ホームページ「路線価図・評価倍率表」にアクセスする
- 地図やリストから路線価を調べたい都道府県を選択する
- 路線価図を選択する
- 表示された市区町村リストから路線価を調べたい市区町村を選択する
- 路線価図を確認し調べたい場所の路線価を確認する
地域によっても差がありますが、一般的には「路線価÷0.8×1.1(1.2)」の計算式で路線価から実勢価格を計算できます。
1-4 相続税評価額をもとに計算する
公示価格は全国2万3,000ヶ所の標準地のみで設定されているため、調べたい土地の場所によっては公示価格を確認できない可能性があります。
公示価格が設定されていないエリアの実勢価格を調べるときには、相続税評価額をもとに実勢価格を計算しましょう。
相続税評価額とは相続税や贈与税の計算に用いられる土地の評価額であり、路線価方式もしくは倍率方式で計算可能です。
路線価方式は本記事の1-3で解説した方法で確認でき、倍率方式による相続税評価額は下記の方法で調査できます。
- 国税庁ホームページ「路線価図・評価倍率表」にアクセスする
- 市区町村を選択する画面で「この市区町村の評価倍率表を見る」を選択する
- 調べたい土地の倍率を確認する
- 調べたい土地の固定資産税評価額に所定の倍率を掛けて相続税評価額を計算する
相続税評価額は公示価格の8割程度のため「相続税評価額÷0.8×1.1(1.2)」で、相続税評価額から実勢価格を計算可能です。
1-5 基準地価をもとに計算する
基準地価とは、都道府県が年に1回発表する土地の価格です。
基準地価の1.1倍から1.2倍が実勢価格になると言われているため、基準地価をもとに実勢価格を計算できます。
基準地価は各都道府県のホームページもしくは、不動産情報ライブラリにて確認できます。
国土交通省地価公示・都道府県地価調査を利用した調査方法は、下記の通りです。
- 不動産情報ライブラリのにアクセスする
- 「地価の情報をご覧になりたい方へ」をクリックし「データの検索」をクリックする
- 「区分」や「地域」「用途」などの情報を入力し「一覧表示」をクリックする
1-6 固定資産税評価額をもとに計算する
固定資産税評価額をもとにして、実勢価格を計算することも可能です。
固定資産税評価額とは固定資産税や都市計画税の基準となる評価額であり、各自治体が設定しています。
固定資産税評価額は公示価格の約7割と言われており、実勢価格は「固定資産税評価額÷0.7×1.1(1.2)」で計算可能です。
固定資産税評価額は土地の所有者宛に毎年自治体から届く「固定資産税課税明細書」に記載されています。
したがって、手元に固定資産税課税明細書がある場合は手軽に実勢価格を計算できます。
1-7 不動産会社に査定依頼をする
実勢価格は自分で調べる、計算するだけでなく不動産会社に査定依頼をして算出してもらうことも可能です。
土地の売買は需要と供給によって成り立つため、過去の取引価格の調査や他の評価額から実勢価格を計算しても実際の取引価格とズレが発生する可能性があります。
一方で、不動産会社による査定であれば実際に売却したい土地の特徴を踏まえた実勢価格を算出可能です。
なお、不動産会社の査定結果は各社で金額が変わってくるため、複数社に査定をしてもらうことをおすすめします。
2章 実勢価格と他の評価額の違い・関係
実勢価格以外にも土地の評価額は複数あり、それぞれ下記のような関係で表せます。
上記のように、実勢価格は公示価格の1.1〜1.2倍となることが多く、相続税評価額や固定資産税評価額と公示価格の関係性は下記の通りです。
- 相続税評価額:公示価格の約8割
- 固定資産税評価額:公示価格の約7割
ただし、上記はあくまでも概算であり地域によっては公示価格と相続税評価額、固定資産税評価額の差が少ない地域もあります。
2-1 実勢価格と公示価格に差が生まれる理由
先ほど解説したように、実勢価格は公示価格の1.1〜1.2倍となる地域が多いです。
とはいえ、過去の土地取引価格である実勢価格と土地売買の指標となる公示価格に差が生じるのはおかしいと感じる人もいるかもしれません。
実勢価格と公示価格に差が生まれる理由は、主に下記の通りです。
- 公示価格はその年の1月1日時点の価格であり、最新の市場動向は反映されていない可能性がある
- 公示価格は急変動しないように決定されている
- 実勢価格は売主や買主の事情も反映されている
公示価格は相続税路線価や固定資産税路線価を決める基準にもなっているため、大きく変動しないように調整されています。
したがって地域によっては、実勢価格との差が生まれてしまいます。
また、過去の取引価格である実際価格は、売主と貸主の事情や力関係も反映されています。
例えば、買主が転勤や子供の入学などのタイミングで土地を急いで手に入れたかった場合、多少相場より高い価格の土地でも購入する可能性もあるでしょう。
このような個々の事情も実勢価格に反映されているため、実勢価格と公示価格には差が生まれる場合があります。
3章 実勢価格を調べるときの注意点
実勢価格は実際に行われた土地の取引価格ではあるものの、自分が売却したい土地が実勢価格に近い価格で売却できるとは限りません。
実勢価格を調べるときには、下記の点に注意しましょう。
- 実勢価格と同額で売れるとは限らない
- 土地の売り出し価格は自由に設定できる
- 相続した土地を売却するときには相続登記が必要である
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 実勢価格と同額で売れるとは限らない
実勢価格は過去の取引価格であり、似た条件の土地が実勢価格と同じ金額で売れる保証はありません。
土地の売却金額は土地の広さや形状、周辺環境などによっても変動します。
加えて、土地取引は需要と供給によって成り立つため、売主と買主の事情によっても売却代金は変わる可能性は十分に考えられます。
3-2 土地の売り出し価格は自由に設定できる
土地の売買は需要と供給によって成立するため、実勢価格と乖離した金額で売りに出しても全く問題はありません。
例えば、相続した土地を売却して納税資金を確保したい場合は、相場より安い金額で売りに出して売買を急ぐのも選択肢のひとつです。
一方で、今後の資金計画を考え相場よりも高い金額で土地を売り出すことも可能です。
ただし当然のことですが、相場より高い金額で売り出し価格を設定すると、いつまでも土地が売却できず管理コストだけがかかってしまう恐れもあります。
3-3 相続した土地を売却するときには相続登記が必要
相続した土地を売却する際には、事前に亡くなった人から相続人へ名義変更手続きをすませておく必要があります。
相続した土地の名義変更手続きは、相続した土地を管轄する法務局にて登記申請を行います。
相続登記の手続き方法および必要書類は、下記の通りです。
手続きする人 |
|
手続き先 | 不動産の所在地を管轄する法務局 |
費用 | 不動産固定資産評価額の0.4%(登録免許税) (目安:1,000万円の場合4万円、2,000万円の場合8万円) |
必要書類 |
など |
2024年から相続登記が義務化されます
これまで相続登記は義務化されておらず、相続人の意思によって行うとされていました。
しかし、2024年4月からは相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科される恐れがあります。
なお、相続登記の義務化は過去に発生した相続においても適用されます。
そのため、まだ相続登記がおすみでない土地をお持ちの人は早めに手続きをすませましょう。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士に依頼すれば数万円程度で代行可能です。
グリーン司法書士法人でも相続登記に関する相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
実勢価格を調べるには、国土交通省の不動産情報ライブラリを使って周辺地域や似た条件の土地の取引価格を確認するか、他の評価額から実勢価格を計算するのがおすすめです。
不動産の売却や活用を予定しているのであれば、不動産会社に査定依頼を出すのも良いでしょう。
ただし、亡くなった人の土地を売却、活用する場合は事前に相続登記をすませておく必要があります。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士であれば数万円程度で依頼可能です。
グリーン司法書士法人では、相続登記に関する相談をお受けしています。
グループ会社に不動産会社があるため相続した土地の名義変更から売却、活用まで一括でサポート可能です。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。