成年後見制度申立費用相場は約16~47万円!費用を負担するのは誰?

成年後見制度申立費用相場は約16~47万円!費用を負担するのは誰?
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 6

成年後見の申立時には、必要書類の収集や専門家に支払う報酬、鑑定費用などで16万円から数十万円程度かかります。
ただし、制度利用者本人によっては申立後の鑑定が必要ないケースもありますし、診断書発行費用や専門家に支払う報酬には幅があります。

成年後見制度の申立費用は申立人が支払う必要がありますが、成年後見制度の利用が開始された後に本人への請求が可能です。
申立人が支払うことが難しい場合には、各自治体や法テラスの助成制度の利用も検討しましょう。

本記事では、成年後見制度申立費用の内訳や相場を解説します。
なお、成年後見制度の利用開始後は成年後見人に報酬を支払います。
成年後見人へ払う報酬相場については、下記記事をご参考にしてください。

成年後見人の報酬はいくら?報酬相場から請求方法まで司法書士が解説

1章 成年後見制度の申立費用の内訳・相場

成年後見制度の申立にかかる費用の内訳と相場は、それぞれ下記の通りです。

費用の内訳相場
申立費用800円
郵便切手代3,270~4,210円
登記費用2,600円
鑑定費用10~20万円(かからない場合もある)
診断書の発行費用数千円程度
本人の住民票・戸籍謄本発行手数料 数百円~
後見制度未登記であることを示す証明書発行手数料300円
司法書士・弁護士へ支払う報酬15~25万円
財産を示す書類の発行手数料数百円~数千円程度
合計16万~47万円程度

それぞれの費用について詳しく解説していきます。

1-1 申立費用

成年後見制度の申立てには、手数料として800円、そして後見人の登記にかかる手数料として2600円が必要です。
申立て時には、これらの合計3400円分の収入印紙を用意するしなければなりません。

1-2 郵便切手代

成年後見制度の申立後は、審判結果や登記手続きの際に家庭裁判所から何度か郵便物を送付します。
郵便物の送付にあたり必要になる切手代も、申立時に支払っておかなければなりません。
郵便切手代の金額は後見申立と保佐・補助申立で金額が異なり、それぞれ下記の通りです。

  • 後見申立:3,270円
  • 保佐・補助申立:4,210円

1-3 登記費用

成年後見制度の申立が完了した後は、成年後見人の登記手続きが必要です。
登記手続き時には手数料として2,600円かかります。

1-4 鑑定費用

成年後見制度申立後に制度利用者本人の判断能力の鑑定が必要と判断される場合があります。
このときにかかる鑑定費用は約10万~20万円程度ですが、鑑定を受ける医療機関によっても差があります。

なお、申立後の審理で鑑定が必要ないと判断された場合、鑑定費用はかかりません。

1-5 診断書の発行費用

成年後見制度の申立時には医師による診断書の提出も必要です。
診断書の発行費用は医療機関によっても異なりますが、数千円程度かかるケースが多いです。

成年後見制度申立時に提出する診断書は、制度利用者本人のかかりつけ医が作成します。
かかりつけ医に診断書の発行費用を尋ねておきましょう。

1-6 本人の住民票・戸籍謄本発行手数料

成年後見制度申立時には、本人や後見人候補者の戸籍謄本や住民票が必要です。
戸籍謄本と住民票は、それぞれ下記の自治体で発行可能です。

  • 戸籍謄本:本籍地のある市区町村役場
  • 住民票:住所地のある市区町村役場

戸籍謄本や住民票はそれぞれ数百円程度の発行手数料がかかります。
本籍地が遠方にあり、郵送で請求する場合には郵送請求用の切手代なども必要です。

1-7 後見制度未登記であることを示す証明書発行手数料

成年後見制度利用時には、後見制度を利用していないことを証明するために証明書を提出しなければなりません。
「登記されていないことの証明書」は1通300円で法務局から発行してもらえます。

1-8 司法書士・弁護士へ支払う報酬

成年後見制度は制度利用者の家族などが自分で申立を行えますが、司法書士や弁護士などの専門家にも依頼可能です。
司法書士と弁護士に成年後見制度の申立を依頼した際に支払う報酬相場は、それぞれ下記の通りです。

  • 司法書士:15~20万円
  • 弁護士:15~25万円

上記は依頼する事務所によっても異なりますし、サポート内容によっても変わってきます。
なお、弁護士よりも司法書士の方が成年後見制度の業務を扱っているケースが多く、費用も安価な場合が多いです。

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1-9 財産を示す書類の発行手数料

成年後見制度の利用開始後は、本人にかわり成年後見人が財産の管理を行います。
そのため、財産管理を行うにあたり申立時には本人の財産の内容を示す書類の提出も必要です。
具体的には、下記の書類の提出を求められます。

  • 不動産関係書類(不動産登記事項証明書など)
  • 預貯金や有価証券の残高がわかる書類(残高証明書など)
  • 収入に関する資料(年金額決定通知書など)
  • 支出に関する資料(施設利用料や納税証明書など)

上記の書類を発行する際に数百円~数千円程度の費用がかかります。
必要になる書類は、本人の資産状況や申立先の家庭裁判所によっても異なりますので、事前に確認しておきましょう。

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2章 成年後見制度申立費用は申立者が支払う

成年後見制度の申立費用は、成年後見制度を利用する本人ではなく申立者が負担します。
しかし、成年後見制度の利用が開始された後に、申立者は制度利用者本人に対してかかった費用を請求可能です。
成年後見制度の利用は申立者本人の利益につながる行為ではなく、制度利用者本人の利益につながる行為だと考えられるからです。

ただし、申立時に司法書士や弁護士に依頼した際の報酬に関しては、申立者が手間を減らすために支払ったものと考えられ制度利用者本人に対しては請求できません。


3章 成年後見制度申立費用を払えないときの対処法

万が一、成年後見制度の申立者に金銭的な余裕がなく、申立費用を払えないときには以下の助成制度を利用を検討しましょう。

  • 市区町村が行っている助成制度
  • 法テラスが行っている助成制度

各自治体では成年後見制度利用支援事業などの名称で助成制度を用意していて、申立書作成にかかる費用の支援を行っています。
成年後見人に支払う報酬に対しての支援を行っている自治体もあるので、成年後見制度利用時には一度相談してみると良いでしょう。

法テラスでは、司法書士や弁護士に支払う報酬を用意できない人向けに、立替制度を用意しています。
ただし、法テラスによる立替制度を利用するには、収入・資産の要件を満たし審査に通過しなければなりません。


4章 成年後見制度の費用相場

成年後見人に司法書士や弁護士などの専門家が就いた場合は、月額2~6万円の費用がかかります。
財産額が5,000万円を超える場合は、基本報酬額が更に高額になります。

一方で成年後見人に家族や親族が就く場合は、報酬付与の申立てを裁判所に対して行わず、無償で後見業務を行うことも多いです。

成年後見人の報酬相場と請求方法を徹底解説!知っておきたいポイント

5章 成年後見制度以外の認知症対策

認知症になり判断能力を失った人の財産管理は成年後見制度でしか行えませんが、認知症の症状が軽度であれば他の方法でも財産の管理や運用、処分も可能です。
成年後見制度では自宅の売却が制限される、財産の処分ができないなどのデメリットもあるので、財産の状況や本人の認知症の症状によっては別の対策の方が適している場合もあります。

成年後見制度以外の認知症対策は、主に下記の3つです。

  1. 生前贈与
  2. 任意後見制度
  3. 家族信託

上記はいずれも、認知症の症状が進行し判断能力を失ってしまうと行えなくなります。
どの対処法が選べそうか本人や家族が判断するのは難しいので、症状が進行する前にできるだけ早く専門家に相談することをおすすめします。

それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。

5-1 生前贈与

生前贈与であれば、自分の希望する人物に確実に財産を引き継げます。
また、生前贈与は贈与者と受贈者が合意すればいつでも行えるので、受贈者の住宅取得や結婚などお金がかかると予想できるタイミングで贈与を行えます。

一方で、年間110万円を超える贈与の場合、贈与税が課税される点には注意が必要です。
認知症の症状が進行し判断能力を失うと、法的行為ができなくなり生前贈与もできなくなります。

「認知症だったので生前贈与は無効だ」と後から他の相続人に主張されないためにも、専門家に相談し不備のない贈与契約書の作成も必要になります。

生前贈与とは?メリット・デメリットや贈与税の計算方法について

5-2 任意後見制度

任意後見人とは?契約内容に従って本人を支援

任意後見制度とは、将来自分の判断能力が不十分になったときに備えて、支援してくれる人と支援してもらう内容を事前に契約しておく制度です。
任意後見制度では、成年後見制度よりも柔軟な財産管理ができる点がメリットです。

一方で、任意後見制度の利用を開始するには任意後見監督人の選任が必要であり、任意後見人は任意後見監督人への報告義務があります。
任意後見人監督人に対しては月額3~6万円程度の報酬がかかるので、この後で紹介する家族信託よりもランニングコストがかかる点がデメリットといえるでしょう。

【簡単解説】任意後見人とは?役割や仕事内容から手続きの流れ

5-3 家族信託

信頼できる家族に財産を託す家族信託の仕組み

家族信託とは、信頼できる家族に自分の財産の管理や運用、処分を任せる制度です。
家族信託は契約内容に基づいて財産管理を行ってもらうので、成年後見制度よりも柔軟な財産管理が可能です。
具体的には、下記に当てはまるケースでは成年後見制度よりも家族信託が向いています。

  • 不動産経営や株式投資などを所有していて柔軟な財産管理をしたい
  • 裁判所や第三者に関与されたくない
  • ランニングコストを安く抑えたい
  • 次の代まで相続人を指定したい

家族信託も他の対策同様に、認知症になっていてすでに判断能力を失っている人は活用できません。
利用を検討している人は、できるだけ早く司法書士や弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

家族信託の手続きを世界一わかりやすく解説!費用や専門家の選び方

まとめ

成年後見制度の申立時にかかる費用は約16~47万円程度ですが、鑑定の有無や依頼する専門家によっても費用は大きく変わってきます。
とはいえ、費用を抑えるために自分で成年後見制度の申立をする、安い事務所に依頼することは避けた方が良いでしょう。

というのも、成年後見制度申立時には、必要書類の収集や手続きだけでなく下記の想定や対策も必要だからです。

  • 本当に成年後見制度が必要なのか
  • 他の選択肢はないのか
  • 成年後見人候補者が認められなかった場合はどうするのか

上記について対策できる相続や認知症対策を専門にした事務所に相談することが何よりも大切です。
相続や認知症対策に精通した専門家であれば、本人や家族、資産状況に合った提案やサポートが可能です。

グリーン司法書士法人では、成年後見制度をはじめとする認知症対策に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

成年後見人の申立て費用を負担するのは誰?

成年後見制度の申立費用は、成年後見制度を利用する本人ではなく申立者が負担します。
しかし、成年後見制度の利用が開始された後に、申立者は制度利用者本人に対してかかった費用を請求可能です。
成年後見人の申立て費用について詳しくはコチラ

成年後見人の報酬は誰が払う?

成年後見制度の利用が開始された後に、成年後見人に支払う報酬を負担するのは制度利用者本人(被後見人)です。
成年後見人の報酬について詳しくはコチラ

成年後見制度の申立て費用はいくら?

成年後見制度を申立てる際には申立て費用や書類の収集費用などがかかり、合計6万~47万円程度かかります。

成年後見制度にかかる月額報酬はいくら?

成年後見人に司法書士や弁護士などの専門家が就いた場合は、月額2~6万円の費用がかかります。
財産額が5,000万円を超える場合は、基本報酬額が更に高額になります。

成年後見人は家族でもなれますか?

成年後見人は家族や親族でもなれますが、最終的に判断するのは家庭裁判所です。
そのため、希望の人物が必ず選ばれるとは限りません。
成年後見人になれる人物について詳しくはコチラ

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