成年後見人は家族や親族もなれる?なれないケースや就任時の注意点

成年後見人は家族や親族もなれる?なれないケースや就任時の注意点
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 6

成年後見制度を利用すれば、認知症になった人の契約行為や各種手続きを後見人が代わりに行えます。
後見人は司法書士や弁護士等の専門家にも依頼できますが、家族や親族などがなることも可能です。

後見人になるには特別な資格等は必要なく、欠格事由に該当しなければなることができるからです。
ただし、任意後見人になり制度を利用開始する際には、家庭裁判所にて任意後見監督人を選任する必要があるのでご注意ください。

また、成年後見制度のうち「法定後見制度」では家庭裁判所が後見人を選任するため、希望の人物が選ばれるとは限りません。
また、成年後見人の欠格事由に該当する場合には、家族や親族であっても成年後見人にはなれません。

本記事では、成年後見人は家族や親族でもなれるのか、なれないケースや家族が後見人になるときの注意点を解説していきます。


1章 成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症や知的障がいなどで判断能力が不十分と判断された人が、生活をしていく上で不利益を被らないように支援する制度です。
成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度の2種類に分かれています。

成年後見人は家族でもなれる?成年後見制度の全体像

上記のように、すでに認知症の症状が進行して判断能力を失った人は、法定後見制度のみを利用できます。
一方で、まだ判断能力がある人の場合には、任意後見制度のみ利用することができます。

成年後見人となった方は、後見制度を利用する人が行う手続きや契約行為をかわりに行うのが役目です。
家族や親族が成年後見人になれるのか、次の章で詳しく確認していきましょう。

成年後見制度とは?利用方法からメリットデメリットまで簡単理解!
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2章 成年後見人は家族や親族もなれる?

結論から言えば、家族や親族も成年後見人になることは可能です。
ただし、法定後見人と任意後見人は選び方が異なるのでご注意ください。
法定後見人と任意後見人の選任方法を詳しく解説していきます。

2-1 法定後見人は家庭裁判所が選任する

法定後見制度の場合は、申立て時に家族や親族を法定後見人候補として指定可能です。
ただし、最終的に法定後見人を選任するのは家庭裁判所であり、全てのケースで希望通りの法定後見人が選ばれるわけではありません。

実際には、法定後見制度申立て時に家族や親族を後見人候補に指定しておけば、希望が通りやすいのは確かです。
しかし、申立て後は家庭裁判所は被後見人の家族に対し、後見人候補に問題はないか確認を行います。
確認の結果、後見人候補による財産の使い込みが疑われる場合や後見人候補と家族でトラブルが起きていることがわかった場合には、候補者以外の専門家等が法定後見人として選任される場合が多いです。

家族や親族が法定後見人になれないケースは、3章で詳しく解説していきます。

2-2 任意後見人は希望の人物を指定できる

任意後見制度では、制度を利用する人が判断能力が十分あるうちに、希望の人物を任意後見人として指定可能です。
そのため、3章で詳しく解説する成年後見人の欠格事由に該当しない場合には、家族や親族なども後見人になれます。

ただし、実際に任意後見制度の利用を開始するときには、家庭裁判所に後見監督人を選任され、後見人の行う業務を監督します。

次の章では家族や親族が成年後見人になれないケースを解説していきます。


3章 家族や親族が成年後見人になれないケース

全ての成年後見制度で、家族や親族が後見人になれるわけではありません。
家庭裁判所に「不適切と判断されるケース」や「家族や親族が欠格事由に該当しているケース」では、後見人になれないので注意が必要です。
家族や親族が成年後見人になれないケースは、主に以下の3つです。

  1. 後見人候補と他の親族が争っているケース
  2. 後見人は専門家が適切と判断されるケース
  3. 家族や親族が欠格事由に該当するケース

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1 後見人候補と他の親族が争っているケース

後見人候補と他の家族や親族が争っていて意見が対立している場合には、候補者が後見人になることはできません。
後見人と他の家族でさらにトラブルが激化してしまう恐れがあるからです。

家庭裁判所に法定後見制度の申立ての際には、制度利用者の法定相続人にあたる人物全員の同意書が必要です。
全員分の同意書を提出できない場合には、候補者と他の家族や親族が争っていると判断され、候補者が後見人になることは認められません。

3-2 後見人は専門家が適切と判断されるケース

後見人候補とそれ以外の家族や親族間でトラブルがなくても、後見人は専門家が適切と家庭裁判所が判断する場合があります。
具体的には、以下のケースでは、家族ではなく専門家が後見人として適切と判断されやすいです。

  • 本人と候補者の居住地が遠いケース(東京-大阪)
  • 遺産分割協議中などで利益が相反しているケース
  • 財産の使い込みが疑われるなどこれまでの財産管理が不適切だったケース
  • 法律上、複雑な財産管理があるケース
  • 財産額がとても多いケース

このように、家庭裁判所では様々な要素を検討し、総合的に後見人を選任しています。

3-3 家族や親族が欠格事由に該当するケース

成年後見人になれない人

成年後見人には欠格事由が定められており、該当する方は制度利用者の家族や親族であっても、後見人になれません。
成年後見人の欠格事由は、以下の通りです。

  • 未成年者
  • 過去に後見人を含む法定代理人を解任されたことがある人
  • 破産者
  • 後見制度を利用する人に訴訟を起こした人とその配偶者
  • 行方不明者
  • その他、不正な行為を行うなど後見人に適さない経歴がある人

成年後見人の候補者が上記の欠格事由に該当する場合、専門家などが後見人として選任されます。
例えば、被後見人に対して過去に訴訟をしたことがある人は、欠格事由に該当し成年後見人にはなれません。

なお、希望した人が後見人に選ばれなかったとしても、成年後見制度の申立てを取り下げることはできないのでご注意ください。

また、後見人には役割や年に1度の報告義務があり、労力がかかります。
次の章では、家族が後見人になる場合の注意点を紹介していきます。


4章 家族や親族が成年後見人になるときの注意点

家族や親族が成年後見人になれたとしても、制度を利用する人の財産を自由に処分できるわけではありません。
また、一度成年後見人になると途中で簡単には辞められず、年に1度の報告義務があるなど、とても労力がかかる制度と言えます。

家族が成年後見人になるときには、以下の4点にご注意ください。

  1. 成年後見人は途中で辞められない
  2. 1年に1度の報告義務がある
  3. 成年後見監督人が就く場合もある
  4. 重要な財産の処分には家庭裁判所の許可が必要

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 成年後見人は途中で辞められない

一度、成年後見人になってしまうと家庭裁判所によって解任もしくは辞任が認められない限り、成年後見人を辞めることはできません。
「面倒・大変だから辞めたい」「財産を自由にできないなら辞めたい」などの理由では、裁判所に辞任を認められない可能性が高いので注意が必要です。

4-2 1年に1度の報告義務がある

成年後見人は、制度利用者が亡くなるまで家庭裁判所に1年に1度、制度利用者の財産に関する報告を行う義務があります。
報告義務は、成年後見人が後見人自身の財産と制度利用者の財産を分けて管理できているか確認するために行われます。

毎年報告書を用意する手間がかかりますし、後見制度の利用者が亡くなった際には相続人への連絡や相続財産の引き渡しも行わなければなりません。
このように、成年後見人の労力は大きいので軽い気持ちで引き受けるのは避けましょう。

4-3 成年後見監督人が就く場合もある

家族や親族が成年後見人になった場合には、成年後見監督人が就く場合があります。
なお、任意後見制度の場合では、成年後見監督人が必ず選ばれます。

成年後見監督人は名前の通り、成年後見人の業務を監督するのが役割です。
例えば、制度利用者の財産を処分する際には、家庭裁判所だけでなく成年後見監督人の許可も必要になります。

また、成年後見監督人が就いた場合には毎月1~2万円程度の報酬が継続してかかります。

4-4 重要な財産の処分には家庭裁判所の許可が必要

成年後見人は不動産の売却など制度利用者にとって重要な財産を処分する際には、家庭裁判所の許可が必要です。
成年後見人になったからといって、預かっている財産を自由に扱えるわけないので注意が必要です。

このように、成年後見制度は後見人の負担が大きい制度でもあります。
また、後見人になったからといって制度利用者の財産を自由に処分することは認められていません。

相続対策の手間を減らしたい、財産の管理や運用、処分を自由に行えるようにしたいのであれば、成年後見制度以外の相続対策もおすすめです。
次の章では、成年後見制度以外の相続対策を紹介していきます。


5章 成年後見制度以外の相続対策

最後に、成年後見制度以外の相続対策を紹介していきます。
成年後見制度以外の相続対策を利用すれば、より自分の希望に沿った財産の引継ぎができる場合もあります。
相続対策としておすすめの方法は、主に以下の3つです。

  1. 遺言書を作成する
  2. 生前贈与を行う
  3. 家族信託を行う

ただし、相続対策は本人の判断能力が十分ある状態でないと認められません。
そのため、認知症の症状が進行している人は利用できない恐れがあるので、ご注意ください。
一方で、物忘れが激しいときがあるなど認知症の症状が軽度であれば、これから紹介する相続対策が利用できる可能性があります。

それぞれの相続対策について詳しく解説していきます。

5-1 遺言書を作成する

認知症の症状が軽度であれば、遺言書の作成が認められる場合があります。
自分が希望する形で相続を行いたいのであれば、遺言書を作成するのが良いでしょう。

成年後見制度以外の相続対策の一つに遺言書を作成する方法もあります。

遺言書を作成すれば親が希望する相続を指定できます。
ただし、法的に認められる遺言書を作成するのであれば、決まった形式を守らなければなりません。

また、相続発生後のトラブルを避けるために遺言書を作成するときには、遺留分を考慮しておく必要もあります。

法的に有効、かつ遺留分を考慮した遺言書を作成したいのであれば、司法書士や弁護士といった専門家に相談するのがおすすめです。

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5-2 生前贈与を行う

認知症の症状が軽度であれば、生前贈与をしてしまい親から子供に財産を移してしまうのも有効です。

成年後見制度以外の相続対策の一つに生前贈与を行う方法もあります。

生前贈与を行えば財産の所有権が子供に移るので、子供が自由に管理運用や処分可能です。
なお、贈与財産の評価額が110万円を超える場合には、贈与を受けた側に贈与税がかかる点にご注意ください。
一定の要件を満たせば税控除や特例が使用できるので、贈与税を大幅に節税できます。

また、生前贈与を行う際には、司法書士や弁護士などの専門家に相談して贈与契約書の作成や名義変更手続きを依頼すると安心です。

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5-3 家族信託を行う

家族信託とは、所有する財産を家族に信託し、管理や運用、処分をしてもらう制度です。

成年後見制度以外の相続対策の一つに家族信託を行う方法もあります。

成年後見制度と比較して、信託契約の内容によっては自由度が高く、柔軟に財産の管理や運用、処分をできるのが魅力です。

ただし、家族信託が利用できるのも認知症の症状が軽度であり、判断能力が残っている場合のみです。
認知症の症状が進行している場合には、残念ながら成年後見制度しか利用できません。

家族信託は信託契約書の作成手続きや信託不動産の名義変更登記などが必要です。
自分で手続きを行うのは大変なので、家族信託に詳しい司法書士や弁護士等への相談もご検討ください。

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まとめ

成年後見制度を利用すれば、認知症になって判断能力が失われた人の財産を管理しやすくなります。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、どちらも家族や親族が後見人に就任可能です。
ただし法定後見制度の場合は、家庭裁判所が最終的に後見人を決定するので、全てのケースで家族や親族が後見人になれるわけではありません。

具体的には、候補者が欠格事由に該当する場合や候補者と他の家族や親族が揉めている場合には、候補者以外の人物が後見人として選任されます。
また、家族が後見人になれたとしても、財産を自由に管理や処分できるわけではなく、年に1度の報告義務もあり労力がかかります。

もっと自由に財産を管理、運用したいと考える場合や制度利用者が元気で判断能力が十分である場合には、成年後見制度以外の相続対策を検討するのも良いでしょう。

グリーン司法書士法人では、成年後見制度を始めとした相続対策に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

成年後見人は家族でもなれますか?

成年後見人は家族や親族でもなれますが、最終的に判断するのは家庭裁判所です。
そのため、希望の人物が必ず選ばれるとは限りません。
▶成年後見人になれる人物について詳しくはコチラ

成年後見人になることができない人は?

成年後見人になれない人物は、下記に当てはまる人物です。
・他の親族が争っている人
・欠格事由に該当する人
上記以外にも、専門家が適切と判断される場合には家庭裁判所が専門家を後見人に選ぶ場合があります。
▶成年後見人になれない人物について詳しくはコチラ

家族や親族が後見人になるデメリットとは?

家族や親族が成年後見人になるときには、下記のデメリットを理解しておきましょう。
・成年後見人は途中で辞められない
・1年に1度の報告義務があり負担が大きい
・成年後見監督人が就く場合もある
・重要な財産の処分には家庭裁判所の許可が必要となる

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