生活費や教育費の援助をしても夫婦間では贈与税がかかりません。
しかし夫婦間であっても名義人以外が住宅ローンを返済する、夫名義の住宅の頭金を妻が負担するケースなどでは贈与税の課税対象となります。
年間110万円を超える金額で住宅ローン返済の肩代わりや頭金を負担すると、贈与税がかかる恐れがあるのでご注意ください。
住宅購入や住宅ローン返済は夫婦間であっても贈与税の発生に注意し、支払担当者と名義人を一致させなければなりません。
本記事では、住宅購入や住宅ローン返済で夫婦間で贈与税が発生するケースや贈与税の負担を抑える方法を解説します。
夫婦間で贈与税がかかるケースは、下記の記事もご参考にしてください。
目次
1章 住宅ローンの資金援助には夫婦でも贈与税がかかる
結論から言うと夫婦間でも贈与は成立しますし、中でも住宅購入や住宅ローンの返済費用の援助は贈与税の課税対象となります。
一方で、夫婦間で生活費や教育費を援助した場合、贈与税はかかりません。
夫婦間で贈与や資金移動をするときは、資金の使用目的や贈与目的に注意しましょう。
2章 住宅購入で夫婦間で贈与税が発生するケース
住宅購入は人生の中でも金額の大きい買い物のひとつであり、購入資金の取り扱いには注意が必要です。
夫婦が自己判断で資金を移動し住宅を購入すると、贈与税がかかってしまう恐れがあります。
具体的には、下記の4つのケースは夫婦間であっても贈与税がかかります。
- 夫名義の住宅ローンを妻の収入から支払う
- 夫名義の住宅の頭金を妻が支払う
- 夫名義の住宅ローンの自宅を夫婦の共同名義で登記する
- ペアローンを夫の単独名義の住宅ローンに借り換える
それぞれ解説していきます。
2-1 夫名義の住宅ローンを妻の収入から支払う
夫名義で組んだ住宅ローンの返済を妻の収入から支払うと、贈与税がかかってしまいます。
夫婦間であれば生活費や教育費などの贈与には、贈与税がかかりません。
しかし、住宅ローンの返済を夫もしくは妻がかわりに行うことは個人の財産に対する贈与と判断され、贈与税の課税対象となります。
2-2 夫名義の住宅の頭金を妻が支払う
土地と建物の名義がすべて夫であるにもかかわらず、頭金を妻の財産から支払った場合、贈与税がかかる恐れがあります。
2-3 夫名義の住宅ローンの自宅を夫婦の共同名義で登記する
住宅ローンを夫名義で組んだにもかかわらず自宅の名義を夫婦の共有名義にした場合、夫から妻への贈与として扱われてしまいます。
購入した不動産を共有名義にする際は、持分はそれぞれの負担額に応じて決めなければならないからです。
例えば、頭金もすべて夫が出し住宅ローンも夫が返済するにもかかわらず、自宅の名義を夫婦で半分ずつにした場合は贈与税がかかります。
2-4 ペアローンを夫の単独名義の住宅ローンに借り換える
ペアローンを夫の単独名義に借り換えると、一括返済したペアローンの妻側の残債分に贈与税がかかってしまいます。
例えば、ペアローンの残債が夫婦それぞれ2,000万円ずつ残っている状態で夫単独の住宅ローンに借り換えた場合、夫から妻に2,000万円の贈与をした扱いになります。
住宅購入時はペアローンを組んだものの妻の妊娠や出産を機に単独名義に切り替えるケースは多いので、特に注意が必要です。
住宅ローンの返済の肩代わりや生活費や教育費以外の贈与には、贈与税がかかる場合があります。
一方で、離婚による財産分与をする場合は預貯金の移動や不動産を贈与しても贈与税の課税対象にはなりません。
ただし、夫婦のどちらか片方に著しく偏った財産分与や贈与税回避のために離婚し財産分与している状態と疑われる場合は贈与税がかかります。
3章 住宅購入・ローン返済で夫婦間の贈与税を回避する方法
先ほど解説したように、住宅購入時に贈与や資金移動を行うと、夫婦間であっても贈与税がかかる恐れがあります。
贈与税を抑えるには、控除の利用や不動産の持分を贈与に応じて変更しましょう。
具体的には、下記の3つの方法で贈与税がかかることを回避可能です。
- 頭金相当額を妻名義で登記する
- 住宅ローン借り換え時に負担付贈与をする
- 贈与税の配偶者控除を利用する
それぞれ解説していきます。
3-1 頭金相当額を妻名義で登記する
夫名義で住宅ローンを組み妻が自分の貯金から頭金を支払う場合は、夫婦それぞれが負担した割合に応じて不動産の登記申請を行いましょう。
不動産の名義を夫の単独名義ではなく頭金相当分を妻名義にするのであれば、贈与税がかかることはありません。
3-2 住宅ローン借り換え時に負担付贈与をする
ペアローンから単独名義のローンに借り換えるときは、負担付贈与にすれば贈与税がかかりません。
負担付贈与とは、贈与をするかわりに受贈者に対して何らかの負担を課す贈与です。
夫が借り換え時に一括返済する妻分の住宅ローンに相当する妻の持分を夫の持分として移転すれば、負担付贈与として扱われるので贈与税の発生を抑えられます。
なお、後々トラブルの発生や税務署からのお尋ねを避けるためにも、負担付贈与の契約書を作成しておくと良いでしょう。
持分の名義変更手続きや贈与契約書の作成は自分たちでもできますが、司法書士に依頼するのが確実です。
3-3 贈与税の配偶者控除を利用する
贈与税の配偶者控除を利用すれば、居住用不動産の取得費用や自宅の贈与にかかる贈与税を大幅に節税可能です。
贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)とは、婚姻期間ぎ20年を超える夫婦が居住用不動産もしくは取得費用を贈与した場合、2,000万円まで贈与税がかからなくなる制度です。
贈与税の配偶者控除は暦年贈与の非課税枠とも併用できるので、その年の贈与を2,110万円まで非課税にできます。
まとめ
住宅ローンの資金援助や住宅購入時の頭金を名義人以外が負担すると、夫婦間であっても贈与税の課税対象になります。
贈与の金額が年間110万円を超えると、贈与税がかかるのでご注意ください。
住宅ローン返済や住宅購入時に発生する贈与税を抑えるには、頭金や住宅ローン返済を負担した人物にも不動産の持分を所有させる必要があります。
負担額に応じて共有持分で登記申請しておけば、贈与税がかかることはありません。
共有状態で不動産の登記申請を行う際やペアローンの借り換え時に負担付贈与の贈与契約書を作成する際には、専門的な知識や経験が必要な場合もあります。
後々のトラブルや税務署からの指摘を避けたいのであれば、贈与に詳しい司法書士に相談しましょう。
グリーン司法書士法人では、登記申請や生前贈与に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料ですし、生前贈与に詳しい税理士の紹介も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
夫婦間で住宅贈与する場合の贈与税の非課税額は?
贈与税の配偶者控除を利用すれば、夫婦が居住用不動産もしくは取得費用を贈与した場合、2,000万円まで贈与税がかからなくなります。
▶夫婦間の住宅贈与の非課税措置について詳しくはコチラ住宅ローンの頭金を妻が支払うと贈与税がかかる?
土地と建物の名義がすべて夫であるにもかかわらず、頭金を妻の財産から支払った場合、贈与税がかかる恐れがあります。
▶住宅ローンの支払いで贈与税がかかるケースについて詳しくはコチラ