夫婦で贈与税が発生するケース/しないケース【不動産贈与は特例あり】

夫婦で贈与税が発生するケース/しないケース【不動産贈与は特例あり】
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 5

旦那さんが奧さんに生活費を渡しても、贈与税はかかりません。
一方で、投資に使用するお金を旦那から妻に贈与した場合には、夫婦であっても贈与税が課税される恐れがあります。

このように、夫婦間の贈与に贈与税がかかるかどうかは、個々の事情によって左右されるため、多額の財産を贈与する際には贈与税がかかるか事前に確認しておくのが良いでしょう。
本記事では、夫婦間で贈与税がかかるケースとかからないケースを詳しく紹介していきます。

贈与税の計算方法については、下記の記事で詳しく解説しているのであわせてご参考ください。

贈与を受けると申告が必要?申告・節税方法や相続税との違い

1章 夫婦間で贈与税がかからないケース

夫婦には互いに扶養義務があるため、生活費や教育費などを贈与したとしても、贈与税がかかることはありません。
夫婦間の贈与で贈与税がかからないケースは、主に下記の通りです。

  1. 生活費や教育資金のやり取りをする場合
  2. これから行う結婚式費用などの一元管理をする場合
  3. 1年に110万円以内の贈与をする場合
  4. 不動産の贈与で配偶者控除を受ける場合
  5. 不動産の購入・建築資金としてお金を贈与して配偶者控除を受ける場合
  6. 離婚による財産分与をする場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1-1 生活費や教育資金のやり取りをする場合

夫婦の場合、生活費や教育費のための資金の移動は日常的にやむを得ないものとして認められます。
このようなものにまでいちいち贈与税が課税されると、世の中で夫婦が普通の生活を送るのが困難となってしまうからです。

したがって、生活費や子どもの教育資金についてのやり取りがあっても贈与税は課税されません。
具体的には、以下のような場合、贈与税の課税対象外です。

  • 夫が毎月妻に生活費を30万円渡している
  • 家具を購入するために200万円を渡した
  • 子供の学費のため、500万円を相手の口座に振り込んだ
  • 夫が妻に、買い物などの普段使いの自家用車を買い与えた

ただし「生活費や教育費のため」とは言ってもそれが「過大」であれば、通常必要な部分を超過する部分に贈与税がかかる可能性があるのでご注意ください。
また生活費や教育費として支払われたにもかかわらず、実際にはへそくりで貯蓄にまわしたり投資したりしたら、贈与税の課税対象になる可能性があります。

1-2 これから行う結婚式費用などの一元管理をする場合

近々結婚式を行うので、夫婦のどちらかの名義の口座に資金をまとめて一元管理する場合などには、預けただけなので贈与税はかかりません。

1-3 1年に110万円以内の贈与をする場合

夫婦間で贈与する場合であっても、年間110万円分までなら贈与税はかかりません。
例えば預貯金や保険、貴金属や自動車などいろいろな財産の種類がありますが、どのようなものでも1年に110万円以内の評価額であれば無税で贈与できます。

これを暦年贈与と言います。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

【暦年贈与とは】相続税をしっかり節税!概要と効果を分かり易く解説

1-4 不動産の贈与で配偶者控除を受ける場合

夫婦間で居住用の不動産を贈与するときには「配偶者控除」を受けられるケースがあります。
贈与税の配偶者控除を適用すると、2,000万円分までの評価額であれば、無税で不動産を贈与できます。

配偶者控除の特例は上記の110万円の基礎控除と併用できるので、2,110万円分までの不動産であれば贈与税がかかりません。

贈与税の配偶者控除は本当にお得なの?メリットデメリットを徹底解説

1-5 不動産の購入・建築資金としてお金を贈与して配偶者控除を受ける場合

夫婦間で「居住用不動産の購入・建築資金」を贈与するときにも、配偶者控除を利用できる場合には2,000万円までは無税でお金を贈与できます。
110万円の基礎控除と合わせると、2,110万円の贈与までは贈与税がかからなくなります。

1-6 離婚による財産分与をする場合

夫婦が離婚し財産分与をする場合、資産の移動があっても贈与税はかかりません。
加えて、慰謝料の支払いなども同様に非課税であり、110万円を超える財産のやり取りがあっても基本的には贈与税がかかりません。

ただし、離婚による財産分与や慰謝料が非課税になるのは、あくまでも「離婚成立後」という点です。
これは、離婚後の財産分与は、財産関係の清算や元配偶者の生活を保障する義務(財産分与義務)に即した、財産の受け渡しであるからです。

したがって、離婚することが2人の間では決まっている夫婦間でも、「離婚成立前」に贈与が行われると、贈与税が課されます。
また、財産分与や慰謝料の金額が常識的な範囲を超える場合も贈与税がかかる恐れがあるのでご注意ください。

財産分与|離婚時に損をしないで賢くもらう方法・注意点を詳しく解説!
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2章 夫婦間の贈与に贈与税がかかるケース

先ほどの章で解説したように、生活費や教育費を夫婦間で贈与した場合は贈与税がかかることはありません。
一方で、下記のケースに該当する場合、夫婦間であっても贈与税がかかるのでご注意ください。

  1. 生活費以外のお金の移動が行われたケース
  2. 資金を出していないのに購入した不動産を共有名義にするケース
  3. 過大なプレゼントをもらったケース
  4. 専業主婦がへそくりで高額な資産を購入したケース
  5. 配偶者特例を受けられないケース

それぞれ詳しく見ていきましょう。

2-1 生活費以外のお金の移動が行われたケース

夫婦間の場合、家賃や食費など日常生活に通常必要な資金の移動であれば、贈与税はかかりません。
しかし、それ以外の場合であれば、贈与税がかかる可能性があります。

例えば、投資のために相手にまとまった現金を渡した場合や、特に意味もなく相手名義の口座に数百万円のお金を振り込んで貯蓄に回した場合などには、贈与税が課税される可能性があります。

2-2 資金を出していないのに購入した不動産を共有名義にするケース

不動産を購入して「共有名義」にするときにも注意が必要です。
共有名義にしても贈与税がかからないのは、共有持分に応じて夫婦が資金を出している場合です。

資金を出していないにもかかわらず不動産の持分を取得すると、相手から「資金を出してもらった」ことになるので贈与税の課税対象になります。
例えば、5,000万円の不動産を購入するとき、夫が全額資金を出したとします。
このとき、全部夫名義にしたら贈与税はかかりませんが、妻の名義を半分入れると、夫から妻へ2,500万円分の贈与をしたことになるので、贈与税が発生します。

住宅ローン返済で夫婦間で贈与税がかかるケースとは|節税方法も紹介

2-3 過大なプレゼントをもらったケース

夫婦間で誕生日や結婚記念日などにプレゼントをしても、通常は日常生活に附随するものとして贈与税の課税対象にはなりません。
ただし、プレゼントとしてあまりに過大な場合には、贈与税が発生する可能性があります。

例えば、誕生日プレゼントで1,000万円もする高級外車をプレゼントしたら、贈与税が発生する可能性が高くなります。

2-4 専業主婦がへそくりで高額な資産を購入したケース

専業主婦がへそくりを貯めて高額な資産を購入した場合、贈与税がかかる恐れがあるのでご注意ください。
専業主婦の場合、へそくりの原資は夫のものとして考えられるからです。

また、夫が亡くなったときに専業主婦の妻にへそくりがあると、夫の名義預金として扱われ、へそくりに対して相続税がかかる恐れがある点にも注意しておきましょう。

名義預金とは?税務調査で指摘されるケースや対策方法まとめ

2-5 配偶者特例を受けられないケース

居住用の不動産を贈与する場合や居住用不動産の購入資金を贈与する場合でも、配偶者控除の特例を受けられなければ通常一般と同様に贈与税が課税されます。
(贈与税の配偶者控除については次章で詳しく解説しています。)

例えば、婚姻期間が20年未満の夫婦には配偶者控除が適用されないので、家を相手名義に変えたら高額な贈与税がかかります。


3章 不動産の贈与は「配偶者控除2,000万円」の特例制度を利用しよう

贈与税の配偶者控除

贈与税の配偶者控除を利用すると、居住用不動産および不動産の購入費用が2,000万円まで非課税で贈与できます。
そのため、配偶者間で不動産を贈与するときには「贈与税の配偶者控除」を利用するのが良いでしょう。

夫婦が長年連れ添っていると、お互い年も取ってきてどちらかが先に死亡する可能性も現実化します。そんなとき、残される配偶者としては、できるだけ家を確保したいと考えるでしょう。
そこで、生前であっても家を配偶者に贈与しやすくするため、配偶者間であれば2,000万円まで贈与税を課税しないという特例を設けています。

配偶者控除の適用対象になるのは、以下のような贈与です。

  • 居住用不動産そのものの贈与
  • 居住用不動産を購入する資金の贈与
  • 居住用不動産を建築する資金の贈与

不動産をそのまま贈与した場合に限らず、資金贈与のケースでも控除対象になります。

3-1 特例が適用されるための条件

贈与税の配偶者控除が適用されるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 夫婦の婚姻期間が20年を超えている
  • 居住用不動産の贈与または居住用不動産を取得するための金銭の贈与である
  • 贈与を受けた翌年の3月15日までに、贈与を受けた配偶者が対象の不動産に現実に住んでいて、その後も引き続き住み続けること
  • 居住用不動産が国内に存在すること
  • 同じ配偶者からの贈与では、今回、初めて配偶者控除を受けること

3-2 配偶者控除特例を利用する方法

配偶者控除の摘要を受けるには、以下の書類を添付して「贈与税の申告」をしなければなりません。
申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日までに税務署にて行います。

贈与税の申告時には、申告書と共に下記の書類を用意しましょう。

  • 贈与を受けて10日以降に作成された戸籍謄本または抄本
  • 贈与を受けて10日以降に作成された戸籍の附票
  • 居住用不動産の登記事項証明書(贈与を受けた人の名義になっている必要がある)

3-3 贈与税の配偶者控除を受ける際の注意点

贈与税の配偶者控除を受けるためには、きちんと夫婦間で「贈与契約書」を作成しておくべきです。
そうしないと「贈与があったこと」を証明しにくくなるからです。

また、贈与税申告に際しては、不動産が贈与を受けた人の名義になっている必要があります。
そのため、贈与税の申告前に不動産の名義変更を完了しておかねばなりません。
しかし、自分たちだけで贈与にもとづく不動産の名義変更登記をするのは大変です。

司法書士にご相談いただけましたら、夫婦間の贈与で必要な贈与契約書の作成から贈与にもとづく不動産の所有名義変更登記まで、一括してスムーズに対応させていただけます。
特例を適用して最大2,000万円(基礎控除と合わせると2,110万円)分の贈与を無税にしてもらえると大変助かりますので、夫婦間の贈与をご検討ならば、ぜひともご相談ください。

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まとめ

夫婦間の贈与で贈与税がかかるかどうかは、ケースバイケースのため、贈与する際には税金がかかるか事前に確認しておきましょう。
また、不動産もしくは不動産取得用の資産を夫婦間で贈与したいのであれば、贈与税の配偶者控除を適用できる可能性があります。

贈与税の配偶者控除を適用すれば、最大2,000万円まで贈与税を非課税にできるので大変お得です。
ただし、贈与税の配偶者控除を適用する際には、贈与した不動産の名義変更や贈与税の申告が必要となるのでご注意ください。

不動産の名義変更手続きは自分で行うだけでなく、司法書士に依頼することもできるので、ミスなく確実に手続きを行いたいのであれば、依頼することもご検討ください。
グリーン司法書士法人では、贈与契約書の作成や名義変更手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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