
- 親が認知症かどうか確かめる方法
- 親が認知症だと診断されたときの対処法
- 認知症になったときの財産管理方法
親のもの忘れや性格の変化に気づいたとき、「年のせいだろう」と見過ごしてしまう方は少なくありません。
しかし、そのような変化が認知症の初期サインである可能性もあるので注意しなければなりません。
認知症は早期に気付くことで、進行を緩やかにできる場合や、治療可能な病気が見つかるケースもあります。
反対に、認知症になった親を放置していると、判断能力が失われてしまい、資産が凍結されてしまう恐れもあるのでご注意ください。
本記事では、親が認知症かどうかチェックするリストと共に、認知症と診断されたときの対処法を解説します。
1章 親が認知症かどうかのチェックリスト
認知症の初期症状はある程度共通しており、普段よく接している子供が親の様子や変化を見て「もしかしたら認知症かもしれない」と気付ける可能性もあります。
親が認知症かどうかは、下記のような項目で確認できます。
- もの忘れが増えてきた
- 自分が置かれている状況を理解できなくなってきた
- 理解力や判断力が低下してきた
- 料理などの家事ができなくなってきた
- 性格が急に変わった
ただし、これらは簡易的なチェックリストであり、最終的に認知症かどうかの診断は医療機関で行います。
1-1 もの忘れが増えてきた
加齢による物忘れは誰にでもありますが、認知症の初期では細かい内容を忘れるのではなく、体験そのものを忘れる傾向が目立ってきます。
例えば、以下のような変化が見られる場合には、認知症の初期段階である可能性があります。
- 同じ話を短時間に何度も繰り返す
- 約束をしたこと自体を覚えていない
- 財布や通帳を頻繁になくし、探した記憶もない
ただし、本人に自覚がなく指摘すると強く否定する場合もあるので、慎重に様子を見ていくことが重要です。
1-2 自分が置かれている状況を理解できなくなってきた
認知症の初期症状のひとつに、日時や場所、人との関係性があいまいになるというものがあります。
下記のような様子が見られる場合には、医療機関の受診などを検討しましょう。
- 今日は何曜日か分からない
- 今いる場所を説明できない
- 子や孫の年齢・立場を取り違える
しかし、初期の認知症では本人も自分の変化に不安を感じている可能性があります。
そのため、何かわからないことがあった際や会話がかみ合わないことがあった際に本人がごまかす様子がみられることもあります。
1-3 理解力や判断力が低下してきた
認知症では、複数の情報を同時に処理する力が低下することがあります。
具体的には、役所の書類や金融機関からの通知が理解できなくなったり、詐欺的な電話や訪問販売を疑わずに受け入れてしまったりすることがあります。
1-4 料理などの家事ができなくなってきた
これまで当たり前にしてきた家事が急に難しくなるのも、認知症の症状のひとつです。
具体的には、以下のような変化が見られることがあります。
- 料理の手順が分からなくなる
- 同じ味付けばかりになる
- 同じ食材を大量に購入してしまう
- 火の消し忘れが増える
- 洗濯や掃除の途中で忘れてしまい放置してしまう
料理や買い物、掃除などの家事は段取りが必要であり、認知症になると、これらの作業が難しくなることがあります。
本人も家事の失敗が増えたことにより不安を感じ、「最近は家事が面倒に感じている」「家事のやる気がない」などと周りに伝えることもあります。
本人の主張だけでなく、普段の生活の様子に気を配ることが大切です。
1-5 性格が急に変わった
認知症では、感情のコントロールが難しくなり、性格が変わったように見えることがあります。
例えば、穏やかだった人が怒りっぽくなったり、疑い深くなったりすることもあるでしょう。
本人も感情のコントロールがつかず、不安を抱えていたり、混乱状態になっていたりすることもあります。
そのため、周囲が変化を責めすぎず、受け止めていくことが重要です。
2章 親が認知症か確かめる方法
普段の生活の様子から、親が認知症かどうか簡易的に確かめることはできます。
しかし、最終的に認知症か確かめるには医療機関を受診する必要があります。
医療機関では、以下のような方法で認知症かを総合的に確認していきます。
- 医師などによる問診
- 認知機能テスト
- 画像検査
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 医師などによる問診
最初に行われるのが、医師による問診です。
本人から現在の体調や困っていることを聞くだけでなく、家族からの情報提供も非常に重視されます。
認知症の初期段階であり、本人の受け答えがある程度できる場合、物忘れや困り事などを隠すケースも見られます。
そのため、受診時には子供も同席し、本人が自覚していない症状やあまり言いたがらない症状についても伝えられると良いでしょう。
2-2 認知機能テスト
医師による問診だけでなく、認知機能テストも行われることがほとんどです。
質問に答えたり、簡単な計算や図形の模写をしたりすることで、記憶力や理解力、判断力などを客観的に評価します。
テスト結果だけで認知症であると確定するわけではありませんが、年齢相応かどうか、低下の傾向があるかを判断する重要な材料のひとつになります。
2-3 画像検査
必要に応じて、CTやMRIなどの画像検査も行われることがあります。
これにより、脳の萎縮の有無や、脳梗塞・出血など他の病気が原因ではないかを確認します。
認知症と似た症状でも、治療可能な疾患が隠れているケースもあるため、画像検査は鑑別の意味でも重要となります。
3章 親が認知症だと診断されたときの対処法
親が認知症だと診断されたときには、普段の生活支援を整えていくだけでなく、資産凍結に備えて対策をしていく必要があります。
具体的には、以下のような対処をしていきましょう。
- 資産状況を確認する
- 資産の凍結を防ぐために対策する
- 認知症の治療を受けてもらう
- 地域包括支援センターに相談する
- 車の運転を止めてもらう
- 今後起きうるトラブルについて把握しておく
- 本人の不安な気持ちに寄り添ってあげる
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 資産状況を確認する
まず取り組みたいのが、親の資産状況の把握です。
認知症の症状が進むと、どのような資産を所有しているのか、資産に関する情報の保管場所などについて、本人もわからなくなってしまうことがあるからです。
そのため、本人だけでなく、子供や家族も資産状況を把握しておくことが理想です。
3-2 資産の凍結を防ぐために対策する
認知症の症状が進行し、判断能力がないと判断されると、銀行口座が凍結されたり、自宅の売却手続きを行えなくなったりすることがあります。
そのようなケースでは、生活費や介護費用の支払いにも支障が出かねません。
このような事態を防ぐために、認知症になる前か初期段階のうちに、家族信託や任意後見制度の利用を検討しましょう。
3-3 認知症の治療を受けてもらう
認知症は完治が難しい病気ですが、治療やケアによって進行を緩やかにすることは可能です。
医師の指示のもとで適切な薬物治療を受けることで、症状が安定し、日常生活が送りやすくなるケースもあります。
また、治療を通じて、親本人が病気を受け入れやすくなることもあります。
家族としては、無理に説得するのではなく、不安に寄り添いながら受診を支える姿勢が大切です。
3-4 地域包括支援センターに相談する
認知症と診断されたら、早めに地域包括支援センターへ相談することをおすすめします。
地域包括支援センターは、高齢者やその家族を支援する公的な窓口で、介護サービスの案内だけでなく、医療・福祉・法律面の相談にも対応しています。
「どんな支援が受けられるのか」「今後、どのタイミングで何を考えるべきか」といった点を整理できるため、家族の負担軽減にもつながります。
1人で抱え込まず、地域の支援を活用していきましょう。
3-5 車の運転を止めてもらう
認知症と診断された場合、車の運転を止めてもらうことも非常に大切です。
判断力や注意力が低下した状態での運転は、本人だけでなく周囲の命にも関わる重大な事故につながりかねません。
とはいえ、運転は生活の自立と強く結びついているため、突然「もう運転してはいけない」と伝えると、強い反発や喪失感を招くことがあります。
医師による意見や診断結果を踏まえ、「安全のため」「一時的な対応」といった形で段階的に話を進めていきましょう。
家族の送迎や公共交通機関、タクシー利用などの代替手段を用意することも重要です。
3-6 今後起きうるトラブルについて把握しておく
認知症が進行することにより起こりうる様々な生活上・法的なトラブルも事前に把握しておきましょう。
例えば、金銭管理ができずに未払いが発生したり、訪問販売や詐欺被害に遭ったりするケースもあります。
また、介護が必要になった際に、誰がどこまで支援するのかを巡って家族間で意見が分かれることもあるでしょう。
このような事態を「起きてから考える」のではなく、起こり得る問題として事前に知っておくことが重要です。
あらかじめ想定しておけば、冷静に対応しやすくなり、親本人の不利益を最小限に抑えられるはずです。
3-7 本人の不安な気持ちに寄り添ってあげる
認知症と診断された本人は、周囲が思っている以上に不安や恐怖を抱えています。
特に、認知症の初期段階では、ある程度、自分の意識もしっかりしており、以下のように悩まれる方もいます。
- 「自分が自分でなくなっていくのではないか」
- 「家族に迷惑をかける存在になるのではないか」
このような思いから、感情が不安定になったり、攻撃的な態度を取ったりすることも珍しくありません。
家族として大切なのは、正論で説得することよりも、気持ちに寄り添う姿勢です。
できないことを責めるのではなく、できることを尊重し、安心できる環境を整えることが、結果的に症状の安定にもつながるでしょう。
4章 認知症になったときの財産管理方法
認知症になり判断能力を失うと、自分で財産管理を行えなくなります。
そうなる前に、以下のような方法で対策しておくと良いでしょう。
- 家族信託の活用
- 任意後見制度の活用
- 生前贈与
- 遺言書の作成
- 成年後見制度の利用
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 家族信託の活用
家族信託は、親が元気なうちに、信頼できる家族へ財産の管理や運用、処分を託す仕組みです。
預貯金や不動産を信託すれば、将来、認知症になっても、受託者である家族が管理や運用、処分を行えます。
成年後見制度と比べて柔軟な運用が可能であり、介護費用の支払いなどもスムーズに行えます。
ただし、契約時には判断能力が十分にあることが前提となります。
そのため、元気なうちに家族信託の準備を進めておくことが非常に重要です。
4-2 任意後見制度の活用
任意後見制度とは、将来判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ後見人を決めておく制度です。
公正証書で契約を結び、実際に認知症が進行した段階で効力が発生します。
本人の意思を反映しやすい点がメリットですが、契約締結時に判断能力が必要な点は家族信託と同様です。
4-3 生前贈与
生前に財産を子供へ移しておき、そこから親の介護費用や生活費を支払ってもらう方法も有効です。
生前贈与すれば、所有権が親から子供に移るので、子供が資産を自由に管理できるようになります。
ただし、年間110万円を超える贈与を受けると、贈与税が課税される恐れがある点には注意しなければなりません。
また、認知症が進行すると贈与自体が無効になる可能性もあるため、慎重な判断が求められます。
4-4 遺言書の作成
遺言書を作成しておけば、相続時のトラブルを防ぎやすくなります。
誰にどの財産を残すのかを明確にできるため、家族間の争いを避けやすくなります。
ただし、遺言書も作成時に判断能力が必要であり、認知症が進行してからでは作成が難しくなりますし、遺言が無効になるリスクもあるのでご注意ください。
4-5 成年後見制度の利用
すでに認知症が進行し、判断能力が低下している場合には、成年後見制度しか選択できない場合もあります。
成年後見制度とは、家庭裁判所が選任した後見人が財産管理や契約行為のサポートを行う制度です。
家庭裁判所が後見人を選ぶため、安全性は高いものの、柔軟な運用が難しい側面もあります。
認知症の症状が進行しており、他の選択肢が難しい場合には、成年後見制度を選択しましょう。
まとめ
親が認知症になると、医療や介護だけでなく、財産管理や生活面でも様々な課題が生じます。
重要なことは、異変に早く気づき、状況に応じた行動を取ることです。
本人が元気であり、判断能力が認められるうちであれば、家族信託や任意後見制度の利用、遺言書の作成など多くの選択肢があります。
一方、症状が進行すると成年後見制度しか利用できない場合もあります。
認知症対策は元気なうちに専門家にしながら準備していくことが大切といえるでしょう。
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よくあるご質問
親がまだ元気でも認知症対策が必要でしょうか?
親が元気なうちから認知症対策を考えておくことは非常に重要です。
認知症対策の多くは、「判断能力がしっかりしていること」が前提になるからです。
例えば、家族信託や任意後見契約、遺言書の作成などは、症状が進行してからでは利用できません。親が病院に行きたがらない場合はどうすれば良いですか?
親が受診を拒むことは、決して珍しいことではありません。
「自分はまだ大丈夫」「認知症だと思われたくない」「病院に行くのが怖い」といった不安やプライドが背景にあることが多くあります。
このような場合は、「物忘れの相談」「健康診断のついで」「かかりつけ医に一度相談してみよう」など、本人の不安を刺激しにくい言い方を工夫することが有効です。









